月の砂の4割以上は「酸素」。月面基地の空気は足もとの砂から作る計画だ

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月には空気がないので、月の砂にも酸素はほとんど含まれていない
月の砂は重さの40〜45%が酸素。岩石の鉱物に結びついた形で含まれている。
- 対象
- 月の模擬砂
- 規模
- 地上の実験装置
- 研究の種類
- 実験室での技術実証
- 確かさ
- ★★★☆☆
月の砂(レゴリス)は重さの40〜45%が酸素。岩石の中に閉じこめられた酸素を、熱や電気で取り出す実験が進む。月面基地の呼吸用とロケット燃料に使う計画だ。
ひとことで言うと月の砂には、じつは酸素がたっぷり入っているよ。それを取り出して使う計画なんだ。
月には、空気がありません。では将来、月に基地をつくって人が長く暮らすとき、酸素はどうするのでしょう?
地球から運ぶ? それだと、ものすごいお金と燃料がかかります。そこで研究者たちが目をつけたのが、月の砂です。
じつは月の砂は、重さの40〜45%が酸素。足もとの砂そのものが、巨大な酸素のタンクなのです。
01酸素は「岩の中」に閉じこめられている
「空気がないのに、酸素がある?」と思うかもしれません。ポイントは、酸素が気体ではなく、岩石の一部として存在していることです。
月の表面は、レゴリスと呼ばれる細かい砂や砕けた岩でおおわれています。その主な成分は、ケイ素や鉄、アルミニウムなどが酸素と結びついた鉱物。地球の岩石とよく似ています。ESAによると、酸素は月の砂の中でいちばん多い元素です。
つまり、この「結びつき」をほどけば、酸素を取り出せるはずなのです。

02方法1:電気でほどく(ヨーロッパ)
酸素と金属が一度に手に入る。月面基地にとっては、空気と建築材料を同時につくれる「一石二鳥」の方法です。ESAはオランダの研究施設に、この技術を試す酸素プラントの試作機をつくりました。
03方法2:熱でほどく(アメリカ)
NASAは、別の方法に挑んでいます。
2023年、NASAジョンソン宇宙センターのチームは、月の模擬砂をレーザーで高温に熱し、炭素と反応させて酸素を取り出す実験(炭素熱還元)に成功しました。実験は、月面のような真空をつくれる直径約4.6mの巨大な球形の部屋の中で行われ、真空状態でこの方法を実証したのは初めてでした。
本番の月面では、レーザーの代わりに太陽の光を鏡で集めて熱することが想定されています。NASAの技術者は、この装置は1年で自分の重さの何倍もの酸素を作れる可能性がある、と説明しています。
04酸素は「息」だけでなく「燃料」にもなる
月でつくった酸素の使い道は、呼吸だけではありません。
ロケットは燃料を燃やすときに大量の酸素を使います。地球から打ち上げる宇宙船の重さの多くは、じつは燃料と酸素です。もし月で酸素をつくれれば、月から火星へ向かう宇宙船のガソリンスタンドを月に置けるかもしれません。
また、月の南極付近の永久影には水の氷があると考えられています。水を電気分解すれば酸素と水素が手に入るので、砂からの酸素と組み合わせて使うことも検討されています。
05まとめ
- 月の砂は重さの40〜45%が酸素。岩の鉱物に結びついている
- ヨーロッパは電気で、アメリカは熱で、酸素を取り出す実験に成功している
- 月の酸素は、呼吸用にもロケット燃料にも使える
将来の月面基地の宇宙飛行士は、「足もとの砂から作った空気」を吸って暮らすのかもしれません。空気のない世界で生きるヒントは、意外と足もとに落ちていたのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFuture Moon bases will need oxygen, but carrying it from Earth would be very expensive.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
There is no air on the Moon. So how can people breathe in a future Moon base? The answer may be under their feet. About 40 to 45 percent of Moon soil is oxygen. The oxygen is locked inside rocks.
Scientists in Europe and the US have taken oxygen out of fake Moon soil using electricity and heat. This oxygen can also be used for rockets.
66 words ・ CEFR A2
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月には空気がありません。では、将来の月面基地で人はどうやって呼吸するのでしょうか。答えは足もとにあるかもしれません。月の砂の約40〜45パーセントは酸素なのです。酸素は岩の中に閉じこめられています。
ヨーロッパとアメリカの科学者たちは、電気や熱を使って、まねして作った月の砂から酸素を取り出しました。この酸素はロケットにも使うことができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
月の砂に含まれる酸素を取り出して月面基地で使う話なので D。
Q2. How much of Moon soil is oxygen?
About 40 to 45 percent of Moon soil is oxygen. とあるので A。
Q3. In this passage, "locked inside" means the oxygen is ...
酸素は気体として漂っているのではなく、岩の中に「閉じこめられている」という意味なので C。
Future Moon bases will need oxygen, but carrying it from Earth would be very expensive. Fortunately, about 40 to 45 percent of the Moon's soil, called regolith, is oxygen by weight. It is not a gas, though. It is bonded with elements such as iron and aluminum inside minerals.
In 2020, researchers at the University of Glasgow, working with the European Space Agency, put simulated lunar soil into hot molten salt and passed electricity through it. They removed 96 percent of the oxygen in about 50 hours, and the leftover soil became metal. In 2023, a NASA team used a laser and carbon to extract oxygen in a vacuum chamber. The oxygen could be used for breathing and for rocket propellant.
121 words ・ CEFR B1
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将来の月面基地には酸素が必要ですが、地球から運ぶのはとても費用がかかります。幸い、レゴリスと呼ばれる月の砂は、重さの約40〜45パーセントが酸素です。ただし、それは気体ではありません。鉱物の中で、鉄やアルミニウムなどの元素と結びついているのです。
2020年、グラスゴー大学の研究者たちは欧州宇宙機関と協力し、模擬的な月の砂を高温の溶けた塩の中に入れて電気を流しました。彼らは約50時間で酸素の96パーセントを取り除き、残った砂は金属になりました。2023年には、NASAのチームが真空の部屋の中で、レーザーと炭素を使って酸素を取り出しました。この酸素は呼吸にも、ロケットの推進剤にも使えるでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
月の砂の酸素を取り出す実験と、その使い道を述べているので B。
Q2. What happened to the leftover soil in the Glasgow experiment?
the leftover soil became metal とあるので D。
Q3. Why would making oxygen on the Moon be useful?
第1文 carrying it from Earth would be very expensive から、現地で作れば費用を抑えられると分かるので A。
Any long-term human presence on the Moon will require oxygen, and launching it from Earth would be extremely costly. A promising alternative lies underfoot: oxygen makes up roughly 40 to 45 percent of lunar regolith by weight, making it, according to ESA, the most abundant element in the soil. It exists not as gas but chemically bound in minerals with silicon, iron and aluminum, so extracting it means breaking those bonds.
In 2020, researchers at the University of Glasgow, in collaboration with ESA, used molten salt electrolysis at about 950 degrees Celsius to remove 96 percent of the oxygen from a lunar soil simulant in about 50 hours, leaving behind a metal alloy that could serve as building material. In 2023, a NASA team demonstrated carbothermal reduction, heating simulant with a laser inside a large vacuum chamber, the first such test under vacuum. On the Moon, mirrors could concentrate sunlight instead. The oxygen could supply both breathing air and rocket propellant. However, these tests used simulants on Earth, and real regolith, with its fine, clinging dust and low gravity, has yet to be processed on the Moon.
187 words ・ CEFR B2
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月に人が長期間とどまるには酸素が必要になりますが、それを地球から打ち上げるのは非常に費用がかかります。有望な代わりの手段は足もとにあります。酸素は月のレゴリスの重さのおよそ40〜45パーセントを占めており、ESAによると、砂の中で最も多い元素なのです。酸素は気体としてではなく、ケイ素や鉄、アルミニウムと化学的に結びついた鉱物として存在しているので、取り出すにはその結びつきを断ち切る必要があります。
2020年、グラスゴー大学の研究者たちはESAと協力し、約950℃の溶融塩電解を用いて、模擬的な月の砂から約50時間で酸素の96パーセントを取り除き、あとには建築材料として使えそうな金属の合金が残りました。2023年には、NASAのチームが大きな真空の部屋の中でレーザーを使って模擬砂を熱する炭素熱還元を実証しました。真空状態でこうした試験を行ったのは初めてでした。月面では、代わりに鏡で太陽光を集めることができるでしょう。こうして得た酸素は、呼吸用の空気にもロケットの推進剤にもなりえます。ただし、これらの試験は地上で模擬砂を使ったもので、細かく付着しやすいちりをもつ本物のレゴリスを、低重力の月面で処理したことはまだありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
溶融塩電解と炭素熱還元という2つの方法を紹介し、最後に模擬砂での実験にすぎないという限界に触れているので C。
Q2. What was special about NASA's 2023 test?
the first such test under vacuum とあるので B。使ったのは模擬砂で、場所は地上。
Q3. What is the author's point in the final sentence?
has yet to be processed on the Moon(月面ではまだ処理されていない)と述べ、実用化前の課題を示しているので D。
重要単語
- regolithC1名詞レゴリス(天体表面の砂や砕けた岩)Lunar regolith is rich in oxygen.
ギリシャ語の rhegos(毛布)+lithos(石)。岩盤をおおう「石の毛布」。 - extractB2動詞取り出す、抽出するEngineers extracted oxygen from the simulant.
ex-(外へ)+tract(引く)。名詞 extract は「抽出物・抜粋」。vanilla extract「バニラエッセンス」。 - electrolysisC1名詞電気分解Molten salt electrolysis releases oxygen.
electro-(電気)+-lysis(分解)。analysis(分析=分けてほどく)と同じ -lysis。 - simulantC1名詞模擬物質The test used lunar soil simulant.
simulate(まねる)から。本物の月の砂は貴重なので、成分を似せた地上の砂で実験する。 - propellantC1名詞推進剤Oxygen is also used as rocket propellant.
propel(推し進める)+-ant。燃料と、それを燃やす酸化剤(酸素など)をまとめて指す。 - in-situC1形容詞現地でのIn-situ resource utilization means using local materials.
ラテン語で「その場で」。ISRU(in-situ resource utilization=現地資源利用)は宇宙開発のキーワード。 - abundantB2形容詞豊富なOxygen is the most abundant element in Moon soil.
名詞 abundance。be abundant in ~「~が豊富だ」。反対は scarce(乏しい)。
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空気のない月で、どうやって息をする? じつは月の砂は重さの4割以上が酸素。岩に閉じこめられた酸素を熱や電気で取り出す実験が進み、グラスゴー大学の実験では約50時間で砂の酸素の96%を取り除いた。月面基地の空気は足もとから作る時代へ。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Lomax et al. (2020) Proving the viability of an electrochemical process for the simultaneous extraction of oxygen and production of metal alloys from lunar regolith, Planetary and Space Sciencedoi.org
- NASA (2023) NASA Successfully Extracts Oxygen from Lunar Soil Simulantnasa.gov
- ESA (2020) ESA opens oxygen plant – making air out of moondustesa.int
- NASA Technical Reports Server, Carbothermal Reduction Demonstration (CaRD)ntrs.nasa.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












