人類の祖先候補「ルーシー」は320万年前の小柄な女性。名前の由来はビートルズの曲だった

読む前に予想してみよう!
化石「ルーシー」の名前は、発掘キャンプで流れていた音楽にちなんでつけられた
ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」がくり返し流れていたことが由来とされる。
- 対象
- アファール猿人の化石「ルーシー」(A.L. 288-1)
- 規模
- 1個体の部分骨格(全身の約40%)
- 研究の種類
- 化石の形態学的研究
- 確かさ
- ★★★★☆
1974年にエチオピアで見つかったルーシーは約320万年前のアファール猿人。脳はチンパンジー並みでも、骨盤やひざは二足歩行を示していた。
ひとことで言うと320万年前、もう二本足で歩いていたご先祖さまの仲間がいた!
1974年11月、アフリカ・エチオピアの乾いた谷で、ある化石が見つかりました。それは、およそ320万年前に生きていた、身長1mちょっとの小柄な女性の骨。
彼女は「ルーシー」と名づけられ、人類の進化を語るうえで欠かせない、世界でいちばん有名な化石の1つになりました。
しかも、その名前の由来は、なんとビートルズの曲。今日は、320万年の時を超えて私たちに語りかけるルーシーの物語を紹介します。
01発掘キャンプに流れていた1曲
ルーシーを見つけたのは、アメリカの人類学者ドナルド・ジョハンソンと、大学院生のトム・グレイでした。場所は、エチオピア北東部のアファール地方にあるハダールという地域です。
斜面に転がっていた腕の骨のかけらに気づき、周りを探すと、次々と同じ個体の骨が見つかりました。最終的に見つかったのは、全身の骨の約40%。300万年以上前の人類の仲間としては、驚くほどたくさんの骨がそろっていたのです。
その夜、キャンプではお祝いが開かれ、テープレコーダーからビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」がくり返し流れていました。そこから、この化石は「ルーシー」と呼ばれるようになったのです。
エチオピアでは、ディンキネシュ(アムハラ語で「あなたはすばらしい」という意味)という名前でも呼ばれています。

02ルーシーは「アファール猿人」
ルーシーは、アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)という種類の猿人です。
ルーシーの特徴をまとめると、こんな感じです。
- 身長:約1.1m(5〜6歳の子どもくらい)、体重は推定30kg弱
- 脳の大きさ:チンパンジーと同じくらい(現代人の約3分の1。ルーシー自身の頭骨はかけらしかないため、主に同じ種のほかの化石からの推定)
- 腕:比較的長く、木登りも得意だった可能性
- 骨盤とひざ:二本足で立って歩くのに適した形
03「脳より先に、足が人間になった」
ルーシーの発見が教えてくれた最も大きなことは、人類の祖先は、脳が大きくなるより先に、二本足で歩き始めていたということです。
それまでは、「頭がよくなって道具を使うようになり、そのために手を空けようと立ち上がった」という考え方もありました。でもルーシーは、脳はチンパンジー並みなのに、骨盤やひざの形は二足歩行を示していたのです。
アファール猿人のひざの骨(ルーシー発見の前年に同じハダールで見つかった化石など)を見ると、太ももの骨がひざに向かって内側に傾いています。これは、歩くときに足を体の真下に置き、バランスよく体重を支えるための形。私たち人間と同じ特徴です。
足あとの証拠もあります。タンザニアのラエトリでは、約360万年前の火山灰の上に残された二足歩行の足あとが見つかり、1979年に Nature で報告されました。アファール猿人のものと考えられています。
04ルーシーはどうして亡くなった?
320万年前のルーシーの死因についても、研究があります。
2016年、アメリカ・テキサス大学のジョン・カッペルマンらは、科学誌 Nature に、CTスキャンでルーシーの骨を調べた結果を発表しました。腕や肩などの骨に見られる骨折のパターンから、ルーシーは高い木から落ちて亡くなったのではないか、と提案したのです。
ただし、この説には、ルーシーを見つけたジョハンソンやティム・ホワイトらから「骨折は化石になる過程や、地層の中で押しつぶされてできたものでは?」という反論もあり、まだ結論は出ていません。
ルーシーの発見から50年。その後、エチオピアでは約440万年前の「アルディ」(アルディピテクス)や、アファール猿人の子どもの化石「セラム」なども見つかり、人類の進化の物語はさらに複雑で面白いものになっています。
05まとめ
- ルーシーは1974年にエチオピアで見つかった、約320万年前のアファール猿人
- 名前の由来は、キャンプで流れていたビートルズの曲
- 脳はチンパンジー並みでも、骨盤やひざは二足歩行を示していた
- 人類は「脳より先に足」から人間らしくなっていった
私たちが毎日あたりまえに歩いているその一歩は、320万年以上前から受けつがれてきた、とても古い「発明」なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1974, Donald Johanson and Tom Gray found a partial skeleton in Hadar, Ethiopia.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1974, scientists in Ethiopia found the bones of a small female who lived about 3.2 million years ago. They named her Lucy after a Beatles song. That night, the song played again and again at their camp.
Lucy was only about 1.1 meters tall, and her brain was as small as a chimpanzee's. But her bones show that she walked on two legs.
64 words ・ CEFR A2
和訳を見る
1974年、エチオピアで科学者たちが、約320万年前に生きていた小柄な女性の骨を見つけました。彼らはビートルズの曲にちなんで、彼女をルーシーと名づけました。その夜、キャンプではその曲がくり返し流れていたのです。
ルーシーの身長は約1.1mしかなく、脳はチンパンジーと同じくらい小さいものでした。しかし彼女の骨は、彼女が二本足で歩いていたことを示しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
二本足で歩いていた約320万年前の化石ルーシーの話なので B。
Q2. Where did Lucy's name come from?
They named her Lucy after a Beatles song. とあるので D。name A after B は「Bにちなんで A と名づける」。
Q3. In this passage, "again and again" means ...
again and again は「何度も何度も」なので A。
In 1974, Donald Johanson and Tom Gray found a partial skeleton in Hadar, Ethiopia. About 40 percent of the skeleton was recovered, an amazing amount for a fossil more than 3 million years old. She was named Lucy after a Beatles song that was playing at the camp.
Lucy belonged to a species called Australopithecus afarensis and lived about 3.2 million years ago. Her brain was about the size of a chimpanzee's, but the shape of her pelvis and legs shows that she walked upright. This discovery suggested that our ancestors began walking on two legs before their brains became large. Footprints found in Tanzania support this idea.
108 words ・ CEFR B1
和訳を見る
1974年、ドナルド・ジョハンソンとトム・グレイは、エチオピアのハダールで部分的な骨格を見つけました。骨格の約40%が見つかり、これは300万年以上前の化石としては驚くべき量でした。彼女は、キャンプで流れていたビートルズの曲にちなんでルーシーと名づけられました。
ルーシーはアウストラロピテクス・アファレンシスという種に属し、約320万年前に生きていました。脳の大きさはチンパンジーと同じくらいでしたが、骨盤や脚の形は、彼女がまっすぐ立って歩いていたことを示しています。この発見は、私たちの祖先は脳が大きくなる前に二本足で歩き始めたことを示唆しました。タンザニアで見つかった足あともこの考えを支持しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
our ancestors began walking on two legs before their brains became large とあり、これが発見の意義なので A。
Q2. How much of Lucy's skeleton was found?
About 40 percent of the skeleton was recovered とあるので C。
Q3. Why are the footprints in Tanzania mentioned?
Footprints found in Tanzania support this idea. とあり、二足歩行が早くからあった証拠として挙げているので D。
Discovered in 1974 at Hadar, Ethiopia, Lucy is a 3.2-million-year-old partial skeleton, about 40 percent complete, belonging to Australopithecus afarensis, a species formally named in 1978. Standing roughly 1.1 meters tall, she combined a chimpanzee-sized brain, estimated largely from other fossils of her species, with a pelvis adapted for upright walking. Knee fossils from the same site show a thigh bone angled inward toward the knee, a feature that places the feet beneath the body, as in modern humans. Together with 3.6-million-year-old footprints preserved in volcanic ash at Laetoli, Tanzania, this evidence overturned the assumption that large brains preceded bipedalism.
But other points are disputed. Lucy's relatively long arms have fueled debate over how much time her species still spent in trees. Whether afarensis was a direct ancestor of our genus or a close relative is unresolved, and even Lucy's sex is inferred mainly from her small size. In 2016, researchers used CT scans to argue that her fractures indicated a fatal fall from a tall tree, but critics, including her discoverer, countered that the breaks could have occurred during fossilization.
181 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1974年にエチオピアのハダールで発見されたルーシーは、約320万年前の部分骨格で、全身の約40%がそろっており、1978年に正式に命名された種アウストラロピテクス・アファレンシスに属しています。身長はおよそ1.1mで、チンパンジー並みの大きさの脳(主に同じ種のほかの化石から推定されたもの)と、直立歩行に適した骨盤をあわせ持っていました。同じ場所で見つかったひざの化石は、太ももの骨がひざに向かって内側に傾いていることを示しています。これは現代人と同じように、足を体の真下に置くための特徴です。タンザニアのラエトリで火山灰の上に残された360万年前の足あととあわせて、これらの証拠は、大きな脳が二足歩行より先に生まれたという思い込みをくつがえしました。
しかし、議論が続いている点もあります。ルーシーの比較的長い腕は、彼女の種がまだどれくらい木の上で過ごしていたのかという議論を呼んできました。アファレンシスが私たちの属の直接の祖先なのか、近い親戚なのかは未解決であり、ルーシーが女性だということさえ、主に体の小ささから推定されたものです。2016年、研究者たちはCTスキャンを使い、骨折は高い木からの致命的な落下を示していると主張しましたが、発見者を含む批判者たちは、骨折は化石化の過程で生じた可能性があると反論しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
二足歩行が大きな脳より先だったことを示した一方、祖先かどうか・死因などは未解決だという内容なので C。
Q2. What does the inward angle of the thigh bone at the knee indicate?
a feature that places the feet beneath the body, as in modern humans とあるので B。
Q3. Why did critics question the 2016 theory about Lucy's death?
the breaks could have occurred during fossilization と反論されたとあるので D。
重要単語
- ancestorB2名詞祖先Lucy may be close to our direct ancestor.
反意語は descendant(子孫)。a direct ancestor「直系の祖先」。 - fossilB1名詞化石The fossil was found on a dry slope in Ethiopia.
動詞 fossilize(化石化する)、名詞 fossilization(化石化)。B2 本文にも登場。 - bipedalC1形容詞二足歩行のLucy's species was bipedal.
bi-(2つ)+ped(足)。名詞 bipedalism。pedestrian(歩行者)も同じ ped。 - pelvisC1名詞骨盤The shape of the pelvis shows how she walked.
ラテン語で「たらい」の意味。複数形は pelvises / pelves。 - speciesB2名詞種Australopithecus afarensis is an extinct species.
単数も複数も species。endangered species「絶滅危惧種」は環境系長文で頻出。 - evolutionB2名詞進化Lucy changed our view of human evolution.
動詞 evolve。theory of evolution「進化論」。revolution(革命)とのつづりの違いに注意。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- AL 288-1(Smithsonian Institution, Human Origins Program)humanorigins.si.edu
このネタ、誰かに教えたくなった?
人類の祖先候補として有名な「ルーシー」、名前の由来は発掘キャンプで流れてたビートルズの曲らしい。320万年前なのに、もう二本足で歩いてたとか。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Johanson & White (1979) A Systematic Assessment of Early African Hominids, Sciencedoi.org
- Leakey & Hay (1979) Pliocene footprints in the Laetolil Beds at Laetoli, northern Tanzania, Naturedoi.org
- Kappelman et al. (2016) Perimortem fractures in Lucy suggest mortality from fall out of tall tree, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












