電話帳を書き写した人ほどアイデアが出た?「退屈は創造性のスイッチ」説の実力

読む前に予想してみよう!
「何もせず一人で考えるだけの15分」より、自分に電気ショックを与えるほうを選んだ人がいる
米国の実験で、少なくない参加者が退屈しのぎに自ら電気ショックのボタンを押した。
- 対象
- 英国の成人
- 規模
- 1実験あたり数十〜約90人
- 研究の種類
- 実験研究(小規模)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
退屈な作業のあとにアイデア出しをすると、発想が豊かになったという研究がある。ただし実験は小規模で、効果の大きさはまだ検証中。
ひとことで言うとたいくつな時間が、脳の「ひらめき工場」を動かすかも?
電車の待ち時間、レジの行列、寝る前のちょっとした空白。私たちはその「退屈」を、ほぼ反射的にスマホで埋めています。
でも、もしその退屈こそがアイデアの種だったとしたら? イギリスの心理学者たちが、わざと参加者を退屈させるという、ちょっと意地悪な実験でこれを確かめようとしました。
01退屈させるために「電話帳を書き写させた」
この「コップの使い道」のような課題は、拡散的思考(一つの答えに絞らず、いろんな可能性を広げて考える力)を測るテストとしてよく使われます。
02退屈な脳は「内側の旅」に出る
なぜ退屈がアイデアにつながるのでしょう。研究者たちが注目しているのがマインドワンダリング、つまり心がふらふら散歩する状態です。
外からの刺激が少なくなると、脳は内側に目を向け、昔の記憶や関係なさそうな知識を勝手につなぎ合わせ始めます。この「とりとめのない連想」が、思いがけない組み合わせ=アイデアを生むと考えられています。
米カリフォルニア大サンタバーバラ校のベアードらの実験でも、アイデア出しの課題をいったん置いて簡単で単調な作業をした人のほうが、休憩なしの人、ただ休んだ人、集中が必要な作業をした人より、同じ課題に戻ったときに多くの答えを出しました(Psychological Science, 2012)。単調な作業中は心がさまよう頻度が高く、それが鍵だと考えられています。ただし効果が出たのは一度取り組んだ課題だけで、新しい課題では差がありませんでした。
米国の別の研究では、退屈な気分にさせた人は、苦痛を感じた人やリラックスした人より、連想を広げる課題で成績がよい傾向があることも報告されています(Journal of Experimental Social Psychology, 2014)。退屈は「何か新しいものを探せ」という脳からのサインなのかもしれません。

03人は「退屈」がとにかく苦手
ただし、退屈は簡単に味わえるものではありません。米バージニア大のウィルソンらの実験では、何もせず一人で考えるだけの15分間を与えられた参加者の中に、自分に電気ショックを与えるボタンを押す人が少なくありませんでした(Science, 2014)。特に男性で多く、女性より高い割合で押していました。
事前に「お金を払ってでも避けたい」と答えていたショックなのに、です。人の脳が、いかに「何もしない時間」を嫌うかがよく分かります。
04「いい退屈」を取り戻すには
ポイントは、退屈を短く・意図的に使うことです。
05まとめ
退屈は、脳が外の世界から内側の世界へ旅立つためのチケットなのかもしれません。研究はまだ発展途上ですが、「暇つぶし」を少し手放すことで、意外なひらめきが降りてくる可能性はありそうです。
次に行列に並んだら、スマホをしまって、5分だけ退屈を味わってみませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost of us fill every boring moment with our smartphones, but boredom might actually be useful.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When we are bored, we often look at our phones. But boredom may help us think of new ideas. In a British study, some people copied numbers from a phone book for 15 minutes. It was very boring.
After that, they thought of more ways to use a plastic cup than other people did. When we are bored, our minds start to wander.
63 words ・ CEFR A2
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退屈なとき、私たちはよくスマホを見ます。でも、退屈は新しいアイデアを思いつく助けになるかもしれません。イギリスの研究で、一部の人が15分間、電話帳の番号を書き写しました。それはとても退屈でした。
その後、彼らはほかの人たちよりも、プラスチックのコップの使い方をたくさん思いつきました。退屈なとき、私たちの心はふらふらとさまよい始めるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
退屈が新しいアイデアを生む助けになるかもしれない、という話なので A。
Q2. What did some people do for 15 minutes?
copied numbers from a phone book for 15 minutes とあるので D。
Q3. In this passage, "wander" means ...
wander は「さまよう、ぶらつく」。心があちこちに移ることなので B。
Most of us fill every boring moment with our smartphones, but boredom might actually be useful. In a British experiment, some participants spent 15 minutes copying numbers from a phone book, a very dull task. Then everyone was asked to think of as many uses for a plastic cup as possible. The bored group came up with more ideas than a group that had done nothing beforehand.
Researchers think that when there is little to focus on outside, the mind begins to wander and connect unrelated memories. However, people find boredom hard to bear. In a US study, many participants left alone with their thoughts for 15 minutes chose to give themselves electric shocks rather than do nothing.
118 words ・ CEFR B1
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私たちの多くは、退屈な時間をすべてスマホで埋めていますが、退屈は実は役に立つのかもしれません。イギリスの実験では、一部の参加者が、電話帳の番号を書き写すというとても退屈な作業を15分間行いました。その後、全員がプラスチックのコップの使い道をできるだけたくさん考えるよう頼まれました。退屈なグループは、事前に何もしなかったグループよりも多くのアイデアを出しました。
研究者たちは、外に集中するものがほとんどないと、心がさまよい始め、関係のない記憶どうしを結びつけるのだと考えています。しかし、人は退屈に耐えるのが苦手です。米国の研究では、15分間一人で考え事をするよう求められた参加者の多くが、何もしないより、自分に電気ショックを与えることを選びました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
退屈がアイデアを増やすかもしれないこと、そして人は退屈が苦手であることを述べているので C。
Q2. What were participants asked to do after the boring task?
asked to think of as many uses for a plastic cup as possible とあるので B。
Q3. What does the US study suggest about people?
何もしないより電気ショックを選んだ人が多かったので、何もしないことをとても嫌うと推測できる。正解は D。
We tend to fill every idle moment with a smartphone, yet some psychologists argue that boredom can fuel creativity. In a 2014 British study, participants first spent 15 minutes copying numbers from a phone book and then listed as many uses for a plastic cup as they could, a standard test of divergent thinking. They produced more ideas than a control group, and a second experiment suggested that merely reading the numbers, an even duller task, increased ideas further.
A proposed explanation is mind wandering: with little external stimulation, the brain turns inward and links distant memories. Supporting this, a 2012 US study found that people who did an undemanding task during a break later generated more ideas, though only for problems they had already worked on.
Boredom, however, is hard to tolerate; in one experiment many people, especially men, chose to shock themselves rather than sit quietly with their thoughts. The evidence also has clear limits. The British experiments involved fewer than a hundred participants each, creativity was measured mainly by the number of ideas, and large preregistered replications are scarce. Chronic boredom is also linked to low mood, so short, deliberate boredom is what may help.
198 words ・ CEFR B2
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私たちは暇な時間をすべてスマホで埋めがちですが、退屈が創造性を高めうると主張する心理学者もいます。2014年のイギリスの研究では、参加者がまず15分間電話帳の番号を書き写し、その後、拡散的思考の標準的なテストとして、プラスチックのコップの使い道をできるだけ多く挙げました。彼らは対照群よりも多くのアイデアを出し、2つ目の実験では、番号をただ読むという、さらに退屈な作業がアイデアをいっそう増やすことが示唆されました。提案されている説明はマインドワンダリングです。
外からの刺激がほとんどないと、脳は内側に向かい、遠く離れた記憶どうしを結びつけるのです。これを支持するように、2012年の米国の研究では、休憩中に負担の少ない作業をした人は、後でより多くのアイデアを出しました。ただし、それはすでに取り組んだことのある問題に限られていました。
しかし、退屈は耐えがたいものです。ある実験では、多くの人、特に男性が、静かに考え事をするより、自分に電気ショックを与えることを選びました。証拠にははっきりした限界もあります。イギリスの実験はそれぞれ参加者が100人未満で、創造性は主にアイデアの数で測られ、大規模な事前登録の追試はほとんどありません。また、慢性的な退屈は気分の落ち込みと関連しているので、役に立つかもしれないのは、短く意図的な退屈なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
退屈が創造性を高めうるという研究と、小規模・指標の限界・追試不足などの限界を述べているので A。
Q2. What did the 2012 US study find?
people who did an undemanding task ... generated more ideas, though only for problems they had already worked on とあるので C。A は逆。
Q3. What kind of boredom does the author suggest may be helpful?
最終文 short, deliberate boredom is what may help とあるので B。慢性的な退屈は気分の落ち込みと関連する。
重要単語
- boredomB2名詞退屈Boredom can push us to look for something new.
bored(人が退屈して)/boring(物事が退屈な)の区別は中学からの定番。-dom は freedom と同じ名詞語尾。 - divergent thinkingC1名詞(句)拡散的思考Listing many uses for a cup tests divergent thinking.
diverge(分かれる)から。反対は convergent thinking(収束的思考=1つの正解を出す思考)。 - mind wanderingC1名詞(句)心のさまよい、雑念Mind wandering often happens during simple tasks.
wander(さまよう)と wonder(不思議に思う)はつづり・発音を混同しやすいので注意。 - incubationC1名詞孵化(問題をいったん寝かせること)An incubation period can lead to better ideas.
もとは卵を「温めてかえす」こと。医学では「潜伏期間(incubation period)」の意味もある。 - disengagedC1形容詞何にも関わっていない、手持ちぶさたなA disengaged mind may feel uncomfortable.
engage(関わらせる)に否定の dis- がついた形。be engaged in ~「~に従事している」も頻出。 - idleB2形容詞何もしていない、暇なWe often fill idle moments with our phones.
idol(アイドル)と同じ発音。idle time「空き時間」。
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電話帳をひたすら書き写すという超退屈な作業のあと、アイデア出しの成績が上がったという実験があるらしい。スマホで暇つぶしするより、ぼーっとするほうが発想力にはいいのかも。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Mann & Cadman (2014) Does being bored make us more creative?, Creativity Research Journaldoi.org
- Baird et al. (2012) Inspired by distraction: mind wandering facilitates creative incubation, Psychological Sciencedoi.org
- Wilson et al. (2014) Just think: the challenges of the disengaged mind, Sciencedoi.org
- Gasper & Middlewood (2014) Approaching novel thoughts: understanding why elation and boredom promote associative thought more than distress and relaxation, Journal of Experimental Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











