動物・植物ホント

葉っぱを「なでなで」すると、植物は数十分で警戒モードに入るらしい

葉っぱを「なでなで」すると、植物は数十分で警戒モードに入るらしい

読む前に予想してみよう!

植物は軽く触られただけでは、体の中で何の変化も起きない

研究カード(どんな研究?)
対象
シロイヌナズナ
規模
実験室の株(各研究)
研究の種類
遺伝子発現解析・生育実験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

植物は触られるだけで、数十分のうちに多数の遺伝子のスイッチを入れる。触られ続けると背が低くずんぐり育つ。

ひとことで言うと植物はさわられると「なにか来た!」と体の中で身がまえる!

もくじ
  1. 触られて10分、遺伝子が一斉に動き出す
  2. 毎日触られた植物は「ずんぐり」育つ
  3. 風の強い場所の木が低くて太いのも同じ理由
  4. まとめ

観葉植物の葉っぱ、つい指でなでていませんか?

「かわいがれば元気に育つ」と思いがちですが、植物の側から見ると話は少しちがいます。軽く触られただけで、植物の体の中では大さわぎが起きているのです。

しかも、その反応はたった数十分で始まります。

01触られて10分、遺伝子が一斉に動き出す

遺伝子は、体の「設計図」の中の1ページのようなもの。働きが強まるということは、そのページに書かれたタンパク質(体の部品)を急いで作り始めた、という意味です。

2.5%と聞くと少なく感じますが、シロイヌナズナの遺伝子はおよそ2万数千個。数百個のスイッチが、ちょっと触っただけでカチッと入る計算です。

作られるのは、カルシウムを使って信号を伝える部品や、細胞の壁を作り変える部品、虫や病気から身を守る部品など。植物にとって「触られる」は、「何か危ないものが来たかも」というサインなのです。

ちょっと触っただけで、細胞の中では多くのスイッチがオンに。
ちょっと触っただけで、細胞の中では多くのスイッチがオンに。

02毎日触られた植物は「ずんぐり」育つ

一回触るだけなら、植物はすぐに元の状態に戻ります。では毎日何度も触り続けたらどうなるのでしょう。

答えは、背が低く、茎が太く、ずんぐりした姿になる、です。この現象には「接触形態形成(せっしょくけいたいけいせい)」という名前がついています。むずかしい言葉ですが、「触られて体の形が変わること」と覚えればOK。

2012年に『Current Biology』に載った研究では、くり返し触ったシロイヌナズナは、葉の広がりが小さくなり、花が咲くのも遅れました。その一方で、害虫やカビの仲間(灰色かび病菌)に強くなるという意外なメリットも見つかっています。この変化には、傷や虫に反応するときに働く「ジャスモン酸」という植物ホルモンがかかわっていました。2019年には、水をスプレーで吹きかけるだけの刺激でも、ジャスモン酸にかかわる遺伝子のネットワークが数分〜数十分で動き出すことが報告されています。

さらに2015年の『Nature Plants』の研究で、触られると「ジベレリン」という成長をうながすホルモンが分解されることがわかりました。アクセルをゆるめて、守りに入るイメージです。

03風の強い場所の木が低くて太いのも同じ理由

これは実験室の中だけの話ではありません。

海辺や山の尾根など、いつも強い風が吹く場所の木は、背が低くて幹ががっしりしています。風に揺さぶられ続けることも、植物にとっては「触られる」のと同じ刺激。折れにくい体に作り変えているわけです。

04まとめ

植物は、触られただけで数十分のうちに多くの遺伝子のスイッチを入れ、守りの体勢に入ります。触られ続けると、背が低く太く、たくましい姿に変わっていきます。

「なでて育てる」は、植物にとっては「鍛えられている」に近いのかもしれません。あなたの部屋の植物は、ふだんどれくらい触られているでしょうか。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTouching a plant may seem harmless, but plants react quickly. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Touching a plant may seem harmless, but plants react quickly. In 1990, American researchers found that when the small lab plant Arabidopsis was touched, sprayed with water or blown by wind, certain genes became up to 100 times more active within 10 to 30 minutes.

Later work showed that over 2.5 percent of its genes, which means several hundred, respond quickly to touch. If plants are touched again and again, they grow shorter and thicker. A 2012 study found that such plants flowered later but became more resistant to insects and a fungus. Trees in windy places also grow short and sturdy, because wind works like constant touching.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

植物に触ることは害がないように思えるかもしれませんが、植物はすばやく反応します。1990年、アメリカの研究者たちは、実験用の小さな植物シロイヌナズナを触ったり、水をかけたり、風を当てたりすると、特定の遺伝子の働きが10〜30分以内に最大100倍ほど高まることを発見しました。

その後の研究で、遺伝子の2.5%以上、つまり数百個が、触られるとすばやく反応することがわかりました。植物は何度も触られると、背が低く、太く育ちます。2012年の研究では、そうした植物は花が咲くのが遅れたものの、虫やカビの一種に強くなりました。風の強い場所の木が低くがっしり育つのも、風がずっと触り続けるのと同じ働きをするからです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened to plants that were touched again and again?

Q3. Why might growing short and thick help a plant?

重要単語

  • gene expressionC1
    名詞(句)遺伝子発現(遺伝子の働き)Touch rapidly changes gene expression in plants. express は「表に出す」。遺伝子の情報がタンパク質として表に出ること。
  • mechanical stimulusC1
    名詞(句)機械的刺激(触る・揺らすなど)Wind is a mechanical stimulus for trees. mechanical は「機械の」だけでなく「物理的な力による」の意味。stimulus の複数形は stimuli。
  • thigmomorphogenesisC1
    名詞接触形態形成Thigmomorphogenesis makes plants short and thick. thigmo(接触)+morpho(形)+genesis(発生)。長い語も分解すれば怖くない。
  • hormoneB1
    名詞ホルモンGibberellin is a hormone that promotes growth. ギリシャ語「刺激する」から。発音は /ˈhɔːməʊn/(ホーモウン)。
  • sturdyB2
    形容詞がっしりした、丈夫なPlants in windy places grow sturdy stems. sturdy shoes「丈夫な靴」のように物にも使う。robust, strong と言い換え可能。
  • resistantB2
    形容詞抵抗力があるTouched plants became more resistant to insects. be resistant to ~「~に強い」。resist(抵抗する)、resistance(抵抗)。
  • triggerB2
    動詞・名詞引き起こす/きっかけTouch triggers the breakdown of a growth hormone. もとは銃の「引き金」。trigger a reaction「反応を引き起こす」は科学記事の定番。
観葉植物の葉、かわいくてつい触ってない? 植物は軽く触られただけで数十分以内に「警戒モード」の遺伝子をオンにするらしい。触られ続けると背が伸びにくくなることも。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Braam & Davis (1990) Rain-, wind-, and touch-induced expression of calmodulin and calmodulin-related genes in Arabidopsis, Celldoi.org
  2. Braam (2004) In touch: plant responses to mechanical stimuli, New Phytologistdoi.org
  3. Chehab et al. (2012) Arabidopsis touch-induced morphogenesis is jasmonate mediated and protects against pests, Current Biologydoi.org
  4. Lange & Lange (2015) Touch-induced changes in Arabidopsis morphology dependent on gibberellin breakdown, Nature Plantsdoi.org
  5. Van Moerkercke et al. (2019) A MYC2/MYC3/MYC4-dependent transcription factor network regulates water spray-responsive gene expression and jasmonate levels, PNASdoi.org