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フェルマーの最終定理とは? 「余白が狭すぎる」から358年、決め手は日本人数学者の予想だった

フェルマーの最終定理とは? 「余白が狭すぎる」から358年、決め手は日本人数学者の予想だった

読む前に予想してみよう!

フェルマーの最終定理の証明には、日本の数学者が考えた予想が重要な役割を果たした

研究カード(どんな研究?)
対象
整数論の定理
規模
数学的証明(約350年の研究の積み重ね)
研究の種類
数学的証明
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

「3乗以上では xⁿ+yⁿ=zⁿ を満たす正の整数はない」という定理。1995年、ワイルズが日本発の「谷山・志村予想」を経由して証明した。

ひとことで言うと3乗以上の「足して同じ形になる数」はない。その証明に350年以上かかった!

もくじ
  1. 「余白が狭すぎる」――350年続いた数学界の宿題
  2. カギは日本発の「谷山・志村予想」
  3. 7年間の秘密の研究、そして見つかった「穴」
  4. どんでん返し:フェルマーは本当に証明していた?
  5. まとめ

フェルマーの最終定理とは、

nが3以上の整数のとき、xⁿ + yⁿ = zⁿ を満たす正の整数 x, y, z は存在しない

という定理です。2乗なら 3² + 4² = 5²(9+16=25)のように答えがいくらでもあるのに、3乗以上になると、とたんに1つも存在しないというのです。

17世紀のフランスの数学者フェルマーが「驚くべき証明を見つけたが、この余白は狭すぎて書けない」と書き残してから、約350年。1995年に英国の数学者アンドリュー・ワイルズがついに証明しました。そして、その決め手になったのは、日本の若い数学者2人が考えた予想でした。

01「余白が狭すぎる」――350年続いた数学界の宿題

1637年ごろ、ピエール・ド・フェルマーは古代ギリシャの数学書『算術』を読みながら、その余白にこの主張と「証明を書くには余白が狭すぎる」という言葉を書き込みました。本人の死後、息子がこの書き込み入りの本を出版したことで、世界に知られます。

フェルマーは趣味で数学をしていた法律家で、ほかにもたくさんの主張を証明なしで書き残していました。それらは後の数学者たちによって次々と証明(または否定)され、最後まで残ったのがこの主張。だから「最終定理」と呼ばれるのです。

その後、オイラーなど名だたる数学者が n=3 や n=4 など特定の場合を証明しましたが、すべての nについて証明することは、誰にもできませんでした。

02カギは日本発の「谷山・志村予想」

話は20世紀の日本に飛びます。1950年代、谷山豊と志村五郎という若い数学者たちが、まったく別々に見える2つの数学の世界――楕円曲線とモジュラー形式――が、実は1対1で対応しているのではないか、という大胆な予想を立てました。これが谷山・志村予想です。

一見、フェルマーの最終定理とは関係なさそうなこの予想が、1980年代に急に主役に躍り出ます。

「楕円曲線」と「モジュラー形式」という2つの世界をつなぐ橋が、谷山・志村予想だった
「楕円曲線」と「モジュラー形式」という2つの世界をつなぐ橋が、谷山・志村予想だった

037年間の秘密の研究、そして見つかった「穴」

このニュースを聞いたワイルズは、子どものころ図書館で出会ったこの問題に挑むことを決意します。英国生まれで、当時は米プリンストン大学の教授。彼は約7年間、ほとんど誰にも言わずに研究を続けました。

1993年6月、英ケンブリッジでの講演で、ワイルズは証明を発表。黒板にフェルマーの最終定理を書き、「ここで終わりにしたいと思います」と締めくくった瞬間、会場は拍手に包まれ、世界中のニュースになりました。

ところが、論文を細かくチェックする段階で、証明の重要な部分に穴が見つかります。ワイルズは1年以上苦しみ、かつての教え子リチャード・テイラーとともに修正に取り組みました。そして1994年9月、別の方向からのアプローチで穴を埋めることに成功。1995年、2本の論文としてAnnals of Mathematics 誌に掲載されました。

04どんでん返し:フェルマーは本当に証明していた?

では、フェルマーは本当に「驚くべき証明」を持っていたのでしょうか?

ワイルズの証明は、20世紀の最先端の数学を総動員した100ページを超える大作です。フェルマーの時代の数学でたどり着けたとは考えにくく、多くの数学者は「フェルマーは勘違いしていた(どこかに誤りのある証明だった)」と考えています。真相は、余白の向こうに消えてしまいました。

その後、谷山・志村予想は2001年にすべての場合で証明され、現在は「モジュラー性定理」と呼ばれています。ワイルズは2016年、数学のノーベル賞とも呼ばれるアーベル賞を受賞しました。

05まとめ

フェルマーの最終定理とは、「3乗以上では xⁿ+yⁿ=zⁿ を満たす正の整数は存在しない」という定理。中学生でも意味がわかる問題が、350年以上も人類を悩ませ、最後は日本の数学者の予想を経由して解かれました。

問題文がシンプルでも、答えにたどり着く道は、ときに数学の歴史そのものを巻き込むほど長い。そこに数学のロマンがあります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFermat's Last Theorem says that when n is greater than 2, no positive whole numbers x, y and z can make xⁿ… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Fermat's Last Theorem says that when n is greater than 2, no positive whole numbers x, y and z can make xⁿ + yⁿ = zⁿ true. Around 1637, Pierre de Fermat wrote this idea in the margin of a book and added that the margin was too small for his proof.

For more than 300 years, mathematicians proved only special cases, such as n = 3 and n = 4. In the 1950s, Yutaka Taniyama and Goro Shimura suggested a deep link between two areas of math. In the 1980s, it became clear that proving part of their idea would also prove Fermat's theorem. Andrew Wiles worked on it in secret for about seven years and published the full proof in 1995.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

フェルマーの最終定理は、nが2より大きいとき、xⁿ + yⁿ = zⁿ を成り立たせる正の整数 x, y, z は存在しない、というものです。1637年ごろ、ピエール・ド・フェルマーはこの考えを本の余白に書き、証明を書くには余白が狭すぎると書き添えました。

300年以上のあいだ、数学者たちは n = 3 や n = 4 のような特別な場合しか証明できませんでした。1950年代、谷山豊と志村五郎は、数学の2つの分野の間に深いつながりがあると提案しました。1980年代になると、彼らの考えの一部を証明すれば、フェルマーの定理も証明できることが明らかになりました。アンドリュー・ワイルズは約7年間ひそかにこれに取り組み、1995年に完全な証明を発表しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did Fermat write in the margin?

Q3. Why was the idea of Taniyama and Shimura important?

重要単語

  • theoremB2
    名詞定理Fermat's Last Theorem was finally proved in 1995. 発音は /ˈθɪərəm/(シアラム)。証明済みの主張が theorem、未証明は conjecture。the Pythagorean theorem「三平方の定理」。
  • marginB2
    名詞余白He wrote a note in the margin of the book. 「差・利ざや」の意味もある。by a narrow margin「僅差で」、profit margin「利益率」。
  • integerB2
    名詞整数Three, five, and seven are integers. 発音は /ˈɪntɪdʒər/(インティジャー)。positive integer「正の整数」、whole number とも言う。integrity(誠実さ・完全さ)と同語源。
  • elliptic curveC1
    名詞(句)楕円曲線Elliptic curves are also used in cryptography. ellipse(楕円)の形容詞 elliptic。名前に反して楕円そのものではない。スマホの暗号技術にも使われている。
  • flawC1
    名詞欠陥、穴A flaw was found in the first proof. flawless は「完璧な・欠点のない」。gap(すき間・穴)も証明の不備を言うときに使う。
  • breakthroughB2
    名詞大発見、突破口The link between two fields was a major breakthrough. break through(突き破る)の名詞化。make a breakthrough「大発見をする」は科学ニュースの定番。

4コマでわかる

フェルマーの最終定理とは? 「余白が狭すぎる」から358年、決め手は日本人数学者の予想だったの4コマ漫画
フェルマーの最終定理は「3乗以上では a³+b³=c³ のような整数の組は存在しない」という主張。「証明を書くには余白が狭すぎる」と書き残してから358年。最後のカギは、日本の若い数学者2人が出した予想だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Wiles (1995) Modular Elliptic Curves and Fermat's Last Theorem, Annals of Mathematicsdoi.org
  2. Taylor & Wiles (1995) Ring-Theoretic Properties of Certain Hecke Algebras, Annals of Mathematicsdoi.org
  3. Ribet (1990) On modular representations of Gal(Q̄/Q) arising from modular forms, Inventiones Mathematicaedoi.org
  4. Breuil, Conrad, Diamond & Taylor (2001) On the modularity of elliptic curves over Q: Wild 3-adic exercises, Journal of the American Mathematical Societydoi.org