乗り物酔いはなぜ起きる? 運転している人だけ酔わない理由と「脳が毒と勘違い」説

読む前に予想してみよう!
車で本やスマホを見ると酔いやすいのは、目が疲れるからだ
主な理由は、目は「止まった画面」を見ているのに、耳の奥は揺れを感じていて、情報が食い違うため。
- 対象
- 成人の参加者
- 規模
- 22組(回転実験)
- 研究の種類
- 実験研究+レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
目が見る「止まった景色」と、耳の奥が感じる「揺れ」の食い違いが主犯とされる。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で予測・コントロールできるから。
ひとことで言うと目と耳の「ゆれ情報」がケンカすると、脳がこまって気持ち悪くなる!
遠足のバスで、だんだん気持ち悪くなってくる。でも不思議なことに、運転している人はほとんど酔わない。
答えを先に言うと、乗り物酔いの主犯とされるのは、目が伝える情報と、耳の奥(内耳)が伝える「揺れ」の情報の食い違いです。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で起こしていて予測できるから。そして、なぜ食い違いで「吐き気」なのかについては、「脳が毒を食べたと勘違いしている」という大胆な説まであります。
01目と耳がケンカしている
耳の奥には、体の傾きや加速を感じる三半規管や耳石器という「揺れセンサー」があります。
車の中で本やスマホを見ていると、目は「止まっている」と伝えます。一方、耳の奥のセンサーは「揺れている、曲がっている」と伝える。脳は二つの矛盾した報告を受け取って混乱します。これを感覚の食い違い(感覚混乱)説といい、乗り物酔いの説明として最も広く使われています。
逆に、揺れていないのに画面の中だけが激しく動く3Dゲームや VR でも酔うのは、食い違いが逆向きに起きているからだと考えられます。
02なぜ「吐き気」なのか? 毒検知説
食い違いで混乱するのはわかるとして、なぜ吐き気なのでしょう。
ただしこれは今も仮説です。イギリスのゴールディング(Golding)さんの2006年のレビューでも、乗り物酔いの「しくみ(どう起きるか)」は比較的わかってきた一方、「なぜそんな反応があるのか」はまだ研究中だとされています。

03運転手が酔わない理由は「コントロール感」
自分でハンドルを切る人は、脳が「次はこう揺れる」と先回りして予測できます。予測どおりなら、食い違いは小さくてすみます。助手席より運転席、受け身の乗客より操作する人のほうが酔いにくいのはこのためと考えられています。
04どんでん返し:「食い違い説」にもライバルがいる
じつは感覚混乱説には、有力なライバルがいます。アメリカのリッチオ(Riccio)さんとストフレゲン(Stoffregen)さんが1991年に唱えた姿勢の不安定説です。
この説では、酔いの原因は感覚の食い違いではなく、揺れる環境で体の姿勢をうまく保てない状態が続くことだとします。実際、酔う前から体のふらつき方に違いが出るという研究もあり、論争は今も続いています。
05まとめ
乗り物酔いは、目と耳の奥の「揺れ情報」が食い違うことで起きると考えられています。運転手が酔わないのは揺れを予測できるから。なぜ吐き気なのかは「毒と勘違い説」などの仮説が議論中です。
次のドライブでは、スマホをしまって遠くの景色を見る。それだけで、脳のケンカを少しなだめられるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMotion sickness is most often explained by a conflict between the senses.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people feel sick in a car or bus. Why? Your eyes and your inner ear both send messages about movement to your brain. When you read a book in a car, your eyes say, "We are not moving."
But your inner ear feels the car shaking and turning. The brain gets confused, and you feel sick. Drivers rarely get sick because they can predict how the car will move.
70 words ・ CEFR A2
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車やバスで気分が悪くなる人はたくさんいます。なぜでしょうか。目と内耳(耳の奥)は、どちらも動きについての情報を脳に送っています。車の中で本を読むと、目は「動いていないよ」と伝えます。
でも内耳は、車が揺れたり曲がったりするのを感じています。脳は混乱し、気分が悪くなるのです。運転している人がめったに酔わないのは、車がどう動くかを予測できるからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1〜2文で「車やバスで気分が悪くなるのはなぜか」と問い、その理由を説明しているので C。
Q2. What does the inner ear feel when you read in a car?
your inner ear feels the car shaking and turning とあるので B。
Q3. In this passage, "predict" means to ...
predict は pre-(前に)+dict(言う)で「予測する」。運転手は車の動きを前もって知ることができる、という意味なので D。
Motion sickness is most often explained by a conflict between the senses. Inside the inner ear, there are sensors that detect tilting and speed changes. When you look at a phone in a moving car, your eyes report that everything is still, while your inner ear reports movement. The brain receives two opposite messages, and this mismatch seems to cause nausea. A reverse mismatch can happen in VR games, where the screen moves but your body does not.
Why are drivers rarely sick? In a 1991 experiment with 22 pairs of people, one person controlled a rotating device while the other experienced exactly the same movement passively. Those who were in control showed fewer symptoms, so having control itself seems to protect people.
123 words ・ CEFR B1
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乗り物酔いは、感覚どうしの食い違いによって説明されることが最も多いです。内耳の中には、体の傾きや速さの変化を感じるセンサーがあります。動いている車の中でスマホを見ると、目は「すべて止まっている」と伝え、一方で内耳は「動いている」と伝えます。脳は正反対の2つの情報を受け取り、この食い違いが吐き気を引き起こすようです。VRゲームでは逆向きの食い違いが起こりえます。画面は動くのに体は動かないからです。
では、なぜ運転手はめったに酔わないのでしょうか。1991年の22組のペアを対象にした実験では、一方が回転する装置を操作し、もう一方はまったく同じ動きを受け身で体験しました。操作していた人のほうが症状が少なかったのです。操作すること自体が酔いを防ぐ助けになるようです。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the passage mainly explain?
前半で感覚の食い違いによる乗り物酔いの仕組み、後半で運転手が酔いにくい理由を説明しているので A。
Q2. In the 1991 experiment, who showed fewer symptoms?
Those who were in control showed fewer symptoms とあるので C。passively(受け身で)体験した人ではない。
Q3. Based on the passage, which advice would most likely help a passenger?
原因は目と内耳の情報の食い違いなので、目にも動きを見せて情報をそろえる B が最も効果的と推測できる。
Reading in a car gives the eyes a steady image while the inner ear registers every turn and bump. Virtual reality creates the opposite mismatch. Most researchers blame motion sickness on this kind of sensory conflict between the visual system and the vestibular organs of the inner ear.
Why a conflict should make anyone nauseous is harder to explain. In 1977, a British psychologist proposed in Science that in nature, swallowing neurotoxins is an important cause of disturbed senses. The brain may therefore read the mismatch as a sign of poisoning and trigger vomiting. That idea is still a hypothesis, and a 2006 review noted that scientists understand the mechanism of motion sickness better than its purpose. One finding stands on firmer ground: drivers suffer less.
In a 1991 study, 22 pairs of people went through identical rotations, but only one person in each pair controlled them. The controllers reported fewer symptoms, which points to control itself as a protective factor. Sensory conflict theory also has a rival. The postural instability theory holds that sickness comes from a long struggle to keep the body steady, and some studies have recorded changes in body sway before any symptoms appear.
198 words ・ CEFR B2
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車の中で本を読むと、目には安定した像が映る一方で、内耳はカーブや段差をひとつひとつ感じ取ります。バーチャルリアリティではその逆の食い違いが生じます。たいていの研究者は、乗り物酔いの原因を、こうした視覚系と内耳の前庭器官のあいだの感覚の食い違いに求めています。
食い違いがなぜ吐き気を生むのかを説明するのは、もっと難しい問題です。1977年、イギリスの心理学者が『Science』誌で、自然界で感覚が乱れる重要な原因は、神経毒を飲み込むことだと提案しました。そのため脳は食い違いを中毒のサインと読み取り、嘔吐を引き起こすのかもしれない、というのです。この考えは今も仮説にすぎず、2006年のレビューは、乗り物酔いの仕組みのほうがその目的よりもよく理解されていると指摘しました。もっと確かな土台に立つ発見が1つあります。運転する人は酔いにくいということです。
1991年の研究では、22組のペアが同一の回転を体験しましたが、回転を操作したのは各ペアの一方だけでした。操作した人のほうが症状の報告が少なく、操作できること自体が酔いを防ぐ要因であることがうかがえます。感覚混乱説にはライバルもあります。姿勢の不安定説は、酔いは体を安定させようとする苦労が長く続くことから生じると考えており、症状が現れる前から体のふらつきに変化が記録されたという研究もあります。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best summarizes the passage?
Most researchers blame motion sickness on this kind of sensory conflict と感覚混乱説が主流だが、吐き気の理由は仮説段階で、ライバルの説もある、という流れなので D。
Q2. What did the 1991 study show?
The controllers reported fewer symptoms とあるので A。
Q3. Why does the author describe the 1977 proposal as "a hypothesis"?
That idea is still a hypothesis の後に scientists understand the mechanism of motion sickness better than its purpose とあり、なぜ吐き気が起こるかはまだ確かめられていないことを示しているので C。
重要単語
- motion sicknessB1名詞(句)乗り物酔いI always get motion sickness on long bus trips.
get motion sickness で「乗り物酔いになる」。car sickness / seasickness(船酔い)/ airsickness も同じ形。 - inner earB2名詞(句)内耳(耳の奥)The inner ear helps us keep our balance.
聞こえだけでなく平衡感覚も担当。keep one's balance「バランスを保つ」とセットで。 - conflictB1名詞食い違い、衝突A conflict between your senses can make you feel sick.
名詞は第1音節、動詞(conflict with ~「~と矛盾する」)は第2音節にアクセント。 - predictB1動詞予測するDrivers can predict when the car will turn.
pre-(前に)+dict(言う)。名詞 prediction、形容詞 predictable(予測できる)。 - nauseaC1名詞吐き気Looking at a phone in a car can cause nausea.
ギリシャ語 naus(船)が語源で、もとは「船酔い」。navy, navigate と同じ仲間。 - hypothesisB2名詞仮説The poison idea is still only a hypothesis.
複数形は hypotheses。propose / test / support a hypothesis が定番のコロケーション。
公式・一次情報をチェック
- Motion sickness(NHS)nhs.uk
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乗り物酔いの主犯は、目と耳の奥の「揺れ情報」の食い違い。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で起こして予測できるから。実験でも、回転を自分で操作した人は、同じ回転を受け身で味わった人より症状が少なかったらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Treisman (1977) Motion Sickness: An Evolutionary Hypothesis, Sciencedoi.org
- Rolnick & Lubow (1991) Why is the driver rarely motion sick? The role of controllability in motion sickness, Ergonomicsdoi.org
- Golding (2006) Motion sickness susceptibility, Autonomic Neurosciencedoi.org
- Riccio & Stoffregen (1991) An Ecological Theory of Motion Sickness and Postural Instability, Ecological Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









