【最新研究】抗生物質を飲んでいる間の「甘いもの」が、腸内細菌の乱れを悪化させていた?

読む前に予想してみよう!
この研究は、健康な大学生を対象に行われた
対象は、造血幹細胞移植のために入院した患者で、強い抗生物質治療を受けることが多い人たち。
- 対象
- 造血幹細胞移植で入院した患者(+マウス実験)
- 規模
- 173人(9,419食)
- 研究の種類
- 観察研究+動物実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
入院患者173人の9419食を記録して分析。抗生物質の使用中に甘いものを多く食べた人ほど、腸内細菌の多様性が下がり、腸球菌が増えていた。マウス実験でも同様。
ひとことで言うと抗生物質を飲んでいるときは、甘いものを食べすぎない方がいいかも。
のどの感染症などで抗生物質をもらったとき、「せめて好きな甘いものでも」とプリンやジュースに手が伸びた経験はありませんか?
2026年9月30日、科学誌『Nature』に、米国のメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターなどのチームが、気になる論文を発表しました。抗生物質を使っている間に甘いもの・砂糖を多くとると、腸内細菌の乱れがより大きくなる可能性があるというのです。
01抗生物質は「味方の菌」も減らしてしまう
抗生物質は、病気の原因になる細菌をやっつける大切な薬です。でも、腸にすむ役に立つ細菌まで減らしてしまうことがあります。健康な人でも、抗生物質のあとに腸内細菌が完全には元に戻らない場合があることが報告されています(Dethlefsen & Relman, 2011)。
では、その間に何を食べるかで、乱れ方は変わるのでしょうか?
02甘いものが多いほど「多様性」が下がり、腸球菌が増えた
分析の結果、抗生物質を使っている期間に、甘いもの・砂糖を多くとった人ほど、
- 腸内細菌の多様性(α多様性)がより低くなり
- 「腸球菌(エンテロコッカス)」という菌がより大きく増えていた
ことが分かりました。腸球菌は、ふだんは目立たなくても、条件がそろうと問題を起こすことがある菌(病原性共生菌)です。
腸内細菌の「多様性」は、いろいろな種類の菌がバランスよくすんでいるかどうかの目安です。抗生物質で多くの菌が減ると、生き残った特定の菌が一気に増える「すき間」ができてしまうと考えられています。
03マウスでも「砂糖で悪化」を確認
人のデータだけでは、「甘いものを食べたせい」なのか、「体調が悪い人ほど甘いものを選んだ」のか区別できません。
そこで研究チームはマウス実験を行いました。抗生物質を与えたマウスにショ糖(砂糖)を追加すると、腸球菌の増加がより大きく、より長く続いたのです。砂糖が乱れを後押ししている可能性を、実験でも支持する結果でした。

04どんでん返し:対象は「特別な患者さん」
ここで大事な注意点。対象は、造血幹細胞移植を受ける患者さんで、強い抗生物質治療を受けることが多い、とても特別な状況の人たちです。
軽い細菌感染症で短期間だけ抗生物質を飲む健康な人に、同じことがどこまで当てはまるかは、まだ分かりません。論文自体も、ほかの集団でも確かめる研究が必要だと述べています。
05まとめ
抗生物質を飲んでいる間は、腸の中の生態系が弱っているとき。そこへ大量の砂糖が入ると、特定の菌だけが勢いづいてしまうのかもしれません。まだ特別な患者さんでの結果ですが、「薬を飲んでいる間は甘いものほどほどに」は、覚えておいて損のない知恵といえそうです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAntibiotics are important for treating infections, but they can also reduce the helpful bacteria that live…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Antibiotics are medicines that kill bad bacteria. But they can also kill good bacteria in our gut. Scientists in the US studied 173 patients in a hospital. They recorded 9,419 meals that the patients ate.
Patients who ate more sweets while taking antibiotics had fewer kinds of gut bacteria. One type of bacteria grew more. Tests on mice showed a similar result. So it may be wise to eat fewer sweets during antibiotic treatment.
74 words ・ CEFR A2
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抗生物質は、悪い細菌を殺す薬です。でも、腸にいる良い細菌まで殺してしまうことがあります。アメリカの科学者たちは、病院の患者173人を調べました。彼らは、患者が食べた9419食を記録しました。
抗生物質を使っている間に甘いものを多く食べた患者は、腸内細菌の種類が少なくなっていました。ある種類の細菌は、より多く増えていました。マウスの実験でも似た結果が出ました。だから、抗生物質で治療している間は、甘いものを控えめにするのが賢いかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
抗生物質を使っている間の甘いものと腸内細菌の関係がテーマなので D が正解。
Q2. How many meals did the scientists record?
They recorded 9,419 meals とあるので C。173 は患者の人数。
Q3. In this passage, "fewer kinds of gut bacteria" means ...
fewer kinds は「種類が少ない」。いろいろな種類の菌がいなくなった(多様性が下がった)という意味なので B。
Antibiotics are important for treating infections, but they can also reduce the helpful bacteria that live in our gut. A team at Memorial Sloan Kettering Cancer Center in the US wanted to know whether diet makes this damage worse. They carefully recorded 9,419 meals eaten by 173 hospitalized patients and then checked how their gut bacteria changed.
They found that patients who ate more sweets and sugars while on antibiotics lost more variety in their gut bacteria, and a type of bacteria called Enterococcus increased more. To check whether sugar itself was responsible, the team gave sugar to mice receiving antibiotics. The growth of Enterococcus became larger and lasted longer.
110 words ・ CEFR B1
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抗生物質は感染症の治療に重要ですが、腸にすむ役に立つ細菌を減らしてしまうこともあります。アメリカのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのチームは、食事がこのダメージを悪化させるのかを知りたいと考えました。彼らは入院患者173人が食べた9419食を細かく記録し、腸内細菌がどう変化したかを調べました。
その結果、抗生物質を使っている間に甘いものや砂糖を多く食べた患者ほど、腸内細菌の種類の豊かさが失われ、腸球菌(エンテロコッカス)と呼ばれる細菌がより大きく増えていました。砂糖そのものが原因なのかを確かめるため、チームは抗生物質を与えたマウスに砂糖を与えました。すると、腸球菌の増加はより大きく、より長く続きました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the research team want to find out?
wanted to know whether diet makes this damage worse とあるので A。
Q2. What happened to patients who ate more sweets while on antibiotics?
lost more variety ... and a type of bacteria called Enterococcus increased more とあるので B。多様性は下がったので A は逆。
Q3. Why did the team do experiments on mice?
To check whether sugar itself was responsible, the team gave sugar to mice とあるので C。人のデータだけでは原因かどうか分からないためマウスで確かめた。
Researchers at Memorial Sloan Kettering Cancer Center kept track of 9,419 meals eaten by 173 patients admitted for blood stem cell transplants. These patients received antibiotics, drugs that save lives but can also disrupt the gut microbiome, the community of microbes living in our intestines. Recovery afterward is sometimes incomplete. The team, publishing in Nature, wanted to know whether food eaten during treatment changes the damage.
Using Bayesian statistics, they linked food groups to changes in stool samples from 158 of the patients. Eating more sweets and sugars while on antibiotics went along with lower bacterial diversity and a bigger bloom of Enterococcus, a normally harmless resident that can cause trouble when conditions allow. These were not ordinary patients.
Many were on intensive antibiotic treatment, which is very different from a healthy person taking a short course for a minor infection, and the authors themselves call for confirmation in other populations. A second worry concerned cause and effect. Sicker patients might simply prefer sweet foods. To test this, the team gave sucrose to mice on antibiotics. In those mice the Enterococcus bloom grew larger and lasted longer, which partly supports a causal role for sugar.
195 words ・ CEFR B2
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メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの研究者たちは、造血幹細胞移植のために入院した患者173人が食べた9419食を記録しました。患者たちは抗生物質を投与されていました。抗生物質は命を救う薬ですが、腸内マイクロバイオーム(腸にすむ微生物の集まり)を乱すこともあります。その後の回復が不完全なこともあります。『Nature』に論文を発表したこのチームは、治療中に食べるものがそのダメージを変えるのかを知りたいと考えました。
ベイズ統計を用いて、食品グループと、そのうち158人の便サンプルの変化とを結びつけたのです。抗生物質を使っている間に甘いものや砂糖を多くとると、細菌の多様性が低く、腸球菌の増殖が大きくなっていました。腸球菌はふだんは無害な住人ですが、条件がそろうと問題を起こすことがあります。ただし、これは普通の患者ではありません。
多くは強い抗生物質治療を受けており、軽い感染症で短期間だけ抗生物質を飲む健康な人とは大きく違います。著者自身も、他の集団での確認を求めています。もう1つの心配は、原因と結果の関係でした。体調の悪い患者ほど、単に甘い食べ物を好むだけかもしれません。これを確かめるため、チームは抗生物質を与えたマウスにショ糖を与えました。するとマウスでは腸球菌の増殖がより大きく、より長く続きました。これは、砂糖が原因として働いていることを部分的に支持しています。
4択リーディングクイズ
Q1. Which title best fits the passage?
抗生物質使用中の砂糖が腸内細菌の乱れを悪化させる可能性を扱っているので D。
Q2. Why did the researchers carry out the mouse experiment?
Sicker patients might simply prefer sweet foods. To test this, the team gave sucrose to mice とあるので A。人のデータだけでは「体調が悪いから甘いものを選んだ」可能性を排除できないため。
Q3. What limitation do the authors point out?
These were not ordinary patients. とあり、強い抗生物質治療は健康な人の短期服用とは大きく違うと述べているので C。
重要単語
- antibioticB2名詞抗生物質Antibiotics kill harmful bacteria, but also helpful ones.
anti-(反対)+bio(生命)。take antibiotics「抗生物質を飲む」。ウイルスには効かない点も長文で問われやすい。 - microbiomeC1名詞微生物叢(腸内細菌などの集まり)A healthy microbiome has many kinds of bacteria.
micro(小さい)+biome(生物群)。gut microbiome(腸内マイクロバイオーム)がセット。 - diversityB2名詞多様性Low diversity in gut bacteria may be a warning sign.
形容詞 diverse(多様な)。biodiversity(生物多様性)も入試頻出。 - dysbiosisC1名詞腸内細菌のバランスの乱れDysbiosis can happen after antibiotic treatment.
dys-(悪い・異常)+bio(生命)。dys- は dysfunction(機能不全)にも使われる接頭辞。 - sucroseC1名詞ショ糖(砂糖)Table sugar is mostly sucrose.
-ose は糖を表す語尾。glucose(ブドウ糖)、fructose(果糖)とまとめて覚える。 - disruptB2動詞乱す、混乱させるAntibiotics can disrupt the balance of gut bacteria.
dis-(離れて)+rupt(壊す)。名詞は disruption。interrupt, erupt と同じ語根 rupt。
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入院患者173人が食べた9419食を記録して腸内細菌を追ったら、抗生物質を使う間に甘いものを多くとった人ほど、腸内細菌の多様性が落ち、腸球菌が増えていたらしい。マウス実験でも同じ傾向。Nature掲載。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Dai et al. (2026) Sugar-rich foods exacerbate antibiotic-induced microbiome disruption, Naturedoi.org
- Du & Chan (2026) Sugar amplifies antibiotic disruption of gut microbes, Nature(News & Views)doi.org
- Dethlefsen & Relman (2011) Incomplete recovery and individualized responses of the human distal gut microbiota to repeated antibiotic perturbation, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







