脳と心理ホント

【早稲田の入試に出た】人生で一番覚えているのは10〜30歳。「レミニセンス・バンプ」の謎

【早稲田の入試に出た】人生で一番覚えているのは10〜30歳。「レミニセンス・バンプ」の謎

読む前に予想してみよう!

大学生は、自分が生まれる前の「親が若い頃のヒット曲」にも思い出や好みの山を持っていた

研究カード(どんな研究?)
対象
高齢者・大学生
規模
数十〜数百人規模
研究の種類
記憶調査・実験研究のレビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

高齢になって人生を振り返ると、10〜30歳ごろの記憶が飛び抜けて多い。好きな音楽や映画もこの時期に集中する。しかも親世代のヒット曲にも「山」があった。

ひとことで言うと大人になっても、10代〜20代のことがいちばんよく思い出せるらしい!

もくじ
  1. 人生の記憶グラフに「こぶ」がある
  2. 「自分ができあがる時期」だから?
  3. 親世代のヒット曲にも「こぶ」があった
  4. まとめ

おじいちゃん、おばあちゃんの昔話は、なぜかいつも「若い頃」の話ばかり。カラオケで親が歌うのは、決まって自分が10代のころのヒット曲。

これ、ただの「懐かしがり」ではありません。人間の記憶には、10〜30歳ごろの出来事が特別によく残るという、はっきりしたパターンがあるのです。心理学ではこれを「レミニセンス・バンプ(回想のこぶ)」と呼びます。

このテーマは、2026年度の早稲田大学(文化構想学部)の英語で長文の題材になりました(代々木ゼミナール・河合塾の解答速報で確認)。

01人生の記憶グラフに「こぶ」がある

高齢の人に、ヒントとなる単語を見せて思い出を語ってもらい、その思い出が何歳のときのものかをグラフにすると、不思議な形になります。

  • 最近の出来事は、当然よく思い出される
  • 幼いころの記憶は、ほとんど出てこない(幼児期健忘)
  • そして10代〜20代の部分だけが、ラクダのこぶのように盛り上がる

02「自分ができあがる時期」だから?

なぜこの時期なのでしょう。有力な説のひとつが、「自分らしさ(アイデンティティ)」との関係です。

2008年の研究では、参加者に「私は〜だ」という文(例:「私は教師だ」「私は母親だ」)をいくつも書いてもらい、それぞれの「自分像」に関係する思い出を挙げてもらいました。すると、思い出はその自分像が生まれた時期の周りに集まる傾向がありました。

初めての部活、初めての恋、進学や就職――。新しい自分ができあがるときの出来事は、その後の人生でも自分を語る物語の柱として、何度も思い出されるのかもしれません。

人生の道のりで、10代〜20代だけが特別に色鮮やかに残る
人生の道のりで、10代〜20代だけが特別に色鮮やかに残る

03親世代のヒット曲にも「こぶ」があった

音楽の研究では、さらに意外な発見がありました。

米コーネル大学のクラムハンスルらは、大学生に、約55年分のヒットチャートの曲を聞かせ、思い出や好み、感情の反応を調べました(Psychological Science, 2013)。予想どおり、自分が生きてきた約20年間の曲には高い反応。ところが、親が若いころの曲にも、もうひとつの山があったのです。さらに1960年代の音楽にも山が見られました。

研究チームは、子どものころ家で流れていた音楽が記憶に残るのだろうと考え、世代を超えて受けつがれるこのパターンを「カスケード(連なり)型のレミニセンス・バンプ」と名づけました。

04まとめ

私たちの記憶は、人生を平等に記録しているわけではありません。自分ができあがっていく10代〜20代を、とびきり大切に残しているのです。

つまり、今まさにその時期を生きている人は、一生の宝物になる記憶を毎日作っている最中。今日の何気ない放課後も、いつか「こぶ」の一部になるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen older adults look back on their lives, they recall far more events from about age 10 to 30 than from… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When older adults look back on their lives, they recall far more events from about age 10 to 30 than from other periods. Psychologists call this pattern the reminiscence bump. In a 1998 review, Rubin and his colleagues showed that this period produces the most vivid and important autobiographical memories. Older people's favorite films, music and books also tend to come from these years.

One popular explanation is identity. A 2008 study asked people to write sentences beginning with 'I am' and then recall memories linked to each one. The memories tended to gather around the time when each self-image was formed. So the years when we become who we are may be the years we remember best.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

高齢者が人生を振り返ると、ほかの時期よりも、およそ10歳から30歳の出来事をはるかに多く思い出します。心理学者はこのパターンをレミニセンス・バンプと呼びます。1998年のレビューで、ルービンらは、この時期が最も鮮やかで重要な自伝的記憶を生み出すことを示しました。高齢者の好きな映画、音楽、本もこの時期のものである傾向があります。

有力な説明のひとつはアイデンティティです。2008年の研究では、人々に「私は〜だ」で始まる文を書いてもらい、それぞれに結びつく思い出を挙げてもらいました。思い出は、それぞれの自己像が形づくられた時期の周りに集まる傾向がありました。つまり、私たちが「自分」になっていく年月こそ、最もよく覚えている年月なのかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the reminiscence bump?

Q2. What did the 2008 study ask people to do?

Q3. According to the identity explanation, why are these years remembered so well?

重要単語

  • autobiographical memoryC1
    名詞(句)自伝的記憶(自分の人生の記憶)Autobiographical memory helps us build our identity. auto(自分)+bio(人生)+graph(書く)。記憶系長文の必須の学術語。
  • reminiscenceC1
    名詞回想、思い出Reminiscence about school days can be comforting. 動詞は reminisce(思い出にふける)。remind と同じく「再び心に」のイメージ。
  • identityB2
    名詞自己同一性、自分らしさTeenagers are still forming their identity. identity formation(自己形成)は青年期の長文で頻出。identify(特定する)とセットで。
  • vividB2
    形容詞鮮やかな、生き生きとしたShe has vivid memories of her first concert. vivid memory / vivid description が定番のコロケーション。viv- は「生きる」(survive, revive と同語源)。
  • transitionB2
    名詞移行、転換期Starting university is a big transition. transition from A to B「AからBへの移行」。人生の転換期がバンプの説明に使われることもある。
  • recallB1
    動詞思い出すOlder adults recalled many events from their twenties. remember より意識的に「思い出す」。名詞で free recall(自由再生)など記憶実験の用語にもなる。
  • clusterB2
    動詞・名詞集まる、群がる/かたまりThe memories clustered around the age of twenty. cluster around ~「~の周りに集まる」。データの分布を説明する長文でよく見る。

動画でもっと知る

人生を振り返ると、なぜか10〜30歳ごろの思い出が飛び抜けて多いらしい。心理学で「レミニセンス・バンプ」と呼ばれる現象。しかも大学生は、自分の青春の曲だけでなく親が若い頃のヒット曲にも強い思い出を持っていた。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Rubin, Rahhal & Poon (1998) Things learned in early adulthood are remembered best, Memory & Cognitiondoi.org
  2. Rathbone, Moulin & Conway (2008) Self-centered memories: the reminiscence bump and the self, Memory & Cognitiondoi.org
  3. Krumhansl & Zupnick (2013) Cascading reminiscence bumps in popular music, Psychological Sciencedoi.org