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満月の夜は出産が増える? 56万件の出生データで確かめたら、月は無関係だった

満月の夜は出産が増える? 56万件の出生データで確かめたら、月は無関係だった

読む前に予想してみよう!

満月の日には、ほかの日より明らかに出産が多い

研究カード(どんな研究?)
対象
出生記録(米国・ドイツ・フランス)
規模
56万件〜3,870万件
研究の種類
大規模記録データの解析(観察研究)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

アメリカで56万件以上の出生を月の満ち欠けごとに比べても、満月に出産が増える傾向は見られなかった。ドイツの400万件の分析でも同じ結論。

ひとことで言うと赤ちゃんは月を見て生まれる日を決めてない。満月でも新月でも同じ!

もくじ
  1. 56万件の出生を、月の満ち欠けで仕分けた
  2. ドイツでは400万件、さらに精密に
  3. 「月の引力」は人間には小さすぎる
  4. なぜ「満月はお産が多い」と感じるの?
  5. まとめ

「今夜は満月だから、お産が多くなるよ」

産婦人科の病院では、昔からこんな話がささやかれてきたと言われます。月の満ち欠けは潮の満ち引きを起こすほどの力を持っているのだから、人間の体にも影響があるはず――そう考えると、なんだか説得力がありますよね。

では、実際のデータで確かめると、どうなるのでしょう? 答えは、何十万件、何百万件という出生記録が教えてくれました。

0156万件の出生を、月の満ち欠けで仕分けた

研究チームは論文の中で、この言い伝えは「根拠にもとづいていない」と結論づけています。

02ドイツでは400万件、さらに精密に

もっと大規模な研究もあります。

2008年、ドイツの研究者たちは、南西部の州で1966年から2003年までに生まれた400万件以上の出生データを分析しました。使ったのはスペクトル解析(=データの中に、どんな周期のくり返しが隠れているかを探す方法。音を高い音・低い音に分けるのに似ている)という手法です。

すると、はっきり見つかった周期は2つだけでした。

  • 1週間の周期:週末は出産が少ない(計画的な出産が平日に多いため)
  • 1年の周期:季節によって出産数が変わる

そして、月の満ち欠けにあたる約29.5日の周期は、見つかりませんでした。

月は海を動かすけれど、人の出産の日まで動かしているわけではなさそう
月は海を動かすけれど、人の出産の日まで動かしているわけではなさそう

03「月の引力」は人間には小さすぎる

潮の満ち引きが起きるのは、地球の海がとてつもなく大きいからです。月の引力のかかり方は、月に近い側と遠い側でほんの少しだけ違います。この「ほんの少しの差」が、何千キロにも広がる海全体では大きな動きになるのです。

ところが人間の体は、せいぜい1〜2メートル。この大きさでは、月の引力の「差」はほとんどゼロに等しく、体の中の水を動かすような力にはなりません。

04なぜ「満月はお産が多い」と感じるの?

データでは関係がないのに、なぜこの言い伝えは根強いのでしょう?

  • 印象に残る:満月の夜に忙しかったことは「やっぱり!」と記憶に残り、新月の夜に忙しかったことは忘れられる(確証バイアス)
  • 話のネタになる:「今日は満月だから」という言葉自体が、忙しさを説明する便利なフレーズになる

ちなみに、フランスで50年分・3,870万件の出生を調べた2021年の研究では、満月とその翌日にごくわずかな増加が見られたと報告されています。ただしその差は本当にわずかで、研究者たちは、「満月は生まれやすい」という思い込みそのものが結果を引き寄せる“自己成就的予言”(=信じたことが、信じたせいで本当になる現象)の可能性にも触れています。

05まとめ

  • 56万件、400万件という大規模データで、満月に出産が増える傾向は見られなかった
  • 月の引力は、海のように巨大なものには効くが、人の体の大きさでは小さすぎる
  • 「満月は忙しい」は、記憶に残りやすい夜が生んだ思い込みかもしれない

赤ちゃんは、月を見て生まれる日を決めているわけではなさそうです。でも、満月の夜に生まれた子の誕生日には、ちょっと素敵な物語を添えてあげてもいいですよね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people, including some hospital staff, believe that more babies are born at full moon. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people, including some hospital staff, believe that more babies are born at full moon. Researchers tested this idea with birth records. A 2005 study analyzed 564,039 births in North Carolina and sorted them into eight phases of the lunar cycle. It found no meaningful difference in the number of births or in birth complications.

A German team later examined more than four million births using a method that searches data for repeating cycles. They found a weekly pattern and a yearly pattern, but no cycle of about 29.5 days, the length of the lunar cycle. Although the moon's gravity causes ocean tides, its effect on something as small as a human body is tiny. The belief probably survives because busy full-moon nights are easier to remember.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

一部の病院スタッフを含め、多くの人が、満月のときにはより多くの赤ちゃんが生まれると信じています。研究者たちは出生記録を使ってこの考えを検証しました。2005年の研究は、ノースカロライナ州の56万4,039件の出生を分析し、月の満ち欠けの8つの段階に分類しました。その結果、出生数にもお産のトラブルにも意味のある差は見つかりませんでした。

その後、ドイツのチームが、データの中のくり返す周期を探す手法を使って400万件以上の出生を調べました。彼らは1週間の周期と1年の周期は見つけましたが、月の満ち欠けの長さである約29.5日の周期は見つかりませんでした。月の引力は海の潮の満ち引きを起こしますが、人間の体のように小さなものへの影響はごくわずかです。この思い込みが残っているのは、おそらく忙しかった満月の夜のほうが記憶に残りやすいからでしょう。

4択リーディングクイズ

Q1. How did the 2005 study test the belief?

Q2. What patterns did the German team find?

Q3. Why does the writer think the belief survives?

重要単語

  • full moonA2
    名詞(句)満月Many nurses believe more babies are born at full moon. new moon(新月)、half moon(半月)とセットで。at full moon は無冠詞でも使う。
  • birth rateB1
    名詞(句)出生率、出生数の割合The birth rate did not change with the moon. 少子化の長文で a declining birth rate「低下する出生率」が頻出。
  • tideB1
    名詞潮の満ち引きThe moon's gravity causes ocean tides. high tide(満潮)/low tide(干潮)。比喩で the tide of public opinion「世論の流れ」も。
  • cycleB1
    名詞周期The lunar cycle lasts about 29.5 days. cyc=円・輪(bicycle も同語源)。lunar は「月の」、solar は「太陽の」。
  • folkloreC1
    名詞言い伝え、民間伝承The idea is part of hospital folklore. folk(民衆)+lore(知識)。根拠のない通説というニュアンスで使われる。
  • plausibleC1
    形容詞もっともらしいThe explanation sounds plausible, but the data disagree. 「本当らしく聞こえる(が本当とは限らない)」というニュアンス。難関大の内容一致で頻出。
  • negligibleC1
    形容詞ごくわずかな、無視できるThe moon's effect on the body is negligible. neglect(無視する)+-ible(できる)=無視できるほど小さい。

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4コマでわかる

満月の夜は出産が増える? 56万件の出生データで確かめたら、月は無関係だったの4コマ漫画
「満月の夜はお産が増える」って病院でもよく聞くけど、56万件以上の出生データを月の満ち欠けごとに比べても差はなかったらしい。ドイツでは400万件以上を分析して、やっぱり関係なし。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Arliss et al. (2005) The effect of the lunar cycle on frequency of births and birth complications, American Journal of Obstetrics and Gynecologydoi.org
  2. Kuss & Kuehn (2008) Lunar cycle and the number of births: A spectral analysis of 4,071,669 births from South-Western Germany, Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavicadoi.org
  3. Chambat et al. (2021) Slightly more births at full moon, Comptes Rendus Mathématiquedoi.org