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歌うと体の中で何が起きる? 合唱の唾液検査から「すぐ仲良くなれる」効果まで

歌うと体の中で何が起きる? 合唱の唾液検査から「すぐ仲良くなれる」効果まで

読む前に予想してみよう!

一緒に歌うと、初対面の人とも打ち解けやすくなる可能性がある

研究カード(どんな研究?)
対象
合唱団員・成人学習者・患者など
規模
数十〜数百人規模の複数研究
研究の種類
前後比較研究+ランダム化比較試験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

合唱で歌った後は唾液中の免疫物質が増え、気分も上向いたという研究がある。歌のクラスは早く打ち解けた。ただしどれも小規模で、健康効果は断定できない。

ひとことで言うと歌うと、体も気分も、まわりの人との距離もちょっと変わるかも!

もくじ
  1. 合唱の後、唾液の中で起きていたこと
  2. 一緒に歌うと「心拍がそろう」?
  3. 歌のクラスは「早く打ち解けた」
  4. オペラ歌手の呼吸法で息切れを改善
  5. まとめ

カラオケで思いきり歌った後、なんだか気分がスッキリする。合唱祭の後、クラスの仲が良くなった気がする——。

そんな「歌うと元気になる」感覚には、科学的な裏づけがあるのでしょうか。

世界の研究者たちは、歌う人の唾液や心拍、そして人間関係まで測って、この疑問に挑んできました。

01合唱の後、唾液の中で起きていたこと

分泌型IgAは、口や鼻の粘膜で、外から入ってくる病原体を防ぐ働きにかかわる物質です。

ただし、聴くだけの条件ではストレスホルモンのコルチゾールが減った一方、ネガティブな気分はむしろ増えていました。「歌う」と「聴く」では、体と心の反応が違うようです。

イギリスでは2016年、がん患者やその家族が1時間の合唱に参加した前後で、気分が良くなり、コルチゾールなどストレスや免疫にかかわる物質も変化したという研究も報告されています。

02一緒に歌うと「心拍がそろう」?

スウェーデンのヨーテボリ大学の研究チームは2013年、健康な18歳の若者たちが歌っているときの心拍を測りました。

すると、ゆっくりした規則正しい呼吸を必要とする曲を歌うと、歌っている人たちの心拍の変動パターンが似てくることがわかりました。歌は、決められたタイミングで息を吸って吐く「呼吸のエクササイズ」でもあり、それが心拍のリズムに影響していると考えられています。

同じ曲を同じ呼吸で歌うと、体のリズムまで近づいていく
同じ曲を同じ呼吸で歌うと、体のリズムまで近づいていく

03歌のクラスは「早く打ち解けた」

イギリス・オックスフォード大学の研究チームは2015年、社会人向けの講座で、歌のクラスと、手芸や創作文のクラスを7か月にわたって追いかけました。

講座の前後に「クラスの仲間とどれくらい親しく感じるか」を聞いたところ、歌のクラスは1か月目の時点で、親しさの高まりが大きかったのです。手芸などのクラスもゆっくりと仲良くなっていき、3か月目の時点では差がなくなっていました。

研究チームはこれを「アイスブレイク効果」と呼び、一緒に歌うことが、知らない人どうしをすばやく打ち解けさせるのではないかと考えています。

04オペラ歌手の呼吸法で息切れを改善

2022年には、イギリスの国立オペラ(イングリッシュ・ナショナル・オペラ)と病院が共同で、新型コロナの後遺症で息切れが続く人向けに、歌の技術を使ったオンライン呼吸プログラムを開発し、ランダム化比較試験で検証しました。6週間のプログラムで、心の健康に関する生活の質や、一部の息切れの指標が改善したと報告されています。

日本でも、カラオケや合唱は身近な趣味です。ほかの人と声を合わせる体験は、呼吸・気分・人とのつながりという3つを同時に動かす、ちょっと珍しい活動だと言えるかもしれません。

05まとめ

歌うことは、呼吸を整え、気分を変え、人と人をつなぐ行動でした。研究はまだ小さなものが多いけれど、「歌うと元気になる」という感覚には、それなりの理由がありそうです。

今日は、お気に入りの一曲を、声に出して歌ってみませんか。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do we often feel refreshed after singing? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do we often feel refreshed after singing? Researchers have tried to answer this question by measuring singers' saliva, heart rates and relationships. Most of these studies were small, so singing cannot yet be called a proven health treatment. In a 2004 German study, members of an amateur choir either sang or only listened to choir music.

After singing, their saliva contained more of an immune substance called secretory IgA, and their mood improved. In Sweden, researchers found that when healthy 18-year-olds sang slow songs with regular breathing, their heart rate patterns became similar. In Britain, adult education students in a singing class felt closer to each other after just one month than students in craft or creative writing classes.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

歌った後に気分がすっきりすることが多いのはなぜでしょうか。研究者たちは、歌う人の唾液、心拍、人間関係を測ることで、この疑問に答えようとしてきました。これらの研究のほとんどは小規模なので、歌うことはまだ証明された健康法とは言えません。2004年のドイツの研究では、アマチュア合唱団のメンバーが、合唱曲を歌うか、聴くだけかのどちらかを体験しました。

歌った後は、唾液に分泌型IgAという免疫物質が多く含まれ、気分も良くなっていました。スウェーデンでは、健康な18歳の若者たちが規則正しい呼吸でゆっくりした曲を歌うと、心拍の変動パターンが似てくることを研究者たちが発見しました。イギリスでは、社会人講座で歌のクラスに参加した受講生は、手芸や創作文のクラスの受講生よりも、わずか1か月でお互いをより身近に感じていました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the Swedish researchers find?

Q3. Why does the writer say singing cannot yet be called a proven treatment?

重要単語

  • choirB1
    名詞合唱団She joined the school choir last year. 発音は /ˈkwaɪər/(クワイア)。つづりと発音のずれが大きく、発音問題で狙われる。
  • salivaC1
    名詞唾液Cortisol levels can be measured in saliva. 発音は /səˈlaɪvə/。salivate(よだれを出す)はパブロフの犬の文脈で登場。
  • cortisolC1
    名詞コルチゾール(ストレスに関わるホルモン)Cortisol rises when we feel stressed. 「ストレスホルモン」として健康系の英文に頻出。副腎皮質(cortex)でつくられることが名前の由来。
  • bondB2
    動詞・名詞絆を結ぶ、絆Singing together helps people bond. bond with ~「~と絆を深める」。名詞では「債券」「接着剤」の意味もある多義語。
  • breathlessnessC1
    名詞息切れThe program aimed to reduce breathlessness. breath(息)+less(ない)+ness。breathe(動詞)との発音の違い /breθ/ /briːð/ に注意。
  • convergeC1
    動詞一点に集まる、近づくThe singers' heart rhythms began to converge. con(共に)+verge(傾く)。反意語は diverge(分かれる)。

動画でもっと知る

合唱団の人が歌った後に唾液を調べたら、免疫に関わる物質が増えて気分も上がっていたらしい。歌の教室は、手芸や作文の教室より早く仲良くなれたという研究も。ただし研究はどれも小規模。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Kreutz G et al. (2004) Effects of Choir Singing or Listening on Secretory Immunoglobulin A, Cortisol, and Emotional State, Journal of Behavioral Medicinedoi.org
  2. Fancourt D et al. (2016) Singing modulates mood, stress, cortisol, cytokine and neuropeptide activity in cancer patients and carers, ecancermedicalsciencedoi.org
  3. Pearce E, Launay J, Dunbar RIM (2015) The ice-breaker effect: singing mediates fast social bonding, Royal Society Open Sciencedoi.org
  4. Vickhoff B et al. (2013) Music structure determines heart rate variability of singers, Frontiers in Psychologydoi.org
  5. Philip KEJ et al. (2022) An online breathing and wellbeing programme (ENO Breathe) for people with persistent symptoms following COVID-19: a parallel-group, single-blind, randomised controlled trial, The Lancet Respiratory Medicinedoi.org