コンクリートのひび割れを「眠っていた細菌」がふさぐ。自分で治る建材の正体

読む前に予想してみよう!
自己治癒コンクリートに入っている細菌は、コンクリートそのものを食べて増える
細菌のエサ(乳酸カルシウムなど)を一緒に混ぜておき、それを使って石灰石を作る。
- 対象
- 細菌入りコンクリートの試験体
- 規模
- 実験室の試験体〜一部の実構造物
- 研究の種類
- 実験研究・レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
コンクリートに細菌の胞子とエサを混ぜておくと、ひび割れから水が入ったときに目を覚まし、石灰石を作ってひびをふさぐ。細いひび割れ向けで、万能ではない。
ひとことで言うとコンクリートの中で眠る細菌が、ひび割れを“石”で直してくれる!
道路の橋やトンネル、ビルの壁。私たちの暮らしを支えるコンクリートは、とても丈夫な材料です。
でも、弱点もあります。それはひび割れ。小さなひびから雨水がしみ込むと、中の鉄筋がさびて、ふくらみ、さらにひびが広がる……という悪循環が起きてしまいます。
そこで研究者が考えたのが、なんと「コンクリートの中に細菌を住まわせる」というアイデア。ひびが入ると細菌が目を覚まし、自分でひびをふさいでくれるのです。
01細菌は「石を作る職人」だった
自然界には、炭酸カルシウム(石灰石の主成分)を作り出す細菌がいます。サンゴ礁や鍾乳洞の石と同じ成分です。
この細菌を、ひび割れをふさぐ“左官職人”として雇おう、というのが自己治癒コンクリートの発想です。
02「眠り姫」方式の仕組み
ポイントは、細菌を眠らせたまま入れておくことです。
- コンクリートを作るとき、細菌の胞子と、エサ(乳酸カルシウムなど)を混ぜておく
- コンクリートの中は乾いていて、強いアルカリ性。細菌はじっと眠ったまま
- ひび割れが入り、雨水と空気が入り込む
- 水を得た細菌が目を覚まし、エサを食べて炭酸カルシウムを作る
- 白い結晶がひび割れを埋め、水の通り道がふさがる
おまけに、細菌は活動するときに酸素を使うので、鉄筋をさびさせる酸素を減らす効果も期待されています。

03どんなひびでも治せる?
また、細菌やエサを混ぜるぶん材料費が高くなること、どれくらい長い年月にわたって効果が続くかを実際の建物で確かめる必要があることも課題です。そのため、まずは水が漏れると困る場所――地下の構造物、貯水槽、トンネルなど――での利用が考えられています。
04なぜ「治るコンクリート」が必要なのか
日本を含め、多くの国では、高度経済成長期などに作られた橋やトンネルが一斉に古くなりつつあります。点検や補修には、たくさんの人手とお金がかかります。
コンクリートは、作るときに大量の二酸化炭素を出す材料でもあります。長持ちさせて作り直す回数を減らせれば、環境への負担を減らすことにもつながると期待されています。
05まとめ
自己治癒コンクリートは、眠っている細菌とそのエサをあらかじめ混ぜておき、ひび割れに水が入ったときに石灰石の成分でふさぐ技術です。
万能ではありませんが、「建物が自分で小さな傷を治す」という発想は、インフラの未来を少し変えるかもしれません。次に街でコンクリートのひびを見かけたら、その中で細菌が働いている未来を想像してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerConcrete supports our bridges, tunnels and buildings, but it has a weakness: cracks.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Concrete is strong, but it can crack. When rain gets into a crack, the steel inside can rust. Scientists found a smart idea. They put sleeping bacteria and their food into concrete.
When water enters a crack, the bacteria wake up. They make limestone, and it fills the crack. This works for very thin cracks. It cannot fix a broken building.
61 words ・ CEFR A2
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コンクリートは丈夫ですが、ひびが入ることがあります。ひびに雨が入ると、中の鉄がさびることがあります。科学者たちは賢いアイデアを見つけました。彼らは眠っている細菌とそのエサをコンクリートに入れたのです。
ひびに水が入ると、細菌が目を覚まします。細菌は石灰石を作り、それがひびを埋めます。これはとても細いひびに効きます。壊れた建物を直すことはできません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
細菌の力で小さなひびを自分で直すコンクリートが主題なので A。
Q2. When do the bacteria wake up?
When water enters a crack, the bacteria wake up. とあるので B。
Q3. In this passage, "rust" means ...
rust は「さびる」。鉄が水や空気で傷むこと、なので C。
Concrete supports our bridges, tunnels and buildings, but it has a weakness: cracks. When rainwater gets into a small crack, the steel inside can rust and expand, which makes the crack even wider. In 2010, Henk Jonkers and his team at Delft University of Technology in the Netherlands reported a way to solve this problem with bacteria.
Bacterial spores, which can survive harsh conditions in a sleeping state, are mixed into concrete together with their food. When a crack lets in water, the bacteria become active and produce calcium carbonate, the main part of limestone, which fills the gap. However, the method mainly works for cracks less than one millimeter wide, and it makes concrete more expensive.
117 words ・ CEFR B1
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コンクリートは私たちの橋、トンネル、建物を支えていますが、弱点があります。ひび割れです。雨水が小さなひびに入ると、中の鉄筋がさびてふくらみ、ひびをさらに広げてしまいます。2010年、オランダのデルフト工科大学のヘンク・ヨンカースらのチームは、細菌でこの問題を解決する方法を報告しました。
眠った状態で過酷な環境を生き延びられる細菌の胞子を、そのエサと一緒にコンクリートに混ぜておきます。ひびから水が入ると、細菌は活動を始め、石灰石の主成分である炭酸カルシウムを作って、すき間を埋めるのです。ただし、この方法が主に効くのは幅1ミリメートル未満のひびで、コンクリートは高価になります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why are cracks a problem for concrete?
the steel inside can rust and expand, which makes the crack even wider とあるので B。
Q2. What do the bacteria produce?
produce calcium carbonate, the main part of limestone とあるので D。
Q3. Where would this concrete probably be most useful?
細いひびを水が入ったときにふさぐ技術で、費用は高めなので、水漏れが困る場所で役立つと推論できる。正解は A。
Concrete underpins modern infrastructure, yet even fine cracks can trigger a vicious cycle: water seeps in, the steel reinforcement corrodes and expands, and the damage widens. Many countries now face aging bridges and tunnels that demand costly inspection and repair. In 2010, microbiologist Henk Jonkers and colleagues at Delft University of Technology proposed a biological remedy.
Spores of bacteria able to survive the dry, highly alkaline interior of concrete are mixed in along with a nutrient such as calcium lactate. They remain dormant until a crack admits water and air, at which point the bacteria revive and precipitate calcium carbonate, sealing the crack. Their consumption of oxygen may also help protect the steel. The aim is not to eliminate cracks but to seal them while they are small, much as a scab heals a minor wound.
The approach has clear limits. It is effective mainly for cracks under about one millimeter, cannot restore a seriously damaged structure, and raises material costs. Sealing a crack against water is also not the same as restoring strength, and long-term data from real structures remain scarce. For now, it is most promising where leaks matter, such as tunnels and water tanks.
197 words ・ CEFR B2
和訳を見る
コンクリートは現代のインフラを支えていますが、細いひびでさえ悪循環を引き起こしかねません。水がしみ込み、補強の鉄筋が腐食してふくらみ、損傷が広がるのです。今、多くの国が、費用のかかる点検と補修を必要とする老朽化した橋やトンネルに直面しています。
2010年、デルフト工科大学の微生物学者ヘンク・ヨンカースらは、生物学的な解決策を提案しました。コンクリートの乾いた強アルカリ性の内部でも生き延びられる細菌の胞子を、乳酸カルシウムのような栄養と一緒に混ぜておきます。胞子はひびから水と空気が入るまで休眠したままで、その時点で細菌が目を覚まし、炭酸カルシウムを析出させてひびをふさぎます。細菌が酸素を消費することも、鉄筋を守るのに役立つかもしれません。狙いはひびをなくすことではなく、かさぶたが小さな傷を治すように、小さいうちにふさぐことです。
この方法には明確な限界があります。主に効くのは約1ミリメートル未満のひびで、深刻に損傷した構造物を元に戻すことはできず、材料費も上がります。また、ひびを水に対してふさぐことは強度を回復させることと同じではなく、実際の構造物での長期データはまだ乏しいのです。今のところ、トンネルや貯水槽のように漏水が問題になる場所で最も有望です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main aim of self-healing concrete, according to the passage?
The aim is not to eliminate cracks but to seal them while they are small とあるので C。
Q2. Why does the author compare the process to a scab?
かさぶたが小さな傷を治すように、ひびを小さいうちにふさぐ、というたとえなので A。
Q3. Which statement reflects a limitation mentioned by the author?
Sealing a crack against water is also not the same as restoring strength とあるので C。
重要単語
- self-healingC1形容詞自己修復のSelf-healing concrete can close small cracks.
heal(治す・治る)の -ing 形。heal は主に傷を、cure は主に病気を治す。 - sporeC1名詞胞子Bacterial spores can sleep for many years.
キノコやシダの「胞子」と同じ語。休眠して厳しい環境を生き延びる形。 - calcium carbonateC1名詞(句)炭酸カルシウムThe bacteria produce calcium carbonate.
carbonate は carbon(炭素)から。石灰石・サンゴ・貝殻・チョークの主成分。 - crackB1名詞・動詞ひび割れ/ひびが入るWater entered the crack and woke up the bacteria.
crack a joke「冗談を飛ばす」、crack down on ~「~を取り締まる」も覚えておく。 - infrastructureB2名詞インフラ(社会基盤)Aging infrastructure needs costly repairs.
infra-(下の)+structure(構造)=「社会の下支え」。不可算名詞として使うことが多い。 - dormantC1形容詞休眠中のThe spores remain dormant for years.
フランス語 dormir(眠る)から。dormitory(寮)も同語源。a dormant volcano「休火山」。 - corrodeC1動詞腐食するWater causes the steel to corrode.
名詞 corrosion。rust(さびる)より専門的。比喩で「(信頼などを)むしばむ」の意味もある。
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動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
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コンクリートの中に細菌を混ぜておくと、ひび割れから水が入ると細菌が目を覚まして、石灰石を作ってひびをふさぐらしい。“自分で治る建物”はもう研究室を出始めている。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Jonkers et al. (2010) Application of bacteria as self-healing agent for the development of sustainable concrete, Ecological Engineeringdoi.org
- Wiktor & Jonkers (2011) Quantification of crack-healing in novel bacteria-based self-healing concrete, Cement and Concrete Compositesdoi.org
- Van Tittelboom et al. (2010) Use of bacteria to repair cracks in concrete, Cement and Concrete Researchdoi.org
- De Belie et al. (2018) A Review of Self-Healing Concrete for Damage Management of Structures, Advanced Materials Interfacesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











