語学・英語学習

日本人が「a」と「the」を間違える本当の理由。80人に“選んだ理由”を聞いた研究

日本人が「a」と「the」を間違える本当の理由。80人に“選んだ理由”を聞いた研究

読む前に予想してみよう!

英語の the は、話し手が特定のものを思い浮かべていれば、聞き手が知らなくても使える

研究カード(どんな研究?)
対象
日本人大学生80人、韓国語・ロシア語話者など
規模
数十〜80人規模
研究の種類
面接調査・実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

日本人大学生は「自分が特定のものを思い浮かべているか」で the を選ぶなど独自ルールで判断していた。ルールの明示的指導は長く効いた。

ひとことで言うとthe は「相手もそれを知ってる?」で決まる。自分だけ知ってても a!

もくじ
  1. 「なぜそれを選んだの?」と聞いてみた
  2. 世界の学習者も同じ「わな」にはまる
  3. 説明すれば、ちゃんと身につく
  4. まとめ

英作文を添削してもらうと、毎回のように赤ペンが入る場所があります。a と the。

日本語には冠詞がないので、難しいのは当然……と思いがちです。でも、研究者が学習者の頭の中の「ルール」を調べてみると、間違いにはちゃんとした理由(パターン)がありました。

01「なぜそれを選んだの?」と聞いてみた

英語の冠詞の基本ルールは、ざっくり言うと次のとおりです。

  • the:聞き手も「どれのことか」わかるとき
  • a / an:聞き手にとって初めて出てくる、1つの数えられるもの
  • 無冠詞:数えられない名詞や、複数形を一般的に言うとき

ところが学習者は、「話し手(自分)が特定のものを思い浮かべているか」で the を選んでしまうことがあります。例えば「I bought a book yesterday.」で、自分は「あの本」と決まっていても、相手はまだ知らないので a が正解です。

02世界の学習者も同じ「わな」にはまる

この「自分が特定しているか」で冠詞を選ぶ現象は、日本人だけのものではありません。

イオニンらは2004年、冠詞のない言語であるロシア語や韓国語の話者の英語を調べ、学習者が「特定性(specificity)」を手がかりに the を使いすぎる傾向を報告しました。冠詞のない言語の話者は、冠詞の「意味の軸」を探る途中で、別の軸(特定性)と取り違えやすいと考えられます。

the が使えるのは「2人とも知っている」重なりの部分
the が使えるのは「2人とも知っている」重なりの部分

03説明すれば、ちゃんと身につく

「冠詞は感覚だから、たくさん触れるしかない」とも言われます。でも研究は、ルールの明示的な説明にも効果があることを示しています。

「説明で覚えた知識は、とっさの会話では使えない」と思われがちですが、少なくともこの研究では、時間がたっても、すばやい処理が求められる課題でも効果が残っていたのです。

04まとめ

日本人が a と the を間違えるのは、ランダムではなく、「自分が特定しているか」など独自のルールで判断しているからでした。

カギは「聞き手もどれのことかわかる?」という視点。そして、ルールの説明を受けて練習することは、ルールの説明を受けて練習した効果は、ある研究では6週間後にも残っていました****ことがわかっています。次の英作文で、名詞の前を一度だけ「冠詞パトロール」してみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese has no articles, so it is not surprising that Japanese learners find "a" and "the" difficult. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

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この研究を英語で読もう

Japanese has no articles, so it is not surprising that Japanese learners find "a" and "the" difficult. However, a 2002 study by Butler showed that their mistakes follow patterns. She asked 80 Japanese university students to fill in articles and then interviewed them about each choice. Their errors came from different ideas about three points, namely whether the listener knows the thing, whether it is a specific thing, and whether it is countable.

A common mistake was choosing "the" because the speaker had a specific thing in mind, even though the listener did not know it. Speakers of other languages without articles, such as Russian and Korean, show a similar tendency. The good news is that a 2011 study found explicit instruction on articles still had effects six weeks later.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語には冠詞がないので、日本人学習者が「a」と「the」を難しいと感じるのは驚くことではありません。しかし、バトラーによる2002年の研究は、彼らの間違いにはパターンがあることを示しました。彼女は日本人大学生80人に冠詞を埋めてもらい、その後、それぞれの選択についてインタビューしました。彼らの誤りは、3つの点についての異なる考え方から生じていました。聞き手がそのものを知っているか、それが特定のものか、そして数えられるか、です。

よくある間違いは、聞き手がそれを知らないのに、話し手が特定のものを思い浮かべているという理由で「the」を選ぶことでした。ロシア語や韓国語のような冠詞のない他の言語の話者にも、似た傾向が見られます。よい知らせは、2011年の研究で、冠詞の明示的な指導が6週間後にも効果を保っていたことがわかったことです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Butler do after the students filled in the articles?

Q2. Which is NOT one of the three points mentioned in the passage?

Q3. What can we infer from the 2011 study?

重要単語

  • articleB1
    名詞冠詞Japanese has no articles. 「記事」と同じ語。文法では a / an(不定冠詞)と the(定冠詞)。
  • definiteB2
    形容詞定の・特定された・明確な"The" is the definite article. the definite article「定冠詞」、the indefinite article「不定冠詞」。副詞 definitely「確かに」は会話でも頻出。
  • specificB1
    形容詞特定の・具体的なI have a specific book in mind. 名詞 specificity「特定性」。have ~ in mind「~を念頭に置いている」とセットで覚える。
  • countableB1
    形容詞数えられる(可算の)"Information" is not countable in English. 反対語は uncountable。辞書の [C](countable)[U](uncountable)表示で確認できる。advice、furniture は不可算。
  • hearerB2
    名詞聞き手Think about what the hearer already knows. 言語学では speaker(話し手)と hearer / listener(聞き手)を対で使う。the を選ぶカギは hearer の知識。
  • referentC1
    名詞指示対象(言葉が指しているもの)The listener must be able to identify the referent. refer to ~(~を指す)から。言語学の専門用語で、the book の「その本」の実体のこと。
  • explicitC1
    形容詞明示的なExplicit instruction on articles had lasting effects. 反対語は implicit(暗示的な)。SLA では explicit knowledge(説明できる知識)と implicit knowledge(無意識に使える知識)を区別する。
日本人大学生80人に「なぜ a / the を選んだの?」と聞いた研究がある。間違いの背景には、「自分がそれを思い浮かべているか」で判断するなど、聞き手・特定性・可算性の考え方のずれがあるらしい。the の決め手は“相手も知ってるか”。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Butler (2002) Second language learners' theories on the use of English articles. Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  2. Ionin, Ko & Wexler (2004) Article semantics in L2 acquisition: The role of specificity. Language Acquisitiondoi.org
  3. Akakura (2011) Evaluating the effectiveness of explicit instruction on implicit and explicit L2 knowledge. Language Teaching Researchdoi.org