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夜の鳥ヨタカ、翼を「振り上げる」ときにも前へ進む力を出していた。風洞実験で判明

夜の鳥ヨタカ、翼を「振り上げる」ときにも前へ進む力を出していた。風洞実験で判明

読む前に予想してみよう!

翼の振り上げで推進力を生む飛び方は、これまで主にコウモリやハチドリで知られていた

研究カード(どんな研究?)
対象
ヨーロッパヨタカ
規模
3羽(5羽捕獲し飛行可能な個体を選抜)
研究の種類
風洞での空力計測実験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

スウェーデンの研究で、ヨタカは巡航中、翼を振り上げる動きでも推進力を生んでいた。コウモリやハチドリの特徴とされてきた現象。代わりに高速飛行の効率は低め。

ひとことで言うとヨタカは、つばさを上げるときもグイッと前に進んでいたんだ!

もくじ
  1. 「旅も、空中停止も」こなす欲張りな鳥
  2. 発見1:巡航中の翼端に「二重のうず」
  3. 発見2:振り上げでも前に進む
  4. なぜ振り上げで推進力が出るのか
  5. まとめ

鳥が飛ぶしくみ、どう習いましたか? 「翼を振り下ろすときに空気をとらえて進み、振り上げるときは翼をたたんで空気抵抗を減らす」——多くの鳥ではそう考えられてきました。

ところが2026年9月30日、科学誌『PLOS Biology』に、スウェーデンのルンド大学のチームが、その常識をゆさぶる結果を発表しました。夜に虫を追う鳥ヨタカは、翼を振り上げるときにも前へ進む力(推進力)を生み出していたのです。

01「旅も、空中停止も」こなす欲張りな鳥

ヨーロッパヨタカは、アフリカとヨーロッパを行き来する長距離の渡り鳥。その一方で、エサの虫をとるときには、ゆっくり飛んだり、空中でホバリングしたりもします。

速く遠くへ飛ぶのと、ゆっくり器用に飛ぶのとでは、理想の翼の形が違います。両方をこなすヨタカは、空気力学的に「どこで折り合いをつけているのか」を調べるのにうってつけの鳥でした。

02発見1:巡航中の翼端に「二重のうず」

まず、ふつうの速さで飛んでいるとき、翼の先に2つのうずが並んでできる珍しい現象が見つかりました。

これは、翼が生み出す揚力の効率(翼幅効率)が下がっていることと関係していました。ヨタカの幅が広く、先が指のように分かれた翼は、ゆっくり飛ぶときの揚力には役立つ一方、速く飛ぶときには少しコストが高いようです。まさに「ホバリングの得意さ」と「巡航の効率」のトレードオフです。

03発見2:振り上げでも前に進む

そしてもう一つが、翼の外側の部分が、振り上げのときに推進力を生んでいたこと。

この「振り上げで推進力」は、これまでコウモリやハチドリの特徴とされてきました。ハチドリは翼をくるりとひねって、振り上げでも体を支える力(揚力)を生むことが報告されています(Warrick et al., 2005)。

鳥の振り上げは、主に体重を支えるために使われると考えられてきたので、研究チームは「その考え方に疑問を投げかける結果」だとしています。

振り下ろしだけでなく、振り上げでも空気を後ろへ押していた
振り下ろしだけでなく、振り上げでも空気を後ろへ押していた

04なぜ振り上げで推進力が出るのか

動きを詳しく分析すると、ヨタカは振り上げのときに翼をあまり折りたためていないことが分かりました。翼をたためないなら、いっそその翼で空気を押してしまおう——そんな「制約から生まれた技」なのかもしれません。研究チームは、この関係が羽ばたき飛行に広く当てはまる可能性も指摘しています。

05まとめ

翼の形には、必ず「得意」と「苦手」があります。ヨタカは、速さを少しあきらめるかわりに、ゆっくり飛ぶ力と、振り上げでも進む技を手に入れていたのかもしれません。ドローンや小型飛行ロボットの設計にもヒントになりそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn most birds, the downstroke of the wing produces the force that moves them forward, while the upstroke… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In most birds, the downstroke of the wing produces the force that moves them forward, while the upstroke mainly helps support their weight. However, researchers at Lund University in Sweden have found that European nightjars break this rule. Nightjars migrate long distances between Africa and Europe, but they also fly slowly and hover while catching insects.

The team flew three nightjars in a wind tunnel and studied the air behind their wings. During normal flight, the outer part of the wing produced forward thrust during the upstroke, something mainly known in bats and hummingbirds. Their broad wings, however, made fast flight less efficient, showing a trade-off between hovering ability and speed.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ほとんどの鳥では、翼の振り下ろしが前へ進む力を生み、振り上げは主に体重を支える助けをしています。しかし、スウェーデンのルンド大学の研究者たちは、ヨーロッパヨタカがこのルールを破っていることを発見しました。ヨタカはアフリカとヨーロッパの間を長距離移動しますが、虫をとるときにはゆっくり飛んだりホバリングしたりもします。チームは3羽のヨタカを風洞で飛ばし、翼の後ろの空気を調べました。

ふつうの飛行中、翼の外側の部分が振り上げのときに推進力を生んでいました。これは主にコウモリやハチドリで知られてきたことです。しかし、その幅の広い翼は速く飛ぶ効率を下げており、ホバリングの能力と速さの間のトレードオフを示していました。

4択リーディングクイズ

Q1. What "rule" do nightjars break?

Q2. Which animals were already known to produce thrust during the upstroke?

Q3. What does "a trade-off" between hovering ability and speed mean here?

重要単語

  • upstrokeC1
    名詞(翼の)振り上げSome birds produce thrust during the upstroke. up+stroke(ひとかき・一振り)。対になるのは downstroke(振り下ろし)。水泳の stroke と同じ語。
  • thrustC1
    名詞・動詞推進力/ぐいと押すThe engine produces thrust. 物理・航空では lift(揚力)、drag(抗力)、thrust(推進力)、weight(重力)の4つの力をセットで覚える。
  • hoverB2
    動詞空中で静止する、ホバリングするHummingbirds can hover in front of flowers. hover around 50%「50%前後を推移する」のように数値の比喩でも使われる。
  • vortexC1
    名詞うずA vortex forms at the tip of the wing. 複数形は vortices(ヴォーティシーズ)または vortexes。ラテン語系の複数形 -ices に注意。
  • trade-offC1
    名詞あちらを立てればこちらが立たない関係There is a trade-off between speed and control. a trade-off between A and B の形で使う。動詞句 trade A off against B も同じ発想。
  • efficientB1
    形容詞効率のよいLong, narrow wings are efficient for fast flight. 名詞 efficiency。effective(効果的な)との区別が入試で狙われる。
  • migrationB2
    名詞(鳥の)渡り、移動Nightjars make a long migration between Africa and Europe. 動詞 migrate。migratory bird(渡り鳥)も覚えておく。
鳥は翼を振り下ろして進み、振り上げは休憩…という常識が覆るかも。風洞でヨタカを飛ばしたら、振り上げでも前へ進む力を出していたらしい。コウモリやハチドリの得意技とされてきたもの。代わりに速く飛ぶのは少し苦手。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Johansson et al. (2026) Nightjars trade off cruising speed efficiency for hovering capabilities and link upstroke thrust production with restricted wing folding, PLOS Biologydoi.org
  2. Warrick, Tobalske & Powers (2005) Aerodynamics of the hovering hummingbird, Naturedoi.org
  3. Hedenström et al. (2007) Bat Flight Generates Complex Aerodynamic Tracks, Sciencedoi.org