「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。死ぬのは"人を刺した働きバチ"だけだった

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ハチはどの種類でも、一度刺すと死んでしまう
刺して死ぬのは主にミツバチの働きバチが哺乳類の皮膚を刺した場合。スズメバチなどは何度も刺せる。
- 対象
- ミツバチ・スズメバチ類
- 規模
- 標本の構造観察・刺す実験・人での測定
- 研究の種類
- 実験研究・総説
- 確かさ
- ★★★☆☆
ミツバチの働きバチの針には返しがあり、人や動物の皮膚に刺すと針と毒袋がちぎれて死ぬ。でも虫を刺すときは抜けることが多く、女王バチやスズメバチは何度も刺せる。
ひとことで言うと死ぬのは"人を刺した働きバチ"。スズメバチは何度も刺せる!
「ミツバチは一度刺したら死んじゃうから、めったに刺さないんだよ」
小さいころ、こう教わった人も多いでしょう。「命がけで巣を守るなんて健気だ」と感じた人もいるかもしれません。
この話は半分ホントです。ただし、死ぬのは「どんなハチでも」「何を刺しても」ではありません。条件がそろったときだけでした。
01針に「返し」がついていた
ミツバチの働きバチの針をよく見ると、釣り針のような小さな返し(とげ)がたくさん並んでいます。
人や動物の皮膚は弾力があって繊維がからみ合っているので、ミツバチの針はしっかり食いこみます。ハチが飛び去ろうとすると、針と一緒に毒袋や内臓の一部がちぎれてしまうのです。その傷が原因で、ハチは死んでしまいます。
02「死ぬ」のは条件つきだった
ここからが「半分」の理由です。
- 相手が虫の場合:ミツバチは、巣に侵入した他の虫を刺すこともあります。虫の体の表面は人の皮膚とは違うため、針を抜けることが多いとされています
- 女王バチ:女王バチの針は返しがほとんどなく、何度でも刺せます(主にライバルの女王と戦うときに使います)
- スズメバチやアシナガバチ:1992年の米国の研究で針を電子顕微鏡で調べたところ、スズメバチの仲間の針は、引っこめたときに返しが"さや"で守られる構造になっていました。だから抜けやすく、野外ではふつう何度でも刺せるとされています

つまり、「一度刺すと死ぬ」のは、主にミツバチの働きバチが、人や動物などの哺乳類を刺したときの話なのです。
03自分の命と引きかえに巣を守る
なぜ、こんな"自爆"のような仕組みが進化したのでしょうか。
働きバチは子どもを産まず、巣全体で生きる社会性の昆虫です。社会性昆虫の自己犠牲的な防衛をまとめたショーターとリュッペルの2012年の総説によると、こうした行動は、自分の遺伝子を共有する巣の仲間を守ることで進化しうると考えられています。
さらに、ちぎれた針と毒袋は、ハチが離れたあとも毒を送りこみ続け、仲間を呼ぶ警報フェロモンも出します。1匹の犠牲で、巣を狙う大きな動物に最大限のダメージを与える作戦なのです。
04刺されたら「すぐ抜く」が正解
では、ミツバチに刺されたらどうすればよいのでしょう。昔は「針をつまむと毒袋を押してしまうので、カードなどでこそげ落とせ」と言われてきました。
ところが、米国カリフォルニア大学リバーサイド校のヴィッシャーらが1996年に調べたところ、腫れの大きさは針を抜くまでの時間が長いほど大きくなり、数秒の違いでも差が出ました。一方、つまんでも、こそげても違いはありませんでした。大切なのは方法よりスピードだったのです。
05まとめ
- ミツバチの働きバチの針には返しがあり、哺乳類の皮膚を刺すと針がちぎれて死ぬ
- 虫を刺す場合や女王バチ、スズメバチなどは、何度も刺せる
- 刺されたら、方法より「すぐに抜く」ことが大事
判定は「ビミョー」。「刺すと死ぬ」は、ミツバチの働きバチが私たちを刺したとき限定の話でした。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people believe that a honeybee always dies after stinging.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
People often say that a honeybee dies after it stings. This is only partly true. A worker bee's sting has tiny hooks. When it stings a person, the sting gets stuck in the skin.
When the bee flies away, part of its body is torn off, and it dies. But when it stings other insects, it can often pull its sting out. Wasps can sting many times.
67 words ・ CEFR A2
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ミツバチは刺したら死ぬ、とよく言われます。これは一部だけ本当です。働きバチの針には小さなかぎ(返し)がついています。人を刺すと、針が皮膚に引っかかって抜けなくなります。
ハチが飛び去ろうとすると体の一部がちぎれ、ハチは死んでしまいます。しかし、ほかの虫を刺すときは、針を抜けることが多いのです。スズメバチの仲間は何度も刺すことができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ミツバチが刺した後に死ぬのはどんな場合かを説明しているので B。
Q2. What does a worker bee's sting have?
A worker bee's sting has tiny hooks. とあるので A。
Q3. In this passage, "stuck" means ...
get stuck は「引っかかって動かなくなる」。針が皮膚から抜けない状態なので C。
Many people believe that a honeybee always dies after stinging. In fact, this happens only in certain cases. A worker honeybee's sting has many small barbs, like the point of a fishing hook. In a 2015 study, researchers found that this barbed sting is hard to pull out of soft, fibrous materials such as skin.
When a bee stings a person and flies away, its sting and venom sac are torn from its body, and the bee dies. However, when it stings other insects, it can often pull the sting out. Queen bees, and wasps such as hornets, can sting many times because their stings come out more easily.
109 words ・ CEFR B1
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ミツバチは刺した後に必ず死ぬと信じている人はたくさんいます。実際には、これは特定の場合にしか起こりません。働きバチの針には、釣り針の先のような小さな返しがたくさんついています。2015年の研究で、研究者たちはこの返しのある針が、皮膚のようなやわらかく繊維質のものからは抜けにくいことを発見しました。
ハチが人を刺して飛び去ろうとすると、針と毒袋が体からちぎれ、ハチは死んでしまいます。しかし、ほかの虫を刺したときは、針を抜けることが多いのです。女王バチや、スズメバチなどのハチは、針がより抜けやすいので何度も刺すことができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
this happens only in certain cases と述べ、皮膚に刺さって針がちぎれる場合に死ぬと説明しているので D。
Q2. Why is a worker bee's sting hard to pull out of skin?
A worker honeybee's sting has many small barbs とあり、それが皮膚から抜けにくい原因なので B。
Q3. A worker honeybee stings another insect. What will probably happen?
when it stings other insects, it can often pull the sting out とあるので、生き延びることが多いと推測できる。B。
A worker honeybee's sting is lined with rows of barbs that point backward, a little like a fishhook. In 2015, a Chinese research team compared these stings with those of paper wasps, testing how easily each could be pulled out of different materials.
The honeybee sting stuck fast in fibrous, elastic materials such as skin, while the wasp sting came out fairly easily. That is why a worker that stings a mammal and then tries to fly away dies.
The sting stays behind, and the venom sac and part of the bee's internal organs are torn away with it. The famous rule has its exceptions. When a worker stings another insect, it can often pull free. The queen's sting has few barbs, and many wasps can sting again and again.
Why would a bee sacrifice itself? Workers do not reproduce, and by defending the colony they protect relatives that share their genes. For anyone who has just been stung, one fact matters most. A sting left in the skin keeps pumping venom. A 1996 study found that the longer it stayed in, the bigger the swelling, and pinching it out worked just as well as scraping.
196 words ・ CEFR B2
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ミツバチの働きバチの針には、後ろ向きの返しが列になって並んでいて、釣り針に少し似ています。2015年、中国の研究チームはこの針をアシナガバチの針と比べ、それぞれがさまざまな素材からどれだけ簡単に抜けるかを調べました。
ミツバチの針は、皮膚のような繊維質で弾力のあるものにしっかり刺さったままになりましたが、アシナガバチの針は比較的簡単に抜けました。だからこそ、哺乳類を刺してから飛び去ろうとした働きバチは死んでしまうのです。
針はその場に残り、毒袋とハチの内臓の一部もいっしょにちぎれてしまいます。ただし、このよく知られたルールには例外があります。働きバチがほかの昆虫を刺したときは、針を抜けることが多いのです。女王バチの針には返しがほとんどなく、多くのスズメバチの仲間はくり返し刺すことができます。
では、なぜハチは自分を犠牲にするのでしょうか。働きバチは子を産まず、巣を守ることで、自分と遺伝子を共有する仲間を守っているのです。刺されたばかりの人にとって、いちばん大事な事実があります。皮膚に残った針は、毒を送りこみ続けるのです。1996年の研究では、針が刺さっている時間が長いほど腫れが大きくなり、つまんで抜いてもこそげ取っても効果は同じでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
刺して死ぬのは特定の条件のときだけで、その仕組みと進化的な理由を説明しているので A。
Q2. What did the 1996 study find about removing a sting?
the longer it stayed in, the bigger the swelling とあるので C。つまんで抜いてもこそげ取っても差はなかった。
Q3. Why might dying while defending the colony make evolutionary sense for a worker bee?
Workers do not reproduce, and by defending the colony they protect relatives that share their genes とあるので D。
重要単語
- stingB1名詞・動詞針、刺すこと/刺すThe bee left its sting in my arm.
活用は sting-stung-stung。米国では針そのものを stinger とも言う。 - barbC1名詞(釣り針の)返し、とげThe barbs make the sting hard to pull out.
barbed wire は「有刺鉄線」。形容詞 barbed は「とげのある、辛辣な」。 - venomC1名詞(動物の)毒Bee venom can cause swelling.
かまれたり刺されたりして入る毒。食べて害になる毒は poison。形容詞 venomous。 - workerA2名詞働きバチWorker bees are all female.
worker bee で「働きバチ」。queen(女王)、drone(雄バチ)とセットで。 - colonyB2名詞(ハチなどの)集団、巣A honeybee colony can have tens of thousands of bees.
歴史では「植民地」。生物では同じ種が集まって暮らす集団を指す。 - extractC1動詞引き抜く、取り出すThe sting is difficult to extract from skin.
ex-(外へ)+tract(引く)。名詞では「抽出物・エキス」(vanilla extract)。
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「ミツバチは一度刺すと死ぬ」は半分ホント。働きバチの針には返しがあって、人の皮膚に刺さると針ごと毒袋がちぎれてしまう。でも虫が相手なら抜けることも多く、スズメバチの仲間は針が抜けやすい構造で何度でも刺せるらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Zhao et al. (2015) Structures, properties, and functions of the stings of honey bees and paper wasps: a comparative study, Biology Opendoi.org
- Mulfinger et al. (1992) Sting morphology and frequency of sting autotomy among medically important vespids and the honey bee, Journal of Medical Entomologydoi.org
- Shorter & Rueppell (2012) A review on self-destructive defense behaviors in social insects, Insectes Sociauxdoi.org
- Visscher, Vetter & Camazine (1996) Removing bee stings, The Lancetdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












