「地震雲」で地震は予知できる? 科学がたどり着いた答えと、本当に役立つ情報

読む前に予想してみよう!
「緊急地震速報」は、地震が起きる前に地震を予知して出している
地震が起きた直後に、震源近くの揺れをとらえて、強い揺れが届く前に知らせるしくみ。予知ではない。
- 対象
- 地震予知と地震雲
- 規模
- 地震学の研究と国の防災情報
- 研究の種類
- 総説・公的機関の情報
- 確かさ
- ★★★★☆
雲と地震の関係は科学的に確認されておらず、気象庁も否定的。日時・場所・規模をピタリと当てる「地震予知」は今も不可能。代わりに確率や臨時情報が整備されている。
ひとことで言うと雲を見ても地震はわからない。でも、そなえる方法はちゃんとあるよ!
夕焼けの空に、すーっとまっすぐ伸びた雲。SNSに「これって地震雲じゃない?」「近いうちに大きな地震が来るかも…」という投稿があふれることがあります。
不安になる気持ちは、とてもよくわかります。日本は地震の多い国。少しでも前ぶれがわかるなら知りたいですよね。
でも結論から言うと、雲を見て地震を予知できるという科学的な根拠は、確認されていません。では、私たちは何を手がかりにすればいいのでしょうか?
01「地震雲」の正体は、ふつうの雲
「地震雲」として写真に撮られる雲の多くは、気象学で説明できるふつうの雲です。
- 飛行機雲:まっすぐ長く伸びる雲。時間がたつと広がって、不思議な形になる
- 波状雲:さざ波のようなしま模様の雲。上空の風の波でできる
- レンズ雲:UFOのような丸い雲。山を越えた風が波打つところにできる
どれも、空気の流れや湿り気によってできる自然な雲です。雲は大気の現象、地震は地下数km〜数十kmの岩盤の現象。両者を結びつけるしくみは見つかっておらず、気象庁などの公的機関も、雲で地震を予知する方法は認めていません。

02なぜ「当たった!」と感じるの?
それでも「地震雲を見たあとに地震が来た」という話はよく聞きます。これには、人間の心のクセが関係しています。
日本は、世界で起きるマグニチュード6以上の大きな地震のうち、およそ2割が日本とその周辺で起きるといわれるほどの地震大国です。体に感じる地震だけでも年に1000回を超えることが多く、小さな揺れまで含めれば、日本のどこかで毎日のように地震が起きています。
つまり、変わった雲を見たあと「数日以内に日本のどこかで地震があった」というのは、たまたま重なることがとても多いのです。人は「当たった」ことはよく覚えていて、「外れた」ことは忘れがち。これを確証バイアスといいます。しかも「地震雲」の多くは、地震が起きたあとに「そういえば…」と探し出された写真です。後から当てはめれば、どんな雲でも前ぶれに見えてしまいます。
03そもそも「地震予知」はできるの?
ここで言う「地震予知」とは、いつ・どこで・どれくらいの大きさの地震が起きるかを、前もってピタリと言い当てることです。
日本でも、かつては「東海地震は予知できるかもしれない」という前提で、1978年に法律(大規模地震対策特別措置法)や体制が作られていました。しかし2017年、国の中央防災会議の作業部会は確度の高い地震の予測はできないとする報告をまとめ、防災の考え方を見直しました。その流れで生まれたのが、次に紹介する「南海トラフ地震臨時情報」です。
04代わりに整えられた「3つの情報」
予知ができないなら、どうすればいいのでしょう? 今の日本では、次のような情報が用意されています。
- 長期的な確率:「今後30年以内に〇〇%」という、地震の起こりやすさの目安
- 南海トラフ地震臨時情報:南海トラフ沿いで異常な現象が起きたとき、「ふだんより大地震の可能性が相対的に高まっている」と知らせる情報。2024年8月8日、日向灘のマグニチュード7.1の地震をきっかけに、初めて「巨大地震注意」が発表された(約1週間で呼びかけ終了。大地震は起きなかったが、これは「外れ」ではなく、確率が一時的に上がったことを知らせる情報です)
- 緊急地震速報:地震が起きた直後に、強い揺れが来る数秒〜数十秒前に知らせるしくみ(震源に近い場所では間に合わないこともあります)
どれも「いつ来るか」をピタリと当てるものではありません。でも、備えるきっかけとしてはとても役立ちます。
05まとめ
- 「地震雲」と呼ばれる雲の多くは、飛行機雲などのふつうの雲
- 雲と地震の関係は、科学的に確認されていない
- 日時・場所・規模を当てる「地震予知」は、今の科学ではできない
- 代わりに、確率や臨時情報、緊急地震速報が整えられている
空を見上げて不安になったら、それは「備えを見直すサイン」だと考えてみてください。雲は地震を教えてくれませんが、今日の備えは、未来のあなたと家族を確実に守ってくれます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAfter a strange cloud appears, social media is often full of posts warning of a big earthquake.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some people post photos of strange clouds online and call them "earthquake clouds." They think the clouds show that an earthquake is coming.
But scientists have not found a clear link between clouds and earthquakes. Most of these clouds are normal clouds, like the long lines that airplanes make. Japan has small earthquakes almost every day, so a cloud and a quake often happen close together just by chance.
69 words ・ CEFR A2
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変わった形の雲の写真をネットに投稿し、「地震雲」と呼ぶ人がいます。その雲は地震が来るしるしだと考えているのです。
しかし科学者たちは、雲と地震の間に何のつながりも見つけていません。こうした雲のほとんどは、飛行機がつくる長い線のような、ふつうの雲です。日本ではほぼ毎日小さな地震が起きているので、雲と地震がたまたま近い時期に起こることがよくあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「地震雲」で地震がわかるのか、がテーマなので A。
Q2. What are most "earthquake clouds" really?
Most of these clouds are normal clouds とあるので C。
Q3. In this passage, "by chance" means ...
by chance は「偶然に」。雲と地震には関係がなく、たまたま重なるだけ、という意味なので B。
After a strange cloud appears, social media is often full of posts warning of a big earthquake. However, there is no scientific evidence that clouds can predict earthquakes. Most so-called earthquake clouds are ordinary clouds, such as airplane trails or wave-shaped clouds formed by the wind.
Japan has well over 1,000 earthquakes that people can feel in most years, so a cloud and a quake often appear close together by coincidence. People also tend to remember the "hits" and forget the misses, which is known as confirmation bias. In fact, no one can yet predict the exact time, place, and size of an earthquake. Instead, Japan provides long-term probabilities and earthquake early warnings.
113 words ・ CEFR B1
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変わった雲が現れると、SNSは大地震を警告する投稿であふれることがよくあります。しかし、雲で地震を予知できるという科学的な証拠はありません。いわゆる地震雲のほとんどは、飛行機雲や、風によってできる波の形の雲のような、ふつうの雲です。
日本では多くの年に、人が感じる地震だけで1000回をゆうに超えるので、雲と地震は偶然近い時期に現れることがよくあります。また、人は「当たり」を覚えていて「外れ」を忘れがちで、これは確証バイアスとして知られています。実際、地震の正確な日時・場所・規模を予測できる人はまだいません。その代わりに、日本では長期的な確率や緊急地震速報が提供されています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
雲で地震は予知できないが、確率や緊急地震速報などの情報がある、という内容なので D。
Q2. What is confirmation bias?
remember the "hits" and forget the misses, which is known as confirmation bias とあるので A。
Q3. Why might a person wrongly believe that a cloud predicted an earthquake?
日本では地震がとても多く、雲と地震が偶然重なりやすい(by coincidence)と述べているので C。
Photos of so-called earthquake clouds regularly spread online, yet most turn out to be ordinary clouds such as contrails, wave clouds, or lens-shaped clouds formed by air flowing over mountains. No physical mechanism linking clouds to ruptures many kilometers underground has been found, and no reliable study has shown a connection beyond chance. To test any warning sign properly, researchers would need predictions defined in advance and compared with the base rate of coincidences; almost all cloud reports, however, are identified only after a quake.
Since Japan experiences roughly a fifth of the world's earthquakes of magnitude 6 or above, coincidences are inevitable, and confirmation bias does the rest. More broadly, predicting the exact time, place, and size of a quake remains impossible, a view strongly argued in a 1997 Science paper. Japan therefore revised its disaster policy in 2017, moving away from reliance on prediction. It now relies on long-term probabilities, early warnings issued seconds after a quake begins, and special Nankai Trough information. When this was first issued in August 2024, no major quake followed, but that was not a failure: it signaled only a temporary rise in probability.
191 words ・ CEFR B2
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いわゆる地震雲の写真はたびたびネットで広まりますが、そのほとんどは、飛行機雲や波状雲、山を越える空気の流れでできるレンズ形の雲のような、ふつうの雲だとわかります。雲と地下数km〜数十kmの岩盤の破壊を結びつける物理的なしくみは見つかっておらず、偶然以上のつながりを示した信頼できる研究もありません。前兆とされるものをきちんと検証するには、事前に定めた予測を、偶然の一致が起こる基本的な割合と比べる必要があります。しかし、雲の報告のほとんどは地震が起きた後になって見つけ出されたものです。
日本では世界のマグニチュード6以上の地震のおよそ5分の1が起きるため、偶然の一致は避けられず、そこに確証バイアスが加わって「当たった」と思い込んでしまいます。より広く言えば、地震の正確な日時・場所・規模を予測することは依然として不可能であり、この見方は1997年の『サイエンス』誌の論文で強く主張されました。そのため日本は2017年に防災方針を見直し、予知に頼る考え方から離れました。現在は、長期的な確率、地震発生の数秒後に出される緊急地震速報、そして南海トラフ地震臨時情報に頼っています。この臨時情報が2024年8月に初めて出されたとき、大地震は起きませんでしたが、それは失敗ではありません。確率が一時的に高まったことを知らせただけなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
地震雲や予知には根拠がなく、日本は確率や速報などの情報に切り替えた、という内容なので B。
Q2. According to the passage, why is it hard to test claims about earthquake clouds?
almost all cloud reports ... are identified only after a quake とあり、事前の予測と比べられないので D。
Q3. Why does the author say the August 2024 information was not a failure?
it signaled only a temporary rise in probability とあり、地震を予言する情報ではないので A。
重要単語
- earthquake predictionB2名詞(句)地震予知Precise earthquake prediction is still impossible.
predict(予言する)の名詞形 prediction。pre-(前に)+dict(言う)。 - forecastB1名詞・動詞予測(する)Scientists can only forecast the probability of quakes.
weather forecast(天気予報)でおなじみ。過去形・過去分詞も forecast のままが一般的。 - probabilityB2名詞確率The probability of a large quake is high in this region.
probable(ありそうな)の名詞形。in all probability「十中八九」も覚えておきたい。 - confirmation biasC1名詞(句)確証バイアスConfirmation bias makes us remember only the hits.
confirm(確かめる)+bias(偏り)。自分の考えに合う情報ばかり集める心のクセ。入試の心理学テーマで頻出。 - early warningB2名詞(句)早期警報The early warning gave us a few seconds to take cover.
earthquake early warning=緊急地震速報。take cover「身を隠す・避難する」もセットで。 - preparednessC1名詞備え、準備Disaster preparedness starts at home.
prepared(準備ができた)+-ness。disaster preparedness「防災の備え」は防災系の英文の定番。
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- 「南海トラフ地震に関連する情報」について(気象庁)data.jma.go.jp
- 南海トラフ地震対策(内閣府 防災情報のページ)bousai.go.jp
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「地震雲が出たから地震が来る」ってSNSでよく見るけど、科学的な根拠は確認されてないらしい。じゃあ何を見ればいいのか、ちゃんと整理してみた。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











