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お風呂で歌うとうまく聞こえるのはなぜ? タイルの壁が作る「天然のカラオケエコー」の正体

お風呂で歌うとうまく聞こえるのはなぜ? タイルの壁が作る「天然のカラオケエコー」の正体

読む前に予想してみよう!

お風呂で歌声がよく響くのは、湯気が音を増幅しているからだ

研究カード(どんな研究?)
対象
話者・音楽家
規模
数人〜十数人規模
研究の種類
実験研究(模擬音場)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

硬いタイルの壁が声を何度も反射し、響き(残響)と音量を足してくれるから。狭い部屋特有の共鳴で低音も厚くなる。ただし外で聞く人にも同じとは限らない。

ひとことで言うとお風呂のかべが声をはね返して、エコーをかけてくれるんだ!

もくじ
  1. 硬い壁は音を「吸わない」
  2. 狭い部屋が低音を「厚く」する
  3. 部屋の響きで、人は歌い方を変える
  4. どんでん返し:外の人にはどう聞こえる?
  5. まとめ

湯船につかって鼻歌を歌ったら、「あれ、今日の私、うまくない?」。カラオケではそうでもないのに、お風呂だと妙に上手に聞こえる。

答えを先に言うと、タイルの壁や床が声を何度もはね返し、響き(残響)と音量を足してくれるからです。お風呂は、天然のエコーつきカラオケルームのようなもの。ただし、うまく聞こえているのは主に歌っている本人かもしれません。

01硬い壁は音を「吸わない」

音は壁に当たると、一部が吸い込まれ、残りがはね返ります。

カーテンやソファ、じゅうたんのある部屋では、音はかなり吸い込まれてしまいます。ところが浴室は、タイル・ガラス・プラスチック・水面と、音をほとんど吸わない硬い面ばかり。声は壁から壁へと何度も往復し、声を止めてもしばらく響きが残ります。これが残響です。

残響には、声の「つなぎ目」をなめらかにしたり、細かい音程や発声のブレを目立ちにくくしたりする働きがあると考えられています。歌番組で歌声にエコーをかけるのと、似たことが起きているわけです。

02狭い部屋が低音を「厚く」する

浴室が狭いことにも意味があります。

向かい合う壁の間では、ちょうど往復にぴったり合う長さの音が強め合います(共鳴)。たとえば壁と壁の距離が2mなら、計算上はおよそ90ヘルツ前後の低い音が響きやすくなります。これは男性の話し声の高さに近い範囲です。

広いリビングでは起きにくいこの共鳴が、声に厚みや迫力を足してくれるのです。

硬い壁が声を何度もはね返し、響きと音量を足してくれる
硬い壁が声を何度もはね返し、響きと音量を足してくれる

03部屋の響きで、人は歌い方を変える

響きの影響は「聞こえ方」だけではありません。歌い方・話し方そのものが変わります。

日本でも、上野佳奈子さんらの研究グループ(2010年)が、響きを変えた模擬ホールで音楽家に演奏してもらい、響きに合わせてテンポやビブラートなどを調整していたことを報告しています。

お風呂では、声が十分に返ってくるので、のどに力を入れなくても楽に、ゆったりと歌えます。これも「うまく聞こえる」理由の一つでしょう。

04どんでん返し:外の人にはどう聞こえる?

注意したいのは、響きの恩恵を一番受けるのは歌っている本人だという点です。

脱衣所や廊下で聞いている家族には、壁越しにこもった声や、響きすぎてぼやけた声が届いているかもしれません。クラシックの訓練を受けた歌手9人が5つの会場で歌った調査(2023年)でも、会場ごとに響きや自分の声の支えられ方の感じ方が変わり、部屋の音響指標と関係していたと報告されています。

05まとめ

お風呂の歌がうまく聞こえるのは、硬い壁が声をはね返して残響と音量を足し、狭い空間の共鳴が低音を厚くし、しかも楽に声が出せるから。いわば部屋全体が、あなた専用の音響エフェクターになっているのです。

その気持ちよさは本物。でも本番の実力チェックは、響かない部屋での録音でどうぞ。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the bathroom, many people feel that they sing better than anywhere else. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In the bathroom, many people feel that they sing better than anywhere else. The main reason is the hard surfaces. Tiles, glass and water hardly absorb sound, so your voice bounces between the walls many times and continues for a while after you stop. This effect, called reverberation, makes the voice smoother and may hide small mistakes.

In a small room, low sounds can also become stronger because of resonance. Room acoustics even change how we use our voice. A Danish study found that when people's voices came back strongly from a room, they spoke more quietly.

However, the person who benefits most is the singer. Family members outside may hear a muffled voice instead.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

お風呂では、多くの人が、ほかのどこよりもうまく歌えると感じています。主な理由は硬い面です。タイルやガラス、水は音をほとんど吸収しないので、声は壁の間を何度もはね返り、歌うのをやめた後もしばらく続きます。残響と呼ばれるこの効果は、声をなめらかにし、小さなミスを目立たなくするかもしれません。

狭い部屋では、共鳴によって低い音も強くなることがあります。部屋の音響は、私たちの声の使い方まで変えます。デンマークの研究では、部屋から自分の声が強く返ってくると、人はより小さな声で話すことがわかりました。

しかし、一番恩恵を受けるのは歌っている本人です。外にいる家族には、こもった声が聞こえているかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. According to the Danish study, what did people do when their voices came back strongly?

Q3. What can we infer about a family member listening outside the bathroom?

重要単語

  • reverberationC1
    名詞残響(音が反射して残る響き)The reverberation in the bathroom made my voice sound rich. re-(再び)+verberate(打つ)。音楽機材の reverb はこの略。
  • reflectB1
    動詞反射する、はね返すHard tiles reflect sound very well. 「反映する」「よく考える(reflect on ~)」の意味も入試頻出。名詞は reflection。
  • absorbB2
    動詞吸収するCurtains and sofas absorb sound. be absorbed in ~「~に夢中になる」も頻出。reflect(はね返す)と対で覚える。
  • resonanceC1
    名詞共鳴The small room creates resonance at low notes. re-(再び)+sonare(鳴る)。動詞は resonate。「心に響く」の比喩でも使う。
  • acousticsC1
    名詞音響(部屋の音の響き方)This concert hall has wonderful acoustics. 部屋の響きの意味では複数扱い。形容詞 acoustic は「アコースティックギター」の acoustic。
  • muffledC1
    形容詞(音が)こもった、くぐもったWe heard a muffled voice through the wall. muffle(包んで音を消す)の過去分詞。冬の muffler(マフラー)も同じ語源。
お風呂で歌うとうまく聞こえるのは、タイルの壁が声をはね返して「天然のエコー」と音量アップをしてくれるから。音響学の実験では、話す人は部屋の響きに合わせて声の大きさを変えていたらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Pelegrín-García & Brunskog (2012) Speakers' comfort and voice level variation in classrooms: Laboratory research, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  2. Brunskog et al. (2009) Increase in voice level and speaker comfort in lecture rooms, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  3. Ueno, Kato & Kawai (2010) Effect of Room Acoustics on Musicians' Performance. Part I: Experimental Investigation with a Conceptual Model, Acta Acustica united with Acusticadoi.org
  4. Bottalico et al. (2023) Singing in different performance spaces: Associations between room acoustic and singers perception, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org