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コンクリートのひび割れを「眠っていた細菌」がふさぐ。自分で治る建材の正体

コンクリートのひび割れを「眠っていた細菌」がふさぐ。自分で治る建材の正体

読む前に予想してみよう!

自己治癒コンクリートに入っている細菌は、コンクリートそのものを食べて増える

研究カード(どんな研究?)
対象
細菌入りコンクリートの試験体
規模
実験室の試験体〜一部の実構造物
研究の種類
実験研究・レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

コンクリートに細菌の胞子とエサを混ぜておくと、ひび割れから水が入ったときに目を覚まし、石灰石を作ってひびをふさぐ。細いひび割れ向けで、万能ではない。

ひとことで言うとコンクリートの中で眠る細菌が、ひび割れを“石”で直してくれる!

もくじ
  1. 細菌は「石を作る職人」だった
  2. 「眠り姫」方式の仕組み
  3. どんなひびでも治せる?
  4. なぜ「治るコンクリート」が必要なのか
  5. まとめ

道路の橋やトンネル、ビルの壁。私たちの暮らしを支えるコンクリートは、とても丈夫な材料です。

でも、弱点もあります。それはひび割れ。小さなひびから雨水がしみ込むと、中の鉄筋がさびて、ふくらみ、さらにひびが広がる……という悪循環が起きてしまいます。

そこで研究者が考えたのが、なんと「コンクリートの中に細菌を住まわせる」というアイデア。ひびが入ると細菌が目を覚まし、自分でひびをふさいでくれるのです。

01細菌は「石を作る職人」だった

自然界には、炭酸カルシウム(石灰石の主成分)を作り出す細菌がいます。サンゴ礁や鍾乳洞の石と同じ成分です。

この細菌を、ひび割れをふさぐ“左官職人”として雇おう、というのが自己治癒コンクリートの発想です。

02「眠り姫」方式の仕組み

ポイントは、細菌を眠らせたまま入れておくことです。

  1. コンクリートを作るとき、細菌の胞子と、エサ(乳酸カルシウムなど)を混ぜておく
  2. コンクリートの中は乾いていて、強いアルカリ性。細菌はじっと眠ったまま
  3. ひび割れが入り、雨水と空気が入り込む
  4. 水を得た細菌が目を覚まし、エサを食べて炭酸カルシウムを作る
  5. 白い結晶がひび割れを埋め、水の通り道がふさがる

おまけに、細菌は活動するときに酸素を使うので、鉄筋をさびさせる酸素を減らす効果も期待されています。

水が入ると細菌が目覚め、石灰石の成分でひびを埋める。
水が入ると細菌が目覚め、石灰石の成分でひびを埋める。

03どんなひびでも治せる?

また、細菌やエサを混ぜるぶん材料費が高くなること、どれくらい長い年月にわたって効果が続くかを実際の建物で確かめる必要があることも課題です。そのため、まずは水が漏れると困る場所――地下の構造物、貯水槽、トンネルなど――での利用が考えられています。

04なぜ「治るコンクリート」が必要なのか

日本を含め、多くの国では、高度経済成長期などに作られた橋やトンネルが一斉に古くなりつつあります。点検や補修には、たくさんの人手とお金がかかります。

コンクリートは、作るときに大量の二酸化炭素を出す材料でもあります。長持ちさせて作り直す回数を減らせれば、環境への負担を減らすことにもつながると期待されています。

05まとめ

自己治癒コンクリートは、眠っている細菌とそのエサをあらかじめ混ぜておき、ひび割れに水が入ったときに石灰石の成分でふさぐ技術です。

万能ではありませんが、「建物が自分で小さな傷を治す」という発想は、インフラの未来を少し変えるかもしれません。次に街でコンクリートのひびを見かけたら、その中で細菌が働いている未来を想像してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerConcrete supports our bridges, tunnels and buildings, but it has a weakness: cracks. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Concrete supports our bridges, tunnels and buildings, but it has a weakness: cracks. When rainwater gets into a small crack, the steel inside can rust and expand, which makes the crack even wider. In 2010, Henk Jonkers and his team at Delft University of Technology in the Netherlands reported a way to solve this problem with bacteria.

Bacterial spores, which can survive harsh conditions in a sleeping state, are mixed into concrete together with their food. When a crack lets in water, the bacteria become active and produce calcium carbonate, the main part of limestone, which fills the gap. However, the method mainly works for cracks less than one millimeter wide, and it makes concrete more expensive.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

コンクリートは私たちの橋、トンネル、建物を支えていますが、弱点があります。ひび割れです。雨水が小さなひびに入ると、中の鉄筋がさびてふくらみ、ひびをさらに広げてしまいます。2010年、オランダのデルフト工科大学のヘンク・ヨンカースらのチームは、細菌でこの問題を解決する方法を報告しました。

眠った状態で過酷な環境を生き延びられる細菌の胞子を、そのエサと一緒にコンクリートに混ぜておきます。ひびから水が入ると、細菌は活動を始め、石灰石の主成分である炭酸カルシウムを作って、すき間を埋めるのです。ただし、この方法が主に効くのは幅1ミリメートル未満のひびで、コンクリートは高価になります。

4択リーディングクイズ

Q1. Why are cracks a problem for concrete?

Q2. What do the bacteria produce?

Q3. Where would this concrete probably be most useful?

重要単語

  • self-healingC1
    形容詞自己修復のSelf-healing concrete can close small cracks. heal(治す・治る)の -ing 形。heal は主に傷を、cure は主に病気を治す。
  • sporeC1
    名詞胞子Bacterial spores can sleep for many years. キノコやシダの「胞子」と同じ語。休眠して厳しい環境を生き延びる形。
  • calcium carbonateC1
    名詞(句)炭酸カルシウムThe bacteria produce calcium carbonate. carbonate は carbon(炭素)から。石灰石・サンゴ・貝殻・チョークの主成分。
  • crackB1
    名詞・動詞ひび割れ/ひびが入るWater entered the crack and woke up the bacteria. crack a joke「冗談を飛ばす」、crack down on ~「~を取り締まる」も覚えておく。
  • infrastructureB2
    名詞インフラ(社会基盤)Aging infrastructure needs costly repairs. infra-(下の)+structure(構造)=「社会の下支え」。不可算名詞として使うことが多い。
  • dormantC1
    形容詞休眠中のThe spores remain dormant for years. フランス語 dormir(眠る)から。dormitory(寮)も同語源。a dormant volcano「休火山」。
  • corrodeC1
    動詞腐食するWater causes the steel to corrode. 名詞 corrosion。rust(さびる)より専門的。比喩で「(信頼などを)むしばむ」の意味もある。

動画でもっと知る

4コマでわかる

コンクリートのひび割れを「眠っていた細菌」がふさぐ。自分で治る建材の正体の4コマ漫画
コンクリートの中に細菌を混ぜておくと、ひび割れから水が入ると細菌が目を覚まして、石灰石を作ってひびをふさぐらしい。“自分で治る建物”はもう研究室を出始めている。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Jonkers et al. (2010) Application of bacteria as self-healing agent for the development of sustainable concrete, Ecological Engineeringdoi.org
  2. Wiktor & Jonkers (2011) Quantification of crack-healing in novel bacteria-based self-healing concrete, Cement and Concrete Compositesdoi.org
  3. Van Tittelboom et al. (2010) Use of bacteria to repair cracks in concrete, Cement and Concrete Researchdoi.org
  4. De Belie et al. (2018) A Review of Self-Healing Concrete for Damage Management of Structures, Advanced Materials Interfacesdoi.org