脳と心理ホント

「ひらめいた!」の0.3秒前、脳の右側で"小さな花火"が上がっていた

「ひらめいた!」の0.3秒前、脳の右側で"小さな花火"が上がっていた

読む前に予想してみよう!

「ひらめき」で出した答えは、じっくり分析して出した答えより間違いが多い

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人
規模
十数〜20人程度(fMRI・脳波)
研究の種類
脳画像・脳波の実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ひらめきで答えが浮かぶ直前、脳の右側頭部でガンマ波が急に強まっていた。さらにその少し前には、脳が外の情報をシャットアウトする「まばたき」のような動きも。

ひとことで言うとひらめく直前、脳はいったん目をつぶって、右側でピカッと光る!

もくじ
  1. 「ひらめき」を実験室で起こす方法
  2. 直前に、脳は「目をつぶる」
  3. ひらめきの答えは、意外と正しい
  4. ひらめきやすい脳をつくるには
  5. まとめ

シャワーを浴びているとき、散歩の途中、寝る直前。何時間考えても分からなかった答えが、ふいに頭の中で「パッ」と浮かぶ。いわゆる「ひらめき」や「アハ体験」です。

あの瞬間、脳の中では何が起きているのでしょう。実は研究者たちは、ひらめきの瞬間を脳波で「捕まえる」ことに成功していました。

01「ひらめき」を実験室で起こす方法

ひらめきを調べるには、まず実験室でひらめきを起こさなければなりません。そこで使われたのが、3つの言葉に共通してつながる1語を探すパズルです。

たとえば日本語で作るなら、「目玉」「たこ」「お好み」――共通してつながる言葉は? 答えは「焼き」。こんなふうに、じっくり一つずつ試して解けることもあれば、ある瞬間に「あっ!」と答えが降ってくることもあります。

右の側頭部(右耳の少し上あたり)は、遠く離れた意味どうしをゆるやかに結びつけるのが得意だと考えられている場所です。普段は思いつかない組み合わせが、ここでカチッとつながる。それが「ひらめき」の正体の一端ではないか、と研究者たちは考えました。

02直前に、脳は「目をつぶる」

さらに面白い発見があります。ガンマ波の爆発のさらに1秒ほど前、右の後頭部(視覚に関わる部分)で、アルファ波というゆったりしたリズムが強まっていたのです。

アルファ波は、外からの情報を一時的にシャットアウトするときに強まると考えられています。研究者たちはこれを「脳のまばたき」とたとえました。

難しい問題を考えているとき、思わず目をつぶったり、天井を見上げたりしますよね。脳の中でも同じように、外のノイズを消して、内側の小さなささやきに耳をすます瞬間がある、というわけです。

外の情報をいったん閉じ、遠い記憶どうしがつながった瞬間が「ひらめき」
外の情報をいったん閉じ、遠い記憶どうしがつながった瞬間が「ひらめき」

03ひらめきの答えは、意外と正しい

「ひらめきは勘だから当てにならない」と思っていませんか? 実はその逆を示す研究もあります。

同じような言葉のパズルなどで、ひらめきで出した答えのほうが、分析的に出した答えより正解率が高かったという報告があるのです(Thinking & Reasoning, 2016)。言葉のパズルだけでなく、絵を使ったパズルなど4つの実験で同じ傾向が見られ、ひらめきの答えに比べて分析的な答えでは、時間切れよりも誤答で終わる割合が高く、研究者たちは、考えを途中で打ち切った「あてずっぽう」が混じるためだと考えています。ひらめきは、脳が水面下でしっかり検討した結果が、最後にまとめて意識に浮かんでくるものなのかもしれません。

ただし「アハ!」の感覚があれば必ず正しい、というわけではありません。手品のタネを当てる課題では、間違った答えでも「ひらめいた!」という強い感覚が起きることがあり、正解のときのほうがその感覚ははっきり強かったものの、その感覚だけで正解かどうかを見分けられるほどではありませんでした(Frontiers in Psychology, 2017)。ひらめきは「有力な候補」くらいに受け取って、最後は確かめるのが賢いやり方です。

04ひらめきやすい脳をつくるには

ひらめきは狙って起こすのが難しいものですが、起こりやすい状態はあるようです。スブラマニアムやクニオスらの研究では、気分が前向きな人ほど解けた問題が多く、とくにひらめきで解いた数が多い傾向があり、問題を解く前の脳の状態(前帯状皮質の活動)にも違いが見られたと報告されています(Journal of Cognitive Neuroscience, 2009)。

05まとめ

「ひらめき」は、天から降ってくる魔法ではなく、脳が外の世界をいったん閉じ、遠くの記憶どうしを結びつけた瞬間でした。

次にシャワー中に名案が浮かんだら、思い出してください。その0.3秒前、あなたの脳の右側で、小さな花火が上がっていたかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost of us have experienced an "aha moment," when the answer to a problem suddenly appears in our mind. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Most of us have experienced an "aha moment," when the answer to a problem suddenly appears in our mind. Researchers studied this by giving people word puzzles in which they had to find one word that connects three others. After each puzzle, participants said whether the answer came through sudden insight or step-by-step analysis.

When people solved a puzzle with insight, a burst of very fast gamma waves appeared over the right temporal lobe, an area near the right ear, about 0.3 seconds before the answer. About a second earlier, slow alpha waves increased at the back of the head, as if the brain were briefly shutting out what the eyes could see. Later research found that insight answers were correct more often than analytic ones.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

私たちの多くは、問題の答えが突然心に浮かぶ「アハ体験」を経験したことがあります。研究者たちは、3つの言葉をつなぐ1語を見つける言葉のパズルを人々に解いてもらうことで、これを研究しました。パズルを解くたびに、参加者は答えが突然のひらめきで出たのか、一歩ずつ分析して出たのかを報告しました。

ひらめきでパズルを解いたときには、答えの約0.3秒前に、右耳の近くにある右側頭葉で、とても速いガンマ波が急に強まりました。その約1秒前には、後頭部でゆっくりしたアルファ波が強まり、まるで脳が目に見えるものを一時的にシャットアウトしているかのようでした。その後の研究で、ひらめきによる答えは分析による答えよりも正解であることが多いとわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main topic of the passage?

Q2. What happened about a second before the gamma burst?

Q3. What can we infer about insight answers?

重要単語

  • insightB2
    名詞ひらめき、洞察A sudden insight helped her solve the puzzle. in(中を)+sight(見ること)=「物事の内側を見抜く力」。gain insight into ~「~を深く理解する」。
  • temporal lobeC1
    名詞(句)側頭葉The temporal lobe is involved in hearing and meaning. temporal は「こめかみの」。「時間の」(temporary と同語源)の意味もある多義語。
  • burstB2
    名詞急な高まり、爆発There was a burst of activity in the brain. burst into tears「わっと泣き出す」、burst out laughing「急に笑い出す」が定番。
  • analyticC1
    形容詞分析的なAn analytic approach checks each option one by one. analyze(分析する)、analysis(分析)とセットで。analytical も同じ意味。
  • remote associationC1
    名詞(句)遠い連想(離れた概念のつながり)Creative ideas often come from remote associations. remote は「遠く離れた」。remote control(リモコン)、remote work(遠隔勤務)でおなじみ。
  • oversimplifyC1
    動詞単純化しすぎるThe idea of a "right brain" person oversimplifies the science. over(過度に)+simplify(単純にする)。評論文で筆者が通説を批判するときの定番語。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「ひらめいた!」の0.3秒前、脳の右側で"小さな花火"が上がっていたの4コマ漫画
「ひらめいた!」と答えが浮かぶ約0.3秒前、脳の右側でガンマ波という速い脳波が急に強まっていたらしい。しかもその直前、脳は外の情報を一瞬シャットアウトしてるんだとか。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Jung-Beeman et al. (2004) Neural activity when people solve verbal problems with insight, PLoS Biologydoi.org
  2. Kounios & Beeman (2014) The cognitive neuroscience of insight, Annual Review of Psychologydoi.org
  3. Salvi et al. (2016) Insight solutions are correct more often than analytic solutions, Thinking & Reasoningdoi.org
  4. Subramaniam et al. (2009) A brain mechanism for facilitation of insight by positive affect, Journal of Cognitive Neurosciencedoi.org
  5. Danek & Wiley (2017) What about false insights? Deconstructing the Aha! experience along its multiple dimensions for correct and incorrect solutions separately, Frontiers in Psychologydoi.org