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チョコが「手では溶けにくく、口でとろける」のは偶然じゃない。6種類ある結晶の“5番”のしわざ

チョコが「手では溶けにくく、口でとろける」のは偶然じゃない。6種類ある結晶の“5番”のしわざ

読む前に予想してみよう!

一度溶けて白っぽくなったチョコは、カビが生えているので食べられない

研究カード(どんな研究?)
対象
ココアバター・チョコレート試料
規模
実験室の分析
研究の種類
物理化学的な基礎研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

チョコの油脂(ココアバター)は6種類の結晶の形をとれる。そのうち約34℃で溶ける「V型」にそろえると、室温では固く、口の中ではとろける。

ひとことで言うとチョコは「口の温度でちょうど溶ける形」に職人がそろえていた!

もくじ
  1. チョコの油は「6つの顔」をもつ
  2. なぜ「V型」がベストなのか
  3. 職人の「テンパリング」は結晶の選別作業
  4. 夏に溶けたチョコが白くなるワケ
  5. まとめ

板チョコをパキッと割ると、きれいな音がして、断面はつやつや。でも口に入れると、すーっととろけていく。

この「室温では固いのに、口ではとろける」という絶妙な性質。実は、チョコの油がどんな形の結晶になっているかで決まっているのです。

01チョコの油は「6つの顔」をもつ

チョコレートの固さのもとは、カカオ豆からとれる油、ココアバターです。

ココアバターの分子は、冷えて固まるときに整列して結晶をつくります。ところが、この並び方が1通りではありません。並び方によって、溶ける温度がちがう6種類の結晶(I型〜VI型)ができることが知られています。

02なぜ「V型」がベストなのか

人の口の中は約35〜37℃。V型の結晶は約34℃で溶けるので、

  • 室温(20℃前後)ではしっかり固い
  • 口に入れると体温ですっと溶ける

という、まさに理想的な性質になります。V型の結晶はぎっしり細かく並ぶので、表面はつやつや、割るとパキッと気持ちいい音がします。

逆に、溶ける温度が低い型が混ざると、手で持っただけでベタつき、パキッという歯切れも落ちます。

6種類の結晶のうち、約34℃で溶ける「V型」が、口どけとつやの決め手
6種類の結晶のうち、約34℃で溶ける「V型」が、口どけとつやの決め手

03職人の「テンパリング」は結晶の選別作業

そこで行われるのがテンパリング(温度調整)です。ダークチョコの場合、いったん45〜50℃くらいまで温めて結晶を全部溶かし、27℃前後まで冷やしてから、31℃前後まで少し温め直す、という手順が一般的です。

これは、V型以外の不安定な結晶を溶かし、V型の「種」だけを残す作業。その種を手本にして、チョコ全体がV型で固まっていきます。2009年の研究でも、テンパリングの具合によってチョコの結晶の状態や溶け方、見た目が変わることが確かめられています。

家で溶かしたチョコを型に流して固めると、お店のようなつやが出ず、手につきやすいチョコになってしまうことがあります。これは多くの場合、テンパリングがうまくいかず、V型以外の結晶がまじってしまったためです。

04夏に溶けたチョコが白くなるワケ

カバンの中で溶けたチョコが、冷えたら白っぽく粉をふいたようになっていた——そんな経験はありませんか。

これはファットブルームと呼ばれる現象です。一度溶けて温度管理なしに固まると、結晶がバラバラの形になったり、時間がたってより安定なVI型に変わったりすることなどで、油脂が表面に浮き出て白く見えると考えられています。

05まとめ

チョコが手では溶けにくく口でとろけるのは、職人が油の結晶を約34℃で溶ける「V型」にそろえているからでした。あのパキッという音とつやは、結晶がきれいにそろった証拠です。

次にチョコを食べるときは、口の中でV型の結晶がほどけていく瞬間を味わってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerChocolate stays firm at room temperature, yet it melts smoothly in the mouth. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Chocolate stays firm at room temperature, yet it melts smoothly in the mouth. This comes from the way its fat, cocoa butter, forms crystals. In 1966, two American researchers showed that cocoa butter can form six different crystal types, each with its own melting point.

Form V, which melts at about 34°C, is ideal because it is solid at around 20°C but melts at body temperature. It also gives chocolate a glossy surface and a clean snap. To get Form V, chocolate makers use a process called tempering: they melt the chocolate, cool it, and then warm it slightly. If chocolate melts and hardens again without control, a white layer called fat bloom may appear.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

チョコレートは室温では固いままですが、口の中ではなめらかに溶けます。これは、その油であるココアバターが結晶を作るしかたによるものです。1966年、2人のアメリカの研究者は、ココアバターがそれぞれちがう融点をもつ6種類の結晶を作れることを示しました。

約34℃で溶けるV型が理想的なのは、20℃前後では固く、体温では溶けるからです。V型はチョコレートにつやのある表面と、パキッとした気持ちのよい割れ方も与えます。V型を得るために、チョコレート職人はテンパリングと呼ばれる工程を使います。チョコを溶かし、冷やし、それから少しだけ温め直すのです。チョコレートが温度管理なしに溶けて再び固まると、ファットブルームと呼ばれる白い層が現れることがあります。

4択リーディングクイズ

Q1. Why is Form V described as ideal?

Q2. What is the last step of tempering described in the passage?

Q3. What can we infer about chocolate that has fat bloom?

重要単語

  • crystalB1
    名詞結晶Fat molecules line up to form crystals. 動詞は crystallize(結晶化する)。比喩で crystal clear「非常に明快な」。
  • meltA2
    動詞溶けるGood chocolate melts in your mouth. 熱で溶けるのが melt、液体に溶け込むのは dissolve。melting point は「融点」。
  • temperC1
    動詞(チョコの)温度調整をするChocolate makers temper chocolate to make it shiny. 本来は「調節する・和らげる」。名詞 temper(気性)は lose one's temper「かっとなる」で頻出。
  • bloomB2
    名詞(チョコ表面の)白い粉ふきWhite bloom appeared on the old chocolate. 本来は「花・開花」。in full bloom「満開で」も覚えておきたい。
  • glossyB2
    形容詞つやのあるWell-tempered chocolate has a glossy surface. gloss(光沢)+-y。glossy magazine「高級グラビア雑誌」という使い方もある。
  • firmB1
    形容詞固い、しっかりしたThe chocolate stays firm at room temperature. 名詞 firm は「会社」。a firm belief「固い信念」のように比喩でも使う多義語。
チョコが口の中でとろけるのは偶然じゃなかった。チョコの油は6種類の結晶の形になれて、職人は「約34℃で溶ける5番目の形」だけをそろえている。夏に溶けて固まったチョコが白くなるのは、結晶が別の形に変わったから。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Wille & Lutton (1966) Polymorphism of cocoa butter, Journal of the American Oil Chemists' Societydoi.org
  2. Afoakwa et al. (2009) Influence of tempering and fat crystallization behaviours on microstructural and melting properties in dark chocolate systems, Food Research Internationaldoi.org
  3. Lonchampt & Hartel (2004) Fat bloom in chocolate and compound coatings, European Journal of Lipid Science and Technologydoi.org