富士山頂ではお湯が約87℃で沸騰する。山の上でカップ麺がかためになる理由

読む前に予想してみよう!
圧力鍋の中では、水は100℃より高い温度で沸騰する
鍋の中の圧力を高めることで沸点を上げ、約120℃近くで調理できる。だから煮込みが早く仕上がる。
- 対象
- 水の沸点と気圧の関係
- 規模
- 水の蒸気圧の精密測定データと山頂の気象観測
- 研究の種類
- 物理化学の確立した法則+観測データ
- 確かさ
- ★★★★★
水の沸点は気圧で変わる。気圧が地上の約3分の2になる富士山頂では、お湯は約87〜88℃で沸騰。グツグツでも温度が低いので、麺やご飯に火が通りにくい。
ひとことで言うと山の上では空気の押す力が弱いから、お湯が100℃より低い温度でわいちゃう!
「水は100℃で沸騰する」。理科の授業で習った、当たり前の知識ですよね。
ところが、日本一高い富士山の山頂(標高3776m)でお湯をわかすと、温度計は約87〜88℃あたりで止まってしまいます。お湯はちゃんとグツグツ沸騰しているのに、100℃にならないのです。
じつは「水は100℃で沸騰する」というのは、地上の気圧での話。今日は、山の上で起きる不思議な「お湯の話」をしましょう。
01「沸騰」ってそもそも何?
お湯をわかすと、鍋の底から大きな泡がボコボコ出てきます。この泡の中身は、空気ではなく水が気体になった水蒸気です。
水の中で水蒸気の泡ができるためには、泡の内側から押し返す力(水蒸気の圧力)が、外から泡を押しつぶそうとする力に勝たなければなりません。外から押す力の主役は、水面の上にのしかかっている空気の重さ(気圧)です。
水の温度が上がるほど、水蒸気の押し返す力は強くなります。そして、その力がまわりの気圧と同じになったとき、水の中のあちこちで泡ができるようになる。これが沸騰です。
02山の上では「空気のふた」が軽い
気圧とは、頭の上にある空気の重さのことです。地上では、何十kmもの厚さの空気が上に乗っているので、そのぶん重くのしかかっています。
山に登ると、自分より上にある空気が少なくなるので、気圧は下がります。富士山の山頂では、気圧は地上の約3分の2ほどしかありません。気象庁の富士山の観測データでは、年平均の気圧はおよそ640hPa(地上の平均は約1013hPa)です。
鍋にのせた「空気のふた」が軽くなったようなもの。水蒸気は、地上よりも弱い力で泡を作れるようになります。だから、100℃まで上がらなくても、約87〜88℃で沸騰が始まってしまうのです。

目安としては、標高が約300m上がるごとに、沸点は約1℃下がるといわれます。世界最高峰のエベレスト山頂(気圧は地上の約3分の1)では、沸点は約70℃ほどになります。
ちなみに、同じ富士山頂でも、低気圧が来て気圧が下がった日には沸点がさらに少し下がり、高気圧の日には少し上がります。山の上のお湯の温度は、天気によっても変わるのです。
03グツグツなのに「火が通らない」問題
沸点が低いと、料理に困ったことが起きます。
お湯がどれだけ激しく沸騰していても、温度は沸点以上には上がりません。火を強くしても、水がどんどん水蒸気になって出ていくだけ。つまり富士山頂では、どんなにがんばっても88℃くらいのお湯でしか料理できないのです。
- カップ麺:お湯の温度が低いので、麺がもどりにくくかためになりやすい
- ご飯:お米に十分に火が通らず、芯が残ることがある
- ゆで卵:地上と同じ時間ではかたまりにくい
だから昔から、高い山での炊飯には、ふたにおもしをのせたり、圧力をかけたりする工夫がされてきました。
04逆を利用したのが「圧力鍋」
山の上で気圧が下がると沸点が下がる。ということは、逆に気圧を上げれば、沸点は上がるはずですよね。
それを利用したのが圧力鍋です。ふたをしっかり閉めて、中の水蒸気を逃がさないようにすると、鍋の中の圧力が上がります。家庭用の圧力鍋では、鍋の中の圧力が地上の気圧の約2倍近くになり、水は100℃では沸騰せず、110〜120℃くらいまで温度を上げることができるのです。
温度が高いほど食材にはやく火が通るので、かたいお肉や豆も短時間でやわらかくなります。山の上の不便さと圧力鍋の便利さは、じつは同じ原理の表と裏なのです。
05まとめ
- 水が沸騰する温度は、まわりの気圧で変わる
- 富士山頂では気圧が地上の約3分の2なので、約87〜88℃で沸騰する
- 沸騰していても温度が低いので、麺やご飯に火が通りにくい
- 圧力鍋は、逆に圧力を上げて沸点を高くする調理器具
次にお湯をわかすとき、「この沸騰は、空気の重さとのせめぎ合いなんだ」と思い出してみてください。台所のやかんの中にも、地球をつつむ空気の力がはたらいているのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWater boils when the pressure of its vapor becomes equal to the air pressure around it.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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Water boils at 100°C, right? Not always. On top of Mount Fuji, water boils at about 87 or 88°C. This is because the air pressure there is only about two-thirds of the pressure at sea level.
With less air pushing down, bubbles form more easily. The water boils, but it is not very hot. So cup noodles stay a little hard, and rice may not cook well.
67 words ・ CEFR A2
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水は100℃で沸騰しますよね?いつもそうとは限りません。富士山の山頂では、水は約87〜88℃で沸騰します。これは、そこでの気圧が地上の約3分の2しかないからです。
上から押す空気が少ないので、泡ができやすくなるのです。お湯は沸騰していても、それほど熱くありません。だから、カップ麺は少しかためのままで、ご飯もうまく炊けないことがあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
山の上では気圧が低いため、水が100℃より低い温度で沸騰する理由を説明しているので B。
Q2. How hot is boiling water on top of Mount Fuji?
water boils at about 87 or 88°C とあるので D。
Q3. In this passage, "bubbles" are ...
bubble は「泡」。沸騰するときに水の中にできる気体の玉なので A。
Water boils when the pressure of its vapor becomes equal to the air pressure around it. At sea level, this happens at 100°C. On the summit of Mount Fuji, which is 3,776 meters high, the air pressure is only about two-thirds as high, so water starts boiling at around 87 to 88°C. As a rough guide, the boiling point drops by about 1°C for every 300 meters you climb.
This causes cooking problems: no matter how strong the fire is, the water cannot get hotter than its boiling point, so noodles stay hard and rice may not cook completely. A pressure cooker uses the opposite idea, raising the pressure so that water can reach 110 to 120°C.
117 words ・ CEFR B1
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水は、水蒸気の圧力がまわりの気圧と等しくなったときに沸騰します。地上では、それが100℃で起こります。標高3776mの富士山頂では気圧が約3分の2しかないので、水は約87〜88℃で沸騰し始めます。おおまかな目安として、300m登るごとに沸点は約1℃下がります。
これは料理に問題を引き起こします。火をどれだけ強くしても、お湯は沸点より熱くならないので、麺はかたいままで、ご飯も完全には炊けないことがあるのです。圧力鍋はその逆の考え方を利用していて、圧力を上げることで水が110〜120℃に達するようにしています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
気圧によって沸点が変わることと、その料理への影響を説明しているので C。
Q2. About how much does the boiling point drop for every 300 meters you climb?
the boiling point drops by about 1°C for every 300 meters you climb とあるので A。
Q3. Why can't a stronger fire make the water hotter on the summit?
お湯は沸点より熱くならないと書かれている。加えた熱は水を水蒸気に変えるのに使われるだけだと推論できるので D。
Boiling occurs when water's vapor pressure, which rises with temperature, matches the pressure of the surrounding atmosphere; only then can vapor bubbles form throughout the liquid. On the summit of Mount Fuji, at 3,776 meters, the average air pressure is about 640 hectopascals, roughly two-thirds of the sea-level value, so water boils at around 87 to 88°C. Calculations using the modern international standard for water's properties give about 87.5°C at that pressure. The boiling point even shifts slightly with the weather, falling when a low-pressure system arrives.
On Everest, where pressure is about one-third of sea level, it is close to 70°C. The practical consequence is that boiling water on mountains is cooler than people assume: adding more heat merely produces more vapor, so noodles stay firm, rice may remain hard in the center, and boiling water may not sterilize as well as expected. Pressure cookers exploit the reverse effect, raising the internal pressure to reach 110 to 120°C. However, how much longer food must be cooked at altitude cannot be calculated simply, since changes in starch and protein depend on temperature in different ways.
185 words ・ CEFR B2
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沸騰は、温度とともに上がる水の蒸気圧が、まわりの大気の圧力と等しくなったときに起こります。そのときになって初めて、液体全体に水蒸気の泡ができるのです。標高3776mの富士山頂では、平均気圧は約640ヘクトパスカルで、地上の値のおよそ3分の2なので、水は約87〜88℃で沸騰します。水の性質についての現代の国際標準式を使って計算すると、その気圧での沸点は約87.5℃になります。沸点は天気によってもわずかに変わり、低気圧が来ると下がります。気圧が地上の約3分の1のエベレストでは、沸点は70℃近くになります。実際上の結果として、山の上で沸騰しているお湯は人が思うより温度が低いのです。
熱を加えても水蒸気が増えるだけなので、麺はかたいままで、ご飯は芯が残ることがあり、熱湯での消毒も期待どおりには効かないかもしれません。圧力鍋はこの逆の効果を利用して内部の圧力を上げ、110〜120℃に到達させます。ただし、高地で調理時間をどれだけ延ばせばよいかは単純には計算できません。でんぷんやタンパク質の変化は、それぞれ温度に対して異なる形で左右されるからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
気圧が沸点を決め、それが調理に影響するという内容なので D。
Q2. According to the passage, what happens to the boiling point when a low-pressure system arrives?
The boiling point even shifts slightly with the weather, falling when a low-pressure system arrives. とあるので B。
Q3. Why does the author say that extra cooking time at altitude cannot be calculated simply?
最終文で、でんぷんやタンパク質の変化はそれぞれ温度への依存の仕方が違うと述べているので C。
重要単語
- boiling pointB1名詞(句)沸点The boiling point of water drops at high altitude.
reach (the) boiling point は比喩で「怒りが頂点に達する」の意味にもなる。 - atmospheric pressureB2名詞(句)気圧(大気圧)Atmospheric pressure is lower on top of a mountain.
atmosphere(大気・雰囲気)の形容詞形。air pressure とも言う。 - vapor pressureC1名詞(句)蒸気圧Vapor pressure rises as water gets hotter.
vapor は「蒸気」(英つづり vapour)。evaporate(蒸発する)と同語源。 - altitudeB2名詞高度、標高It is hard to cook rice at high altitude.
alt(高い)が語源。at high altitude「高地で」の形でよく使う。altitude sickness は「高山病」。 - pressure cookerB2名詞(句)圧力鍋A pressure cooker makes beans soft quickly.
cooker は「調理器具」。cook(料理人)と混同しないよう注意。 - sterilizeC1動詞殺菌する、消毒するBoiling water is often used to sterilize bottles.
sterile(無菌の)の動詞形。名詞 sterilization。disinfect も近い意味。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Wagner & Pruß (2002) The IAPWS Formulation 1995 for the Thermodynamic Properties of Ordinary Water Substance for General and Scientific Use, Journal of Physical and Chemical Reference Datadoi.org
- 過去の気象データ 富士山(年ごとの値), 気象庁data.jma.go.jp
- Koutsoyiannis (2012) Clausius–Clapeyron equation and saturation vapour pressure: simple theory reconciled with practice, European Journal of Physicsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











