バナナを電話にする2歳児はすごい。でも「ごっこ遊びで頭が良くなる」は思ったより証拠が弱かった

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ごっこ遊びが子どもの知能や言葉の発達を高めるという因果関係は、科学的にしっかり証明されている
2013年の大規模なレビューでは、ごっこ遊びが発達の原因になるという証拠は弱く、方法上の問題も多いと指摘された。
- 対象
- 幼児・小学生
- 規模
- 数十〜180人程度の実験+大規模レビュー
- 研究の種類
- 理論・実験・レビュー
- 確かさ
- ★★☆☆☆
ごっこ遊びは、現実と"ふり"を同時に頭で扱う高度な能力。ただし「ごっこ遊びで発達が伸びる」という証拠は思ったより弱かった。"なりきり"で粘り強くなった実験も。
ひとことで言うとごっこ遊びは天才的な頭の使い方。でも「やらせれば賢くなる」とは限らない!
2歳くらいの子どもが、バナナを耳に当てて「もしもし?」。積み木をケーキに見立てて「どうぞ」。
大人から見ると、ほほえましい遊びです。でも発達心理学者たちは、このごっこ遊びに、人間の心のとても高度な働きを見出してきました。
一方で、「ごっこ遊びをたくさんさせれば頭が良くなる」という期待には、ちょっと待ったの声も上がっています。
01バナナを電話にするのは、実はすごいこと
考えてみてください。バナナを電話に見立てている子どもは、それが本当はバナナだと分かっています。お腹がすけば食べるでしょう。でも同時に、「今は電話ということにしている」。
現実の世界と、"ふり"の世界。2つを頭の中で混ぜずに、同時に扱っているのです。
1987年、心理学者アラン・レスリーは、この能力が、他の人の心(考えていること、信じていること)を推測する「心の理論」の土台になっているのではないか、と提案しました。ごっこ遊びは、だいたい1歳半〜2歳ごろから見られ始めます。
02「空想の友達」は珍しくない
ごっこ遊びの延長線上にあるのが、空想の友達(イマジナリー・フレンド)です。
空想の友達がいると、「この子は大丈夫?」と心配する親もいます。でも研究から見ると、それは多くの子どもにとってごく自然な発達の一コマなのです。

03どんでん返し:「ごっこ遊びで賢くなる」は証拠が弱い
ここからが今回の"マジか"ポイントです。
ごっこ遊びは、言葉、創造性、問題解決、感情のコントロールなど、さまざまな発達に役立つと言われてきました。幼児教育でも、ごっこ遊びを積極的に取り入れることがすすめられてきました。
ところが2013年、心理学者アンジェリン・リラードらが、この分野の研究を総点検したところ、驚きの結論が出ます。ごっこ遊びが発達の"原因"になっているという証拠は、全体として弱いというのです。
多くの研究は、「ごっこ遊びをよくする子は○○の力も高い」という関連を示しているだけで、どちらが原因かは分かりません。また、実験的な研究でも、参加者が少ない、評価する人が条件を知っていた、大人との関わりの量など他の要因が混ざっている、といった問題が多く見つかりました。
リラードらは、ごっこ遊びは発達に役立つ「多くの道のひとつ」かもしれないし、発達の"結果"として現れているだけかもしれない、と慎重にまとめています。
04でも「なりきり」には面白い効果も
一方、ごっこ遊びに関連する、面白い実験結果もあります。
2017年の研究では、4歳と6歳の子どもに、わざと退屈な作業を続けてもらいました(すぐ横には楽しいゲームの誘惑あり)。そのとき、バットマンなど好きなキャラクターになりきって「バットマンは頑張ってる?」と自分に問いかけた子どもは、ふつうに取り組んだ子どもより長く作業を続けられたのです。研究者はこれを「バットマン効果」と呼びました。
05まとめ
バナナを電話にする子どもの頭の中では、人間ならではの高度な心の働きが動いています。それは間違いなく、すごいことです。
ただ、「ごっこ遊びをさせれば賢くなる」と大人の目的を押しつけるのは、科学的にも少し先走りかもしれません。ごっこ遊びは、子ども自身が楽しむためのもの。その楽しさを、大人は見守っていけばいいのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen a toddler uses a banana as a pretend phone, she is doing something impressive.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
A two-year-old child holds a banana to her ear and says, "Hello?" She knows it is a banana, but she pretends it is a phone. This is called pretend play. It is a smart way of thinking. Many people believe pretend play makes children smarter.
But a big review of studies in 2013 found that the evidence for this is weak. Children should play just because it is fun.
69 words ・ CEFR A2
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2歳の子どもがバナナを耳に当てて「もしもし?」と言います。彼女はそれがバナナだとわかっていますが、電話のふりをしているのです。これはごっこ遊びと呼ばれます。それは頭の良い考え方です。
多くの人は、ごっこ遊びで子どもが賢くなると信じています。しかし2013年の大規模な研究のレビューで、その証拠は弱いことがわかりました。子どもは、ただ楽しいから遊べばいいのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ごっこ遊びとは何か、そして研究がそれについて何を示しているかがテーマなので C。
Q2. What did the 2013 review find?
the evidence for this is weak とあるので B。
Q3. In this passage, "pretends" means she ...
pretend は「~のふりをする」。バナナを電話であるかのように扱うので A。
When a toddler uses a banana as a pretend phone, she is doing something impressive. She knows it is really a banana, yet she treats it as a phone, keeping reality and imagination apart in her mind. In 1987, a psychologist suggested that this ability may be the basis for understanding other people's thoughts.
Pretend play usually begins around 18 months to two years of age. A 2004 survey also found that about 65% of children had an imaginary friend by around age seven. Many people believe that pretend play improves children's development. However, a 2013 review concluded that the evidence that pretend play causes better development is weak, because many studies only showed connections.
115 words ・ CEFR B1
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幼児がバナナを電話に見立てて使うとき、彼女は感心するようなことをしています。それが本当はバナナだとわかっていながら電話として扱い、頭の中で現実と想像を分けて保っているのです。1987年、ある心理学者は、この能力が他人の考えを理解することの土台になっているかもしれないと提案しました。
ごっこ遊びはふつう、生後18か月から2歳ごろに始まります。また2004年の調査では、7歳ごろまでに約65%の子どもが空想の友達を持っていたことがわかりました。多くの人は、ごっこ遊びが子どもの発達を高めると信じています。しかし2013年のレビューは、ごっこ遊びがより良い発達を引き起こすという証拠は弱いと結論づけました。多くの研究が関連を示しただけだったからです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why is using a banana as a phone "impressive"?
keeping reality and imagination apart in her mind とあり、現実とふりを同時に扱える点がすごいので A。
Q2. By around age seven, about how many children had an imaginary friend?
about 65% of children had an imaginary friend by around age seven とあるので D。
Q3. Why did the 2013 review say the evidence was weak?
because many studies only showed connections とあり、関連は示しても原因は示せていないので B。
A toddler holds a banana to her ear and says "Hello?" She is doing something mentally demanding. She knows the object is a banana while treating it as a telephone, without mixing up the real and the pretend worlds. In 1987, Alan Leslie proposed that this capacity might underlie theory of mind, the ability to infer what others think and believe.
Pretend play typically emerges between 18 months and two years. A 2004 study found that roughly two-thirds of children had had an imaginary companion by about age seven, so such companions appear to be a normal part of development. It is widely assumed that pretend play boosts language, creativity and self-regulation.
A 2013 review led by Angeline Lillard found only weak evidence that it causes any of these. Most studies were correlational. Experimental ones often had small samples, evaluators who knew which condition children were in, and confounds such as the amount of adult interaction.
Pretend play may be one of many routes to development, or merely a by-product of it. Narrower effects do turn up. In a 2017 study, four- and six-year-olds kept working longer at a boring task when they pretended to be a hero like Batman.
200 words ・ CEFR B2
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よちよち歩きの子どもがバナナを耳にあてて「もしもし?」と言います。この子は頭を使う高度なことをしています。それがバナナだとわかっていながら電話として扱い、しかも現実とごっこの世界を混同しないのです。
1987年、アラン・レスリーは、この能力が「心の理論」、つまり他人が何を考え、何を信じているかを推測する能力の土台になっているのではないかと提案しました。ごっこ遊びはたいてい生後18か月から2歳の間に現れます。2004年の研究では、7歳ごろまでに子どものおよそ3分の2が空想上の友だちを持ったことがあるとわかり、そうした友だちは発達のふつうの一部だと考えられます。
ごっこ遊びは言葉や創造性、自己制御を伸ばすと広く思われています。しかし、アンジェリン・リラードが率いた2013年のレビューでは、ごっこ遊びがそれらの原因になっているという証拠は弱いものしか見つかりませんでした。ほとんどの研究は相関研究でした。実験研究も、サンプルが小さかったり、評価者が子どもの条件を知っていたり、大人との関わりの量といった交絡要因があったりすることが多かったのです。
ごっこ遊びは発達へのたくさんの道の1つかもしれませんし、発達の副産物にすぎないのかもしれません。もっと限られた効果なら見つかっています。2017年の研究では、4歳と6歳の子どもがバットマンのようなヒーローになりきると、退屈な課題により長く取り組み続けました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
ごっこ遊びが高度な能力であることを述べた後、found only weak evidence that it causes any of these というレビューの結論を中心に論じているので D。
Q2. Which problem with experimental studies is mentioned?
evaluators who knew which condition children were in とあるので B。
Q3. What does "merely a by-product of it" suggest?
by-product は「副産物」。ごっこ遊びは発達の原因ではなく、発達の結果として現れているだけかもしれない、という意味なので A。
重要単語
- pretend playB2名詞(句)ごっこ遊びPretend play appears around age two.
pretend to do / pretend that ~ で「~のふりをする」。make-believe も同義。 - imaginationB1名詞想像力Children have rich imaginations.
形容詞は imaginary(架空の)、imaginative(想像力豊かな)、imaginable(想像できる)の3つを区別するのが入試頻出。 - imaginary companionC1名詞(句)空想の友達Many children have an imaginary companion.
imaginary friend とも言う。imaginary=「架空の」で imaginative と混同しない。 - theory of mindC1名詞(句)心の理論(他人の心を推測する力)Theory of mind develops in early childhood.
発達心理学の重要語。誤信念課題(サリーとアン課題)で測るのが有名。 - perseveranceC1名詞粘り強さPretending to be a hero improved perseverance.
動詞 persevere(やり抜く)。アクセントは per-se-VER-ance。grit と近い意味。 - simultaneouslyC1副詞同時にShe can listen and take notes simultaneously.
形容詞 simultaneous。simultaneous interpretation=同時通訳。at the same time の硬い言い方。 - by-productC1名詞副産物Stress can be a by-product of success.
本来は製造過程でできる「副産物」。比喩で「付随して生じる結果」。
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2歳ごろの子がバナナを耳に当てて「もしもし」。これ、現実のバナナと"電話のふり"を同時に頭で扱う、実はすごい能力らしい。ただ「ごっこ遊びで頭が良くなる」という研究を総点検したら、証拠は思ったより弱かった。
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- Leslie (1987) Pretense and representation: The origins of "theory of mind", Psychological Reviewdoi.org
- Lillard et al. (2013) The impact of pretend play on children's development: A review of the evidence, Psychological Bulletindoi.org
- Taylor et al. (2004) The characteristics and correlates of fantasy in school-age children: Imaginary companions, impersonation, and social understanding, Developmental Psychologydoi.org
- White et al. (2017) The "Batman Effect": Improving perseverance in young children, Child Developmentdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













