毎日湯船につかる人は心臓病・脳卒中が少なかった。日本の3万人研究と冬の入浴の注意点

読む前に予想してみよう!
毎日の入浴が心臓病を防ぐことは、日本の研究で証明された
入浴の回数が多い人ほど病気が少ないという「関連」が見られた観察研究で、入浴が原因とは証明されていない。
- 対象
- 40〜59歳の日本人
- 規模
- 3万76人・約20年追跡
- 研究の種類
- 前向きコホート研究(JPHC研究)
- 確かさ
- ★★★☆☆
日本の中高年約3万人を約20年追うと、ほぼ毎日湯船につかる人は週2回以下の人より心臓や脳の血管の病気が28%少なかった。一方で冬の入浴事故にも注意。
ひとことで言うとお風呂は体にいいかもしれない。でも「熱すぎ・長すぎ」は要注意!
肩までお湯につかって「はぁ〜」。湯船の文化は、日本人にとっておなじみの、そして世界的にはちょっと珍しい習慣です。
この「毎日お風呂に入る習慣」が、心臓や脳の病気と関係しているかもしれない——。2020年、日本の大規模な研究が、そんな結果を報告しました。
ただし、お風呂の話にはもう一つの顔もあります。冬の入浴中の事故です。両方を知って、上手にお風呂と付き合いましょう。
013万人を約20年追跡した「お風呂研究」
その結果、ほぼ毎日湯船につかる人は、週0〜2回の人に比べて、
- 心臓や脳の血管の病気全体:28%低い
- 心臓病(冠動脈疾患):35%低い
- 脳卒中:26%低い
- 脳出血:46%低い
というリスクでした。喫煙や血圧、食生活などの影響をできるかぎり統計的に取り除いたうえでの数字です。一方、心臓突然死とは関連が見られませんでした。
02お湯につかると、体の中で何が起きる?
温かいお湯に肩までつかると、血管が広がり、心臓が1回に送り出す血液の量が増え、血管の抵抗が下がることが知られています。さらに、水の圧力が全身にかかることも、血液の流れに影響します。
こうした変化が、軽い運動に似た効果をもたらしたり、ストレスをやわらげたりして、長い目で見て血管に良い影響を与えている可能性が考えられています。

03「お風呂のおかげ」と言い切れない理由
ただし、これは観察研究です。同じ号の『Heart』に掲載された論説でも、ほかの要因が結果に影響している可能性が指摘されています。
たとえば、
- 毎日お風呂に入れる人は、時間や住まいに余裕があるかもしれない
- もともと体調がよい人ほど、毎日入浴できる
- 入浴の頻度は最初に1回聞いただけで、その後の変化はわからない
といった点です。「毎日お風呂に入れば病気を防げる」と言うには、まだ証拠が足りません。
04冬のお風呂には「危険」もある
もう一つの顔が、入浴中の事故です。
論説では、日本の入浴中の突然死は、推計で年間約1万9000人にのぼるという数字が紹介されています。その多くは、熱いお湯に長くつかって体温が上がりすぎ、意識がぼんやりして溺れてしまうことが関係していると考えられています。
寒い脱衣所から熱いお湯への急な温度変化で血圧が大きく上下することも、冬に事故が増える理由の一つとされています。
消費者庁は、入浴中の事故を防ぐポイントとして、次のような目安を示しています。
05まとめ
毎日の湯船は、心臓や脳の健康と関連があるかもしれない、日本ならではの習慣でした。ただし、この習慣を安全に続けるには、「ぬるめ・短め・温かい脱衣所」というルールがセットです。
今夜のお風呂は、41℃以下で、10分以内。体をいたわる時間にしてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSoaking in a bathtub is a common habit in Japan, and a large study suggests it may be good for the heart.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many Japanese people like to sit in a hot bath. A study in Japan followed about 30,000 people for about 20 years. People who took a bath almost every day had fewer heart and brain problems than people who took a bath two times a week or less.
But a hot bath in winter can be dangerous. Keep the water at 41°C or lower, and stay in it for ten minutes or less.
73 words ・ CEFR A2
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多くの日本人は熱いお風呂につかるのが好きです。日本のある研究では、約3万人を約20年間追跡しました。ほぼ毎日湯船につかる人は、週2回以下の人よりも、心臓や脳の病気が少なかったのです。
しかし、冬の熱いお風呂は危険なこともあります。お湯は41℃以下にして、つかるのは10分以内にしましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
毎日の入浴と心臓・脳の病気の関係、そして冬の安全な入り方を述べているので A。
Q2. How long did the study follow the people?
followed about 30,000 people for about 20 years とあるので D。
Q3. In this passage, "dangerous" means ...
dangerous は「危険な」。冬の熱いお風呂は安全でないこともある、という意味なので B。
Soaking in a bathtub is a common habit in Japan, and a large study suggests it may be good for the heart. Researchers followed about 30,000 Japanese adults aged 40 to 59 for about 20 years. Compared with people who bathed in a tub twice a week or less, those who did so almost every day had a 28% lower risk of heart and blood vessel diseases, including a 26% lower risk of stroke.
Warm water widens blood vessels and helps the heart pump more blood, which may explain the link. However, this was an observational study, so it cannot prove that bathing itself prevents disease. Bathing also has risks, especially in winter, when sudden temperature changes and very hot water can lead to accidents.
125 words ・ CEFR B1
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湯船につかるのは日本ではよくある習慣で、ある大規模な研究は、それが心臓に良いかもしれないことを示しています。研究者たちは、40〜59歳の日本人約3万人を約20年間追跡しました。湯船に入るのが週2回以下の人と比べて、ほぼ毎日入る人は、心臓や血管の病気のリスクが28%低く、そのうち脳卒中のリスクは26%低くなっていました。
温かいお湯は血管を広げ、心臓がより多くの血液を送り出すのを助けるので、それがこの関係を説明するのかもしれません。しかし、これは観察研究なので、入浴そのものが病気を防ぐことを証明することはできません。入浴にはリスクもあり、特に冬は、急な温度変化や熱すぎるお湯が事故につながることがあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
毎日の入浴と心血管の病気が少ないことの関連、そして観察研究という限界と冬の危険を述べているので C。
Q2. How much lower was the risk of stroke for people who bathed almost every day?
including a 26% lower risk of stroke とあるので B。28%は心臓や血管の病気全体の数字。
Q3. Why can't the study prove that bathing prevents disease?
this was an observational study, so it cannot prove ... とあり、習慣を観察しただけで原因とは言えないので D。
Japanese bathing, in which people soak up to their shoulders in hot water, is unusual by global standards. A large cohort study has linked the habit to heart health. Researchers tracked 30,076 adults aged 40 to 59 for roughly two decades. After adjusting for smoking, blood pressure, diet and other factors, those who bathed in a tub almost daily had a 28% lower risk of cardiovascular disease than those who did so twice a week or less.
Their risk of coronary heart disease was 35% lower, and their risk of stroke 26% lower. Sudden cardiac death showed no link. One plausible mechanism is that warm water widens blood vessels and lowers vascular resistance. An editorial in the same journal was less convinced. People with more free time, better housing or better health may simply bathe more often, it pointed out, and the study asked about bathing frequency only once, at the start.
The bath also has a darker side. An estimated 19,000 people in Japan die suddenly while bathing each year, often after overheating and drowning. Japan's Consumer Affairs Agency recommends warming the changing room and keeping baths at 41 degrees Celsius or below for ten minutes or less.
199 words ・ CEFR B2
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肩までお湯につかる日本の入浴は、世界的に見ると珍しいものです。ある大規模なコホート研究が、この習慣を心臓の健康と結びつけました。研究者たちは40〜59歳の成人3万76人を約20年間追跡しました。喫煙、血圧、食事などの要因を調整したうえで、ほぼ毎日湯船につかる人は、週2回以下の人に比べて心血管疾患のリスクが28%低くなっていました。
冠動脈疾患のリスクは35%、脳卒中のリスクは26%低くなっていました。心臓突然死とは関連が見られませんでした。考えられる仕組みの1つは、温かいお湯が血管を広げ、血管の抵抗を下げることです。同じ医学誌の論説は、これにあまり納得していませんでした。自由な時間が多い人、住まいに恵まれた人、健康状態が良い人ほど単に入浴回数が多いのかもしれないと指摘し、さらに研究では入浴頻度を最初に一度尋ねただけだったと述べています。
お風呂には危険な面もあります。日本では推計で毎年約1万9000人が入浴中に突然亡くなっており、体温が上がりすぎて溺れるケースが多いとされています。消費者庁は、脱衣所を暖め、湯温41℃以下で10分以内にすることを勧めています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main purpose of the passage?
入浴と心血管の健康の関連を紹介しつつ、論説による疑問と入浴事故の危険にも触れているので A。
Q2. Which outcome showed NO association with daily bathing?
Sudden cardiac death showed no link. とあるので C。他の3つはリスクが低かった。
Q3. Why might healthier people appear to benefit from bathing, according to the editorial?
People with more free time, better housing or better health may simply bathe more often とあり、もともと健康な人ほど入浴回数が多いだけかもしれない(逆の因果)と指摘しているので B。D は asked about bathing frequency only once と矛盾。
重要単語
- bathtubA2名詞浴槽、湯船Many Japanese people soak in a bathtub every night.
tub だけでも「浴槽」。take a bath(入浴する)とセットで覚える。 - soakB2動詞(湯に)つかる、浸すI like to soak in hot water after work.
be soaked で「ずぶぬれになる」。soak up は「吸収する」で長文頻出。 - strokeB2名詞脳卒中High blood pressure increases the risk of stroke.
「(ペンの)一画」「(水泳の)ひとかき」など多義語。医学文脈では脳卒中。 - blood vesselB1名詞(句)血管Warm water widens your blood vessels.
vessel はもとは「容器・船」。血液を運ぶ「入れ物」のイメージ。 - drowningB2名詞溺れること、溺水Bathtub drowning is common among older adults in winter.
drown(溺れる・溺死する)の名詞形。A drowning man will catch at a straw.(溺れる者はわらをもつかむ) - observational studyC1名詞(句)観察研究An observational study cannot prove cause and effect.
介入せずに観察する研究。「相関はわかるが因果はわからない」とセットで入試の論説文に出る。
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- みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故(入浴中の事故)(消費者庁)caa.go.jp
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日本の中高年約3万人を約20年追った研究で、ほぼ毎日湯船につかる人は、週2回以下の人より心臓病や脳卒中が28%少なかったらしい。でも冬の入浴は事故も多い。お湯は41℃以下、10分までが目安とのこと。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Ukai T et al. (2020) Habitual tub bathing and risks of incident coronary heart disease and stroke, Heartdoi.org
- Burden A (2020) Tub bathing and heart disease, Heartdoi.org
- Otto C (2020) Heartbeat: bathing daily is associated with a lower cardiovascular risk, Heartdoi.org
- 消費者庁 みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故caa.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











