語学・英語学習ビミョー

「タスク型授業は文法ドリルより伸びる」は本当? 効果大のメタ分析に"待った"がかかった理由

「タスク型授業は文法ドリルより伸びる」は本当? 効果大のメタ分析に"待った"がかかった理由

読む前に予想してみよう!

タスク型授業の効果を調べたメタ分析は、再分析しても同じ大きさの効果が確認された

研究カード(どんな研究?)
対象
語学プログラムの学習者(世界各地)
規模
52本の研究
研究の種類
メタ分析と再分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

タスク型授業は52研究のメタ分析で「効果大」とされたが、再分析で効果は小さめに修正され、比べ方にも疑問が出た。今は「タスク+文法の手当て」が現実解。

ひとことで言うと英語を「使う活動」は役に立つ。でも文法の説明もあったほうがよさそう!

もくじ
  1. 52研究のメタ分析は「効果大」
  2. 著者も加わって「慎重に読んで」
  3. 再分析すると効果は「0.93→0.61」
  4. 「タスクだけ」より「タスク+文法の手当て」
  5. まとめ

先生が文法を説明して、ドリルで練習して、最後に例文を作る。日本の英語の授業でおなじみの流れです。

これに対して、「旅行の計画を英語で立てる」「グループで問題を解決する」など、英語を"使って"何かをやりとげる活動を中心に組み立てる授業があります。タスク型言語指導(TBLT)と呼ばれる方法です。

「タスク型のほうが伸びる」と主張する研究者は多く、世界の教育政策にも取り入れられてきました。ところが、その根拠になった大きな研究には、のちに"待った"がかかりました。しかも、声を上げた論文には、元の研究の著者自身も名前を連ねていたのです。

0152研究のメタ分析は「効果大」

この数字だけを見ると、「文法中心の授業をやめて、タスク型に切り替えるべきだ」と言いたくなります。でも、ここからが本題です。

02著者も加わって「慎重に読んで」

2021年、Boers らは Studies in Second Language Acquisition 誌に、「メタ分析の結論は慎重に解釈しよう」と呼びかける論文を出しました。共著者には、あのメタ分析を書いた Bryfonski と McKay 本人も入っています。

論文では、言語教育の3つのメタ分析を取り上げて検証し直しました。タスク型の分析については、「従来型と比べた」とされた27本の比較研究をあらためて読み直すと、1本を除いて、比較の目的にうまく合っていなかったと指摘されています。

そもそも、何を「タスク」と呼ぶのか、どこからが「タスクを取り入れた授業」なのかが、研究によってはっきりしない。これでは、効果量を平均しても意味が読みにくいのです。

比べ方があいまいだと、どちらが重いのか判定できない
比べ方があいまいだと、どちらが重いのか判定できない

03再分析すると効果は「0.93→0.61」

2022年には、Xuan らの研究チームが、採用基準を厳しくしてメタ分析をやり直しました。すると効果量は g = 0.61 に。まだプラスではあるものの、元の数字よりかなり控えめです。

さらに、効果のばらつきを説明できたのは「研究の規模(参加人数)」と「授業をした先生が研究者本人かどうか」だけだったといいます。自分の授業を自分で評価すると、良い結果が出やすいのかもしれません。

そして2023年、Boers と Faez は、その後の研究も加えて再検討した結果、「タスク型(あるいはタスクを取り入れた)プログラムの優劣をメタ分析で判定するには、まだ機が熟していない」と結論づけました。

04「タスクだけ」より「タスク+文法の手当て」

では、現場ではどうすればいいのか。ヒントになるのが、中国の中学生150人を対象にした実験です(Li, Ellis & Zhu, 2016)。

受け身(受動態)を題材に、物語を聞いて再現するタスクを行う際、タスクだけのグループ、事前に文法を説明したグループ、タスク中に誤りを直したグループ、両方を行ったグループなどを比べました。文法の正誤判断テストでは、説明やフィードバックがあったグループが伸び、説明+フィードバックの組み合わせが最も大きな伸びを示しました。一方、聞いた文をそのまま口でくり返すテストでは、全体としてどのグループにもはっきりした効果は出ませんでした。

つまり、「タスクか、文法か」の二択ではなく、使う活動の中に文法の手当てを組み込むのが、今のところ一番手堅いやり方だと考えられます。文法指導そのものの効果については、文法指導の記事もどうぞ。

05まとめ

「タスク型授業は文法ドリルより伸びる」は、今のところビミョー。タスクを使う授業にプラスの効果はありそうですが、「どれだけ上か」を示した数字は、再分析で大きく揺れました。

英語を伸ばしたいなら、使う活動と、文法の説明・フィードバックを組み合わせる。研究者どうしの"待った"は、そんな地に足のついた答えを教えてくれています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTask-based language teaching, or TBLT, asks students to use English to complete real tasks, such as solving… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Task-based language teaching, or TBLT, asks students to use English to complete real tasks, such as solving a problem in a group, instead of mainly practicing grammar rules. In 2019, a meta-analysis of 52 studies reported a strong positive effect for TBLT programs. However, the story did not end there. In 2021, a paper that included the original authors warned that the results should be read carefully, because many comparison studies did not really fit the purpose.

Another team then repeated the analysis with stricter rules and found a smaller effect, dropping from 0.93 to 0.61. An experiment with 150 Chinese middle school students also suggested that tasks worked better when combined with grammar explanations and feedback. So the question is how to mix tasks and grammar.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

タスク型言語指導(TBLT)は、主に文法規則を練習する代わりに、グループで問題を解決するなど、英語を使って実際の課題をやりとげることを生徒に求めます。2019年、52本の研究のメタ分析は、TBLTのプログラムに強い効果があると報告しました。しかし、話はそこで終わりませんでした。2021年、元の著者たちも加わった論文が、多くの比較研究が目的にあまり合っていなかったため、結果は慎重に読むべきだと警告しました。

その後、別のチームがより厳しい基準で分析をやり直し、効果が0.93から0.61に下がる、より小さな効果を見つけました。150人の中国の中学生を対象にした実験も、タスクは文法の説明やフィードバックと組み合わせたときに、よりよく効く可能性を示しました。ですから問題は、タスクと文法をどう組み合わせるかなのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2019 meta-analysis report?

Q2. Why is the 2021 paper surprising?

Q3. What does the writer suggest at the end?

重要単語

  • taskA2
    名詞課題・タスクThe task was to plan a weekend trip in English. TBLT の task は「言語を使って結果を出す活動」。単なる練習問題(exercise)とは区別される。
  • drillB1
    名詞・動詞反復練習(をさせる)The teacher drilled us on irregular verbs. もとは「穴をあける道具・軍事訓練」。そこから「くり返して叩き込む練習」の意味に。
  • meta-analysisC1
    名詞メタ分析A meta-analysis combines the results of many studies. meta-(〜を超えた・高次の)+analysis。複数形は meta-analyses。
  • cautiouslyB2
    副詞慎重にThe results should be interpreted cautiously. 形容詞 cautious、名詞 caution。interpret ~ with caution もよく使う言い方。
  • modestB2
    形容詞控えめな・ささやかなThe new analysis found a more modest effect. 「謙虚な」の意味が有名だが、研究文では「数値がそれほど大きくない」の意味でよく使う。
  • explicitB2
    形容詞明示的な・はっきりしたExplicit grammar explanations helped the learners. 反意語は implicit(暗示的な)。explicit / implicit instruction は第二言語習得研究の基本用語。
  • inclusion criteriaC1
    名詞(句)採用基準Stricter inclusion criteria reduced the number of studies. criteria は criterion(基準)の複数形。単数・複数の区別は入試の語法問題でも狙われる。
「文法ドリルより、英語を使うタスク型授業が伸びる」。52研究のメタ分析で効果大と出た…と思ったら、元の著者も加わった論文で「慎重に読んで」と待ったがかかったらしい。答えは「タスクか文法か」の二択じゃなかった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Bryfonski & McKay (2019) TBLT implementation and evaluation: A meta-analysis, Language Teaching Researchdoi.org
  2. Boers, Bryfonski, Faez & McKay (2021) A call for cautious interpretation of meta-analytic reviews, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  3. Xuan, Cheung & Liu (2022) How effective is task-based language teaching to enhance second language learning? A technical comment on Bryfonski and McKay (2019), Language Teaching Researchdoi.org
  4. Boers & Faez (2023) Meta-analysis to estimate the relative effectiveness of TBLT programs: Are we there yet?, Language Teaching Researchdoi.org
  5. Li, Ellis & Zhu (2016) Task-Based Versus Task-Supported Language Instruction: An Experimental Study, Annual Review of Applied Linguisticsdoi.org