心理学ホント

好きなパズルにお金を払ったら、やる気が下がった。ごほうびの落とし穴「アンダーマイニング効果」

好きなパズルにお金を払ったら、やる気が下がった。ごほうびの落とし穴「アンダーマイニング効果」

読む前に予想してみよう!

どんなごほうびでも、あげればやる気は必ず上がる

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・幼児など
規模
128の実験のメタ分析
研究の種類
実験+メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

楽しくてやっていたことに「ごほうび」を約束すると、ごほうびがなくなった途端にやる気が下がることがある。128の実験の分析でも確認。ただし褒め言葉は逆。

ひとことで言うと「好き」でやってることにごほうびをつけると、「好き」が減ることがある!

もくじ
  1. パズル1問につき1ドル払ったら…
  2. 幼稚園でも起きた
  3. 128の実験で確認、ただし「褒め言葉」は別
  4. まとめ

「テストで100点取ったらゲーム買ってあげる」「1冊読んだら100円ね」。

やる気を出させるために、ごほうびを約束する。家庭でも職場でもよくある作戦です。

ところが心理学には、ごほうびが、かえってやる気を奪ってしまうことがある、という研究があります。名前はアンダーマイニング効果。「アンダーマイン」とは、土台をこっそり掘り崩す、という意味です。

01パズル1問につき1ドル払ったら…

もともとは「楽しいから」解いていたパズル。でも、お金をもらううちに、「お金のために解くもの」に意味が変わってしまった。だからお金がなくなると、解く理由も消えてしまったのです。

02幼稚園でも起きた

1973年には、幼稚園児でも同じことが確かめられました。

お絵かきが好きな子どもたちを、「上手に描いたら賞状をあげる」と約束されたグループと、約束なしのグループに分けました。すると、賞状を約束されて描いた子どもたちは、その後の自由遊びの時間にお絵かきをする時間が減りました。

面白いのは、約束なしで、描いた後に思いがけず賞状をもらったグループでは、やる気の低下が見られなかったこと。問題は「ごほうび」そのものより、「〜したらあげる」という取引の形にあったのです。

「ごほうびのため」になると、楽しさが見えなくなる
「ごほうびのため」になると、楽しさが見えなくなる

03128の実験で確認、ただし「褒め言葉」は別

1999年、デシらは128の実験をまとめたメタ分析を発表しました。

結果、事前に約束された、形のあるごほうび(お金、賞品など)は、とくに楽しい活動への内発的なやる気を下げる傾向がはっきり出ました。一方で、言葉で褒める(ポジティブなフィードバック)は、むしろやる気を高める傾向がありました。

さらに2010年、日本の研究者村山航らは、脳の活動を測る実験でこの効果を調べました。成功するとお金がもらえたグループは、お金がなくなった後、課題に取り組むときの脳の「やる気」に関わる部位(線条体)の活動が下がっていたのです。

04まとめ

ごほうびは「悪」ではありません。でも、使い方を間違えると「好き」を壊してしまうことがあります。

もしあなたが今、何かを楽しんで続けているなら、その「楽しい」がいちばんのエンジン。誰かのやる気を応援したいときも、ごほうびより先に、その人の「楽しい」を大事にすることから始めてみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPromising rewards is a common way to encourage people, but it can sometimes backfire. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Promising rewards is a common way to encourage people, but it can sometimes backfire. In 1971, psychologist Edward Deci asked college students to solve puzzles that most people found enjoyable. One group was paid a dollar for each puzzle they solved.

Later, during a free period when they thought no one was watching, the paid students spent less time on the puzzles after the payments stopped. In 1973, a similar result appeared with young children who liked drawing. Children who were promised a certificate drew less during free play afterward, but children who received one as a surprise did not. A 1999 analysis of 128 experiments confirmed that expected tangible rewards often lower motivation, while praise tends to raise it.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ごほうびを約束することは人を励ますよくある方法ですが、ときには逆効果になることがあります。1971年、心理学者エドワード・デシは、大学生にほとんどの人が楽しいと感じるパズルを解いてもらいました。一方のグループは、パズルを1問解くごとに1ドル支払われました。

その後、誰にも見られていないと思っている自由時間に、お金をもらっていた学生は、支払いが終わった後、パズルに費やす時間が少なくなりました。1973年には、絵を描くのが好きな幼い子どもたちで同じような結果が出ました。賞状を約束された子どもは、その後の自由遊びの時間に絵を描くことが減りましたが、思いがけず賞状をもらった子どもはそうなりませんでした。128の実験を分析した1999年の研究は、事前に約束された形のあるごほうびはしばしばやる気を下げる一方、褒め言葉はやる気を高める傾向があることを確かめました。

4択リーディングクイズ

Q1. When did the researchers observe the students' interest in the puzzles?

Q2. Which children did NOT show a drop in drawing?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • intrinsic motivationC1
    名詞(句)内発的動機づけ(好きだからやる気持ち)Intrinsic motivation makes learning fun. intrinsic は「本来備わっている」。反対は extrinsic(外からの)。セットで入試頻出。
  • extrinsic rewardC1
    名詞(句)外的報酬Money is a typical extrinsic reward. extr-(外の)は external, extra と同じ。お金・賞品・成績など外から与えられるもの。
  • undermineC1
    動詞弱める・むしばむRewards can undermine interest in a task. under(下を)+mine(掘る)。土台をこっそり掘り崩すイメージ。undermine confidence も頻出。
  • free-choice periodC1
    名詞(句)自由選択時間Researchers watched what participants did in the free-choice period. 内発的動機づけを「自発的に取り組む時間」で測る実験手法の用語。
  • autonomyC1
    名詞自律性People need a sense of autonomy. auto-(自分)+nomy(法・規則)=自分でルールを決めること。形容詞 autonomous。
  • backfireB2
    動詞裏目に出る・逆効果になるPromising rewards can sometimes backfire. もとは銃や車のエンジンの「逆火」。計画が意図と反対の結果になるときの定番語。
  • tangibleC1
    形容詞形のある・具体的なMoney and prizes are tangible rewards. 「触れられる」が原義。tangible benefits「目に見える利益」。反対は intangible(無形の)。

動画でもっと知る

4コマでわかる

好きなパズルにお金を払ったら、やる気が下がった。ごほうびの落とし穴「アンダーマイニング効果」の4コマ漫画
楽しいパズルを解くたびに1ドル払ったら、お金をやめた後の自由時間、パズルで遊ぶ時間が減ったらしい。「好きでやる」が「お金のためにやる」にすり替わる。128の実験をまとめた分析でも同じ傾向。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Deci (1971) Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Lepper, Greene & Nisbett (1973) Undermining children's intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the "overjustification" hypothesis, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Deci, Koestner & Ryan (1999) A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation, Psychological Bulletindoi.org
  4. Murayama et al. (2010) Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation, PNASdoi.org