心理学ホント

「絶対に見ないでください」が逆効果になるワケ。禁止で燃える心理的リアクタンス

「絶対に見ないでください」が逆効果になるワケ。禁止で燃える心理的リアクタンス

読む前に予想してみよう!

「親に反対されるほど恋が燃え上がる(ロミオとジュリエット効果)」は、研究で何度も確かめられた定説だ

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など
規模
各実験 数十〜数百人+メタ分析
研究の種類
実験・メタ分析・追試
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

自由を奪われそうになると、取り戻したくなって反発する「心理的リアクタンス」。暴力的な番組に警告ラベルをつけると、かえって見たくなる人が増えたという研究も。

ひとことで言うと「ダメ」と言われるほど、やりたくなっちゃう心のクセ!

もくじ
  1. 「自由を取り戻したい」という心のバネ
  2. 警告ラベルが「見たい」を呼ぶ
  3. リアクタンスの正体は「怒り+反論」
  4. どんでん返し:「反対されるほど燃える恋」は?
  5. まとめ

「今から勉強しようと思ってたのに、『勉強しなさい!』って言われて一気にやる気がなくなった」

これ、多くの人が一度は経験しているのではないでしょうか。

自分で決めようとしていたことを、人に命令されたり禁止されたりすると、急に反発したくなる。この心の働きを、心理学では心理的リアクタンスと呼びます。

01「自由を取り戻したい」という心のバネ

この理論を1966年に提唱したのは、アメリカの心理学者ジャック・ブレームです。

人は「自分のことは自分で選べる」という自由を大切にしています。その自由が脅かされると、心の中でバネが押し縮められたような状態になり、自由を取り戻そうと反発する──それがリアクタンスです。

反発のしかたは、たとえばこんな形で現れます。

  • 禁止されたものが、前より魅力的に見える
  • 言われたことと、わざと反対のことをしたくなる
  • 押しつけてくる相手にイラッとする

02警告ラベルが「見たい」を呼ぶ

注意をうながすつもりのラベルが、かえって「見ちゃダメなもの=おもしろいもの」という合図になってしまうことがあるのです。しかもこの効果は、ラベルの出どころが権威ある機関のときや、もともと反発しやすい性格の人で強く出ました。一方、内容を淡々と伝える「情報ラベル」では、警告ラベルほど見たい気持ちは高まりませんでした。「禁止」と「情報提供」では、受け取られ方が違うのです。

日本では、この「禁止されると逆にやりたくなる」現象をカリギュラ効果と呼ぶこともあります。過激な内容で話題になった海外映画の題名に由来する、日本で広まった呼び名で、心理学の正式な専門用語というより通称です。

「入っちゃダメ」のテープほど、向こう側が気になってしまう
「入っちゃダメ」のテープほど、向こう側が気になってしまう

03リアクタンスの正体は「怒り+反論」

2013年、リアクタンスの研究をまとめたメタ分析(Rains)では、リアクタンスは怒りの気持ちと、頭の中で浮かぶ反論とが絡み合ったものとして捉えると、うまく説明できることが示されました。

健康キャンペーンの研究でも、「絶対に〜しなければならない」のような強い言い方は、リアクタンスを高め、説得の効果を下げることがあると報告されています(Dillard & Shen, 2005)。

04どんでん返し:「反対されるほど燃える恋」は?

リアクタンスの例としてよく紹介されるのが、「親に反対されるほど恋が燃え上がる」ロミオとジュリエット効果。1972年の研究がもとになっています。

ところが2014年、研究者たちが改めてデータを集めて再検証したところ、周りの反対はむしろ関係の満足度や愛情を下げる方向で、元の研究のような結果は再現されませんでした。家族や友だちに応援されている関係の方が、うまくいきやすいようです。

リアクタンスは本物の現象でも、それで何でも説明できるわけではない、ということですね。

「考えないで」と言われると逆に考えてしまう話は、シロクマ実験の記事で紹介しています。

05まとめ

「ダメ」と言われるとやりたくなるのは、あなたがへそ曲がりだからではなく、自分で選びたいという、人間にとって大切な気持ちの表れです。

だからこそ、人を動かしたいときは押しつけるより選ぶ自由を残すこと。そして自分が反発したくなったときは、それが本当に自分の望みなのか、ちょっと立ち止まってみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPsychological reactance is the urge to push back when we feel our freedom is being taken away. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Psychological reactance is the urge to push back when we feel our freedom is being taken away. The idea was proposed in 1966 by the American psychologist Jack Brehm. When people are ordered or forbidden to do something, they may find the forbidden option more attractive or feel annoyed with the person giving orders.

In a 1996 study, warning labels saying that a TV show contained violence actually made some viewers more interested in watching it. In Japan, this is sometimes called the "Caligula effect." However, not every popular example is supported. The "Romeo and Juliet effect", the idea that love grows stronger when parents disagree, was not confirmed in a 2014 study.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

心理的リアクタンスとは、自由が奪われつつあると感じたときに反発したくなる衝動です。この考えは1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレームによって提唱されました。何かをするよう命令されたり禁止されたりすると、人は禁じられた選択肢をより魅力的に感じたり、命令する人にイライラしたりすることがあります。

1996年の研究では、テレビ番組に暴力が含まれるという警告ラベルが、実際には一部の視聴者のその番組を見る興味を高めました。日本では、これは「カリギュラ効果」と呼ばれることもあります。しかし、よく知られた例がすべて裏付けられているわけではありません。親が反対すると恋が燃え上がるという「ロミオとジュリエット効果」は、2014年の研究では確認されませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. Who proposed the idea of psychological reactance?

Q2. What did the 1996 study find about warning labels?

Q3. What does the writer suggest by mentioning the Romeo and Juliet effect?

重要単語

  • reactanceC1
    名詞心理的反発(リアクタンス)Strict rules can cause reactance in teenagers. react(反応する)から。電気では「リアクタンス(交流回路で電流を妨げる成分)」の意味もある。
  • forbiddenB2
    形容詞禁じられたForbidden fruit always seems sweeter. forbid–forbade–forbidden。forbid 人 to do / from doing の語法が頻出。forbidden fruit は聖書由来。
  • freedomA2
    名詞自由People value the freedom to choose. freedom of speech(言論の自由)、freedom from ~(~からの解放)。liberty とほぼ同義。
  • backfireC1
    動詞裏目に出るThe warning label backfired and attracted more viewers. 自動詞で使い、計画・作戦が主語になる。The plan backfired on him.(彼にとって裏目に出た)。
  • counterargumentC1
    名詞反論She quickly came up with a counterargument. counter-(反対の)+argument。自由英作文で「予想される反論に触れる」ときに使える語。
  • scrutinyC1
    名詞精査、綿密な調査The claim did not survive careful scrutiny. 動詞 scrutinize。under scrutiny(精査されて)、withstand scrutiny(精査に耐える)。
  • undermineC1
    動詞(徐々に)損なう、弱めるHarsh words can undermine trust. under(下を)+mine(掘る)で「土台を掘り崩す」。入試の長文・語彙問題の頻出語。

動画でもっと知る

「この番組には暴力的な内容が含まれます」という警告ラベル。見る人を減らすためのはずが、かえって見たい気持ちを高めることがあるらしい。禁止されると燃える「心理的リアクタンス」。「勉強しなさい」が逆効果なのも同じ仕組み。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Steindl et al. (2015) Understanding psychological reactance: New developments and findings, Zeitschrift für Psychologiedoi.org
  2. Bushman & Stack (1996) Forbidden fruit versus tainted fruit: Effects of warning labels on attraction to television violence, Journal of Experimental Psychology: Applieddoi.org
  3. Rains (2013) The nature of psychological reactance revisited: A meta-analytic review, Human Communication Researchdoi.org
  4. Dillard & Shen (2005) On the nature of reactance and its role in persuasive health communication, Communication Monographsdoi.org
  5. Sinclair, Hood & Wright (2014) Revisiting the Romeo and Juliet effect (Driscoll, Davis, & Lipetz, 1972): Reexamining the links between social network opinions and romantic relationship outcomes, Social Psychologydoi.org