テクノロジー・未来

世界最速クラスのスパコンは、毎日なにを計算している? 天気・新薬・飛沫まで

世界最速クラスのスパコンは、毎日なにを計算している? 天気・新薬・飛沫まで

読む前に予想してみよう!

スーパーコンピューターの世界ランキングで、日本の「富岳」が1位になったことがある

研究カード(どんな研究?)
対象
スーパーコンピューターとその応用
規模
世界ランキング・個別のシミュレーション研究
研究の種類
公的機関の情報・計算科学研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

スパコンの仕事は「現実ではできない実験」を計算で行うこと。天気予報、新薬づくり、地震や津波、マスクと飛沫の拡散まで。日本の富岳は世界ランキング1位にもなった。

ひとことで言うとスパコンは、現実ではできない実験をコンピューターの中でやる機械!

もくじ
  1. スパコンの速さは「人類全員でも追いつけない」
  2. スパコンの“お仕事”図鑑
  3. 「速いほど偉い」わけではない
  4. まとめ

「スーパーコンピューターが世界一になった!」というニュースを聞いても、正直ピンとこない人が多いのではないでしょうか。

「で、そのすごい計算で、いったい何をしてるの?」

答えをひと言でいうと、スパコンの仕事は「現実ではできない実験」を計算の中でやることです。地球の大気を丸ごと実験室に入れることはできませんし、新薬の候補を何百万種類も全部作って試すこともできません。でも、計算の中ならそれができるのです。

01スパコンの速さは「人類全員でも追いつけない」

スパコンの速さは、1秒間に何回計算できるかで比べます。

日本の理化学研究所と富士通が開発した「富岳」は、世界の計算速度ランキング「TOP500」で、2020年6月から2021年11月まで4期連続の世界1位になりました。2020年11月以降の速さは、1秒間に約44京回(京は1兆の1万倍)。

これがどれくらいかというと――もし世界中の約80億人がみんなで1秒に1回ずつ、休まず計算し続けたとしても、富岳がたった1秒でする計算を終えるには、2年近くかかる計算になります。

さらに2022年以降は、米国を中心に、1秒間に100京回(1エクサ)を超える「エクサスケール」のスパコンが次々に登場し(2025年には欧州でも初めて登場)、ランキングの上位を占めています。

スパコンは地球や体の中を、細かいマス目に分けて計算で再現する。
スパコンは地球や体の中を、細かいマス目に分けて計算で再現する。

02スパコンの“お仕事”図鑑

天気と災害

天気予報は、スパコンの代表的な仕事です。空気を細かいマス目に分け、それぞれの温度・湿度・風の動きを、物理の法則に従って計算し、未来を予測します。マス目を細かくするほど、急な大雨(ゲリラ豪雨)のような小さな現象までとらえやすくなります。地震の揺れや津波がどう伝わるかのシミュレーションにも使われています。

新薬・新素材

病気の原因になるタンパク質に、どんな形の薬の候補がうまくはまるか――。それを計算でふるいにかけることで、実験で試す候補を大きく絞り込めます。電池や半導体の新しい材料探しにも活躍しています。

マスクと飛沫

新型コロナウイルスが広がった2020年、富岳は本格稼働の前倒しで、せきや会話の飛沫がどう広がるかのシミュレーションに使われました。マスクの素材や着け方による違い、電車やオフィスの換気の効果などを計算し、その映像はニュースでも広く紹介されました。理研などのチームは、この取り組みを2022年に論文としてまとめています(Ando ら)。

AIの学習

最近では、大量のデータでAIを学習させる仕事も、スパコンの重要な役割になっています。

03「速いほど偉い」わけではない

日本では、富岳の後継となる次世代スパコン(通称「富岳NEXT」)の開発計画も、2030年ごろの稼働を目標に進められています(執筆時点)。

04まとめ

スパコンは、天気・災害・新薬・飛沫など、現実ではできない実験を計算の中で行う機械です。

次に天気予報を見たとき、「この予報の裏で、ものすごい数の計算が動いているんだな」と思い出してみてください。いつもの予報が、ちょっとだけ壮大に見えてくるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSupercomputers do experiments that are impossible in real life. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Supercomputers do experiments that are impossible in real life. We cannot put the Earth's atmosphere in a laboratory or test millions of drug candidates one by one, but we can do both inside a computer. Japan's Fugaku, developed by RIKEN and Fujitsu, was ranked first in the TOP500 list four times in a row, from June 2020 to November 2021. It could perform about 440 quadrillion calculations per second.

Supercomputers divide the air into small boxes to forecast the weather, simulate earthquakes and tsunamis, and narrow down candidates for new medicines. In 2020, Fugaku simulated how droplets from coughing and talking spread, and these images appeared widely in the news. However, being first in the ranking does not mean being best at every task.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

スーパーコンピューターは、現実には不可能な実験を行います。地球の大気を実験室に入れたり、何百万もの薬の候補を1つずつ試したりすることはできませんが、コンピューターの中ならどちらもできるのです。理化学研究所と富士通が開発した日本の富岳は、2020年6月から2021年11月まで、TOP500のランキングで4期連続1位になりました。1秒間に約44京回の計算ができました。

スーパーコンピューターは、空気を小さなマス目に分けて天気を予報し、地震や津波をシミュレーションし、新薬の候補を絞り込みます。2020年、富岳はせきや会話の飛沫がどのように広がるかをシミュレーションし、その映像はニュースで広く紹介されました。しかし、ランキングで1位であることは、あらゆる仕事で最も優れていることを意味するわけではありません。

4択リーディングクイズ

Q1. Which organizations developed Fugaku?

Q2. How do supercomputers forecast the weather?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • supercomputerB1
    名詞スーパーコンピューターThe supercomputer predicts heavy rain. super-(超)+computer。日本語の「スパコン」は和製略語なので英語では使わない。
  • simulationB2
    名詞模擬計算、シミュレーションA simulation showed how droplets spread. 動詞 simulate。simulate A「Aを模擬的に再現する」。
  • benchmarkC1
    名詞性能比較テスト、基準The ranking uses a benchmark called LINPACK. 比喩で「基準・指標」(set a benchmark「基準を定める」)としても使う。
  • exascaleC1
    形容詞エクサ級(毎秒100京回以上の計算)Exascale computers do a quintillion calculations per second. exa- は10の18乗。kilo < mega < giga < tera < peta < exa の順で覚える。
  • dropletB2
    名詞飛沫、しずくMasks reduce the spread of droplets. drop(しずく)+-let(小さい)。booklet(小冊子), piglet(子ブタ)の -let と同じ。
  • consecutiveC1
    形容詞連続したFugaku ranked first four consecutive times. for three consecutive years「3年連続で」。in a row と同じ意味で、入試の言い換え問題に出る。
  • forecastB1
    動詞・名詞予報する/予報The weather forecast says it will rain tomorrow. fore-(前もって)+cast(投げる)。活用は forecast-forecast(ed)-forecast(ed)。

動画でもっと知る

世界最速クラスのスパコンって何してるの?と思ったら、天気予報、新薬の候補探し、地震や津波の予測、さらにはマスクで飛沫がどう広がるかまで計算してたらしい。「現実ではできない実験」をする機械だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. TOP500(公式サイト)top500.org
  2. Dongarra, Luszczek & Petitet (2003) The LINPACK Benchmark: past, present and future, Concurrency and Computation: Practice and Experiencedoi.org
  3. Sato et al. (2020) Co-Design for A64FX Manycore Processor and "Fugaku", SC20doi.org
  4. Ando et al. (2022) Digital transformation of droplet/aerosol infection risk assessment realized on "Fugaku" for the fight against COVID-19, The International Journal of High Performance Computing Applicationsdoi.org
  5. 理化学研究所 計算科学研究センター: 「富岳」についてr-ccs.riken.jp