前の席の方が成績がいい? 席をくじ引きで決めた物理の授業で「後ろはF評価が約6倍」

読む前に予想してみよう!
教室の前の方に座る学生の成績が良いのは、もともと真面目な学生が前に座るから「だけ」である
座席をくじ引きで決めた研究でも前の席の方が良い傾向があり、席そのものの影響もありそう。ただし差が出ない研究もある。
- 対象
- 大学生(物理・心理学など)
- 規模
- 約1,100人〜1,400人規模の研究を含む複数研究
- 研究の種類
- 座席の無作為割り当て・観察研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
大学の物理の授業で席をくじ引きで決めたら、後ろの席から始めた学生はF評価が約6倍に。一方、10年分のデータで差がなかった研究もあり、結論はまだ揺れている。
ひとことで言うと前の席はちょっと有利かも。でも「どこに座るか」より「どう聞くか」も大事。
席替えの日、「前の席になっちゃった…」とがっかりした経験はありませんか。逆に、先生からは「前に座る子は成績がいい」と言われることもあります。
でもそれって、真面目な子が前に座りたがるだけじゃないの? この「ニワトリが先か卵が先か」問題に、席をくじ引きで決めるという方法で挑んだ研究があります。
01くじ引きで席を決めた物理の授業
真面目な学生が前を選んだわけではないのに、差が出た。つまり席の位置そのものが、何らかの形で学びに影響している可能性があるのです。
02「好み」と「実際の席」、どちらも関係していた
経済学の授業で調べたBenedictさんとHoagさんの研究(2004年)も面白い結果を出しています。
後ろの席が好きな学生は、実際にどこに座ったかに関係なく、D評価やF評価をとる確率が高めでした。一方、後ろが好きなのに席が埋まっていて前に座らざるをえなかった学生は、成績がやや良くなる傾向がありました。「どんな学生か」と「どこに座るか」、両方が効いているようです。
さらに2020年、カナダのWillさんらは心理学の授業で1,300人以上を調べ、後ろに1列下がるごとに成績が平均約0.75パーセントポイント下がる傾向を報告しています。
では、なぜ前の席が有利になりうるのでしょうか。考えられている理由は、
- 黒板やスクリーンの文字が見やすく、先生の声も聞き取りやすい
- 先生と目が合いやすく、「見られている」感覚で集中が続きやすい
- 前には他の学生の背中やスマホ画面が少なく、気が散るものが視界に入りにくい
といったものです。ただし、どれが一番効いているのかは、まだはっきりしていません。

03どんでん返し:10年分のデータでは「差なし」
ところが、反対の結果もあります。アメリカのMeeksさんらは、10年間・約1,100人の大学4年生の授業データを分析し、座席の位置も、座席のタイプも、成績にはっきりした影響を与えていなかったと報告しました(2013年)。
研究によって結果がちがう理由として、
- 教室の大きさ(数十人のゼミと数百人の講義室はちがう)
- 授業のスタイル(一方的な講義か、話し合い中心か)
- 学生の年齢や科目
などが考えられます。大きな講義室ほど、後ろは先生から遠く、気が散る要素も多いので、差が出やすいのかもしれません。
04まとめ
席をくじ引きで決めても、前の席の方が有利という結果が出た研究がある。一方で、差が見られない研究もあり、結論はまだ揺れています。
確かなのは、どこに座っても「自分から授業に関わる」人は強いということ。次の席替えで後ろになっても、がっかりしすぎず、ちょっとだけ前のめりで聞いてみましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTeachers often say that students who sit at the front do better.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do students in the front row get better grades? Maybe hard-working students just choose front seats. To check this, teachers of a big physics class at a university chose seats by lottery. Students who started in the back were about six times more likely to fail than students in the front.
But another study with ten years of data found no clear difference. So your seat may matter, but how you listen matters too.
74 words ・ CEFR A2
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前の列の生徒の方が良い成績を取るのでしょうか。もしかすると、まじめな生徒が前の席を選ぶだけかもしれません。これを確かめるため、ある大学の大人数の物理の授業で、先生たちはくじ引きで席を決めました。後ろの席から始めた学生は、前の席の学生より、不合格になる割合が約6倍高くなりました。
しかし、10年分のデータを使った別の研究では、はっきりした差は見つかりませんでした。つまり、席は関係するかもしれませんが、どう話を聞くかも大切なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1文の問い(前の列の生徒は成績が良いか)を、くじ引きの実験などで調べた話なので D。
Q2. How did the physics class choose seats?
teachers ... chose seats by lottery とあるので C。
Q3. In this passage, "fail" means ...
fail は「(試験・授業に)落ちる・不合格になる」なので B。
Teachers often say that students who sit at the front do better. But this could simply be because motivated students choose the front. To solve this problem, Perkins and Wieman randomly assigned seats in a large introductory physics class at the University of Colorado, and they switched the front and back halfway through the term.
In the first half, students in the back were about six times more likely to get an F than those in the front. A later study of more than 1,300 psychology students found that grades dropped by about 0.75 percentage points for each row further back. However, a ten-year study of about 1,100 students found no clear effect, so the results may depend on class size and teaching style.
124 words ・ CEFR B1
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先生はよく、前に座る生徒の方が成績が良いと言います。しかしそれは、単にやる気のある生徒が前を選ぶからかもしれません。この問題を解決するため、PerkinsさんとWiemanさんは、コロラド大学の大人数の物理入門の授業で座席を無作為に割り当て、学期の途中で前と後ろを入れ替えました。
学期の前半、後ろの席の学生は前の席の学生より、F評価を取る割合が約6倍高くなりました。その後、1,300人以上の心理学の学生を対象にした研究では、後ろに1列下がるごとに成績が約0.75パーセントポイント下がることがわかりました。しかし、約1,100人の学生を対象にした10年間の研究でははっきりした効果が見られなかったので、結果は授業の規模や教え方によって変わるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did Perkins and Wieman randomly assign seats?
やる気のある生徒が前を選ぶだけかもしれない(this problem)を解決するために無作為に割り当てたので A。
Q2. What did the psychology study find?
grades dropped by about 0.75 percentage points for each row further back とあるので B。
Q3. What can be inferred from the last sentence?
10年間の研究では効果がなく、結果は授業の規模や教え方しだいかもしれないと述べているので C。
Students in the front row tend to earn higher grades, and the obvious suspicion is that hardworking students simply choose to sit there. To pull apart the effect of the seat from the effect of the student, physicists Perkins and Wieman randomly assigned seats in a large introductory physics course, then swapped the front and back halfway through the semester.
Students who started at the back were roughly six times more likely to get an F, even though the instructors made efforts to engage them. A smaller difference in the other direction showed up for A grades. A study of economics students found that preference and actual position both count. Those who preferred the back did worse wherever they sat, while those pushed forward by a shortage of seats did somewhat better.
Proposed reasons include a clearer view, more eye contact with the instructor and fewer distractions in sight. The physics study, however, covered one course at one university, and the wider evidence is mixed. A ten-year analysis of about 1,100 students found no clear effect of seat location or seat type. Any front-row advantage may be largest in big lecture halls and weaker in classes built around discussion.
199 words ・ CEFR B2
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前の列の学生ほど成績が高い傾向がありますが、まず疑われるのは、まじめな学生がそこに座ることを選んでいるだけではないか、ということです。座席の影響を学生自身の影響から切り分けるため、物理学者のPerkinsさんとWiemanさんは、大人数の物理入門の授業で座席を無作為に割り当て、学期の途中で前と後ろを入れ替えました。
後ろから始めた学生は、教員が授業に巻き込もうと努力したにもかかわらず、F評価を受ける割合が約6倍高くなりました。A評価については、逆向きのより小さな差が見られました。経済学の学生を対象にした研究では、好みと実際の位置の両方が関係していることが分かりました。後ろを好む学生はどこに座っても成績が悪く、一方、席が足りずに前に座らされた学生はやや成績が良かったのです。
理由としては、見やすさ、先生と目が合いやすいこと、視界に入る気が散るものの少なさなどが挙げられています。しかし、物理の研究は一つの大学の一つの授業だけを対象にしたもので、ほかの証拠はまちまちです。約1,100人の学生を対象にした10年間の分析では、座席の位置やタイプのはっきりした効果は見つかりませんでした。前の席の利点があるとしても、それは大きな講義室で最も大きく、話し合い中心の授業では弱いのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What was the main purpose of randomly assigning seats?
To pull apart the effect of the seat from the effect of the student とあるので B。
Q2. According to the economics study, which students did somewhat better?
those pushed forward by a shortage of seats did somewhat better とあるので A。
Q3. Which limitation of the physics study does the author mention?
The physics study, however, covered one course at one university とあるので D。
重要単語
- seatA2名詞・動詞座席・座らせるI always choose a seat near the front.
be seated で「座っている」。Please be seated.(ご着席ください)は丁寧な表現。 - randomly assignC1動詞(句)無作為に割り当てるSeats were randomly assigned at the start.
assign A to B「A を B に割り当てる」。名詞 assignment は「課題・宿題」の意味でもよく使う。 - engagementB2名詞授業への関与・熱心さEngagement matters more than the seat itself.
動詞 engage in ~「~に従事する・取り組む」。「婚約」の意味もある。 - lecture hallB1名詞(句)講義室The lecture hall had more than 200 seats.
lecture は「講義」。give a lecture on ~「~について講義する」。 - preferenceB2名詞好みSeating preference was linked to grades.
動詞 prefer A to B「B より A を好む」。to を使う点が入試で狙われる。 - distractionB2名詞気が散るものThe back row has more distractions.
動詞 distract(気をそらす)。dis-(離れて)+tract(引く)=「注意を引き離す」。
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大学の物理の授業で、座席をくじ引きで決めたら、後ろの席からスタートした学生は前の席の学生よりF評価(不可)が約6倍多かったらしい。でも10年分のデータで「差なし」という研究もあって、話はそう単純じゃない。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Perkins & Wieman (2005) The Surprising Impact of Seat Location on Student Performance, The Physics Teacherdoi.org
- Benedict & Hoag (2004) Seating Location in Large Lectures: Are Seating Preferences or Location Related to Course Performance?, The Journal of Economic Educationdoi.org
- Meeks et al. (2013) The Impact of Seating Location and Seating Type on Student Performance, Education Sciencesdoi.org
- Will, Bischof & Kingstone (2020) The impact of classroom seating location and computer use on student academic performance, PLOS ONEdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








