音楽で鳥肌が立つとき、脳では"ごほうび物質"がサビの前から出ていた

読む前に予想してみよう!
音楽で鳥肌が立つ経験は、すべての人に同じくらい起こる
起こりやすさには個人差が大きく、新しい体験に開かれた性格の人ほど起こりやすいという報告がある。
- 対象
- 音楽で鳥肌が立ちやすい成人
- 規模
- 各10人前後〜約30人
- 研究の種類
- PET・fMRI・薬理実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
音楽で背筋がゾクッとする「フリッソン」。脳では報酬に関わる部分が働き、ドーパミン系は盛り上がりを"予感"した段階から動き出しているらしい。
ひとことで言うと音楽でゾクッとするとき、脳は「ごほうび」をもらってよろこんでいる!
好きな曲のサビ。ボーカルの声がぐっと高くなった瞬間、背中から腕にかけてゾワッと鳥肌が立つ。
この「音楽で鳥肌が立つ」体験は、フランス語で「震え」を意味するフリッソンとも呼ばれます。寒くもないし、怖くもないのに、なぜ体が反応するのでしょう。
脳をのぞいてみると、そこにはおいしいものを食べたときと同じ、「ごほうび」の仕組みが動いていました。
01鳥肌の瞬間、脳は「ごほうびモード」
報酬系とは、かみ砕くと脳の「ごほうび回路」。おいしいものを食べたとき、褒められたときなどに働き、「これはいいぞ、またやろう」と脳に覚えさせる仕組みです。
食べ物や仲間との触れ合いのように、生きるのに直接役立つものではない音の並びが、同じ回路を動かしている。これが研究者たちを驚かせました。
02ドーパミンは「サビの前」から出ていた
さらに10年後、同じマギル大のチームは、もう一歩踏み込みました。
ヴァロリー・サリンプーアらは、ドーパミンの放出を測れる特殊なPETで、脳内のドーパミン(やる気や期待に関わる脳内物質)を調べました(Nature Neuroscience, 2011)。すると、音楽で感情が最高潮になるとき、線条体でドーパミンが放出されていたのです。
さらに同じ人たちにfMRIで同じ曲を聴いてもらい、タイミングを細かく見ると、鳥肌が立つピークの瞬間には側坐核という場所が、そしてピークが来る少し前には尾状核という別の場所が、より強く関わっていました。
つまり脳は、「もうすぐ来るぞ…来るぞ…!」という期待の段階から、ごほうびを出し始めていたのです。サビ前の盛り上がりでドキドキするのは、まさにこの「予感のドーパミン」のしわざかもしれません。
ただし、これらの研究の参加者は1研究あたり10人前後と少数です。その後、スペインなどの研究チームが、ドーパミンの働きを薬で一時的に強めると音楽の快感が増し、弱めると減ることを報告し、「ドーパミンが音楽の快感に関わる」ことを因果的に裏付けました(PNAS, 2019)。

03ゾクッとしやすい音楽の「仕掛け」
どんな瞬間に鳥肌が立ちやすいかも調べられています。英国の心理学者スロボダは、音楽好きの人たちへの調査から、鳥肌が立ちやすい場面には予想を少し裏切る展開が多いことを報告しました(1991年)。
- 急に音が大きくなる、静かになる
- 思いがけない和音(コード)に変わる
- 新しい楽器や歌声が入ってくる
私たちの脳は、音楽を聴きながら常に「次はこう来るはず」と予想しています。その予想がいい意味で裏切られた瞬間、脳の報酬系がひときわ強く反応すると考えられています。
04まとめ
音楽の鳥肌は、音の並びが脳の「ごほうび回路」を動かした証拠でした。しかも脳は、ゾクッとする瞬間が来る前から、それを待ちわびて準備していたのです。
次に好きな曲で鳥肌が立ったら、思い出してください。あなたの脳はサビの数秒前から、もうワクワクし始めていたんだ、と。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDuring a favorite song, some listeners feel a shiver run down their back.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Sometimes you get goosebumps when you hear your favorite song. This feeling is called "frisson." Scientists studied people's brains while they listened to music that gave them chills.
The "reward" part of the brain became active, like when we eat tasty food. The brain also released dopamine even before the best part of the song. Not everyone gets chills from music.
61 words ・ CEFR A2
和訳を見る
好きな曲を聴くと、鳥肌が立つことがあります。この感覚は「フリッソン」と呼ばれます。科学者たちは、ゾクッとする音楽を聴いている人の脳を調べました。
おいしいものを食べたときのように、脳の「ごほうび」の部分が活動していました。さらに脳は、曲のいちばん盛り上がる部分の前からドーパミンを出していました。音楽で鳥肌が立つのは、誰にでも起こることではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
音楽で鳥肌が立つときに脳で何が起きているかを説明しているので B。
Q2. When did the brain release dopamine?
released dopamine even before the best part of the song とあるので C。
Q3. In this passage, "goosebumps" are ...
goosebumps は「鳥肌」。寒さや感動で肌に出る小さなぶつぶつなので A。
During a favorite song, some listeners feel a shiver run down their back. This experience is called frisson, or musical chills, and scientists have studied it with brain scans, although each study tested only about ten people. In 2001, Canadian researchers asked people to listen to music they had chosen because it gave them chills.
The stronger the chills, the more active the brain's reward system became. This is the same system that responds to food and praise. In 2011, researchers at the same university found that dopamine, a brain chemical linked to pleasure and motivation, was released at the peak moments of the music. One part of the brain became more active just before the peak, as if the brain were waiting for the best part.
127 words ・ CEFR B1
和訳を見る
お気に入りの曲を聴いている最中に、背筋がゾクッとする人がいます。この体験はフリッソン、または音楽の鳥肌と呼ばれ、科学者たちは脳スキャンでこれを研究してきました。ただし、どの研究でも調べたのは10人ほどだけです。
2001年、カナダの研究者たちは、鳥肌が立つという理由で自分で選んだ音楽を人々に聴いてもらいました。鳥肌が強いほど、脳の報酬系がより活発になりました。これは、食べ物や褒め言葉に反応するのと同じしくみです。2011年、同じ大学の研究者たちは、快感ややる気に関わる脳内物質ドーパミンが、音楽の最高潮の瞬間に放出されていることを発見しました。脳のある部分は、まるでいちばん良いところを待ち構えているかのように、ピークの直前により活発になりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
音楽の鳥肌が脳の報酬系やドーパミンと関係していることが中心なので D。
Q2. What kind of music did participants listen to in the 2001 study?
music they had chosen because it gave them chills とあるので A。
Q3. What does the activity "just before the peak" suggest?
as if the brain were waiting for the best part とあり、期待の段階から脳が反応していると考えられるので C。
The shiver that runs down the spine during a powerful piece of music, known as frisson, has become a window into the brain's reward system. In 2001, researchers at McGill University scanned ten participants listening to self-selected music that reliably gave them chills. As chill intensity rose, activity increased in reward-related regions such as the ventral striatum and decreased in the amygdala, which is linked to fear.
A decade later, the same group used a special PET technique to show that dopamine is released in the striatum at moments of peak emotion. Combining this with fMRI data, they found that the caudate was more involved in the seconds before a peak, while the nucleus accumbens was more involved during the peak itself.
So anticipation appears to be rewarding too. These studies were small and could only show links, so a 2019 drug study offered stronger evidence: boosting dopamine increased musical pleasure, while reducing it decreased pleasure. Chills often occur when music departs from expectations, such as a sudden change in volume or an unexpected chord. Not everyone experiences frisson, and people high in openness to experience report it more, although this link is correlational.
194 words ・ CEFR B2
和訳を見る
力強い音楽の最中に背筋を走るゾクッとした感覚はフリッソンとして知られ、脳の報酬系をのぞく窓になっています。2001年、マギル大学の研究者たちは、確実に鳥肌が立つ自分で選んだ音楽を聴いている10人の参加者の脳をスキャンしました。鳥肌の強さが増すにつれて、腹側線条体などの報酬に関わる領域の活動が高まり、恐怖に関わる扁桃体の活動は低下しました。
10年後、同じグループは特殊なPETの手法を使い、感情が最高潮に達する瞬間に線条体でドーパミンが放出されることを示しました。これをfMRIのデータと組み合わせると、ピークの数秒前には尾状核が、ピークそのものの間には側坐核がより強く関わっていることがわかりました。つまり、期待することもまた報酬になるようです。
これらの研究は小規模で、関連を示すことしかできなかったため、2019年の薬を使った研究がより強い証拠を示しました。ドーパミンを強めると音楽の快感が増し、弱めると快感が減ったのです。鳥肌は、急な音量の変化や思いがけない和音など、音楽が予想から外れたときに起こることが多いとされます。誰もがフリッソンを経験するわけではなく、経験への開放性が高い人ほど多く報告しますが、この関連は相関にすぎません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
音楽の鳥肌と報酬系・ドーパミンに関する脳研究を紹介しているので B。
Q2. Why was the 2019 drug study important?
ドーパミンを増減させると快感も増減したので、a 2019 drug study offered stronger evidence とあるとおり D。
Q3. What does the author say about the link between openness and frisson?
最終文 although this link is correlational とあるので A。
重要単語
- chillsB2名詞寒気、ゾクッとする感覚Her favorite song always gives her chills.
give A chills「Aをゾクッとさせる」。chill out は口語で「くつろぐ」。 - reward systemC1名詞(句)報酬系The reward system makes us want to repeat pleasant actions.
reward は「ほうび・報酬」。rewarding(やりがいのある)も入試頻出。 - dopamineC1名詞ドーパミン(神経伝達物質)Dopamine is linked to motivation and pleasure.
「快楽物質」と呼ばれがちだが、研究では「期待・やる気」との関わりが強調される。 - anticipationC1名詞期待、予期Anticipation can be as exciting as the event itself.
動詞 anticipate「予期する・楽しみに待つ」。in anticipation of ~「~を見越して」。 - openness to experienceC1名詞(句)経験への開放性(性格特性)People high in openness to experience enjoy new ideas.
性格の「ビッグファイブ」の1つ。他は conscientiousness, extraversion, agreeableness, neuroticism。 - correlationalC1形容詞相関的なThe link between personality and chills is only correlational.
correlation(相関)の形容詞。correlation does not imply causation「相関は因果を意味しない」は定番フレーズ。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
好きな曲のサビで鳥肌が立つアレ、脳では食べ物やごほうびと同じ「報酬系」が働いてるらしい。しかもドーパミンは、サビが来る“前”の期待の段階から出てるんだとか。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Blood & Zatorre (2001) Intensely pleasurable responses to music correlate with activity in brain regions implicated in reward and emotion, PNASdoi.org
- Salimpoor et al. (2011) Anatomically distinct dopamine release during anticipation and experience of peak emotion to music, Nature Neurosciencedoi.org
- Ferreri et al. (2019) Dopamine modulates the reward experiences elicited by music, PNASdoi.org
- Sloboda (1991) Music structure and emotional response: some empirical findings, Psychology of Musicdoi.org
- Colver & El-Alayli (2016) Getting aesthetic chills from music: the connection between openness to experience and frisson, Psychology of Musicdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










