ポテチは「耳」でも食べていた。音を大きくしただけで“パリパリで新鮮”に感じた実験

読む前に予想してみよう!
ポテトチップスの「パリパリ感」は、かむ音を変えるだけで変わることがある
かむ音を大きく、高い音を強めると、同じチップスがよりパリパリで新鮮に感じられた。
- 対象
- 大学の参加者
- 規模
- 約20人
- 研究の種類
- 実験研究(音の操作)
- 確かさ
- ★★★☆☆
オックスフォード大の実験で、ポテチをかじる音をヘッドホンで大きく・高音強めにすると、同じポテチがよりパリパリで新鮮に感じられた。食感は耳でも感じている。
ひとことで言うとポテチのパリッは、口だけじゃなく耳でも味わっていた!
袋を開けて、ポテトチップスを1枚。パリッ!
この「パリッ」は、口の中の歯ごたえで感じていると思いますよね。ところが実験してみると、私たちは食感の一部を「耳」で感じていることがわかりました。
なんと、かむ音を変えるだけで、同じポテチが「しけている」とも「揚げたてみたい」とも感じられたのです。この研究は、2008年に「人を笑わせ、考えさせる研究」に贈られるイグノーベル賞(栄養学賞)を受賞しました。
01自分のかむ音をヘッドホンで"改造"
チップスはすべて同じもの。変えたのは耳に届く音だけです。
02音を大きくすると「より新鮮」に
結果ははっきりしていました。
- 音を大きくすると、チップスはよりパリパリで新鮮に感じられた
- 高い音を強めるだけでも、同じようにパリパリ・新鮮に感じられた
- 逆に音を小さく・こもらせると、しけた感じが強まった
しかも研究者は、人はこうした音の影響にふだん気づいていないことが多いと指摘しています。脳は口からの情報と耳からの情報を、無意識のうちに混ぜ合わせて「食感」を作っているのです。

03なぜ脳は「音」を信じるのか
考えてみると、これは理にかなったしくみです。揚げたてのポテトチップスは水分が少なく、かじると細かく、鋭く割れて、高い音がたくさん出ます。ところが袋を開けて時間がたつと、チップスは空気中の水分を吸ってしんなりし、割れ方も音も鈍くなります。
私たちは何度も食べるうちに、「高くて大きな音=新鮮」「こもった音=しけている」という関係を、知らず知らずのうちに学習しているのかもしれません。だとすれば脳は、かむ音を「鮮度のセンサー」として頼りにしている——そう考えると、音を変えただけで新鮮さの評価が動いたのも納得がいきます。
口の中の感覚だけでは、ほんの少しの硬さの差はわかりにくいもの。耳からの情報は、それを補うもうひとつの証拠としてはたらいているのでしょう。
04袋のガサガサ音も「演出」のうち?
この研究をきっかけに、「食べ物の音」の研究は大きく広がりました。スペンスさんは2015年の総説で、かむ音だけでなく、袋を開ける音や、飲み物を注ぐ音も、私たちの期待や味わいに影響すると論じています。
一方で、うるさい場所では逆のことも起こりえます。2011年の研究では、大きな雑音の中で食べると、甘さや塩味の感じ方が弱まる一方、パリパリ感の評価は高まるという結果が報告されています。音は、食感にも味にも口を出してくるのです。
05まとめ
ポテトチップスの「パリッ」は、口と耳の合作でした。かむ音を大きくしただけで「新鮮」に感じるほど、脳は音の情報を頼りにしているのです。
次にお菓子を食べるときは、ちょっと耳をすませてみてください。味わっているのは、舌だけじゃないことに気づくはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWe usually think we judge the texture of food with our mouths, but an experiment at Oxford University…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you bite a potato chip, it makes a loud crunch. Scientists at Oxford University studied this sound. People ate chips and heard their own biting sounds through headphones. The scientists made the sounds louder or quieter.
When the sound was louder, the same chips seemed crisper and fresher. When it was quieter, the chips seemed old. So we use our ears, as well as our mouths, to taste food.
70 words ・ CEFR A2
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ポテトチップスをかじると、大きなパリッという音がします。オックスフォード大学の科学者たちは、この音を研究しました。人々はチップスを食べ、自分がかむ音をヘッドホンで聞きました。科学者たちはその音を大きくしたり小さくしたりしました。
音が大きいと、同じチップスがよりパリパリで新鮮に感じられました。音が小さいと、チップスは古く感じられました。つまり、私たちは口だけでなく、耳でも食べ物を味わっているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
かむ音を変えると同じチップスの感じ方が変わった、という実験の話なので C。
Q2. What happened when the sound was louder?
When the sound was louder, the same chips seemed crisper and fresher. とあるので D。
Q3. In this passage, "crunch" is ...
crunch は硬く乾いたものをかむときの「パリッ・バリッ」という音。bite a potato chip, it makes a loud crunch から B。
We usually think we judge the texture of food with our mouths, but an experiment at Oxford University showed that our ears are also involved. Participants sat in a soundproof booth and bit potato chips with their front teeth. A microphone picked up the biting sounds and sent them back to their headphones at once.
The researchers secretly changed the sounds, making them louder or quieter, or boosting the high frequencies. When the sounds were louder or higher, the chips were rated as crisper and fresher, even though all of the chips were the same. People often do not realize that sound is affecting them. This study won an Ig Nobel Prize in 2008.
114 words ・ CEFR B1
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私たちはふだん、食べ物の食感を口で判断していると思っていますが、オックスフォード大学の実験は、耳も関わっていることを示しました。参加者は防音ブースに座り、前歯でポテトチップスをかじりました。マイクがかむ音を拾い、すぐにヘッドホンへ送り返しました。
研究者たちはひそかに音を変え、大きくしたり小さくしたり、高い周波数を強めたりしました。音が大きいときや高いときには、チップスはすべて同じだったにもかかわらず、よりパリパリで新鮮だと評価されました。人はふつう、音が自分に影響していることに気づいていません。この研究は2008年にイグノーベル賞を受賞しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers change in the experiment?
チップスはすべて同じで、変えたのはヘッドホンから聞こえる音なので B。
Q2. Which sounds made the chips seem crisper and fresher?
When the sounds were louder or higher, the chips were rated as crisper and fresher とあるので D。
Q3. What can we infer from "People often do not realize that sound is affecting them"?
音の影響に気づかないまま評価が変わったことから、脳が無意識に口と耳の情報を混ぜていると推測できるので C。
Texture is usually regarded as something we feel in the mouth, yet a well-known experiment by Zampini and Spence at Oxford University suggests that hearing plays a substantial role. Participants in a soundproof booth bit into potato chips while a microphone captured the sound and played it back through headphones in real time. The researchers manipulated the overall loudness and selectively boosted or reduced high frequencies between 2 and 20 kilohertz.
Although the chips were identical, louder sounds or enhanced high frequencies led participants to rate them as crisper and fresher, whereas quieter, muffled sounds made them seem stale. A plausible explanation is learning: fresh chips break into sharp fragments that produce high-pitched sounds, so the brain may treat sound as a cue to freshness. The study, which earned an Ig Nobel Prize in 2008, has inspired research on the sounds of packaging and pouring.
However, it involved only about twenty participants, and they may have guessed the purpose and adjusted their ratings. Whether the effect is equally strong in everyday eating remains to be tested. Consumers are often unaware of such an influence.
184 words ・ CEFR B2
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食感はふつう口の中で感じるものとみなされていますが、オックスフォード大学のザンピーニさんとスペンスさんによる有名な実験は、聴覚がかなり大きな役割を果たしていることを示唆しています。防音ブースの参加者がポテトチップスをかじると、マイクがその音をとらえ、ヘッドホンを通してリアルタイムで再生しました。研究者たちは全体の音量を操作し、2〜20キロヘルツの高い周波数だけを選んで強めたり弱めたりしました。
チップスはまったく同じだったにもかかわらず、音が大きいときや高い周波数が強められたときには、参加者はそれらをよりパリパリで新鮮だと評価し、一方で小さくこもった音ではしけているように感じられました。もっともらしい説明は学習です。新鮮なチップスは鋭い破片に割れて高い音を出すため、脳は音を鮮度の手がかりとして扱っているのかもしれません。2008年にイグノーベル賞を受賞したこの研究は、包装の音や注ぐ音に関する研究のきっかけになりました。
しかし、参加者は約20人だけで、実験の目的を推測して評価を合わせた可能性もあります。この効果が日常の食事でも同じくらい強いかどうかは、まだ検証が必要です。消費者はこうした影響に気づいていないことが多いとされています。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the experiment mainly suggest?
hearing plays a substantial role とあり、音で食感の評価が変わったことが主旨なので A。
Q2. According to the passage, why might the brain use sound as a cue to freshness?
fresh chips break into sharp fragments that produce high-pitched sounds とあり、学習によって音を鮮度の手がかりにしていると説明しているので C。
Q3. Which is mentioned as a limitation of the study?
they may have guessed the purpose and adjusted their ratings とあるので D。参加者が約20人と少ないことも限界として挙げられている。
重要単語
- crispB1形容詞パリパリしたThese chips are fresh and crisp.
比較級 crisper、名詞 crispness。イギリス英語ではポテチ自体を crisps と呼ぶ。 - staleB2形容詞(食べ物が)しけた、古くなったThe chips went stale overnight.
go stale「古くなる・しける」の形で覚える。fresh の反対語として出る。 - auditoryC1形容詞聴覚のAuditory cues change how food feels.
audio / audience と同じ audi-(聞く)。visual(視覚の)とセットで覚える。 - textureB1名詞食感、手ざわりI love the texture of fresh bread.
text(織られたもの)と同語源。食べ物では「歯ごたえ・舌ざわり」を指す。 - multisensoryC1形容詞多感覚のEating is a multisensory experience.
multi-(多くの)+sensory(感覚の)。食・学習の分野でよく使われる学術語。 - manipulateB2動詞操作するThe researchers manipulated the sounds.
実験で条件を変えるときの定番語。「人を操る」という悪い意味もあるので文脈で判断。
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ポテチをかじる音をヘッドホンで大きくしたら、同じポテチなのに「よりパリパリで新鮮」と感じたらしい。オックスフォード大の実験で、2008年にイグノーベル賞も受賞。食感って、実は耳でも感じてるんだ。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Zampini & Spence (2004) The role of auditory cues in modulating the perceived crispness and staleness of potato chips, Journal of Sensory Studiesdoi.org
- Spence (2015) Eating with our ears: assessing the importance of the sounds of consumption on our perception and enjoyment of multisensory flavour experiences, Flavourdoi.org
- Woods et al. (2011) Effect of background noise on food perception, Food Quality and Preferencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









