コウモリはヨーロッパ生まれだった。103種のゲノムと化石が書き換えた「空飛ぶ哺乳類」の家系図

読む前に予想してみよう!
コウモリの祖先は北アメリカで生まれたことが、化石から確定している
最新のゲノム+化石の分析では、暁新世後期のヨーロッパで生まれた可能性が高いという結果になった。
- 対象
- コウモリ全21科
- 規模
- 103種のゲノム+44化石
- 研究の種類
- ゲノム系統解析・化石を含む年代推定
- 確かさ
- ★★★☆☆
全21科・103種のコウモリのゲノムと44の化石を合わせて分析。コウモリは暁新世後期のヨーロッパで生まれた可能性が高く、超音波の能力も最初期からあったらしい。
ひとことで言うとコウモリのご先祖さまは、ヨーロッパで空を飛びはじめたみたい!
哺乳類で、自分の翼で空を飛べるのはコウモリだけ。哺乳類の5種に1種以上がコウモリだというほど、大成功したグループです。
でも、最初のコウモリがどこで生まれたのかは、長いあいだ謎でした。北アメリカ説、アフリカ説、アジア説……と、研究ごとに答えがバラバラだったのです。
2026年9月23日、ドイツのゼンケンベルク研究所やアイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン、英国のウェルカム・サンガー研究所などが参加する国際共同研究「Bat1K」が『Nature』で答えを出しました。103種のコウモリのゲノムと44の化石を調べた結果、コウモリは暁新世の後期に、ヨーロッパで生まれた可能性が高いというのです。
01化石だけでは決着がつかなかった
いちばん古いコウモリの化石は、約5600万〜5200万年前(始新世の初め)のものです。アジア、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアと、あちこちで見つかっています。
困ったことに、それより前の化石はほとんどありません。しかも見つかった時点で、どれもすでに空を飛べる体つきをしていました。化石だけでは「どこから来たのか」がたどれなかったのです。
02全21科のゲノムで家系図を作り直した
化石も家系図の枝として直接入れて計算しました。その結果、すべてのコウモリの共通祖先はヨーロッパにいた可能性が高い(推定確率99%以上)と出ました。
その子孫はまずアフリカへ広がり、ヨーロッパとアフリカを拠点に、アメリカ大陸・アジア・オーストラリアへと何度も進出していったと考えられます。大きなグループが一気に分かれたのは、地球が急に暖かくなった約5600万年前ごろと重なるそうです。

03超音波は「最初から」持っていた?
コウモリの多くは、のどから超音波を出し、そのはね返りで暗闇の獲物を探します。これをエコーロケーション(反響定位)といいます。
「飛ぶのが先か、超音波が先か」も論争でした。今回の分析では、のどで超音波を出せたと考えられる化石コウモリヴィエラシア(†Vielasia)が、家系図のいちばん古い枝のグループに入りました。
つまり超音波の能力は、今いるコウモリたちが分かれるより前からあった可能性が高いということ。飛ぶ力と超音波は、コウモリの歴史のごく初めにセットでそろっていたのかもしれません。
ちなみに超音波を使うコウモリも目は見えています(過去記事)。
04マダガスカルの「吸盤コウモリ」の居場所も決着
手首と足首に吸盤を持ち、つるつるの葉に張りつくマダガスカルの吸盤足コウモリ(Myzopodidae)は、家系図のどこに入るのか長く議論されてきました。
今回の分析では、ヒナコウモリの仲間(ヒナコウモリ上科)の最初の枝に位置づけられました。さらに、全コウモリの祖先は26本(1組あたり)の染色体を持っていたと推定され、祖先のゲノムの姿も初めて再現されました。
05まとめ
夜空を飛ぶコウモリのご先祖さまは、恐竜が絶滅したあとのヨーロッパで、すでに超音波を使いながら飛んでいたのかもしれません。
ゲノムと化石を合わせて、長年の論争に一つの答えが出ました。次は、この家系図でコウモリの長生きや病気への強さの秘密を解き明かす番です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhere did the first bats come from?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Bats are the only mammals that can really fly. But where did the first bats live? Scientists from many countries studied the genes of 103 kinds of bats and also looked at 44 fossils.
Their results show that bats probably started in Europe a very long time ago, after the dinosaurs died out. The first bats may also have used sound to find food in the dark.
67 words ・ CEFR A2
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コウモリは、本当に空を飛べる唯一の哺乳類です。では、最初のコウモリはどこに住んでいたのでしょうか。多くの国の科学者たちが、103種類のコウモリの遺伝子を調べ、44の化石も調べました。
その結果は、コウモリがおそらく恐竜が絶滅した後の、とても昔のヨーロッパで始まったことを示しています。最初のコウモリは、暗闇で食べ物を見つけるために音も使っていたのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
But where did the first bats live? と問い、ヨーロッパで始まったらしいと答えているので A。
Q2. How many kinds of bats did the scientists study?
studied the genes of 103 kinds of bats and also looked at 44 fossils とあるので D。44 は化石の数。
Q3. In this passage, "probably" means ...
probably は「たぶん、おそらく」=可能性が高い、という意味なので B。
Where did the first bats come from? For many years, scientists could not agree, because the oldest bat fossils, from about 56 to 52 million years ago, already look like bats that could fly. An international project called Bat1K has now studied high-quality genomes from 103 bat species, covering all 21 bat families, together with fossil data.
The results, published in Nature, suggest that bats most likely first appeared in Europe in the late Paleocene. From there, they spread to Africa and later to the Americas, Asia, and Australia. The study also suggests that echolocation, the use of sound echoes to find prey, was present very early in bat history.
110 words ・ CEFR B1
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最初のコウモリはどこから来たのでしょうか。何年もの間、科学者たちの意見は一致しませんでした。約5600万〜5200万年前の最も古いコウモリの化石が、すでに空を飛べるコウモリの姿をしているからです。Bat1Kという国際プロジェクトは今回、コウモリの全21科にわたる103種の高品質なゲノムを、化石のデータと合わせて調べました。
『Nature』に発表された結果によると、コウモリは暁新世の後期にヨーロッパで最初に現れた可能性が高いとされます。そこからアフリカへ、さらに後にはアメリカ大陸、アジア、オーストラリアへと広がりました。この研究はまた、音のはね返りを使って獲物を見つけるエコーロケーション(反響定位)が、コウモリの歴史のごく初期からあったことも示唆しています。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was it hard to find where bats came from by using fossils alone?
because the oldest bat fossils ... already look like bats that could fly が理由なので C。
Q2. How many bat families did the study cover?
covering all 21 bat families とあるので B。103 は種の数。
Q3. What is "echolocation"?
直後に the use of sound echoes to find prey と説明があるので D。
The oldest bat fossils, from the start of the Eocene, already show animals that could fly. That has made it hard to say where bats originated, even though they account for more than one in five mammal species. The Bat1K consortium, a group of more than 130 researchers, attacked the problem from two sides. They assembled chromosome-level genomes for 103 species across all 21 bat families, and they scored 699 anatomical traits for 65 species, 44 of them fossils.
By placing the fossils directly into the family tree, the team estimated with over 99% probability that the common ancestor of all living bats lived in Europe during the late Paleocene. From there, bats seem to have spread to Africa and then dispersed to other continents again and again.
The analysis also put Vielasia, a fossil bat thought able to make echolocation calls with its larynx, on the oldest branch of the tree. If that is right, echolocation evolved very early. Support for that placement was only moderate, though, at about 68%. These are probabilities, and no bat fossil from the Paleocene itself has been found yet, so a single new discovery could redraw the map.
195 words ・ CEFR B2
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最古のコウモリの化石は始新世の初めのものですが、すでに飛べる体をしています。そのため、コウモリは哺乳類の種の5分の1以上を占めるにもかかわらず、どこで生まれたのかを言うのは難しいままでした。130人を超える研究者が参加する共同研究Bat1Kは、この問題に2つの方向から取り組みました。全21科にわたる103種について染色体レベルのゲノムを組み立て、さらに65種(うち44種は化石)について699項目の解剖学的特徴を評価したのです。
化石を家系図に直接組み込むことで、チームは現生のすべてのコウモリの共通祖先が暁新世後期のヨーロッパにいたと、99%を超える確率で推定しました。そこからコウモリはアフリカへ広がり、その後ほかの大陸へ何度も分散したと見られます。分析はまた、のど(喉頭)でエコーロケーションの声を出せたと考えられる化石コウモリ、ヴィエラシアを、家系図の最も古い枝に置きました。
それが正しければ、エコーロケーションはごく早い時期に進化したことになります。ただし、この位置づけの支持は約68%と中程度でした。これらは確率にもとづく結論で、暁新世そのもののコウモリの化石はまだ見つかっていません。ですから、新しい発見がひとつあるだけで、地図が描き直されるかもしれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main conclusion of the study?
共通祖先は暁新世後期のヨーロッパにいた可能性が高く、エコーロケーションも早くに進化した、という2点をまとめた B。
Q2. How did the team estimate where bats originated?
ゲノムを組み立て、By placing the fossils directly into the family tree 推定したとあるので A。
Q3. Why does the author say a single new discovery could redraw the map?
These are probabilities, and no bat fossil from the Paleocene itself has been found yet, so ... と論理がつながるので C。
重要単語
- mammalB1名詞哺乳類Whales and bats are both mammals.
ラテン語 mamma(乳房)が語源。reptile「爬虫類」、amphibian「両生類」と一緒に覚える。 - fossilB1名詞化石The fossil is about 50 million years old.
fossil fuel「化石燃料」も頻出。「時代遅れの人」という比喩的な意味もある。 - genomeB2名詞ゲノム(全遺伝情報)Scientists read the whole genome of the bat.
gene(遺伝子)+-ome(全体)。発音は /ˈdʒiːnoʊm/(ジーノウム)。 - ancestorB1名詞祖先Humans and apes share a common ancestor.
common ancestor「共通祖先」がセット。反対語は descendant「子孫」。 - echolocationC1名詞反響定位、エコーロケーションBats use echolocation to hunt insects at night.
echo(反響)+location(位置を知ること)。イルカも使う。 - originateB2動詞生じる、起源をもつThe custom originated in China.
originate in / from ~「~に由来する」。名詞 origin。 - preyB2名詞獲物The owl watched its prey from a tree.
pray(祈る)と同音なので注意。反対は predator「捕食者」。
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コウモリはどこで生まれた? 103種のゲノムと44の化石をまとめて調べたら、答えはアフリカでも北米でもなく「ヨーロッパ」だったらしい。しかも超音波で獲物を探す力は、今のコウモリが分かれる前からあったとか。
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- Morales et al. (2026) Reference genomes and fossils revise bat family phylogeny and biogeography, Naturedoi.org
- Wellcome Sanger Institute: Bats originated in Europe, largest bat genome and fossil study findssanger.ac.uk
- Teeling et al. (2005) A Molecular Phylogeny for Bats Illuminates Biogeography and the Fossil Record, Sciencedoi.org
- Simmons et al. (2008) Primitive Early Eocene bat from Wyoming and the evolution of flight and echolocation, Naturedoi.org
- Teeling et al. (2018) Bat Biology, Genomes, and the Bat1K Project: To Generate Chromosome-Level Genomes for All Living Bat Species, Annual Review of Animal Biosciencesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








