ウソ?ホント?検証ウソ

「水はいくら飲んでも大丈夫」は危険な誤解。マラソン完走者の8人に1人に起きていた"水中毒"

「水はいくら飲んでも大丈夫」は危険な誤解。マラソン完走者の8人に1人に起きていた"水中毒"

読む前に予想してみよう!

体に必要な水なら、短い時間にどれだけ飲んでも害はない

研究カード(どんな研究?)
対象
ボストンマラソンの完走ランナー
規模
488人
研究の種類
前向き観察研究+国際的な合意声明
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

短時間に大量の水を飲むと、血液の塩分が薄まる「水中毒」が起こりうる。ボストンマラソンでは、ゴールした人の13%で血液のナトリウムが低かった。

ひとことで言うと水も一気にたくさん飲むと体に毒になる。のどがかわいた分だけ飲もう!

もくじ
  1. 水を飲みすぎると「血液が薄まる」
  2. マラソンランナーの13%が「薄まって」いた
  3. 「のどが渇いたら飲む」が基本に
  4. 日常でも起こることがある
  5. なぜ「水は安全」と思われているのか
  6. まとめ

「水は体にいいから、たくさん飲んでも大丈夫」

そう思っていませんか? たしかに水は生きるのに欠かせません。熱中症予防でも、水分補給は大切です。

でも、どんなに体にいいものでも量と速さを間違えると毒になります。水も例外ではありません。

01水を飲みすぎると「血液が薄まる」

私たちの血液には、ナトリウム(塩分のもと)が一定の濃さで含まれています。この濃さは、神経や筋肉が正しく働くためにとても大事です。

ところが、短い時間に大量の水を飲むと、腎臓が水を外に出すのが追いつかず、血液が薄まってしまいます。これが低ナトリウム血症、いわゆる水中毒です。

血液が薄まると、水は濃いほう(細胞の中)へ移動します。すると細胞がふくらみ、特に脳がむくむと危険です。頭痛、吐き気、だるさから始まり、重くなると、けいれん、意識障害、最悪の場合は命に関わります。

02マラソンランナーの13%が「薄まって」いた

「そんなの特別な人の話でしょ」と思うかもしれません。でも、意外なところで起きていました。

速いランナーは汗をたくさんかくので、むしろ水分不足になりがちです。一方、ゆっくり走る人は、給水所のたびに「念のため」と飲み続け、汗で出る量より多く飲んでしまうことがあるのです。

水を一気にとりすぎると、血液の中のナトリウムが薄まってしまう
水を一気にとりすぎると、血液の中のナトリウムが薄まってしまう

03「のどが渇いたら飲む」が基本に

こうした事故を受けて、スポーツ医学の専門家たちは国際会議で話し合いを重ねてきました。

2015年の国際合意声明では、運動中の水分補給について、のどの渇きに応じて飲むことが勧められています。「渇く前にとにかく飲め」「飲めるだけ飲め」は、かえって危ないことがあるのです。

アメリカの病院、クリーブランド・クリニックの解説では、1時間に1リットルを超える水はおそらく飲みすぎだとしています。腎臓が処理できる量には限りがあるからです。

04日常でも起こることがある

マラソンだけではありません。

  • 大量の水を一気に飲む「早飲み」のようなゲームや罰ゲーム
  • 体調が悪いときに「水をたくさん飲めば治る」と思い込んで飲み続ける
  • 汗を大量にかいたあと、水だけをがぶ飲みする

アメリカでは、ラジオ局の企画で大量の水を飲み続けた参加者が亡くなる事故も起きています。

05なぜ「水は安全」と思われているのか

水は毎日飲むもので、ふだんは多少飲みすぎても、尿として出ていくだけです。だから「水で体を壊す」という感覚を持ちにくい。

さらに「水分補給は大事」というメッセージはよく耳にしますが、「飲みすぎに注意」はあまり聞きません。その結果、「多いほどいい」という思い込みが生まれやすいのでしょう。

06まとめ

  • 短時間に大量の水を飲むと、血液のナトリウムが薄まる「水中毒」が起こりうる
  • ボストンマラソンでは、ランナーの13%が低ナトリウム血症だった
  • 基本はのどの渇きに応じて飲む。汗を大量にかいたら塩分も補給

水は命の味方。でも「たくさん飲むほどいい」わけではない。ちょうどいい量を、ちょうどいいペースで。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people believe that you cannot drink too much water, but that is a dangerous mistake. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people believe that you cannot drink too much water, but that is a dangerous mistake. Our blood contains sodium at a steady level, which nerves and muscles need to work properly. If we drink a large amount of water in a short time, the kidneys cannot remove it fast enough, and the blood becomes diluted. This condition is called hyponatremia.

In a study of 488 runners at the 2002 Boston Marathon, 13 percent had low blood sodium at the finish line. It was more common among runners who had gained weight during the race and those who took more than four hours. Experts now advise drinking according to thirst instead of drinking as much as possible.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

水はいくら飲んでも飲みすぎることはないと多くの人が信じていますが、それは危険なまちがいです。私たちの血液には一定の濃さでナトリウムが含まれており、神経や筋肉が正しく働くにはそれが必要です。短い時間に大量の水を飲むと、腎臓がそれを十分速く排出できず、血液が薄まります。この状態は低ナトリウム血症と呼ばれます。

2002年のボストンマラソンのランナー488人を調べた研究では、13%がゴール地点で血中ナトリウムが低くなっていました。それは、レース中に体重が増えたランナーや、4時間以上かかったランナーに多く見られました。専門家は今、できるだけたくさん飲むのではなく、のどの渇きに応じて飲むよう勧めています。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does the blood become diluted when we drink a lot of water quickly?

Q2. Which runners were more likely to have low blood sodium?

Q3. What can we infer about runners who gained weight during the race?

重要単語

  • hyponatremiaC1
    名詞低ナトリウム血症Hyponatremia can happen to marathon runners. hypo-(下・不足)+natr(ナトリウム)+-emia(血液の状態)。anemia(貧血)と同じ -emia。
  • sodiumB2
    名詞ナトリウムSweat contains some sodium. 元素記号 Na はラテン語 natrium から。sodium chloride は「塩化ナトリウム(食塩)」。
  • diluteC1
    動詞薄めるToo much water dilutes the blood. 形容詞でも「薄めた」。反対は concentrate(濃縮する)。
  • thirstB1
    名詞のどの渇きDrink according to your thirst. 形容詞 thirsty。thirst for knowledge「知識への渇望」という比喩も頻出。
  • swellingB2
    名詞腫れ、むくみSwelling of the brain is very dangerous. 動詞 swell(ふくらむ)は swell-swelled-swollen と変化する。
  • consensusC1
    名詞合意、総意Experts reached a consensus on safe drinking. reach a consensus「合意に達する」。scientific consensus「科学界の共通見解」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「水はいくら飲んでも大丈夫」は危険な誤解。マラソン完走者の8人に1人に起きていた"水中毒"の4コマ漫画
「水ならいくら飲んでも平気」は危ない思い込み。ボストンマラソンのゴール地点で調べたら、ランナーの13%で血液の塩分が薄まる"水中毒"の状態になっていたらしい。レース中に体重が増えた人(飲みすぎの目安)や、完走タイムが遅い人に多かった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Almond et al. (2005) Hyponatremia among Runners in the Boston Marathon, New England Journal of Medicinedoi.org
  2. Hew-Butler et al. (2015) Statement of the Third International Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Development Conference, Carlsbad, California, 2015, Clinical Journal of Sport Medicinedoi.org
  3. Water Intoxication(Cleveland Clinic)my.clevelandclinic.org