【悲報】筋肉痛の犯人は「乳酸」じゃなかった。本当の原因は“ブレーキをかける動き”

読む前に予想してみよう!
上り坂より下り坂を走ったほうが、筋肉痛になりやすい
筋肉がのばされながらブレーキをかける動き(伸張性収縮)は、筋肉痛を起こしやすい。
- 対象
- ヒト(7名)/ラット
- 規模
- 小規模な実験
- 研究の種類
- 比較実験・動物実験・レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
乳酸は運動後1時間ほどで元に戻るのに、筋肉痛は1〜2日後にピーク。坂道を下るような「ブレーキの動き」で起きやすく、乳酸犯人説は否定的。
ひとことで言うと筋肉痛は乳酸のせいじゃない! 筋肉が「ブレーキ」をかけたあとの反応。
久しぶりに運動した翌日、階段を下りるたびに「イタタタ……」。そんなとき、「乳酸がたまってるんだよ」と言われたことはありませんか?
でも実は、「筋肉痛=乳酸」説は、運動生理学ではほぼ否定されています。
では本当の原因は何なのか。そこには、筋肉が“ブレーキ”をかける動きが関係していました。
01乳酸は「翌日まで残っていない」
まず、時間のつじつまが合いません。
激しい運動をすると、たしかに血液中の乳酸は増えます。でも、運動をやめると1時間ほどでだいたい元のレベルに戻ることがわかっています。
一方、いわゆる筋肉痛(専門的には遅発性筋肉痛=あとから遅れてくる筋肉痛)は、運動の翌日から2日後くらいにピークを迎えます。乳酸がもういなくなった後に痛みがやってくるので、乳酸が犯人とは考えにくいわけです。
02下り坂のほうが筋肉痛になる
ポイントは、筋肉の使い方です。
- 上り坂・持ち上げる動き:筋肉が縮みながら力を出す(短縮性収縮)
- 下り坂・ゆっくり下ろす動き:筋肉が引きのばされながら、ブレーキをかけるように力を出す(伸張性収縮)
この「ブレーキの動き」のほうが、筋肉痛を起こしやすいんです。階段を下りる、重い荷物をゆっくり下ろす、スクワットでしゃがむ動きなどがこれにあたります。

03では、何が痛みを起こしているの?
実は、筋肉痛の仕組みはまだ完全には解明されていません。今のところ有力なのは、こんな流れです。
- ブレーキの動きで、筋肉や周りの組織にごく小さなダメージが起こる
- 修理のために炎症反応が起こる
- その過程で、痛みを感じやすくする物質が出て、押したり動かしたりしたときに痛む
日本の水村和枝さんらの研究グループは、動物実験で神経の成長に関わる物質(神経成長因子など)が、筋肉痛の「押すと痛い」状態に関わっていることを示しています。
042回目は筋肉痛が軽くなる
同じ運動をしばらくしてからもう一度やると、1回目より筋肉痛が軽くなることが知られています。これは「くり返し効果」と呼ばれ、筋肉や神経が、ブレーキの動きに慣れて守りを固めるためと考えられています。
いきなり激しい運動をせず、少しずつ量を増やすのが、筋肉痛と上手に付き合うコツです。
05乳酸はむしろ「燃料」だった
かつて乳酸は「疲労物質」「ゴミ」のように言われてきました。でも今では、乳酸は心臓や筋肉でエネルギーとして再利用される燃料でもあることがわかっています。アメリカのブルックス(Brooks)さんが提唱した「乳酸シャトル」という考え方です。
06まとめ
筋肉痛の犯人は乳酸ではなく、筋肉が引きのばされながらブレーキをかける動きによる小さなダメージと、その修理の反応でした。
同じ運動をくり返すと筋肉痛が軽くなっていくのは、体がちゃんと「慣れて」強くなっている証拠。痛みは、体が工事中のサインなのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor a long time, people believed that muscle soreness was caused by lactic acid building up in the muscles.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people think muscle pain after exercise comes from lactic acid. But this is not true. Lactic acid goes back to normal about one hour after exercise. Muscle pain is worst one or two days later.
In a 1983 study, running downhill caused stronger muscle pain than running on flat ground. When you go downhill, your muscles work like brakes. This causes tiny damage, and the body repairs it.
69 words ・ CEFR A2
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多くの人は、運動のあとの筋肉の痛みは乳酸のせいだと考えています。でも、それは正しくありません。乳酸は運動の約1時間後には元に戻ります。筋肉痛がいちばんひどくなるのは、1日か2日あとです。
1983年の研究では、下り坂を走ると、平らな地面を走るより強い筋肉痛が起きました。下り坂を進むとき、筋肉はブレーキのように働きます。これがごく小さなダメージを起こし、体がそれを修理するのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
筋肉痛の本当の原因が乳酸ではなく、ブレーキの動きだという話なので B。
Q2. When is muscle pain worst?
Muscle pain is worst one or two days later. とあるので C。1時間後は乳酸が元に戻るタイミング。
Q3. In this passage, "repairs" means ...
repair は「修理する・直す」。体が小さなダメージを直すという意味なので D。
For a long time, people believed that muscle soreness was caused by lactic acid building up in the muscles. However, scientists now reject this idea. Lactic acid in the blood returns to normal about an hour after exercise, but muscle soreness usually peaks one or two days later.
In 1983, American researchers compared running on flat ground with running downhill. Although downhill running was done at a lower intensity, it caused clearly stronger soreness. The key is the type of movement. When muscles produce force while being stretched, as in going downstairs, they act like brakes. This causes tiny damage, followed by inflammation as the body repairs it.
108 words ・ CEFR B1
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長い間、筋肉痛は筋肉に乳酸がたまることで起こると信じられてきました。しかし今では、科学者たちはこの考えを否定しています。血液中の乳酸は運動の約1時間後には元に戻りますが、筋肉痛はふつう1〜2日後にピークを迎えます。
1983年、アメリカの研究者たちは、平らな地面を走る場合と下り坂を走る場合を比べました。下り坂のランニングは運動の強さが低かったにもかかわらず、はっきりと強い筋肉痛を起こしました。カギは動きの種類です。階段を下りるときのように、筋肉が引きのばされながら力を出すとき、筋肉はブレーキのように働きます。これがごく小さなダメージを起こし、その後、体がそれを修理する過程で炎症が起こるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
乳酸犯人説が否定され、ブレーキの動きが原因と考えられている、という内容なので A。
Q2. What did the 1983 study find?
Although downhill running was done at a lower intensity, it caused clearly stronger soreness とあるので D。
Q3. Which activity would most likely cause muscle soreness?
筋肉が引きのばされながら力を出す「ブレーキの動き」が原因なので、重い箱をゆっくり下ろす動きが当てはまる。正解は C。
Exercise scientists have largely abandoned the popular idea that muscle soreness comes from lactic acid, partly because the timing does not fit. Blood lactate returns to resting levels within about an hour after exercise, whereas delayed onset muscle soreness typically peaks one to two days later. A 1983 experiment by Schwane and colleagues added further evidence.
Running downhill produced clearly greater soreness than running on level ground, even though it was done at a lower intensity. That comparison involved only a few participants, but its pattern points to eccentric contraction, in which muscles generate force while lengthening, as when descending stairs or lowering a weight. Such braking movements are thought to cause microscopic damage to muscle fibers and surrounding tissue, which triggers inflammation as part of the repair process.
Animal studies in Japan suggest that substances such as nerve growth factor make the muscle sensitive to pressure, though the full chain of events has not been worked out. Repeating the same exercise reduces soreness, a phenomenon called the repeated bout effect. Lactate, meanwhile, is now regarded less as waste than as a fuel the body reuses.
186 words ・ CEFR B2
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運動の研究者たちは、筋肉痛は乳酸のせいだという一般的な考えをほぼ捨てています。その理由のひとつは、タイミングが合わないことです。血液中の乳酸は運動後約1時間以内に安静時のレベルに戻りますが、遅発性筋肉痛はふつう1〜2日後にピークを迎えます。1983年のシュウェインさんらの実験は、さらなる証拠を加えました。
下り坂のランニングは運動の強さが低かったにもかかわらず、平地のランニングよりはっきりと強い筋肉痛を起こしたのです。この比較の参加者はわずかでしたが、その結果は伸張性収縮を指し示しています。これは、階段を下りたり重りを下ろしたりするときのように、筋肉がのびながら力を出す収縮です。
このようなブレーキの動きは筋線維や周りの組織に顕微鏡レベルの小さなダメージを起こし、それが修復の過程の一部として炎症を引き起こすと考えられています。日本の動物実験では、神経成長因子などの物質が、筋肉を押されると痛む状態にすることが示されていますが、一連の流れの全体はまだ解き明かされていません。同じ運動をくり返すと筋肉痛は軽くなり、これは「くり返し効果」と呼ばれます。一方、乳酸は今では老廃物というより、体が再利用する燃料とみなされています。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author say "the timing does not fit"?
乳酸は約1時間で元に戻るのに、筋肉痛は1〜2日後にピークになるので時間が合わない。正解は B。
Q2. What is eccentric contraction?
eccentric contraction, in which muscles generate force while lengthening とあるので C。
Q3. How has the view of lactate changed, according to the passage?
最終文 Lactate, meanwhile, is now regarded less as waste than as a fuel the body reuses とあるので A。
重要単語
- muscle sorenessB2名詞(句)筋肉痛Muscle soreness often peaks two days later.
sore は「ひりひり痛む」。I have a sore throat.「のどが痛い」も頻出。 - lactic acidC1名詞(句)乳酸Lactic acid is not the cause of soreness.
lact- は「乳」。lactose(乳糖)、lactation(授乳)と同語源。 - eccentric contractionC1名詞(句)伸張性収縮Walking downstairs involves eccentric contraction.
eccentric は普段「風変わりな」の意味。中心(center)から外れる、が原義。 - inflammationC1名詞炎症Inflammation is part of the repair process.
inflame(火をつける)から。flame(炎)と同語源で「体が燃えるように腫れる」イメージ。 - repeated bout effectC1名詞(句)くり返し効果Thanks to the repeated bout effect, the second workout hurt less.
bout は「(運動・病気などの)ひと続きの期間」。a bout of flu「インフルエンザにかかること」。 - peakB1動詞・名詞ピークに達する/頂点Soreness peaks one or two days after exercise.
山の「頂上」から。peak hours「ピーク時」。peek(のぞく)とつづりを混同しないこと。 - microscopicC1形容詞顕微鏡でしか見えない、ごく小さなExercise can cause microscopic damage to muscles.
microscope(顕微鏡)の形容詞。micro-(小さい)+scope(見る)。telescope(望遠鏡)も同じ仲間。
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筋肉痛=乳酸がたまったせい、と思ってた人へ。乳酸は運動後わりとすぐ元に戻るのに、筋肉痛は1〜2日後にピークがくる。しかも、運動の強さが低めの「下り坂ランニング」のほうが、平地より筋肉痛がしっかり起きたらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Cheung, Hume & Maxwell (2003) Delayed Onset Muscle Soreness: Treatment Strategies and Performance Factors, Sports Medicinedoi.org
- Schwane et al. (1983) Delayed-onset muscular soreness and plasma CPK and LDH activities after downhill running, Medicine & Science in Sports & Exercisedoi.org
- Brooks (2018) The Science and Translation of Lactate Shuttle Theory, Cell Metabolismdoi.org
- Murase et al. (2010) Bradykinin and Nerve Growth Factor Play Pivotal Roles in Muscular Mechanical Hyperalgesia after Exercise (Delayed-Onset Muscle Soreness), Journal of Neurosciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












