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シロアリ塚は「天然エアコン」? ビル設計のお手本になった話を、最新の測定で検証したら

シロアリ塚は「天然エアコン」? ビル設計のお手本になった話を、最新の測定で検証したら

読む前に予想してみよう!

最近の測定で、シロアリ塚の主な役目は「温度を一定に保つこと」だと確かめられた

研究カード(どんな研究?)
対象
インドとアフリカのキノコシロアリの塚
規模
野外の塚での直接測定(インドでは25個の塚で流速を測定)
研究の種類
気流・温度・CO2の野外計測
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

シロアリ塚は温度を一定に保つ“エアコン”として有名だが、実測すると、重要な働きのひとつはCO2を逃がす換気。昼夜の温度差を使って空気を入れかえる「外付けの肺」だった。

ひとことで言うとシロアリの塚は、エアコンというより「大きな肺」だった!

もくじ
  1. 塚の住人は「キノコ農家」
  2. 昼と夜で、空気の流れが逆になる
  3. 「エアコン説」はどこから来たのか
  4. まとめ

アフリカのサバンナにそびえる、人の背丈をこえるシロアリの塚。その中は、外が灼熱でも夜が冷えこんでも、いつも快適な温度に保たれている――。

この「天然エアコン」の話は、生き物から技術を学ぶ「生物模倣(バイオミミクリー)」の代表例として、教科書やテレビでたびたび紹介されてきました。ジンバブエには、シロアリ塚にヒントを得て、エアコンに頼らず涼しさを保つよう設計されたビルまであります。

ところが、塚の中の空気の流れを実際に測った研究が進むと、話はちょっと違ってきました。

01塚の住人は「キノコ農家」

塚を作るのは、キノコシロアリの仲間。地下の巣で、かみくだいた植物を材料にキノコを育て、それを食べて暮らしています。

何百万匹ものシロアリとキノコが呼吸するので、巣の中には二酸化炭素(CO2)がたまりやすい。この空気をどう入れかえるかは、コロニーにとって死活問題です。

02昼と夜で、空気の流れが逆になる

ポイントは、塚が温度を「一定に保つ」ために働いているというより、外の温度が昼夜で変わることを利用して、空気を動かしていること。2017年には同じチーム(Ockoら)が、アフリカ・ナミビアの別の種の塚でも、太陽の熱で駆動される同じような換気を確かめました。研究チームは、塚を「外付けの肺」と表現しています。

昼と夜で空気の流れが逆転し、巣のCO2を押し出す
昼と夜で空気の流れが逆転し、巣のCO2を押し出す

03「エアコン説」はどこから来たのか

古くは、巣の生き物が出す熱で温まった空気が煙突を上る「熱でまわる換気」というモデルが唱えられ、塚の中は温度がほぼ一定に保たれている、と考えられていました。ジンバブエのビルも、この考え方がヒントになったとされています。

ところがナミビアで塚を調べたターナー(Turner)さん(2001年)は、巣の換気には風の力が大きく効いていて、巣の熱だけで流れを起こすほどの温度差は、めったに生じないと報告しました。そしてその後の直接測定で、昼夜の温度変化を利用した換気という姿が見えてきたのです。

つまり「天然エアコン」は、まったくのウソではないけれど、“冷房”だけでなく“換気”も大事な役目だった、というのが今の理解です。

04まとめ

シロアリ塚は、温度を一定に保つ魔法のエアコンというより、太陽の熱と昼夜の温度差を使って“呼吸”する巨大な肺でした。

自然から学ぶときは、「よく聞く話」をうのみにせず、最新の測定で確かめることが大切。シロアリ塚の物語は、そのことを教えてくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTermite mounds in Africa are often called natural air conditioners that keep their inside at a steady… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Termite mounds in Africa are often called natural air conditioners that keep their inside at a steady temperature. A building in Zimbabwe was even designed to stay cool without air conditioning based on this idea. However, when scientists measured the air flow inside real mounds, they found a different story. The termites grow fungus underground, and millions of termites and fungi produce a lot of carbon dioxide.

In 2015, a Harvard team studying mounds in India discovered that during the day, air rises in the thin outer tunnels warmed by the sun and sinks in the central chimney. At night, the flow reverses. This daily change pushes carbon dioxide out, so the mound works more like a lung than an air conditioner.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

アフリカのシロアリ塚は、中を一定の温度に保つ天然のエアコンとよく言われます。ジンバブエでは、この考えをもとに、エアコンなしで涼しさを保つよう設計されたビルまであります。しかし、科学者たちが本物の塚の中の空気の流れを測ると、別の姿が見えてきました。シロアリは地下でキノコを育てており、何百万ものシロアリとキノコが大量の二酸化炭素を出します。

2015年、インドの塚を調べたハーバード大学のチームは、昼間は太陽で温められた細い外側の通路で空気が上がり、中央の煙突で下がることを発見しました。夜には流れが逆になります。この毎日の変化が二酸化炭素を押し出すので、塚はエアコンというより肺のように働いているのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why do termite nests have a lot of carbon dioxide?

Q2. What happens during the day, according to the 2015 study?

Q3. What does the writer mean by saying the mound works "more like a lung"?

重要単語

  • moundB2
    名詞塚、盛り土Some termite mounds are taller than a person. 野球のピッチャーマウンドと同じ語。a mound of paperwork(書類の山)のようにも使う。
  • ventilationB2
    名詞換気Good ventilation removes carbon dioxide. 動詞 ventilate。ラテン語 ventus(風)から。人工呼吸器は ventilator。
  • convectionC1
    名詞対流Warm air rises and creates convection. 熱の伝わり方 conduction(伝導)・convection(対流)・radiation(放射)の3点セットで覚える。
  • biomimicryC1
    名詞生物模倣Biomimicry learns design ideas from nature. bio(生命)+mimic(まねる)。新幹線の先端(カワセミ)なども有名な例で、入試の頻出テーマ。
  • lungB1
    名詞肺The mound works like an external lung. 通常は複数形 lungs。lung cancer(肺がん)。形容詞は pulmonary(専門語)。
  • accumulateC1
    動詞たまる、蓄積するCarbon dioxide can accumulate in the nest. ac-(~へ)+cumul(積み重ね)。名詞 accumulation。build up と言い換え可。
  • respirationC1
    名詞呼吸The respiration of millions of termites produces carbon dioxide. re-(再び)+spire(息をする)。inspire(吹きこむ→鼓舞する)、expire(息が切れる→期限切れ)も同じ語根。

動画でもっと知る

「シロアリ塚は温度を一定に保つ天然エアコン」は有名な話。でも中の空気の流れを測ると、大事な役割のひとつはCO2を追い出す換気だった。昼と夜で空気の流れが逆になる「外付けの肺」だ。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Turner (2001) On the Mound of Macrotermes michaelseni as an Organ of Respiratory Gas Exchange, Physiological and Biochemical Zoologydoi.org
  2. King, Ocko & Mahadevan (2015) Termite mounds harness diurnal temperature oscillations for ventilation, PNASdoi.org
  3. Ocko et al. (2017) Solar-powered ventilation of African termite mounds, Journal of Experimental Biologydoi.org