テッポウウオは「人の顔」を見分けた。水鉄砲で虫を撃ち落とす魚の、意外すぎる頭のよさ

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魚は脳が小さいので、人間の顔を見分けることはできない
テッポウウオは訓練すると、たくさんの新しい顔写真と、訓練で覚えた人の顔を高い正解率で見分けることができた。
- 対象
- テッポウウオ(Toxotes chatareus など)
- 規模
- 数匹〜十数匹(各研究)
- 研究の種類
- 実験室での学習実験・高速度撮影
- 確かさ
- ★★★☆☆
水を吹きかけて虫を撃ち落とすテッポウウオは、44人分の新しい顔写真と、訓練で覚えた1人の顔を見分けられた。仲間の狩りを見るだけで、動く的の撃ち方も学ぶ。
ひとことで言うとテッポウウオは水鉄砲の名人。しかも人の顔まで見分けられる!
東南アジアやオーストラリアのマングローブの水辺に、水鉄砲で狩りをする魚がいます。
テッポウウオです。水面の上の葉っぱにとまっている虫をねらい、口から細い水の弾を撃ち出して、虫を水の中に落として食べます。
この「水鉄砲」の技だけでも十分すごいのですが、研究者たちが調べてみると、テッポウウオにはもっと驚く能力がありました。
0144人の顔の中から「あの人」を見分ける
2016年、イギリス・オックスフォード大学のケイト・ニューポートさんと、オーストラリア・クイーンズランド大学のウルリケ・ジーベックさんたちは、テッポウウオに人の顔を見分けさせる実験をしました。
人間の顔認識は、大脳の「新皮質」という場所の働きが大きいと考えられています。魚には、私たちのような新皮質はありません。しかもテッポウウオは、野生で人の顔を見分ける必要もない動物です。
それでも見分けられたということは、「顔を見分ける」ために、必ずしも特別な脳のしくみがいるわけではないのかもしれません。

02仲間の狩りを「見るだけ」で上達
テッポウウオのすごさは、顔の見分けだけではありません。
2006年、ドイツ・エアランゲン=ニュルンベルク大学(当時)のシュテファン・シュスターさんたちは、テッポウウオが素早く動く的を撃ち落とせるようになるかを調べました。動く的に当てるには、的の動きと、水の弾が上がっていく時間の両方を計算に入れなければなりません。
テッポウウオは練習でこの難しい技を身につけました。驚いたのはその先です。群れの中の1匹が練習しているのを見ていただけの仲間も、自分では練習していないのに、同じ技をできるようになったのです。魚が「見て学ぶ」ことを示した、印象的な例でした。
03水鉄砲の「形」まで調整していた
2014年、シュスターさんたちはさらに、テッポウウオの水鉄砲そのものを高速カメラで分析しました。
撃ち出された水は、飛んでいくうちに後ろの水が前に追いつき、先端に水のかたまりができます。このかたまりができるタイミングが、的に当たる直前になるように、テッポウウオは口の開き方の変化を調整していました。遠くの的ほど、水のかたまりができるのを遅らせているのです。
研究チームは、これを人間の「ものを投げる」技術にたとえています。投げる力を状況に合わせて調整する能力は、人間の脳の進化にも関係してきたと考えられています。小さな魚が、それに似た技を水でやってのけているのです。
04まとめ
テッポウウオは、水鉄砲の名手であるだけでなく、人の顔を見分け、仲間から学び、水の形まで調整する、とても器用な魚でした。
「魚は単純な生き物」というイメージは、もう古いのかもしれません。水族館でテッポウウオを見かけたら、じっと観察してみてください。もしかしたら、向こうもあなたの顔を覚えようとしているかも。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerArcherfish hunt by shooting jets of water at insects sitting above the surface.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Archerfish live in rivers in Southeast Asia and Australia. They shoot water from their mouths to knock insects off leaves. In 2016, scientists showed pictures of human faces to these fish. The fish learned to spit water at one face to get food.
Then they could tell that face apart from many new faces. Fish do not have the same brain parts as humans, but they can still tell faces apart.
71 words ・ CEFR A2
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テッポウウオは東南アジアやオーストラリアの川にすんでいます。口から水を撃ち出して、葉の上の虫を落とします。2016年、科学者たちはこの魚に人間の顔写真を見せました。魚は、エサをもらうために1つの顔に水を吹きかけることを覚えました。
その後、たくさんの新しい顔の中からその顔を見分けることができました。魚は人間と同じ脳の部分を持っていませんが、それでも顔を見分けられるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
テッポウウオが人の顔を見分けられることがテーマなので B。
Q2. How do archerfish catch insects?
They shoot water from their mouths to knock insects off leaves. とあるので A。
Q3. In this passage, "tell apart" means ...
tell A apart は「Aを見分ける」。違いがわかることなので D。
Archerfish hunt by shooting jets of water at insects sitting above the surface. In 2016, Cait Newport and Ulrike Siebeck trained these fish to spit at one particular human face on a screen in order to get food.
Later, when that face was shown together with 44 new faces, the fish could tell it apart from the new ones with high accuracy. This was surprising because fish do not have a neocortex, the brain area that plays a large role in human face recognition. Archerfish are also good at learning from each other. A 2006 study found that fish that had only watched another fish practicing could hit fast-moving targets too, even without practicing themselves.
115 words ・ CEFR B1
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テッポウウオは、水面の上にとまっている虫に水の噴射を撃って狩りをします。2016年、ケイト・ニューポートさんとウルリケ・ジーベックさんは、エサをもらうために画面上の特定の1人の顔に水を吹きかけるよう、この魚を訓練しました。
その後、その顔を44人の新しい顔と一緒に見せると、魚は高い正確さでそれを新しい顔と見分けました。これは驚くべきことでした。魚には、人間の顔認識で大きな役割を果たす脳の領域である新皮質がないからです。テッポウウオはお互いから学ぶことも得意です。2006年の研究では、ほかの魚が練習しているのを見ていただけの魚も、自分では練習しなくても、速く動く的に当てられるようになりました。
4択リーディングクイズ
Q1. How many new faces were shown together with the learned face?
shown together with 44 new faces とあるので C。
Q2. Why was the result surprising?
fish do not have a neocortex, the brain area that plays a large role in human face recognition とあるので A。
Q3. What does the 2006 study suggest about archerfish?
見ていただけの魚も動く的に当てられるようになった、つまり見て学べるので B。
Archerfish, found in mangrove waters of Southeast Asia and Australia, are famous for knocking insects off leaves with precisely aimed jets of water. Experiments show that their abilities extend well beyond marksmanship. In 2016, Cait Newport, Ulrike Siebeck, and colleagues trained archerfish to spit at one particular face displayed above their tank.
When that face was later paired with 44 unfamiliar faces, the fish could tell it apart from the unfamiliar ones with high accuracy, and they still succeeded when 18 faces were adjusted so that color, brightness, and head shape gave no clues. Because fish lack a neocortex, the result suggests that recognizing faces may not require specialized brain structures.
Earlier, in 2006, Stefan Schuster's group showed that archerfish could learn to hit rapidly moving targets merely by watching a skilled companion. In 2014, the same group found that the fish adjust how their mouth opening changes so that water gathers at the tip of the jet just before it strikes, even at different distances. These studies, however, used only a few fish. The face task may reflect general pattern recognition rather than processing specific to faces.
188 words ・ CEFR B2
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東南アジアやオーストラリアのマングローブの水域にすむテッポウウオは、正確にねらった水の噴射で葉から虫を落とすことで有名です。実験からは、その能力が射撃の腕前をはるかに超えていることがわかります。2016年、ケイト・ニューポートさん、ウルリケ・ジーベックさんらは、水槽の上に映した特定の1人の顔に水を吹きかけるようテッポウウオを訓練しました。
後にその顔を見たことのない44人の顔と組み合わせると、魚は高い正確さでそれを見分け、色・明るさ・頭の形が手がかりにならないよう調整した18人の顔でも、やはり成功しました。魚には新皮質がないので、この結果は、顔を認識するのに特別な脳の構造が必要とは限らないことを示唆しています。
それ以前の2006年、シュテファン・シュスターさんのグループは、テッポウウオが熟練した仲間を見ているだけで、速く動く的に当てることを学べることを示しました。2014年には同じグループが、距離が違っても、噴射が当たる直前に水が先端に集まるよう、魚が口の開き方の変化を調整していることを発見しました。ただし、これらの研究で使われた魚は少数でした。顔の課題は顔に特有の処理というより、一般的なパターン認識を反映しているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did the researchers use 18 adjusted faces?
色・明るさ・頭の形が手がかりにならないよう調整した顔でも成功したかを確かめるためなので D。
Q2. What did the 2014 study find?
water gathers at the tip of the jet just before it strikes, even at different distances とあるので B。
Q3. Which limitation does the writer mention?
最後の2文に used only a few fish と general pattern recognition の可能性が挙がっているので C。
重要単語
- archerfishC1名詞テッポウウオThe archerfish shoots water at insects.
archer は「弓の射手」。archery「アーチェリー」と同じ語根。 - discriminateC1動詞見分けるThe fish learned to discriminate between faces.
discriminate between A and B「AとBを見分ける」。against が続くと「差別する」になる。 - neocortexC1名詞新皮質Fish do not have a neocortex like ours.
neo-(新しい)+cortex(皮質)。哺乳類で発達した脳の外側の層。 - jetB1名詞噴流、噴射The fish controls the shape of its water jet.
a jet of water「水の噴射」。jet lag は「時差ぼけ」。 - social learningC1名詞(句)社会的学習(他者を見て学ぶこと)Archerfish can learn by watching others.
observational learning(観察学習)とも言う。動物の文化や知能の話題で頻出。 - accuracyB2名詞正確さThe fish could tell the faces apart with high accuracy.
形容詞 accurate。with accuracy = accurately。反対は inaccuracy。
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口から水鉄砲を撃って虫を落とすテッポウウオ、実験したら、訓練で覚えた1人の顔を44人分の新しい顔写真と見分けられたらしい。人のような新皮質を持たない魚なのに。仲間の狩りを見ただけで動く的の撃ち方を覚えることもできる。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Schuster et al. (2006) Animal Cognition: How Archer Fish Learn to Down Rapidly Moving Targets, Current Biologydoi.org
- Gerullis & Schuster (2014) Archerfish Actively Control the Hydrodynamics of Their Jets, Current Biologydoi.org
- Newport et al. (2016) Discrimination of human faces by archerfish (Toxotes chatareus), Scientific Reportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












