スマホで英単語は覚えられる? メタ分析は「効果大」、でも“合格した研究”は1割未満だった

読む前に予想してみよう!
スマホの単語学習は、紙の単語帳より効果が大きいことが確実に証明されている
メタ分析の平均はプラスだが、研究の質が低いものが多く、出版バイアスやばらつきも大きい。「確実」とはまだ言えない。
- 対象
- 英語を外国語・第二言語として学ぶ学習者
- 規模
- 33研究(2019年のメタ分析)/84研究(2022年のメタ分析)
- 研究の種類
- メタ分析(準実験研究を多く含む)
- 確かさ
- ★★★☆☆
スマホの単語学習は、メタ分析では紙より大きな効果。ただ質の高い研究は少なく出版バイアスも。効くのはスマホより中身の仕組みかも。
ひとことで言うとスマホでも単語は覚えられる。でも「スマホだから」覚えられるとは限らない!
電車の中、寝る前のベッド、レジの待ち時間。スマホの単語アプリで英単語を覚えている人は多いはずです。
では、スマホで覚えた単語は、紙の単語帳で覚えた単語と同じくらい、いや、それ以上に頭に残るのでしょうか。
研究をまとめた「メタ分析」の答えは、意外なほど景気のいいものでした。ところが、研究の質という“ふるい”にかけると、話が少し変わってきます。
01メタ分析は、そろって「プラス」
2021年には、EFL(外国語としての英語)学習者2,374人・45研究をまとめた別のメタ分析も、テクノロジーを使った単語学習の効果を「大」(g = 0.845)と推定しています。中でもスマホを使い、教室の外で学ぶ形の成績がよかったといいます。
ここまでだと「スマホ最強!」で終わりそうです。
02どんでん返し:研究を“ふるい”にかけたら
ここで登場するのが、MALL(モバイル端末を使った語学学習)の研究レビューを重ねてきたバーストン(Burston)です。
彼は2015年の論文で、語彙に限らない語学全般の291本のMALL研究を調べました。そのうち「参加者10人以上・期間1か月以上」という最低限の条件を満たしたのは35本。さらに設計に大きな問題があるものを除くと、信頼して結論を出せるのは19本しか残りませんでした。しかも、その中で効果の差が出なかった4本は、すべて単語学習の研究だったのです。
2022年の続編では、さらに規模を広げて1,144件の文献を調べ、条件を満たした84本を分析しました。グループ同士を比べた研究の平均効果は0.72と大きめ。ところが同時に、
- 出版バイアス(よい結果ほど論文になりやすい偏り)がはっきり見えた
- 研究ごとの結果のばらつきが極端に大きい(ほぼ100%に近い異質性)
ことも確認されました。著者らは、プラスの結論はこうした弱点を差し引いて受け止めるべきだとしています。

03効いているのは「スマホ」なのか?
もう一つの疑問は、何と比べているかです。多くの実験では、スマホ組の相手は、紙の単語リストなどの従来の学習法を使うグループでした。
一方、単語アプリには、答えを隠して思い出させるクイズ、忘れかけたころに出す復習、音声などが入っています。これらはスマホがなくても効果が知られている学習法です。つまり、勝っているのは端末ではなく、中に入った学習の仕組みかもしれません。
さらに、MALL研究をまとめたペンら(Peng, Jager & Lowie, 2021)のメタ分析では、目新しさで一時的に成績が上がる「新しさ効果」の存在も指摘されています。数週間の実験でよく見える結果が、半年後も続くとは限りません。
04まとめ
スマホで英単語は、ちゃんと覚えられます。ただ、「スマホだから覚えられる」と言えるほどの証拠はまだありません。
大事なのは、端末より使い方。思い出す、間隔をあける、文脈で出会い直す。この3つをアプリにやらせるか、自分でやるか。それが分かれ道です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerVocabulary apps are popular, but do they work better than paper word lists?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many students learn English words with apps on their phones. Do they really remember the words? Researchers collected many studies and put the results together. Students who used phones usually learned more words than students who used paper lists.
But many of the studies were small or short. Also, good apps make you remember answers and review words again later. So the app's way of teaching may help more than the phone itself.
73 words ・ CEFR A2
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多くの生徒がスマホのアプリで英単語を学んでいます。本当に単語を覚えているのでしょうか。研究者たちは多くの研究を集め、その結果をまとめました。スマホを使った生徒は、紙の単語リストを使った生徒より多くの単語を覚えることがふつうでした。
しかし、研究の多くは小規模だったり短期間だったりしました。また、よいアプリは答えを思い出させ、あとで単語をもう一度復習させます。だから、スマホそのものより、アプリの教え方のほうが役立っているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1〜2文で、スマホのアプリで単語を本当に覚えられるかを問題にしているので B。
Q2. What was a problem with many of the studies?
many of the studies were small or short とあるので C。
Q3. In this passage, what does "review" mean?
review words again later は「あとで単語をもう一度見直す」という意味なので A。
Vocabulary apps are popular, but do they work better than paper word lists? Meta-analyses, which combine the results of many studies, say yes. One review of 33 studies found a large positive effect for learning words with mobile devices, and another review of 45 studies with more than 2,000 learners reached a similar conclusion.
However, a researcher named Burston checked the quality of the studies. Out of 291 language-learning studies, only 19 were strong enough to trust, and four vocabulary studies among them found no difference at all. In addition, most apps include quizzes and spaced review, which are known to help memory without phones. This means the real power may come from how the app makes you practise.
119 words ・ CEFR B1
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単語アプリは人気ですが、紙の単語リストよりよく効くのでしょうか。多くの研究の結果をまとめるメタ分析は、そうだと答えています。33の研究をまとめたあるレビューは、携帯端末で単語を学ぶことに大きなプラスの効果を見つけ、2,000人を超える学習者を含む45研究の別のレビューも同じような結論に達しました。
しかし、バーストンという研究者が研究の質を調べました。291の語学学習研究のうち、信頼できるほどしっかりしていたのは19だけで、その中の4つの単語研究はまったく差を見つけませんでした。さらに、ほとんどのアプリには、スマホがなくても記憶を助けることが知られているクイズや間隔をあけた復習が入っています。つまり、本当の力は、アプリがどのように練習させるかから来ているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What does a meta-analysis do?
Meta-analyses, which combine the results of many studies とあるので B。
Q2. How many of the 291 studies did Burston find strong enough to trust?
Out of 291 language-learning studies, only 19 were strong enough to trust とあるので B。
Q3. What does the writer suggest about vocabulary apps?
最終文で、本当の力はアプリの練習のさせ方から来ている可能性があると述べているので C。
Studying vocabulary on a smartphone feels efficient, and meta-analyses appear to confirm it. A 2019 synthesis of 33 studies reported a large positive effect of mobile-assisted vocabulary learning, and a 2021 meta-analysis of 45 studies involving 2,374 learners estimated a large effect for technology-assisted word learning, with mobile and out-of-class learning performing especially well.
But the results look less impressive once study quality is examined. In a 2015 review, Burston found that only 35 of 291 language-learning studies met minimal conditions of sample size and duration, and only 19 could reliably support conclusions. In a later review of 1,144 references, just 84 studies qualified; their average effect was large, but the authors detected clear publication bias and extremely high heterogeneity.
Another problem is the comparison itself. Mobile groups are often compared with learners using traditional methods such as paper lists, while apps typically add retrieval quizzes, spaced review and audio. These features are effective with or without a phone, so the device and the method are confounded. A novelty effect may also inflate short-term results. Learners should therefore choose apps that make them recall words and review them over time.
190 words ・ CEFR B2
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スマホで単語を勉強するのは効率的に感じられ、メタ分析もそれを裏づけているように見えます。2019年の33研究の統合は、携帯端末を使った単語学習に大きなプラスの効果を報告し、2,374人の学習者を含む45研究の2021年のメタ分析も、テクノロジーを使った単語学習に大きな効果を推定し、特にモバイルや教室外での学習がよい成績を示しました。
しかし、研究の質を調べると、結果はそれほど印象的ではなくなります。2015年のレビューでバーストンは、語学全般の291研究のうち、標本の大きさと期間の最低条件を満たしたのは35だけで、確かな結論を支えられるのは19だけだと見出しました。1,144件の文献を対象にした後のレビューでは、条件を満たしたのは84研究のみで、その平均効果は大きかったものの、著者らははっきりした出版バイアスと非常に大きなばらつきを検出しました。
もう一つの問題は比較そのものです。スマホ組は紙のリストなど従来の方法で学ぶ学習者と比べられることが多い一方、アプリにはふつう、思い出すクイズ、間隔をあけた復習、音声が加わっています。これらの機能はスマホがあってもなくても効果的なので、端末と方法が交絡しています。新しさ効果が短期の結果を大きく見せている可能性もあります。したがって学習者は、単語を思い出させ、時間をかけて復習させるアプリを選ぶべきでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
前半で肯定的な結果を示した後、研究の質・比較対象・新しさ効果の問題を挙げて慎重な解釈を求めているので B。
Q2. What did the later review of 1,144 references find?
just 84 studies qualified ... detected clear publication bias とあるので C。
Q3. Why does the writer say the device and the method are "confounded"?
アプリにはスマホなしでも効く学習法(クイズ・間隔復習)が入っているため、効果の原因が端末か方法か区別できない、という意味なので B。
重要単語
- mobile-assistedB2形容詞携帯端末を使ったMobile-assisted learning lets you study on the train.
MALL = mobile-assisted language learning。CALL(computer-assisted)と並ぶ研究分野の名前。 - retentionC1名詞記憶の保持Spaced review improves long-term retention.
retain「保つ」の名詞形。long-term retention「長期的な記憶保持」は学習研究の定番表現。 - publication biasC1名詞(句)出版バイアスPublication bias can make a method look better than it is.
効果なしの研究は論文になりにくいため、メタ分析の平均が実際より大きく出る原因になる。 - heterogeneityC1名詞異質性・ばらつきHigh heterogeneity means the studies found very different results.
形容詞 heterogeneous「異種の」⇔ homogeneous「同質の」。hetero-「異なる」は入試の語源問題にも出る。 - noveltyB2名詞目新しさThe novelty of a new app may fade after a few weeks.
novel「新しい」(形容詞)の名詞形。novelty effect「新しさ効果」。 - confoundC1動詞(要因を)混同させる・交絡させるTime spent studying may confound the results.
研究で「本当の原因がわからなくなる」状況を表す。名詞 confounding factor「交絡因子」。 - autonomyB2名詞自律性Apps give learners more autonomy over when they study.
auto-「自分で」+ nomos「決まり」。形容詞 autonomous。learner autonomy は教育学の重要語。
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スマホで英単語、本当に覚えられる? メタ分析では紙より「大きな効果」。でも研究を質でふるいにかけると残ったのは1割未満、出版バイアスもくっきり。効いているのはスマホより「思い出す・間隔をあける」仕組みかも。
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- Lin & Lin (2019) Mobile-assisted ESL/EFL vocabulary learning: a systematic review and meta-analysis, Computer Assisted Language Learningdoi.org
- Hao, Wang & Ardasheva (2021) Technology-Assisted Vocabulary Learning for EFL Learners: A Meta-Analysis, Journal of Research on Educational Effectivenessdoi.org
- Burston (2015) Twenty years of MALL project implementation: A meta-analysis of learning outcomes, ReCALLdoi.org
- Burston & Giannakou (2022) MALL language learning outcomes: A comprehensive meta-analysis 1994–2019, ReCALLdoi.org
- Peng, Jager & Lowie (2021) Narrative review and meta-analysis of MALL research on L2 skills, ReCALLdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










