地球・歴史・物理

富士山は300年以上噴火していない。地下で今なにが起きていて、何を備えればいい?

富士山は300年以上噴火していない。地下で今なにが起きていて、何を備えればいい?

読む前に予想してみよう!

富士山は「休火山」なので、もう噴火する心配はない

研究カード(どんな研究?)
対象
富士山の噴火史と地下の観測
規模
地層・古記録の調査と地震観測網
研究の種類
地質調査・観測研究+国の防災計画
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

富士山は1707年の宝永噴火以来、300年以上静か。でも今も活火山で、24時間監視されている。噴火の日時は予言できないが、正しく備えることはできる。

ひとことで言うと富士山は「お休み中」の火山。いつか起きるかもしれないから、そなえておこう!

もくじ
  1. 1707年、江戸に灰が降った
  2. 「休火山」は、もう使わない言葉
  3. 地下では「低い音の地震」が観測されている
  4. 「いつ噴火する?」に答えはあるの?
  5. 本当に大事なのは「火山灰への備え」
  6. まとめ

日本一の山、富士山。お正月の初日の出や、新幹線の窓から見える姿に、思わず手を合わせたくなる人もいるかもしれません。

でも富士山は、ただの美しい山ではありません。今も生きている火山(活火山)です。最後に噴火したのは1707年の「宝永(ほうえい)噴火」。それから300年以上、ずっと静かにしています。

「じゃあ、そろそろ危ないの?」――今日は、こわがりすぎず、でも正しく知っておきたい、富士山の今を解説します。

011707年、江戸に灰が降った

まず、最後の噴火をふり返ってみましょう。

1707年、東海から四国の沖を震源とする巨大地震「宝永地震」が起きました。そしてその49日後、富士山の南東の中腹から噴火が始まりました。今も富士山の南東側の斜面に見える大きなくぼみ「宝永火口」は、このときにできたものです。

噴火は約16日間続き、大量の火山灰や軽石、スコリア(黒っぽい穴だらけの岩のかけら)が西風に乗って東へ運ばれました。約100km離れた江戸(今の東京)にも数cmの灰が降り積もり、昼でも暗くなったと記録されています。ふもとに近い地域では1mを超える厚さで積もり、田畑が長く使えなくなりました。火山灰が川に流れ込んで川底を浅くし、その後何十年も洪水の被害が続いたことも知られています。

宝永噴火では、約100km離れた江戸にも火山灰が降ったと記録されている
宝永噴火では、約100km離れた江戸にも火山灰が降ったと記録されている

02「休火山」は、もう使わない言葉

昔の教科書では、富士山は「休火山」と呼ばれていました。でも今は、この言葉は使われていません。

富士山は気象庁が24時間体制で見張っている火山の1つです。地震計や、山のわずかなふくらみを測る装置などで、地下の変化を常にチェックしています。

03地下では「低い音の地震」が観測されている

2000年から2001年にかけて、富士山の地下深く(約15km付近)で、低周波地震と呼ばれる小さな地震が急に増えたことがありました。ふだんは月に数回〜十数回程度なのに、多い月には100回を超えたのです。

低周波地震とは、ふつうの地震よりゆったりした揺れの地震のこと。ガタガタではなく、ゴーンと低く響くようなイメージです。地下深くで、マグマや火山のガスなどの「流体」(液体や気体)が動くことに関係していると考えられています。

このときは噴火には至らず、山がふくらむような地殻変動も観測されませんでした。それでも、これをきっかけに国や県がハザードマップ作りを急ぎ、2004年に最初の富士山ハザードマップが完成するなど、防災対策が大きく進みました。

04「いつ噴火する?」に答えはあるの?

正直に言うと、「何年何月に噴火する」と予言することは、今の科学ではできません。

ネットなどで「〇年に富士山が噴火する」という話を見かけても、科学的な根拠はありません。そうした情報に振り回される必要はないのです。

一方で、火山の噴火は、多くの場合、その前に地震が増える、山がふくらむ、ガスが変化するといった前ぶれがあります。気象庁はそうした変化をとらえて、噴火警戒レベルなどの情報を出すしくみを整えています。

05本当に大事なのは「火山灰への備え」

富士山がもし噴火した場合、ふもとの地域だけでなく、首都圏など広い範囲で心配されているのが火山灰です。

火山灰は、木を燃やした灰とはまったく別物。細かいガラスや岩のかけらなので、目や喉を傷つけるほか、電車や車が止まる、停電が起きるなど、生活のさまざまな場面に影響します。雨にぬれると重くなり、木造の家の屋根に負担をかけることもあります。

国(内閣府)は、宝永噴火と同じ規模の噴火が起きた場合、条件によっては首都圏でも数cm〜10cm程度の降灰がありうると想定しています。2025年3月には「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」をまとめ、灰が少ない地域では自宅での生活を続けられるよう備蓄しておくことを基本とする考え方を示しました。

これらは地震や台風への備えとほとんど同じ。富士山のためだけでなく、あらゆる災害への備えになります。

06まとめ

  • 富士山の最後の噴火は1707年の宝永噴火。300年以上静か
  • 「休火山」ではなく、24時間見張られている活火山
  • 地下ではマグマの動きに関係するとみられる地震も観測されてきた
  • 噴火の日時は予言できない。でも、備えることはできる

富士山は、私たちを楽しませてくれる美しい山であり、同時に生きている火山でもあります。こわがりすぎず、でも忘れずに。週末に一度、家族でハザードマップをのぞいてみるところから始めてみませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMount Fuji has been quiet since the Hoei eruption of 1707, which began 49 days after a huge earthquake. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Mount Fuji has been quiet since the Hoei eruption of 1707, which began 49 days after a huge earthquake. That eruption lasted about 16 days, and ash fell on Edo, about 100 kilometers away.

Today, Fuji is classified as an active volcano and is watched 24 hours a day. In 2000 and 2001, small "low-frequency" earthquakes increased about 15 kilometers below the mountain, possibly because magma or gas was moving. No eruption followed, but the event pushed the government to create a hazard map. Nobody can predict the date of the next eruption. However, volcanoes often give warning signs, such as more earthquakes or swelling of the ground.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

富士山は、巨大地震の49日後に始まった1707年の宝永噴火以来、静かなままです。その噴火は約16日間続き、約100km離れた江戸にも灰が降りました。

現在、富士山は活火山に分類され、24時間体制で見張られています。2000年と2001年には、山の下約15kmで小さな「低周波」地震が増えました。マグマやガスが動いていたためかもしれません。噴火は起きませんでしたが、この出来事をきっかけに国はハザードマップ作りを進めました。次の噴火の日付は誰にも予測できません。しかし火山は、地震が増えたり地面がふくらんだりといった前ぶれを示すことが多いのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened in 2000 and 2001?

Q3. Why do scientists watch Mount Fuji 24 hours a day?

重要単語

  • active volcanoB2
    名詞(句)活火山Mount Fuji is classified as an active volcano. dormant volcano(休火山)、extinct volcano(死火山)という分類は日本では使われなくなった。
  • eruptionB2
    名詞噴火The last eruption of Mount Fuji was in 1707. 動詞 erupt。e-(外へ)+rupt(破る)。「感情が爆発する」の比喩にも使う。
  • volcanic ashB2
    名詞(句)火山灰Volcanic ash can stop trains and cut off power. volcano の形容詞 volcanic。ローマ神話の火の神 Vulcan が語源。
  • magmaB2
    名詞マグマMagma rises slowly from deep underground. 地下にある溶けた岩石。地表に出ると lava(溶岩)と呼ばれる。
  • hazard mapB2
    名詞(句)ハザードマップ(被害予測地図)Check the hazard map for your area. hazard は「危険(の原因)」。risk(危険の可能性)との違いが問われることもある。
  • evacuateB2
    動詞避難するPeople near the volcano may need to evacuate. e-(外へ)+vacuate(空にする)。名詞 evacuation(避難)、evacuation center(避難所)。

動画でもっと知る

富士山は1707年の噴火から300年以上静かなまま。でも「眠っている」わけじゃなく、地下の様子は24時間見張られているらしい。こわがるより、そなえる話。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Miyaji et al. (2011) High-resolution reconstruction of the Hoei eruption (AD 1707) of Fuji volcano, Japan, Journal of Volcanology and Geothermal Researchdoi.org
  2. Ukawa (2005) Deep low-frequency earthquake swarm in the mid crust beneath Mount Fuji (Japan) in 2000 and 2001, Bulletin of Volcanologydoi.org
  3. Magill et al. (2015) Simulating a multi-phase tephra fall event: inversion modelling for the 1707 Hoei eruption of Mount Fuji, Japan, Bulletin of Volcanologydoi.org
  4. 富士山の火山防災対策, 内閣府 防災情報のページbousai.go.jp
  5. 首都圏における広域降灰対策(ガイドライン 2025年3月公表), 内閣府 防災情報のページbousai.go.jp