「サメはがんにならない」はウソだった。軟骨サプリの宣伝が生んだ"都合のいい伝説"

読む前に予想してみよう!
サメはがんにならない
サメやエイの仲間にも、良性・悪性の腫瘍が見つかった記録がある。
- 対象
- がん患者
- 規模
- 83人+379人
- 研究の種類
- 二重盲検ランダム化比較試験2件+症例の総説
- 確かさ
- ★★★★☆
サメにもがんはある。研究者が実例をまとめて反論し、サメ軟骨の臨床試験でもがん患者の生存期間は延びなかった。
ひとことで言うとサメもがんになる。サメの軟骨を食べてもがんは治らなかった!
「サメはがんにならない。だからサメの軟骨はがんに効く」
1990年代、こんな宣伝文句とともに「サメ軟骨」のサプリメントがアメリカを中心に大流行しました。健康食品の広告で目にしたことがある人もいるかもしれません。
でも結論から言うと、前半も後半も間違いでした。サメもがんになります。そしてサメ軟骨でがんが治るという証拠は見つかっていません。
01サメの腫瘍、ちゃんと記録されていた
研究者たちがわざわざこの論文を書いたのは、「サメはがんにならない」という主張が、サプリの効き目の根拠として使われていたからです。
ただし、サメのがんがどのくらいの頻度で起きるのかは、実はよくわかっていません。野生のサメを大量に調べる研究はほとんどないからです。「がんが少ないかもしれない」と「がんにならない」は、まったく別の話です。
02「軟骨ががんを止める」説はどこから来た?
この話には、ちゃんとした科学のタネもありました。
がんは大きくなるために、新しい血管を作って栄養を引きこみます。軟骨にはもともと血管がほとんどなく、軟骨の中に血管が作られるのをじゃまする物質が含まれていることが、1970〜80年代の研究で見つかっていたのです。

でも、そこから「サメの軟骨を粉にして飲めば、がんが治る」までは大きな飛躍があります。飲んだ成分が消化されずに、がんの場所まで届いて効くという証拠はなかったからです。
03くじ引きの臨床試験で確かめたら
そこで、医師たちはきちんとした臨床試験で確かめました。
- 2005年、米国のロプリンジらは、治療が難しい乳がん・大腸がんの患者を、サメ軟骨の製品と、見た目もにおいも同じ偽薬にくじ引きで分けました。分析できた83人で、生存期間にも生活の質にも差はありませんでした
- 2010年、米国のルーらは、肺がんの患者379人に、標準的な抗がん剤と放射線治療に加えて、成分を標準化したサメ軟骨エキス(AE-941)か偽薬を使いました。生存期間の中央値はエキス群14.4か月、偽薬群15.6か月で、差はなし
どちらも、患者も医師もどちらを飲んでいるかわからない「二重盲検」という信頼性の高い方法です。
04伝説が残した、二つの被害
オストランダーらは論文で、この伝説が少なくとも二つの悪い結果を招いたと指摘しています。
- サメが大量にとられ、数が減ったこと
- 患者さんが、効果のある治療から離れてしまうこと
「サメはがんにならない」は、わかりやすく、ちょっとロマンもある話です。だからこそ広まりました。でも、その"わかりやすさ"が、人にもサメにも被害を出してしまったのです。
05まとめ
- サメにも、良性・悪性の腫瘍がある
- サメ軟骨を使った臨床試験では、がん患者の生存期間は延びなかった
- 伝説はサメの乱獲と、患者さんが治療から離れるという被害を生んだ
判定は「ウソ」。わかりやすい話ほど、一度立ち止まって「証拠はどこ?」と聞いてみる価値がありそうです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerShark cartilage supplements became popular in the 1990s.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In the 1990s, many people bought shark cartilage pills. The ads said, "Sharks never get cancer, so shark cartilage can stop cancer." But this is wrong.
Scientists found many cases of tumors in sharks. Doctors also tested shark cartilage on cancer patients. Some patients took it, and others took a fake pill. The patients did not live longer with shark cartilage. The story also hurt sharks, because people caught too many of them.
73 words ・ CEFR A2
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1990年代、多くの人がサメ軟骨の錠剤を買いました。広告には「サメはがんにならない。だからサメの軟骨はがんを止められる」と書かれていました。しかし、これは間違いです。
科学者たちは、サメに腫瘍ができた例をたくさん見つけました。医師たちは、がん患者にサメ軟骨を試すこともしました。一部の患者はそれを飲み、ほかの患者は偽物の錠剤を飲みました。サメ軟骨を飲んでも、患者は長生きしませんでした。この話はサメにも害を与えました。人々がサメをとりすぎたからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「サメはがんにならない、だから軟骨が効く」という広告が間違いだと説明しているので C。
Q2. What happened to the patients who took shark cartilage?
The patients did not live longer with shark cartilage. とあるので A。
Q3. In this passage, "a fake pill" is a pill that ...
fake は「偽物の」。比べるために使う、薬の成分が入っていない錠剤(偽薬)のことなので D。
Shark cartilage supplements became popular in the 1990s. Their sellers claimed that sharks do not get cancer, so their cartilage must fight cancer.
However, in 2004 researchers reported many cases of both harmless and dangerous tumors in sharks and rays. Two sharks even had two cancers each. The idea did have a small scientific basis. Cartilage contains substances that block the growth of new blood vessels, which tumors need.
But there was no proof that swallowing cartilage powder could work. In a 2005 trial, patients with advanced cancer took either a shark cartilage product or a placebo. The product did not help them live longer or improve their quality of life.
111 words ・ CEFR B1
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サメ軟骨のサプリメントは1990年代に人気になりました。売り手は「サメはがんにならないのだから、その軟骨はがんと戦うはずだ」と主張しました。
しかし2004年、研究者たちは、サメやエイに害のない腫瘍と危険な腫瘍の両方が見つかった例を数多く報告しました。それぞれ2つのがんを持っていたサメも2匹いました。この考えには、小さいながら科学的な根拠もありました。軟骨には、腫瘍が必要とする新しい血管の成長をじゃまする物質が含まれているのです。
しかし、軟骨の粉を飲みこんで効くという証拠はありませんでした。2005年の試験では、進行がんの患者がサメ軟骨の製品か偽薬のどちらかを飲みました。その製品は、患者の生存期間を延ばすことも、生活の質を高めることもありませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
サプリの宣伝文句(サメはがんにならない)が誤りで、試験でも効果がなかったという内容なので B。
Q2. What did researchers report in 2004?
in 2004 researchers reported many cases of both harmless and dangerous tumors in sharks and rays とあるので D。
Q3. Why does the writer say the idea had "a small scientific basis"?
直後の文で Cartilage contains substances that block the growth of new blood vessels と根拠が説明されているので A。
In the 1990s, shark cartilage supplements sold well, especially in the United States, on the strength of a simple-sounding argument. The pitch was that sharks do not get cancer, so their cartilage must contain something that fights it. Both halves of that reasoning were wrong.
In 2004, researchers gathered documented cases of benign and malignant tumors in sharks and their relatives, including two sharks that each had two cancers. They also admitted that nobody knows how often sharks actually get cancer, because few large surveys of wild sharks exist. The second half of the claim grew out of real research. Cartilage contains substances that block the growth of new blood vessels, which tumors need.
But there was no evidence that these substances survive digestion and reach a tumor. Double-blind trials settled the question. In one, 83 patients with advanced cancer showed no difference in survival or quality of life. In another, 379 lung cancer patients on standard treatment lived a median of 14.4 months with a cartilage extract and 15.6 months with a placebo. Meanwhile, the myth encouraged overfishing and drew patients away from treatments that work.
187 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1990年代、サメ軟骨のサプリメントは、とくに米国で、単純に聞こえる理屈を頼りによく売れました。売り文句は、サメはがんにならない、だからその軟骨にはがんと闘う何かが含まれているはずだ、というものでした。この推論は前半も後半も誤りでした。
2004年、研究者たちはサメとその仲間で記録された良性・悪性の腫瘍の例を集め、その中にはそれぞれ2つのがんを持つサメが2匹含まれていました。同時に彼らは、野生のサメを大規模に調べた調査がほとんどないため、サメが実際にどれくらいがんになるのかは誰にもわからないと認めています。主張の後半は、本物の研究から生まれたものでした。軟骨には、腫瘍が必要とする新しい血管の成長を妨げる物質が含まれているのです。
しかし、そうした物質が消化を生き延びて腫瘍に届くという証拠はありませんでした。決着をつけたのは二重盲検試験です。ある試験では、進行がんの患者83人で生存期間にも生活の質にも差が出ませんでした。別の試験では、標準治療を受けている肺がん患者379人の生存期間の中央値が、軟骨エキス群で14.4か月、偽薬群で15.6か月でした。その一方で、この俗説はサメの乱獲を招き、患者を効果のある治療から遠ざけました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
Both halves of that reasoning were wrong と述べ、二重盲検試験でも効果がなかったと示しているので C。
Q2. In the lung cancer trial, what was the median survival of patients who took the placebo?
15.6 months with a placebo とあるので B。14.4か月はエキス群で、偽薬群より短い。
Q3. Why does the author mention that nobody knows how often sharks get cancer?
腫瘍の例はあるが頻度はわからないと認めることで、「サメはがんが多い」といった新たな根拠のない主張を避けている。D。
重要単語
- cartilageC1名詞軟骨Sharks have skeletons made of cartilage.
発音は /ˈkɑːtɪlɪdʒ/。耳や鼻の柔らかい骨も cartilage。 - tumorB2名詞腫瘍The doctor found a small tumor.
英国つづりは tumour。benign tumor(良性)/malignant tumor(悪性)とセットで覚える。 - malignantC1形容詞悪性のMalignant tumors can spread to other organs.
mal-(悪い)が語源。反対語は benign(良性の)。malfunction, malnutrition も同じ mal-。 - benignC1形容詞良性の、害のないMost of the tumors were benign.
発音は /bɪˈnaɪn/(ビナイン)。bene-(良い)は benefit と同じ語源。 - placeboB2名詞偽薬Half of the patients took a placebo.
placebo effect(プラセボ効果)は入試長文の定番テーマ。 - inhibitC1動詞抑制する、妨げるSome substances inhibit the growth of blood vessels.
名詞 inhibition。inhibit A from doing「Aが~するのを妨げる」の形も頻出。 - pseudoscienceC1名詞ニセ科学The researchers warned about the dangers of pseudoscience.
pseudo-(偽の)+science。p は発音しない(スードー)。pseudonym(ペンネーム)も同じ。
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「サメはがんにならないから、サメ軟骨ががんに効く」という話。研究者が調べたら、サメにも悪性腫瘍の記録がちゃんとあった。しかもサメ軟骨を使った臨床試験では、がん患者の生存期間は延びなかったらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Ostrander et al. (2004) Shark cartilage, cancer and the growing threat of pseudoscience, Cancer Researchdoi.org
- Loprinzi et al. (2005) Evaluation of shark cartilage in patients with advanced cancer: a North Central Cancer Treatment Group trial, Cancerdoi.org
- Lu et al. (2010) Chemoradiotherapy with or without AE-941 in stage III non-small cell lung cancer: a randomized phase III trial, Journal of the National Cancer Institutedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










