ワニは「生きた化石」? 恐竜時代の親戚には“草食ワニ”も“海を泳ぐワニ”もいた

読む前に予想してみよう!
恐竜時代のワニの親戚は、みんな今のワニと同じように水辺で肉を食べていた
歯の形の分析から、植物を食べていたと考えられる種が何度も現れていたことがわかっている。海で暮らす種や陸を走る種もいた。
- 対象
- ワニ類と絶滅したワニの親戚(ワニ形類など)
- 規模
- 3種のゲノム・多数の化石種
- 研究の種類
- 比較ゲノム解析・歯の形の定量分析・系統比較法
- 確かさ
- ★★★☆☆
今のワニはゲノムの変化がとてもゆっくりで、姿も昔から似ている。でも恐竜時代のワニの親戚には、植物を食べる種や海で暮らす種など、驚くほど多様な仲間がいた。
ひとことで言うとワニは昔から姿があまり変わらない。でも大昔には、草を食べるワニの親せきもいた!
ワニを見ると、「恐竜の時代から生きている動物」という感じがしますよね。図鑑でも、ワニはよく「生きた化石」と紹介されます。
でもこの言葉、半分は当たっていて、半分はちょっと誤解を招きます。ワニの仲間の歴史をのぞいてみると、今の姿からは想像もつかない親戚たちが次々と出てくるのです。
01ゲノムの変化は、たしかに「超スロー」
まず、「変わっていない」のほうの証拠から。
2014年、アメリカなどの国際チーム(Green ら)は、アメリカアリゲーター、イリエワニ、インドガビアルという3種のワニのゲノム(全遺伝情報)を読み、『Science』に発表しました。
体の形や、水辺で待ちぶせして獲物をとらえる今のワニのスタイルは、長いあいだ大きくは変わっていません。この意味では、「生きた化石」という言葉にも一理あります。
02恐竜時代のワニの親戚は、とんでもなく多様だった
ところが、化石の世界に目を向けると、話はがらりと変わります。
今のワニにつながる仲間(ワニ形類など)は、恐竜時代にさまざまな姿に枝分かれしていました。ひれのような脚で海を泳ぐ種、すらりとした脚で陸を走る種、そして驚くことに、植物を食べていた種までいたと考えられています。
肉食のハンターというワニのイメージからは、想像しにくい姿です。

03「変わらない時期」と「一気に変わる時期」
では、ワニの仲間は、どんなペースで変化してきたのでしょうか。
2021年、イギリス・ブリストル大学のマクシミリアン・ストックデールさんとマイケル・ベントンさんは、ワニとその親戚の体の大きさの進化を、系統樹を使って分析しました。
その結果、体の大きさの進化は、長く安定した時期と、急に変化が起きる時期が交互にくる、「区切りのある」パターンでした。そして、気温が高い時代ほど進化の速さが上がり、体も大きくなる傾向が見られました。ワニの進化には、気候などの環境が大きくかかわっていたと考えられます。
現在のワニは、今の環境に合った「水辺の待ちぶせ型」がうまくいっているので、大きく変わる必要がない時期にいる。そう見ることもできそうです。
04まとめ
ワニは、ゲノムの変化がとてもゆっくりな「生きた化石」らしい一面を持っています。でもその親戚たちの歴史には、草食ワニ、海のワニ、走るワニがひしめいていました。
動物園のワニが、恐竜時代のにぎやかな親戚たちの「最後の生き残りチーム」だと思うと、ちょっと見る目が変わりませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCrocodiles are often described as living fossils, and there is some truth in this.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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Crocodiles are often called living fossils. Their bodies have not changed much for a very long time. Their genes also change very slowly.
But in the age of dinosaurs, crocodiles had many different relatives. Some swam in the sea. Some ran on land with long legs. Some even ate plants.
Scientists learned this by studying the shapes of their fossil teeth. So crocodiles have a more colorful history than we think.
71 words ・ CEFR A2
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ワニはよく「生きた化石」と呼ばれます。その体はとても長いあいだ、あまり変わっていません。遺伝子もとてもゆっくりと変化します。
しかし恐竜の時代には、ワニにはさまざまな親戚がいました。海を泳ぐものもいました。長い脚で陸を走るものもいました。植物を食べるものまでいたのです。
科学者たちは、化石の歯の形を調べることでこれを知りました。つまりワニには、私たちが思うよりにぎやかな歴史があるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
生きた化石と呼ばれるワニにも、恐竜時代には多様な親戚がいた、という歴史がテーマなので B。
Q2. How did scientists learn that some relatives ate plants?
by studying the shapes of their fossil teeth とあるので A。
Q3. In this passage, "relatives" means ...
relative は「親戚」。ここでは同じ仲間に属する動物のことなので D。
Crocodiles are often described as living fossils, and there is some truth in this. In 2014, an international team read the genomes of three crocodilian species and found that they change very slowly at every level. The animals' lifestyle of waiting in the water to ambush prey has also stayed similar for a long time.
However, fossils tell a different story. During the age of dinosaurs, crocodile relatives included sea-swimming forms, long-legged land runners, and even plant-eaters. In 2019, Keegan Melstrom and Randall Irmis measured the complexity of fossil teeth and found that teeth suited to eating plants had evolved at least three separate times. These relatives were far more varied than today's crocodiles.
114 words ・ CEFR B1
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ワニはよく生きた化石と言われますが、これにはある程度の真実があります。2014年、国際チームが3種のワニのゲノムを読み、あらゆるレベルで変化がとてもゆっくりであることを発見しました。水の中で待ちぶせして獲物をとらえる暮らし方も、長いあいだ似たままです。
しかし、化石は別の物語を語ります。恐竜の時代、ワニの親戚には、海を泳ぐもの、長い脚で陸を走るもの、そして植物を食べるものまでいました。2019年、キーガン・メルストロムさんとランドール・アーミスさんは化石の歯の複雑さを測定し、植物を食べるのに適した歯が少なくとも3回、別々に進化していたことを発見しました。これらの親戚は、今のワニよりはるかに多様だったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2014 genome study find?
they change very slowly at every level とあるので A。
Q2. How many times did plant-eating teeth evolve separately, at least?
had evolved at least three separate times とあるので C。
Q3. What is the writer's view of the phrase "living fossil"?
there is some truth in this と認めつつ、However, fossils tell a different story と多様性を示しているので B。
Crocodiles are frequently labeled living fossils, a description that is only half accurate. On one hand, a 2014 study comparing the genomes of the American alligator, the saltwater crocodile, and the gharial found very slow change at every level examined, from DNA substitutions to chromosome arrangement; comparisons with birds suggested that it was the bird lineage that had sped up.
On the other hand, the fossil record reveals an extraordinary diversity among crocodile relatives during the Mesozoic. There were marine forms with flipper-like limbs, long-legged terrestrial runners, and, most surprisingly, herbivores. In 2019, Keegan Melstrom and Randall Irmis quantified the complexity of fossil teeth and concluded that plant-eating dentition evolved independently at least three times, sometimes rivaling that of herbivorous mammals. A 2021 analysis of body size by Maximilian Stockdale and Michael Benton found that evolution proceeded in bursts separated by long stable periods, with faster change during warmer climates. These findings carry some uncertainty, though. Diets were inferred from tooth shape by comparison with living animals rather than observed directly, and the body-size study says little about how other traits evolved.
182 words ・ CEFR B2
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ワニはよく生きた化石と呼ばれますが、この表現は半分しか正確ではありません。一方では、アメリカアリゲーター、イリエワニ、インドガビアルのゲノムを比較した2014年の研究で、DNAの置きかわりから染色体の並び方まで、調べたあらゆるレベルで変化が非常に遅いことがわかりました。
鳥との比較からは、むしろ速くなったのは鳥の系統のほうだと示唆されました。他方で、化石の記録は、中生代のワニの親戚が並外れて多様だったことを明らかにしています。ひれのような脚を持つ海の種、長い脚の陸の走者、そして最も驚くべきことに草食の種がいたのです。2019年、キーガン・メルストロムさんとランドール・アーミスさんは化石の歯の複雑さを数値化し、植物を食べる歯が少なくとも3回独立に進化し、ときには草食の哺乳類に匹敵するほどだったと結論づけました。2021年のマクシミリアン・ストックデールさんとマイケル・ベントンさんによる体の大きさの分析では、進化は長い安定期をはさんで急激に進み、温暖な気候の時期に変化が速くなることがわかりました。ただし、これらの発見にはある程度の不確かさがあります。食性は直接観察されたのではなく、現生動物との比較により歯の形から推測されたものであり、体の大きさの研究は、ほかの特徴がどう進化したかについてはほとんど語っていません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the writer call the phrase "living fossil" only half accurate?
On one hand ゲノムの変化は遅い、On the other hand 化石の親戚は多様、という対比なので C。
Q2. What did the 2021 study find about body size evolution?
evolution proceeded in bursts ... with faster change during warmer climates とあるので D。
Q3. Which uncertainty does the writer mention?
Diets were inferred from tooth shape ... rather than observed directly とあるので B。
重要単語
- living fossilB2名詞(句)生きた化石The crocodile is often called a living fossil.
ダーウィンが使い始めた表現。シーラカンスやカブトガニもよく例に出る。 - herbivorousC1形容詞草食のSome ancient crocodile relatives were herbivorous.
herb(草)+-vorous(食べる)。carnivorous「肉食の」、omnivorous「雑食の」とセットで。 - genomeC1名詞ゲノム(全遺伝情報)Crocodile genomes change very slowly.
gene(遺伝子)+-ome(全体)。the human genome「ヒトゲノム」。 - diversityB2名詞多様性Fossils show great diversity among crocodile relatives.
形容詞 diverse。biodiversity「生物多様性」は入試の環境テーマで超頻出。 - extinctionB2名詞絶滅Many groups disappeared during the mass extinction.
形容詞 extinct「絶滅した」。go extinct「絶滅する」、be on the verge of extinction「絶滅の危機にある」。 - terrestrialC1形容詞陸生の、地球のSome relatives were terrestrial runners with long legs.
ラテン語 terra(大地)から。反対は aquatic(水生の)、marine(海の)。extraterrestrial は「地球外の(生命)」。
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ワニは恐竜時代からほとんど変わらない「生きた化石」と言われるけど、実はゲノムの変化はたしかにかなりゆっくり。一方で、恐竜時代のワニの親戚には、植物を食べる動物に似た複雑な歯が、少なくとも3回も別々に進化していたらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Green et al. (2014) Three crocodilian genomes reveal ancestral patterns of evolution among archosaurs, Sciencedoi.org
- Melstrom & Irmis (2019) Repeated Evolution of Herbivorous Crocodyliforms during the Age of Dinosaurs, Current Biologydoi.org
- Stockdale & Benton (2021) Environmental drivers of body size evolution in crocodile-line archosaurs, Communications Biologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











