ハグが多い人は、風邪ウイルスを浴びても症状が軽かった。404人を隔離して調べた"支え"の力

読む前に予想してみよう!
手をにぎってもらうと、怖い場面での脳の反応が小さくなることがある
fMRI実験では、信頼する相手と手をにぎっていると、脅威に対する脳の反応が弱まっていた。
- 対象
- 米国の健康な成人
- 規模
- 404人(+fMRIの16人)
- 研究の種類
- 前向き観察研究(ウイルス接種)+脳画像実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
404人の大人に風邪ウイルスを鼻にたらして隔離した研究で、日頃ハグを多く受けていた人ほど、感染しても症状が軽い傾向があった。ただしハグが原因とまでは言えない。
ひとことで言うと「支えてくれる人がいる」感覚は、体も守ってくれるかも。
人とケンカした日や、なんとなくギスギスした日。そんな日が続くと、なぜか体調まで崩しやすい——そう感じたことはありませんか?
実は、人間関係のストレスが体の抵抗力に影響することは、以前から研究で知られていました。では逆に、人からの「支え」は体を守ってくれるのでしょうか?
心理学には、「ストレス緩衝仮説」という考え方があります。周りから支えられていると感じている人は、同じストレスを受けても、その悪影響が"クッション"のように和らげられる——という仮説で、1980年代から研究されてきました。
アメリカのカーネギーメロン大学の研究チームが、なんと大人に風邪のウイルスを実際に浴びてもらうという大胆な方法で、この問いに挑みました。
0114日間の"ハグ記録"と、風邪ウイルス
結果は次のとおりでした。
- 人ともめごとが多い人ほど、感染しやすくなる傾向があった
- でも、周りから支えられていると感じている人では、その傾向が弱まっていた
- ハグにも同じような「守り」の効果が見られ、支えの効果のうち約3割は、ハグの多さで説明できた
- 感染した人の中では、支えを感じている人やハグが多い人ほど、症状が軽かった
研究チームは、ハグが「あなたを大切に思っているよ」という支えのメッセージを体ごと伝える手段になっているのではないか、と考えています。
02手をにぎるだけで、脳の「怖い」反応が減る
触れ合いの力を脳で確かめた研究もあります。
ウィスコンシン大学の研究では、既婚女性16人に、fMRI(脳の活動を調べる装置)の中で「軽い電気ショックが来るかもしれない」という不安な状況を体験してもらいました。そのとき、①夫と手をにぎる、②知らない研究者と手をにぎる、③誰とも手をにぎらない、の3つを比べたのです。
すると、夫と手をにぎっているとき、脅威に反応する脳の活動が広い範囲で弱まっていました。知らない人と手をにぎったときも、少しだけ弱まりました。さらに、夫婦関係が良好な人ほど、その効果は大きかったのです。

03ただし「ハグをすれば風邪をひかない」ではない
ここで大事な注意点があります。
この研究は、ハグの回数を実験で割り当てたわけではなく、ふだんの生活を観察した研究です。ハグが多い人は、もともと人間関係が豊かで、生活習慣も違うかもしれません。つまり、「ハグのおかげで症状が軽くなった」とまでは言い切れないのです。
また、ハグの感じ方には文化や個人による差があります。日本では、家族同士でもあまりハグをしない人が多いでしょう。大切なのはハグそのものより、「支えてくれる人がいる」と感じられることだと考えられます。
04まとめ
ハグをたくさん受けている人ほど、風邪ウイルスを浴びても症状が軽い傾向がありました。そして、信頼できる人と手をにぎるだけで、脳の「怖い」反応は小さくなりました。
ハグそのものが魔法なのかは、まだ分かりません。でも、「自分を支えてくれる人がいる」という感覚は、心だけでなく体にとっても大切なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a hug help you fight off a cold?
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can hugs protect your body? Scientists studied 404 healthy adults. For 14 days, the adults answered questions every night about hugs and arguments.
Then the scientists put a cold virus in their noses. People who got more hugs had weaker symptoms when they got sick. But this does not prove that hugs stop colds. Feeling supported by others may be important, too.
62 words ・ CEFR A2
和訳を見る
ハグは体を守ってくれるのでしょうか。科学者たちは、健康な大人404人を調べました。14日間、大人たちは毎晩、ハグやもめごとについての質問に答えました。
それから科学者たちは、彼らの鼻に風邪のウイルスを入れました。ハグを多く受けていた人ほど、病気になったときの症状が軽かったのです。しかし、これはハグが風邪を防ぐことを証明するものではありません。人から支えられていると感じることも、大切なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ハグや支えと風邪の症状の関係を調べた研究の話なので D。
Q2. How long did the adults answer questions every night?
For 14 days, the adults answered questions every night とあるので B。
Q3. In this passage, "symptoms" are ...
symptom は「症状」。せきや鼻水など、病気のしるしなので A。
Can a hug help you fight off a cold? Researchers at Carnegie Mellon University tested whether social support protects the body from stress. First, 404 healthy adults answered a survey about how supported they felt. Then, for 14 days, they were asked by phone every evening about conflicts with others and about hugs.
Next, they were exposed to a cold virus and kept in isolation. People with more conflicts were more likely to get infected, but this risk was weaker among people who felt supported. Hugs seemed to protect people in a similar way.
But the researchers only observed daily life and did not assign hugs, so they could not prove that hugs caused the effect. Among those who got sick, people who received more hugs had milder symptoms.
129 words ・ CEFR B1
和訳を見る
ハグは風邪を撃退する助けになるのでしょうか。カーネギーメロン大学の研究者たちは、社会的な支えがストレスから体を守るかどうかを検証しました。まず、健康な大人404人が、自分がどれくらい支えられていると感じるかについてのアンケートに答えました。次に14日間、毎晩電話で、人とのもめごとやハグについて質問されました。
その後、彼らは風邪のウイルスにさらされ、隔離された状態に置かれました。もめごとが多い人ほど感染しやすかったものの、支えられていると感じている人ではその危険性が弱まっていました。ハグにも似たような守りの働きがあるようでした。
ただし、研究者たちは日常生活を観察しただけで、ハグを割り当てたわけではないため、ハグがその効果を生んだとは証明できませんでした。病気になった人の中では、ハグを多く受けていた人ほど症状が軽かったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What happened to people who had more conflicts?
People with more conflicts were more likely to get infected とあるので C。
Q2. Among people who got sick, who had milder symptoms?
people who received more hugs had milder symptoms とあるので B。
Q3. Why can't we say that hugs caused the effect?
the researchers only observed daily life and did not assign hugs, so they could not prove that hugs caused the effect とあるので A。
The stress-buffering hypothesis, studied since the 1980s, holds that feeling supported by others can cushion the harmful effects of stress on health. Researchers at Carnegie Mellon University tested this idea in an unusually direct way. They first measured how much social support 404 healthy adults perceived, then conducted nightly telephone interviews for 14 days to record interpersonal conflicts and whether participants had been hugged. Afterwards, participants were deliberately exposed to a common cold virus and monitored in quarantine.
Frequent conflict was associated with a higher risk of infection, but this association was weaker among those who perceived greater support, and hugs accounted for roughly a third of this protective effect. Among infected participants, greater support and more frequent hugs predicted less severe symptoms. A separate brain-imaging study of 16 married women found that holding their husband's hand reduced neural responses to the threat of a mild shock, especially in better marriages.
However, hugging was not randomly assigned, so people who receive many hugs may differ in other ways, such as lifestyle. Both studies used American adults, and attitudes to touch vary across cultures. The findings do not mean that hugs prevent or cure illness.
194 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1980年代から研究されてきたストレス緩衝仮説は、他者から支えられていると感じることが、ストレスが健康に与える悪影響を和らげうるという考えです。カーネギーメロン大学の研究者たちは、この考えをきわめて直接的な方法で検証しました。彼らはまず、健康な大人404人がどれくらい社会的な支えを感じているかを測定し、次に14日間、毎晩電話インタビューを行って、人との衝突や、参加者がハグを受けたかどうかを記録しました。その後、参加者は意図的に一般的な風邪のウイルスにさらされ、隔離された環境で観察されました。
頻繁な衝突は感染リスクの高さと結びついていましたが、その結びつきは支えをより強く感じている人では弱く、ハグはこの守りの効果のおよそ3分の1を説明していました。感染した参加者の中では、支えが大きくハグが多いほど、症状が軽いことが予測されました。既婚女性16人を対象にした別の脳画像研究では、夫の手をにぎることで、軽い電気ショックの脅威に対する脳の反応が減り、夫婦関係が良好なほどその傾向が強いことが分かりました。
しかし、ハグは無作為に割り当てられたわけではないため、ハグを多く受ける人は生活習慣など別の点で異なっているかもしれません。どちらの研究もアメリカの大人を対象としており、触れ合いに対する考え方は文化によって異なります。この結果は、ハグが病気を予防したり治したりするという意味ではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the stress-buffering hypothesis claim?
feeling supported by others can cushion the harmful effects of stress on health とあるので B。
Q2. About how much of the protective effect did hugs explain?
hugs accounted for roughly a third of this protective effect とあるので D。
Q3. Which of the following is a limitation mentioned by the author?
hugging was not randomly assigned, so people who receive many hugs may differ in other ways とあるので A。
重要単語
- hugA2名詞・動詞抱きしめること/抱きしめるShe gave her grandmother a big hug.
give ~ a hug「~をハグする」の形がよく出る。 - infectionB2名詞感染Washing hands helps prevent infection.
動詞 infect、形容詞 infectious(感染性の)。 - symptomB2名詞症状A sore throat is a common symptom of a cold.
p を発音しない人も多い(/ˈsɪmtəm/)。a symptom of ~「~の症状・兆候」。 - bufferC1動詞・名詞和らげる、緩衝(材)Good friends can buffer stress.
衝撃を吸収する「クッション」のイメージ。stress-buffering「ストレス緩衝の」。 - conflictB2名詞衝突、もめごとThey solved the conflict by talking.
名詞はCONflict、動詞は conFLICT とアクセントが変わる。 - quarantineC1名詞隔離The travelers stayed in quarantine for a week.
イタリア語の quaranta(40)から。昔、船を40日間隔離したことが語源。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
このネタ、誰かに教えたくなった?
404人の大人に風邪ウイルスを鼻にたらし、隔離して観察した研究で、日頃ハグをたくさん受けていた人ほど、感染しても症状が軽い傾向があったらしい。人とのつながりは、心だけでなく体の守りにもなるのかも。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Cohen et al. (2015) Does hugging provide stress-buffering social support? A study of susceptibility to upper respiratory infection and illness, Psychological Sciencedoi.org
- Coan, Schaefer & Davidson (2006) Lending a hand: Social regulation of the neural response to threat, Psychological Sciencedoi.org
- Cohen & Wills (1985) Stress, social support, and the buffering hypothesis, Psychological Bulletindoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









