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運動前の「じっくりストレッチ」、実はパワーを少し下げていた? 準備運動の新常識

運動前の「じっくりストレッチ」、実はパワーを少し下げていた? 準備運動の新常識

読む前に予想してみよう!

運動前の静的ストレッチは、どんなに短くても大きくパフォーマンスを下げる

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人・運動選手
規模
100件以上の実験
研究の種類
系統的レビュー・メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

長く伸ばし続ける静的ストレッチは、直後の筋力やジャンプ力を少し下げることがある。ただし短時間なら影響はごく小さい。

ひとことで言うと運動前は「伸ばしっぱなし」より「動きながら」ほぐすのがおすすめ!

もくじ
  1. 2種類のストレッチがある
  2. 伸ばしすぎると、筋肉の「バネ」がゆるむ
  3. 「全部ダメ」ではなかった
  4. まとめ

体育の授業や部活のはじめに、ペアで座って脚をグーッと伸ばす。あの「じっくりストレッチ」、日本の準備運動の定番ですよね。

ところがスポーツ科学の世界では、2000年代ごろから「運動前の静的ストレッチは、パワーを下げるかも」という研究が次々に発表され、ちょっとした騒ぎになりました。

結局、どうなの? 最新の整理をのぞいてみましょう。

012種類のストレッチがある

まず言葉の整理から。

  • 静的ストレッチ:筋肉を伸ばした姿勢でじっと止める(前屈して30秒キープ、など)
  • 動的ストレッチ:体を動かしながら関節や筋肉をほぐす(腕回し、脚の振り上げ、ランジ歩きなど)

問題になったのは前者の「止めて伸ばす」タイプです。

02伸ばしすぎると、筋肉の「バネ」がゆるむ

筋肉と腱(けん)は、ゴムのバネのような働きをしています。長時間グーッと伸ばし続けると、そのバネが一時的にゆるみ、瞬間的に力を出す能力が少し落ちることがあるんです。神経から筋肉への「力を出せ」という指令が弱まる、という説もあります。

システマティックレビューは、決められたルールで論文を集めて、まとめて評価する方法。「都合のいい論文だけ集める」のを防ぐための仕組みです。

長く伸ばしすぎると、筋肉のバネが一時的にゆるむイメージ
長く伸ばしすぎると、筋肉のバネが一時的にゆるむイメージ

03「全部ダメ」ではなかった

2016年にカナダのベーム(Behm)さんらが『Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism』で発表した大きなレビューでは、こんな整理がされました。

  • 静的ストレッチの悪影響はあっても小さいことが多い
  • ストレッチの後に動的な準備運動や軽い運動を加えれば、影響はさらに目立たなくなる
  • 柔軟性が大事な競技では、むしろ必要な場面もある

つまり「静的ストレッチ=悪」ではなく、長さと順番が大事ということ。

実際のスポーツの現場では、準備運動は体温を上げる→関節を大きく動かす→本番に近い動きをするという流れで組み立てることが多くなっています。冷えたゴムより温まったゴムのほうがよくのびるように、筋肉も温めてから動かすのが基本です。

ちなみに、「ストレッチをすればケガを防げる」とよく言われますが、静的ストレッチ単体のケガ予防効果ははっきりしていません。ストレッチ単体より、体を温める準備運動全体が大切だと考えられています。

04まとめ

運動前の「じっくりストレッチ」は、長すぎるとパワーを少し下げることがある。でも短めなら気にしすぎなくて大丈夫。

準備運動のキーワードは「止める」より「動かす」。部活の最初の10分、ちょっとアップデートしてみませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany students do slow, held stretches before sports. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many students do slow, held stretches before sports. This kind of stretching is called static stretching. Since the 2000s, studies have suggested that it may reduce power right after stretching. Muscles and tendons work like springs, and holding a stretch for a long time may make them loose for a while.

However, a 2012 review found that stretching each muscle for less than 60 seconds had almost no negative effect on strength, while longer stretches did. A 2016 review added that the effect becomes even smaller when a dynamic warm-up follows. So the length and order of stretching are what matter. Long, slow stretches are better after exercise or a bath.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの生徒は、スポーツの前にゆっくり伸ばして保つストレッチをします。この種類のストレッチは静的ストレッチと呼ばれます。2000年代以降、静的ストレッチはその直後のパワーを下げるかもしれないと示す研究が出てきました。筋肉と腱はバネのように働き、長い時間伸ばし続けると、しばらくの間ゆるんでしまうことがあるのです。

しかし2012年のレビューでは、1つの筋肉あたり60秒未満のストレッチなら筋力への悪影響はほとんどなく、それより長いと悪影響が見られました。2016年のレビューはさらに、その後に動的なウォーミングアップをすれば、影響はもっと小さくなると付け加えました。つまり、大切なのはストレッチの長さと順番なのです。ゆっくり長く伸ばすストレッチは、運動の後やお風呂上がりのほうが向いています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. According to the 2016 review, what makes the effect even smaller?

Q3. When would a long, slow stretch be most suitable?

重要単語

  • static stretchingB2
    名詞(句)静的ストレッチStatic stretching means holding one position. static は「静止した」。static electricity「静電気」と同じ語。
  • dynamic stretchingB2
    名詞(句)動的ストレッチArm circles are a kind of dynamic stretching. dynamic は「動的な・活発な」。dynamite(ダイナマイト)と同語源で「力」が原義。static と対で覚える。
  • warm-upB1
    名詞準備運動A good warm-up raises your body temperature. 動詞は warm up(2語)。名詞・形容詞はハイフンでつなぐ。cool-down(整理運動)も覚えておこう。
  • flexibilityB2
    名詞柔軟性Gymnasts need a lot of flexibility. flexible(柔軟な)の名詞。仕事の flexible working hours「フレックスタイム」のように考え方の柔軟さにも使う。
  • tendonC1
    名詞腱Tendons connect muscles to bones. Achilles tendon「アキレス腱」が有名。ligament(靭帯:骨と骨をつなぐ)との違いに注意。
  • stiffB2
    形容詞かたい、こわばったMy shoulders feel stiff after studying. a stiff neck「首のこり」。名詞 stiffness。bored stiff「ひどく退屈して」という口語表現もある。

動画でもっと知る

運動前にじっくり伸ばすストレッチ、長くやりすぎると直後の筋力やジャンプ力がちょっと落ちることがあるらしい。ただ1か所60秒未満ならほぼ気にしなくていいという分析も。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kay & Blazevich (2012) Effect of Acute Static Stretch on Maximal Muscle Performance: A Systematic Review, Medicine & Science in Sports & Exercisedoi.org
  2. Behm et al. (2016) Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review, Applied Physiology, Nutrition, and Metabolismdoi.org
  3. Simic, Sarabon & Markovic (2013) Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review, Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sportsdoi.org