6600万年前、恐竜を滅ぼした小惑星が落ちた「その日」に地球で起きたこと

読む前に予想してみよう!
恐竜を絶滅させた小惑星が落ちた場所は、今もわかっていない
メキシコのユカタン半島にある「チクシュルーブ・クレーター」が衝突地点とされている。直径は約180km。
- 対象
- K-Pg境界の地層とチクシュルーブ・クレーター
- 規模
- 世界各地の地層+クレーター掘削コア
- 研究の種類
- 地質学的観測研究
- 確かさ
- ★★★★★
直径約10kmの小惑星がメキシコ・ユカタン半島に衝突。巨大津波、山火事、そして太陽をさえぎる「衝突の冬」が生き物の種の約4分の3を消し去った。
ひとことで言うと大きな石が宇宙から落ちてきて、空が暗くなり、恐竜が生きられなくなった!
今から約6600万年前のある日。メキシコのユカタン半島の沖に、宇宙から巨大な岩のかたまりが落ちてきました。
直径はおよそ10km(推定には10〜15kmほどの幅があります)。エベレストの高さ(約8.8km)よりも大きな岩のかたまりが、宇宙から降ってきたことになります。この小惑星の衝突をきっかけに、恐竜をはじめ、当時の生き物の種の約4分の3が姿を消しました。
では、その「運命の日」、地球ではいったい何が起きていたのでしょう? 地層や掘削調査から少しずつわかってきた、地球の歴史を大きく変えた1日をのぞいてみましょう。
01最初の手がかりは「薄い粘土の層」
この物語は、1980年に始まります。
当時は「そんなバカな」という反応も多かったこの説。でも1991年、ユカタン半島の地下に埋もれた直径約180kmの巨大クレーターが衝突の跡だと論文で示され、一気に有力になりました。それがチクシュルーブ・クレーターです(じつは石油探査の地下データで、1970年代末から円形の構造自体は気づかれていました)。
2010年には、世界の41人の研究者がScienceにまとめ論文を出し、「恐竜絶滅の主な原因はこの衝突」という見方が広く支持されるようになりました。
02衝突から数秒〜数分:地殻がしぶきのように
小惑星は秒速20km前後という猛スピードで突っこんだと考えられています。時速300kmの新幹線の200倍以上の速さです。
衝突のエネルギーは、人類がこれまでに作ったすべての核兵器を合わせたものより、はるかに大きかったと見積もられています。地面は液体のように波打ち、一瞬で深い穴があいて、その中心が山のようにはね上がったあと崩れ落ちました。
吹き飛ばされた岩は、溶けたり蒸発したりしながら空高く舞い上がり、その一部は宇宙空間にまで達したと考えられています。
03衝突当日:巨大津波と山火事
戻ってきた海水がクレーターになだれこみ、巨大な津波が周りの海岸をおそいました。さらに、空から降り注いだ熱いかけらによって、各地で山火事が起きたと考えられています。

04数か月〜数年:「衝突の冬」がやってくる
本当の悲劇は、そのあとでした。
ユカタン半島の地下には、硫黄を多く含む岩(石こうなどの蒸発岩)がたくさんありました。ところが掘削コアには、その岩がほとんど含まれていませんでした。衝突で蒸発して空にまき散らされたと考えられ、その硫黄は数千億トン規模と見積もられています。
空に広がった硫黄の細かい粒や、山火事のすすは、地球全体を日傘のようにおおいました。太陽の光がさえぎられ、地表は暗く、寒くなります。これを「衝突の冬」と呼びます。
光がなければ植物は光合成ができません。植物が枯れると、それを食べる草食恐竜が、さらにそれを食べる肉食恐竜が…と、食べ物の連鎖が下から崩れていきました。
05生き残ったのは「小さくて、なんでも食べる」者たち
すべての生き物がいなくなったわけではありません。体が小さく、少ない食べ物でも生きられる小型の哺乳類、鳥(羽毛恐竜の子孫)、ワニ、カメなどは生き延びました。
大型の恐竜がいなくなった世界で、哺乳類は大きく数と種類を増やしていきます。その長い長い延長線上に、私たち人類がいるのです。
06まとめ
- 約6600万年前、直径約10kmの小惑星がユカタン半島に衝突した
- 手がかりは、地層に残ったイリジウムの多い薄い層だった
- 衝突当日に、クレーター内には100m以上(約130m)の土砂が積もった
- 硫黄やすすが太陽をさえぎる「衝突の冬」が、生き物の大量絶滅を招いた
もしあの日、小惑星が地球をかすめて通りすぎていたら…。今も恐竜が地上を歩き、哺乳類は小さな姿のままだったかもしれません。私たちの存在は、6600万年前の「たった1日」とつながっているのです。
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
About 66 million years ago, a huge rock from space hit the Earth near Mexico. It was about 10 kilometers wide. On that day, giant waves and big fires followed.
Later, dust and other things in the sky blocked the sunlight, and the Earth became dark and cold. Plants died, and then many animals had no food. About three quarters of all species disappeared, including the dinosaurs.
67 words ・ CEFR A2
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約6600万年前、宇宙から来た巨大な岩がメキシコの近くで地球に衝突しました。その大きさは約10kmでした。その日、巨大な波や大きな火事が続きました。
その後、空のちりなどが太陽の光をさえぎり、地球は暗く寒くなりました。植物は枯れ、そして多くの動物は食べ物がなくなりました。恐竜を含め、すべての種の約4分の3が姿を消しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
宇宙からの岩が衝突したあとに何が起きたかを説明しているので A。
Q2. How wide was the rock from space?
It was about 10 kilometers wide. とあるので D。
Q3. In this passage, "blocked" means ...
blocked the sunlight は「日光をさえぎった」。だから地球が暗く寒くなったので C。
In 1980, scientists Luis and Walter Alvarez found unusually high levels of iridium, an element common in meteorites but rare on Earth's surface, in a thin clay layer from the end of the age of dinosaurs. They suggested that a giant object from space had hit the planet.
In 1991, a buried crater about 180 kilometers wide in Mexico's Yucatán Peninsula was identified as the impact site. Drilling has since shown that about 130 meters of rock and sediment filled the crater within a single day. The impact also caused huge tsunamis and wildfires. Most importantly, sulfur and soot blocked sunlight for a long time, causing an "impact winter" that destroyed food chains.
113 words ・ CEFR B1
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1980年、科学者のルイス・アルバレスとウォルター・アルバレスは、恐竜の時代の終わりの薄い粘土層の中に、隕石には多いが地球の表面にはまれな元素であるイリジウムが、異常に多く含まれているのを発見しました。彼らは、宇宙からの巨大な物体が地球に衝突したのだと提案しました。
1991年、メキシコのユカタン半島に埋もれた直径約180kmのクレーターが衝突地点だと特定されました。その後の掘削で、わずか1日のうちに約130mの岩や堆積物がクレーターを埋めたことがわかりました。衝突はまた、巨大な津波や山火事も引き起こしました。最も重要なのは、硫黄やすすが長い間日光をさえぎり、「衝突の冬」を引き起こして食物連鎖を崩壊させたことです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
衝突説の証拠(イリジウム・クレーター・掘削)と衝突の影響を説明しているので B。
Q2. What did the drilling show?
about 130 meters of rock and sediment filled the crater within a single day とあるので C。
Q3. Why was iridium an important clue?
イリジウムは隕石に多く地表にはまれなので、宇宙から物体が来た手がかりになった。正解は A。
About 66 million years ago, an asteroid roughly 10 kilometers wide hit the Yucatán Peninsula at around 20 kilometers per second. Some estimates go up to 15 kilometers. The first clue came in 1980, when Luis and Walter Alvarez found unusually high levels of iridium in clay from the boundary layer. In 1991, the 180-kilometer Chicxulub crater was linked to the event.
An international drilling expedition sampled the crater's peak ring in 2016, and a 2019 study led by Sean Gulick reported that about 130 meters of material, including charcoal from burned plants, piled up within the first day. The cores held almost none of the sulfur-rich rock that is common in the region. The likely explanation is that the impact vaporized it and sent hundreds of billions of tons of sulfur into the atmosphere.
Along with soot, these particles probably blocked sunlight and caused an impact winter. Photosynthesis stopped, food chains collapsed, and about three quarters of species died out. Scientists still argue over the exact size and angle of the impactor, and over how much soot and volcanic eruptions in India added to the damage. Small, adaptable animals such as early mammals and birds made it through.
199 words ・ CEFR B2
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約6600万年前、直径約10kmの小惑星が、秒速約20kmでユカタン半島に衝突しました。その大きさを最大15kmとする推定もあります。最初の手がかりが見つかったのは1980年で、ルイス・アルバレスとウォルター・アルバレスが、境界層の粘土に異常に多いイリジウムを発見しました。1991年には、直径180kmのチクシュルーブ・クレーターがこの出来事と結びつけられました。
2016年に国際掘削調査がクレーターのピークリングから試料を採取し、ショーン・ギュリックが率いた2019年の研究は、焼けた植物の炭を含む約130mの物質が最初の1日のうちに積もったと報告しました。掘削コアには、この地域に多いはずの硫黄を多く含む岩がほとんどありませんでした。衝突によってその岩が蒸発し、数千億トンの硫黄が大気中に放出されたと考えるのが自然です。
すすとともに、これらの粒子はおそらく日光をさえぎり、「衝突の冬」を引き起こしました。光合成が止まり、食物連鎖が崩れ、種の約4分の3が絶滅しました。衝突体の正確な大きさや角度、そしてすすやインドの火山噴火が被害をどれだけ大きくしたのかについては、科学者の間で今も議論があります。初期の哺乳類や鳥のような、小さく適応力のある動物は生き延びました。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best summarizes the passage?
イリジウム・クレーター・掘削コアなどの地質学的証拠から、衝突が大量絶滅につながった過程を説明しているので D。
Q2. What did the absence of sulfur-rich rock in the cores suggest?
The likely explanation is that the impact vaporized it and sent hundreds of billions of tons of sulfur into the atmosphere. とあるので B。
Q3. Which point does the author present as still unresolved?
Scientists still argue over ... how much soot and volcanic eruptions in India added to the damage とあるので C。
重要単語
- asteroidB2名詞小惑星An asteroid hit Earth about 66 million years ago.
aster(星)+-oid(~のようなもの)。meteorite(隕石)、comet(彗星)と区別する。 - mass extinctionC1名詞(句)大量絶滅The dinosaurs died out in a mass extinction.
extinct(絶滅した)の名詞形 extinction。become extinct / die out「絶滅する」も頻出。 - craterB2名詞クレーターThe crater is buried under the Yucatán Peninsula.
ギリシャ語の「混ぜる鉢」が語源。火山の火口も crater と言う。 - sedimentC1名詞堆積物Thick sediment filled the crater within a day.
sed(座る)が語源で「底に沈んでたまるもの」。sedimentary rock「堆積岩」。 - impact winterC1名詞(句)衝突の冬An impact winter blocked sunlight for years.
impact は「衝突・影響」。have an impact on ~「~に影響を与える」は超頻出。 - photosynthesisB2名詞光合成Without sunlight, photosynthesis stops.
photo(光)+synthesis(合成)。生物・環境系長文の必須語。
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恐竜を絶滅させた小惑星、衝突した日のうちにクレーターに100m以上の土砂が積もったらしい。掘削調査でわかった「地球の運命を変えた1日」がすごすぎる。
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- Alvarez et al. (1980) Extraterrestrial Cause for the Cretaceous-Tertiary Extinction, Sciencedoi.org
- Hildebrand et al. (1991) Chicxulub Crater: A possible Cretaceous/Tertiary boundary impact crater on the Yucatán Peninsula, Mexico, Geologydoi.org
- Schulte et al. (2010) The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary, Sciencedoi.org
- Morgan et al. (2016) The formation of peak rings in large impact craters, Sciencedoi.org
- Gulick et al. (2019) The first day of the Cenozoic, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













