宇宙・NASAビミョー

宇宙エレベーターは本当に作れるのか? 足りないのは“たった1本の最強ケーブル”

宇宙エレベーターは本当に作れるのか? 足りないのは“たった1本の最強ケーブル”

読む前に予想してみよう!

宇宙エレベーターは、地球の自転と同じ時間で1周する高さ(静止軌道)を利用する

研究カード(どんな研究?)
対象
宇宙エレベーター構想
規模
物理計算・設計研究
研究の種類
理論・工学検討
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

宇宙エレベーターは物理的には成り立つ構想。ただし約10万kmの長さに耐える超高強度ケーブルがまだ作れず、実現は未定。

ひとことで言うと宇宙までのびるエレベーターは、すごく強いひもができれば作れるかも。

もくじ
  1. しくみは「地球をハンマー投げ」
  2. アイデアは100年以上前から
  3. 最大の壁は「ケーブルの強さ」
  4. ほかにも課題は山積み
  5. まとめ

ボタンを押すと、エレベーターが静かに動き出す。窓の外の景色はどんどん小さくなり、やがて青い地球の丸みが見えてくる──。

宇宙エレベーター。SF小説やアニメでおなじみの乗り物ですが、実は物理学的にはちゃんと成り立つと考えられている、まじめな構想です。

では、なぜまだ作られていないのでしょう? 答えは、たった1本のケーブルにあります。

01しくみは「地球をハンマー投げ」

宇宙エレベーターのカギになるのが、静止軌道です。

地上から約3万6000kmの高さでは、人工衛星が地球を1周するのにかかる時間が、地球の自転と同じ24時間になります。だから地上から見ると、衛星が空の一点に止まっているように見えるのです。天気予報の気象衛星「ひまわり」も、この高さにいます。

宇宙エレベーターは、この静止軌道を利用します。

  1. 静止軌道から、地上に向けてケーブルを垂らす
  2. 同時に、宇宙側にもケーブルを伸ばし、先端に重り(カウンターウェイト)をつける
  3. 地球の自転による遠心力で、ケーブル全体がピンと張られる

イメージは、ハンマー投げ。選手がハンマーを振り回すと、ワイヤーがピンと張りますよね。地球がくるくる回ることで、宇宙までのびたケーブルを引っぱり続けるのです。

地球の自転による遠心力で、ケーブルをピンと張る
地球の自転による遠心力で、ケーブルをピンと張る

02アイデアは100年以上前から

宇宙へ届く塔のアイデアは、19世紀末のロシアの科学者ツィオルコフスキーまでさかのぼります。その後、ケーブルを使う形のアイデアがロシアやアメリカで考えられてきました。

その後2000年には、アメリカの物理学者ブラッドリー・エドワーズが同じく『Acta Astronautica』で、カーボンナノチューブを使った細いリボン状のケーブルを少しずつ太くしていく、より具体的な建設方法を提案しました。

03最大の壁は「ケーブルの強さ」

ここで最大の問題が出てきます。ケーブルの長さは、重りの位置まで含めると約10万kmにもなると考えられています。地球を2周半するほどの長さです。

これだけ長いと、ケーブルは自分の重さで切れてしまうおそれがあります。鉄はもちろん、現在の丈夫な人工繊維でも、まったく強さが足りません。

物理学者アラヴィンドが2007年に学術誌『American Journal of Physics』で示した計算でも、重さのわりにどれだけ強いか(比強度)が鋼鉄よりはるかに高い材料でなければ、ケーブルは持ちこたえられないことが分かります。

そこで期待されているのが、カーボンナノチューブです。炭素の原子が網目のようにつながって、ストロー状になった物質。髪の毛の何万分の1という細さなのに、理論上は鋼鉄よりはるかに強く、しかも軽いとされています。

ただし、それはごく短い1本の話。何万kmもの長さで、その強さを保ったままケーブルを作る技術は、まだありません。

04ほかにも課題は山積み

ケーブル以外にも、乗り越えるべき壁はたくさんあります。

  • 宇宙ゴミや隕石がケーブルにぶつかったら?
  • 雷や強風、地上の天気への対策は?
  • のぼるのに何日もかかる長い旅の間、放射線から乗客をどう守る?

一方で、実現に向けた小さな一歩も始まっています。日本では、大学の研究チームが小型衛星を使って、宇宙でケーブルを伸ばし、そこを小さな装置が移動する実験に挑戦しました。日本の建設会社が、2050年ごろの完成をめざす構想を発表したこともあります。

05まとめ

  • 宇宙エレベーターは、静止軌道と遠心力を利用する、物理的に成り立つ構想
  • 最大の壁は、約10万kmに耐える超高強度ケーブルがまだ作れないこと
  • 実現できれば、ロケットよりもずっと安く宇宙へ行けると期待されている

「作れる?」の答えは、いまのところ「理論上は作れる。でも材料がまだない」。判定はビミョーです。あなたが大人になるころ、その「最強のケーブル」はできているでしょうか。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA space elevator sounds like science fiction, but it is physically possible. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A space elevator sounds like science fiction, but it is physically possible. The key is geostationary orbit, about 36,000 kilometers above the Earth, where a satellite circles the planet once every 24 hours and seems to stay still in the sky. A cable would hang down from this height to the ground, while another part would extend farther into space with a counterweight at the end.

The Earth's rotation would keep the whole cable tight. The biggest problem is the cable itself. Including the counterweight, it would be about 100,000 kilometers long, so it could break under its own weight. Carbon nanotubes are much stronger and lighter than steel, but so far only very short ones can be made.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

宇宙エレベーターはSFのように聞こえますが、物理的には可能です。カギとなるのは、地上から約3万6000kmの高さにある静止軌道です。そこでは人工衛星が24時間に1回地球を回り、空の一点に止まっているように見えます。

ケーブルはこの高さから地上へ垂らされ、別の部分は宇宙のさらに遠くへのび、その先端に重りがつけられます。地球の自転によって、ケーブル全体がピンと張られるのです。最大の問題はケーブルそのものです。重りまで含めると長さは約10万kmにもなるため、自分の重さで切れてしまうおそれがあります。カーボンナノチューブは鋼鉄よりはるかに強くて軽いのですが、今のところ作れるのはごく短いものだけです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is special about geostationary orbit?

Q2. What keeps the cable tight?

Q3. Why can't a space elevator be built today?

重要単語

  • space elevatorB2
    名詞(句)宇宙エレベーターA space elevator could carry cargo to orbit. elevator は elevate(持ち上げる)+-or(~するもの)。イギリス英語では lift。
  • geostationary orbitC1
    名詞(句)静止軌道Weather satellites often sit in geostationary orbit. geo-(地球)+stationary(静止した)。stationery(文房具)とつづりを混同しやすいので注意。
  • counterweightC1
    名詞重り(つり合いおもり)A counterweight keeps the cable tight. counter-(反対側の)+weight。エレベーターにも実際に使われている。
  • tensile strengthC1
    名詞(句)引っ張り強さThe cable needs enormous tensile strength. tensile は tension(張力)の形容詞。引っぱられても切れない強さのこと。
  • carbon nanotubeC1
    名詞(句)カーボンナノチューブCarbon nanotubes are light but very strong. nano- は「10億分の1」。nanometer, nanotechnology など先端技術の英文で頻出。日本の飯島澄男が発見したことでも有名。
  • violateB2
    動詞違反する・反するThe idea does not violate the laws of physics. violate the law / rules「法律・規則に違反する」が基本コロケーション。名詞は violation。
  • obstacleB2
    名詞障害(物)The biggest obstacle is the strength of the cable. ob-(前に)+sta(立つ)=「前に立ちはだかるもの」。overcome an obstacle「障害を乗り越える」が定番。

動画でもっと知る

地上から宇宙までケーブルを張って、エレベーターで宇宙へ。SFみたいだけど、物理的にはちゃんと成り立つ構想らしい。問題は、長さ約10万kmでも切れない最強のケーブルがまだ作れないこと。カギはカーボンナノチューブ。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Pearson (1975) The orbital tower: A spacecraft launcher using the Earth's rotational energy, Acta Astronauticadoi.org
  2. Edwards (2000) Design and deployment of a space elevator, Acta Astronauticadoi.org
  3. Aravind (2007) The physics of the space elevator, American Journal of Physicsdoi.org
  4. 大林組, 宇宙エレベーター建設構想, 季刊大林obayashi.co.jp