語学・英語学習ウソ

「1日5分で英語ペラペラ」は計算が合わない。米国務省の"2200時間"の正しい読み方

「1日5分で英語ペラペラ」は計算が合わない。米国務省の"2200時間"の正しい読み方

読む前に予想してみよう!

米国務省の目安「約2200時間」は、日本人が英語をペラペラにするのに必要な時間として発表されたものだ

研究カード(どんな研究?)
対象
米国務省 外交官研修の受講者
規模
長年の研修実績
研究の種類
公的機関の経験的な目安
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

米国務省の外交官研修では、英語話者が日本語で仕事レベルに達するのに約2200時間の授業が目安。1日5分なら70年以上かかる計算に。量と集中の両方が必要。

ひとことで言うと1日5分だとペラペラまで何十年もかかる計算。時間の「量」は大事!

もくじ
  1. 米国務省が公開している「言語別の時間」
  2. 「2,200時間」を正しく読む3つの注意点
  3. 「毎日少し」と「短期集中」、どっちがいい?
  4. まとめ

「1日たった5分で、聞き流すだけで、英語がペラペラに!」。そんな広告を見たことがある人は多いでしょう。

忙しい毎日の中で、英語に何時間も使うのは大変です。できれば短い時間で済ませたい。その気持ちはよくわかります。

でも、外国語の習得にかかる時間について、ある公的機関の目安を見ると、「1日5分でペラペラ」がいかに計算に合わないかがわかります。

01米国務省が公開している「言語別の時間」

アメリカ国務省には、外交官に外国語を教える機関(FSI:Foreign Service Institute)があります。長年の研修の経験から、英語を母語とする受講者が、各言語で仕事に使えるレベル(話す・聞くの総合で、政府の尺度のレベル3)に達するまでの目安を公開しています。

日本語は、英語話者にとって「最も難しいグループ」に入っています。そして、ここが大事なポイントです。2,200時間は授業の時間だけで、毎週17時間の自習は含まれていません。

02「2,200時間」を正しく読む3つの注意点

この数字はよく「日本人が英語を習得するには2,200時間必要」と紹介されますが、正確には少しちがいます。

  1. 向きが逆:これは英語話者が日本語を学ぶ場合の目安。日本語話者が英語を学ぶ場合も、言語の距離を考えると近い難しさだと推測されますが、同じ数字が測られたわけではありません。
  2. 自習は別:授業以外に毎週17時間の自習がある前提です。
  3. 条件が恵まれている:仕事で語学が必要な米政府職員が、授業中心の集中的な研修を受ける場合の目安です。

それでも、ざっくりした目安としては十分に参考になります。試しに計算してみましょう。

  • 1日5分 → 2,200時間に届くまで約70年以上
  • 1日1時間 → 約6年
  • 1日3時間 → 約2年

中学校の英語の授業は、学習指導要領で年間140単位時間(1単位時間50分)。3年間で約350時間です。英語が「使えるレベル」に届かないのは、才能ではなく時間の問題とも言えそうです。

英語力は、時間のビー玉を一粒ずつ溜めていくもの
英語力は、時間のビー玉を一粒ずつ溜めていくもの

03「毎日少し」と「短期集中」、どっちがいい?

では、同じ時間なら、毎日少しずつと、短期間に集中してやるのとでは、どちらがよいのでしょう。

スペインの研究者セラーノとムニョスは、2007年に、大人の英語学習者で同じ授業時間数を、集中的に詰め込むコースと、長い期間に分散させるコースを比べました。結果、集中的なコースのほうが伸びが大きかったのです。

一方、記憶の研究では、間隔をあけてくり返す(分散学習)ほうが、長く覚えていられることが数多く確かめられています。

つまり、技能を伸ばすには「まとまった集中時間」、覚えたことを忘れないためには「間隔をあけた復習」。両方を組み合わせるのがよさそうです。

04まとめ

「1日5分でペラペラ」は、時間の計算からするとウソと言わざるをえません。

でも、それは悪い知らせではありません。英語が話せない大きな理由は、才能がないからではなく、まだ時間が足りていないことかもしれません。今日の30分が、2,200時間への確かな一歩になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAds promising fluent English in five minutes a day are common, but the numbers tell a different story. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Ads promising fluent English in five minutes a day are common, but the numbers tell a different story. The U.S. Foreign Service Institute, which trains diplomats, estimates how long English speakers need to reach a professional working level in other languages. For languages close to English, such as Spanish and French, it is 552 to 690 class hours.

For Japanese, Korean, Chinese and Arabic, it is about 2,200 class hours, plus about 17 hours of self-study each week. These figures are for English speakers learning other languages, not the reverse, and the learners are adult government employees in intensive classes. Even so, the estimate is a useful guide. At five minutes a day, 2,200 hours would take over 70 years, while three hours a day would take about two years.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1日5分で流暢な英語を約束する広告はよくありますが、数字は違う話を伝えています。外交官を養成するアメリカ国務省の機関(FSI)は、英語話者がほかの言語で仕事に使えるレベルに達するのにどれくらい必要かを見積もっています。スペイン語やフランス語など英語に近い言語では、552〜690授業時間です。

日本語・韓国語・中国語・アラビア語では約2,200授業時間で、さらに毎週約17時間の自習が加わります。これらの数字は英語話者がほかの言語を学ぶ場合のもので、その逆ではありません。また、学習者は集中クラスで学ぶ、大人の政府職員です。それでも、この見積もりは役に立つ目安です。1日5分なら2,200時間には70年以上かかりますが、1日3時間なら約2年です。

4択リーディングクイズ

Q1. How many class hours does the FSI estimate for Spanish and French?

Q2. Which is NOT true about the FSI figures, according to the passage?

Q3. What does the writer suggest by calculating different daily study times?

重要単語

  • proficiencyC1
    名詞熟達度・語学力のレベルShe reached professional proficiency in Japanese. professional working proficiency「仕事で使えるレベル」。proficient in ~ の形容詞形も頻出。
  • self-studyB1
    名詞自習Self-study is not included in the 2,200 hours. independent study とも。FSI の目安は授業時間のみで、自習時間は別に必要。
  • intensiveB2
    形容詞集中的なAn intensive course packs many hours into a few weeks. intense「激しい」と同語源。intensive care unit(ICU=集中治療室)でもおなじみ。
  • distributed practiceC1
    名詞(句)分散練習(間隔をあけてくり返す学習)Distributed practice helps long-term memory. spaced practice とも。massed practice(集中練習)と対。記憶の保持には分散が有利。
  • benchmarkC1
    名詞目安・基準Use the FSI numbers as a rough benchmark. もとは測量の「水準点」。ビジネス・ITでも「基準値」の意味で頻出。
  • diplomatB2
    名詞外交官Diplomats often need to learn several languages. 形容詞 diplomatic「外交の・如才ない」。アクセントは DIplomat、diPLOmacy と位置が変わる点に注意。
  • soberingC1
    形容詞身の引き締まる・冷静にさせるThe numbers are sobering. sober「しらふの・冷静な」から。「現実を突きつけられてハッとする」ニュアンス。

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4コマでわかる

「1日5分で英語ペラペラ」は計算が合わない。米国務省の"2200時間"の正しい読み方の4コマ漫画
米国務省の外交官研修の目安では、英語話者が日本語を仕事で使えるレベルにするのに授業だけで約2200時間。自習は別。1日5分なら70年以上かかる計算だった。英語でつまずく原因は、才能より時間かも。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Foreign Language Training, U.S. Department of State(FSI語学研修の時間目安)state.gov
  2. Serrano & Muñoz (2007) Same hours, different time distribution: Any difference in EFL?, Systemdoi.org
  3. Serrano (2011) The time factor in EFL classroom practice, Language Learningdoi.org
  4. Cepeda et al. (2006) Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis, Psychological Bulletindoi.org