少人数クラスで成績は上がる? アメリカの大実験は「上がる」、イスラエルの再検証は「効果ゼロ」

読む前に予想してみよう!
クラスの人数を減らせば、どの国でも成績がはっきり上がる
アメリカの実験では効果があったが、イスラエルの再検証や国際レビューでは効果が小さいかほぼゼロだった。
- 対象
- 幼稚園〜小学3年生(米国)ほか
- 規模
- 約1万1600人+各国データ
- 研究の種類
- ランダム化実験・自然実験・系統的レビュー
- 確かさ
- ★★★★☆
米国1万人超のくじ引き実験では少人数クラスで成績が上がった。でもイスラエルの最新データの再検証では効果が消え、国際レビューも「あっても小さい」。
ひとことで言うとクラスの人数を減らすと成績が上がる、とは言い切れないみたい。
「先生1人に生徒40人なんて多すぎる!」「少人数なら一人ひとりを見てもらえるのに」。クラスの人数は、教育の議論でずっと注目されてきたテーマです。日本でも小学校の35人学級への移行が進められてきました。
直感的には、少人数の方が良さそうです。でも研究を並べてみると、「上がった」という有名な実験と、「効果ゼロ」という再検証が見つかります。どちらが正しいのでしょうか。
01アメリカの大実験「STAR」
くじ引きで人数を決めた実験なので、因果関係についての信頼性は高いと考えられています。この結果は、アメリカの多くの州で少人数学級を進める根拠になりました。
02イスラエルの「マイモニデスのルール」
一方、くじ引き実験が難しい国では、別の工夫が使われました。イスラエルには、中世の学者マイモニデスにちなんだ「1クラス40人まで」というルールがあります。
たとえば学年が40人なら1クラス40人、41人なら2クラスに分けて約20人ずつになる。たった1人の差で、クラスの人数が大きく変わるのです。AngristさんとLavyさんは1999年、この「自然のくじ引き」を利用して、クラスの人数が少ないほど、小学4〜5年生の読解と算数の成績が高いことを示しました。

03どんでん返し:20年後の再検証で「効果ゼロ」
ところが2019年、同じAngristさんとLavyさんを含むチームが、2002〜2011年のより新しい大規模データで同じ分析をやり直しました。
結果は、クラスの人数の効果はほぼゼロ。しかも、学校側が40人の境目付近で在籍者数を調整していた形跡まで見つかりました(境目をちょっと超えると、クラスが2つに分かれて有利になるため)。研究チームは、誕生日をもとに在籍者数を推定する方法で調整しても、やはり効果はゼロだったと報告しています。
さらに、41か国の研究をまとめたデンマークのFilgesさんらの国際的な系統的レビュー(2018年)は、少人数学級の効果は「読解ではあっても小さい、算数では有意な効果なし」と結論づけています。
04なぜ結果がちがうのか
考えられる理由はいくつかあります。
- 学年:STARは幼稚園〜小学3年生。小さな子ほど少人数の恩恵が大きいのかもしれない
- 人数を減らす幅:22人→15人と、40人→20人では意味がちがう
- 先生の質:少人数にするために急いで先生を増やすと、経験の浅い先生が増えることも
- 時代と国:教え方や教室の環境が変われば、人数の影響も変わる
05まとめ
アメリカの大実験では、少人数クラスで低学年の成績が上がった。でも、イスラエルの最新データの再検証では効果ゼロ、国際レビューも「あっても小さい」という結論でした。
「少人数にすれば成績が上がる」と単純には言えない。でもそれは、少人数学級に意味がないということではありません。何を目的に、どの学年で、どう使うか。そこまで考えて初めて、本当の答えが見えてきそうです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people believe that students learn better in smaller classes.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Do students learn more in small classes? In the 1980s, a big experiment in Tennessee in the United States put about 11,600 young children into small or regular classes by lottery. Children in small classes got higher test scores.
But in 2019, researchers checked again with newer data from Israel. This time, class size had almost no effect. A review of studies from 41 countries also found only small effects.
70 words ・ CEFR A2
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少人数のクラスの方が、生徒はたくさん学べるのでしょうか。1980年代、アメリカのテネシー州で行われた大きな実験では、約1万1600人の小さな子どもたちを、くじ引きで少人数クラスか普通のクラスに分けました。少人数クラスの子どもたちは、テストで高い点を取りました。
しかし2019年、研究者たちがイスラエルのより新しいデータでもう一度調べました。今回は、クラスの人数はほとんど効果がありませんでした。41か国の研究をまとめたレビューでも、効果は小さいものでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1文の問い(少人数クラスで学びは増えるか)について複数の研究を紹介しているので C。
Q2. What did the 2019 study in Israel find?
This time, class size had almost no effect. とあるので B。
Q3. In this passage, "checked again" means the researchers ...
check again は「もう一度確かめる」。新しいデータで同じ問いを調べ直したということなので D。
Many people believe that students learn better in smaller classes. In Tennessee in the 1980s, the STAR project randomly assigned about 11,600 children from kindergarten to third grade to small classes of 13 to 17 students or to regular classes. Children in small classes scored clearly higher, especially in the first year, and the effect was larger for children from low-income families.
In Israel, a rule limits classes to 40 students, so adding one student can split a class in two. Using this rule, an early study found benefits of smaller classes. However, when researchers repeated the analysis with newer data in 2019, the effect was almost zero. Smaller classes may help only under certain conditions.
116 words ・ CEFR B1
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多くの人は、少人数のクラスの方が生徒はよく学べると信じています。1980年代のテネシー州で、STARプロジェクトは、幼稚園から小学3年生までの約1万1600人の子どもたちを、13〜17人の少人数クラスか普通のクラスに無作為に割り当てました。少人数クラスの子どもたちは、特に最初の1年で、はっきりと高い点を取り、その効果は低所得家庭の子どもでより大きくなりました。
イスラエルには1クラスを40人までとするルールがあるので、生徒が1人増えるだけでクラスが2つに分かれることがあります。このルールを利用した初期の研究では、少人数クラスの利点が見つかりました。しかし、2019年に研究者たちが新しいデータで分析をやり直すと、効果はほぼゼロでした。少人数クラスは、特定の条件のもとでしか役に立たないのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the STAR project find?
Children in small classes scored clearly higher とあるので A。
Q2. Why can adding one student split a class in two in Israel?
a rule limits classes to 40 students とあるので、41人目で2クラスになる。C。
Q3. What does the last sentence suggest?
may help only under certain conditions とあり、効果は条件しだいだと示唆しているので B。
Reducing class size is one of the most intuitive education policies, yet the evidence is surprisingly mixed. The best-known support comes from Tennessee's STAR project, launched in 1985, which randomly assigned about 11,600 students in kindergarten to third grade to small classes of 13 to 17, regular classes of 22 to 25, or regular classes with an aide.
Reanalyzing the data, Krueger found clear gains in test scores for small classes, especially in the first year and among low-income and Black students. Because assignment was random, these findings are considered highly credible. Israel offered a different kind of natural experiment: under "Maimonides' rule," classes are capped at 40, so a cohort of 41 is split into two classes of about 20. A 1999 study used this rule to link smaller classes to higher reading and math scores.
However, when a team including the same authors reexamined the question with data from 2002 to 2011, the effect was zero, and they found signs that schools manipulated enrollment near the cutoffs. An international systematic review concluded that any benefits are small at best. Differences in grade level, the size of the reduction, and teacher quality may explain these inconsistent results.
198 words ・ CEFR B2
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クラスの人数を減らすことは最も直感的な教育政策の一つですが、証拠は驚くほどまちまちです。最もよく知られた裏づけは、1985年に始まったテネシー州のSTARプロジェクトから来ています。
このプロジェクトは、幼稚園から小学3年生までの約1万1600人の生徒を、13〜17人の少人数クラス、22〜25人の普通のクラス、補助の先生がつく普通のクラスのいずれかに無作為に割り当てました。Kruegerさんはデータを再分析し、少人数クラスでテストの点がはっきり伸びたこと、特に最初の1年と、低所得家庭や黒人の生徒で伸びが大きかったことを発見しました。割り当てが無作為だったため、これらの結果は信頼性が高いと考えられています。イスラエルは別の種類の自然実験を提供しました。「マイモニデスのルール」のもとでは、クラスの上限が40人なので、41人の学年は約20人ずつの2クラスに分けられます。
1999年のある研究は、このルールを使って、少人数クラスと読解・算数の高い点数を結びつけました。しかし、同じ著者を含むチームが2002年から2011年のデータでこの問題を再検証すると、効果はゼロで、学校が境目付近で在籍者数を操作していた形跡も見つかりました。国際的な系統的レビューも、利点は「あっても小さい」と結論づけました。学年、人数を減らす幅、先生の質の違いが、これらの一貫しない結果を説明するのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
冒頭で the evidence is surprisingly mixed と述べ、STARの成果と再検証での効果ゼロを対比し、条件の違いで説明しているので D。
Q2. What problem did the 2019 reexamination find?
they found signs that schools manipulated enrollment near the cutoffs とあるので A。
Q3. Why are the STAR findings considered highly credible?
Because assignment was random, these findings are considered highly credible とあるので C。
重要単語
- class sizeB1名詞(句)学級の人数Our school reduced class size to 30.
reduce class size「学級規模を縮小する」。small class「少人数学級」。 - experimentB1名詞・動詞実験(する)The STAR experiment was carried out in Tennessee.
carry out an experiment「実験を行う」がセット。natural experiment は「自然実験」。 - replicateC1動詞再現するThe result was not replicated in Israel.
名詞 replication。研究結果が別のデータでも再現されるかは科学の信頼性の基本。 - cost-effectiveC1形容詞費用対効果の高いSmaller classes may not be the most cost-effective policy.
cost(費用)+effective(効果的な)。政策論の長文で頻出。 - enrollmentC1名詞在籍者数・入学者数Class size depends on school enrollment.
動詞 enroll in ~「~に入学・登録する」。イギリス英語では enrolment とつづる。 - manipulationC1名詞操作・ごまかしThey found enrollment manipulation near the cutoffs.
動詞 manipulate(巧みに操る)。mani-(手)が語源で「手で動かす」イメージ。
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少人数クラスなら成績は上がる? アメリカの1万人超の「くじ引き実験」では上がった。でもイスラエルで同じ分析を最新データでやり直したら、効果はほぼゼロに。国際的なレビューの結論も「あっても小さい」だったらしい。
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- Krueger (1999) Experimental Estimates of Education Production Functions, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
- Angrist & Lavy (1999) Using Maimonides' Rule to Estimate the Effect of Class Size on Scholastic Achievement, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
- Angrist et al. (2019) Maimonides' Rule Redux, American Economic Review: Insightsdoi.org
- Filges, Sonne-Schmidt & Nielsen (2018) Small class sizes for improving student achievement in primary and secondary schools: a systematic review, Campbell Systematic Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










