語学・英語学習ホント

間違いを「言い直してもらう」だけでは伸びにくい? フィードバック研究の意外な結論

間違いを「言い直してもらう」だけでは伸びにくい? フィードバック研究の意外な結論

読む前に予想してみよう!

英語の間違いは、直されると自信をなくすので、直さないほうが上達する

研究カード(どんな研究?)
対象
教室で外国語を学ぶ人
規模
複数の研究
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

間違いを直してもらうと英語の正確さが伸びることは、複数のメタ分析で示されている。ただし正解を言い直されるだけより、自分で直すよう促されるほうが効きやすい。

ひとことで言うとまちがいは直してもらうと伸びる。自分で言い直すほうが、伸びやすいよ!

もくじ
  1. 教室を録画して、直し方を数えた
  2. メタ分析:フィードバックはちゃんと効く
  3. 英作文の添削は? 大論争の行方
  4. まとめ

英会話レッスンで「I go to Kyoto last week.」と言ったら、先生がにっこり「Oh, you went to Kyoto?」と返してくれた。

間違いを指摘せず、さりげなく正しい形で言い直す。やさしくて、会話の流れも止めない。理想的な直し方に見えますよね。

ところが研究によると、この「さりげない言い直し」は、授業でいちばん多く使われているのに、学習者がいちばん反応しにくい直し方だったのです。

01教室を録画して、直し方を数えた

リキャストは、学習者にとって「ただの相づち」に聞こえてしまうことがあります。先生は直したつもりでも、本人は直されたと受け取っていないかもしれません。

02メタ分析:フィードバックはちゃんと効く

では、間違いを直すこと自体に効果はあるのでしょうか。

2010年には、口頭のフィードバックの効果を調べた研究をまとめたメタ分析が2本発表されました。どちらも、フィードバックには正確さを伸ばす効果があり、その効果は時間がたっても続いていたと報告しています。

さらに教室での研究に絞った分析(Lyster & Saito)では、正解を言ってあげるリキャストより、自分で直すよう促すフィードバック(プロンプト)のほうが効果が大きい傾向や、年齢の低い学習者ほど効果が大きい傾向が見られました。

答えを言うより、「どっち?」と考えさせるほうが残りやすい
答えを言うより、「どっち?」と考えさせるほうが残りやすい

03英作文の添削は? 大論争の行方

書いた英語の添削については、かつて大きな論争がありました。1996年、ある研究者が「英作文の文法添削は効果がなく、むしろ有害だ」と主張する論文を発表したのです。

この論文をきっかけに多くの研究が行われ、2015年のメタ分析では、英作文への添削は書いた英語の正確さを中程度に伸ばすと報告されました。現在では「添削は効く。ただしやり方しだい」という見方が主流です。

04まとめ

間違いは、直してもらうとちゃんと伸びます。そして、自分で考えて、自分で言い直すほうが、身につきやすい傾向があります。

間違いは恥ずかしいものではなく、英語が伸びるチャンスの合図。次に直されたときは、ぜひ自分の口でもう一度言ってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen learners make mistakes, teachers often repeat the sentence in the correct form. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When learners make mistakes, teachers often repeat the sentence in the correct form. This is called a recast. In a 1997 study, Lyster and Ranta recorded French immersion classes in Canada and classified teachers' feedback into six types. Recasts were by far the most common, but they led to the lowest rate of student uptake, meaning students rarely responded or corrected themselves. Feedback that pushed students to find the answer, such as asking "How do we say that?", more often led to self-repair.

Later meta-analyses in 2010 showed that correcting errors does improve accuracy and that the benefits last over time. One of them found that prompts tended to work better than recasts, and that younger learners benefited more. So ask your teacher for hints first.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

学習者が間違えると、先生はしばしばその文を正しい形でくり返します。これはリキャストと呼ばれます。1997年の研究で、ライスターとランタはカナダのフランス語イマージョンの授業を録画し、先生のフィードバックを6種類に分類しました。リキャストは群を抜いて最も多かったのですが、生徒の取り込みの割合は最も低く、つまり生徒が反応したり自分で直したりすることはめったにありませんでした。「それはどう言うんだっけ?」

とたずねるなど、生徒に答えを見つけるよう促すフィードバックのほうが、自己修正につながることが多かったのです。その後、2010年のメタ分析は、間違いを直すことは確かに正確さを高め、その効果は時間がたっても続くことを示しました。そのうちの1つは、プロンプトのほうがリキャストより効く傾向があり、年齢の低い学習者ほど効果が大きいことを見出しました。ですから、まず先生にヒントを頼んでみましょう。

4択リーディングクイズ

Q1. What is a "recast"?

Q2. What did the 2010 meta-analyses show?

Q3. Why might prompts work better than recasts?

重要単語

  • corrective feedbackC1
    名詞(句)訂正フィードバック(間違いへの指摘や直し)Corrective feedback helps learners notice their errors. SLA研究の中心テーマ。oral(口頭)と written(書き言葉)に分けて研究される。略して CF。
  • recastC1
    名詞・動詞リキャスト(間違いを正しい形で言い直すこと)The teacher used a recast: "Oh, you went to Kyoto?" re-(再び)+cast(形作る)。会話を止めない利点がある一方、学習者の反応につながりにくいのが弱点とされる。
  • promptB2
    名詞・動詞促し・促すPrompts encourage learners to correct themselves. 答えを言わずに自己修正を引き出すフィードバックの総称。動詞 prompt A to do「Aに~するよう促す」は入試頻出。
  • uptakeC1
    名詞取り込み(フィードバック直後の学習者の反応)Recasts led to less uptake than other feedback types. 一般には「摂取・利用率」。SLAでは「直された後に言い直したか」を指す専門用語。
  • self-repairC1
    名詞自己修正Self-repair means fixing your own mistake without help. repair は会話分析で「言い直し」。自分で気づいて直す経験が記憶に残りやすいとされる。
  • accuracyB2
    名詞正確さFeedback mainly improves grammatical accuracy. SLAでは fluency(流暢さ)・complexity(複雑さ)と並ぶ発話評価の3本柱(CAF)。
  • acquisitionC1
    名詞習得Second language acquisition takes time. acquire「身につける」の名詞形。SLA=Second Language Acquisition。クラッシェンは「学習(learning)」と「習得(acquisition)」を区別した。

動画でもっと知る

英会話でまちがえたとき、先生がさりげなく正しく言い直してくれる「リキャスト」。実は授業でいちばん多いのに、生徒が言い直す率はいちばん低かったらしい。「自分で直させる」ほうが効くという研究も。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Lyster & Ranta (1997) Corrective feedback and learner uptake: Negotiation of form in communicative classrooms, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  2. Lyster & Saito (2010) Oral feedback in classroom SLA: A meta-analysis, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  3. Li (2010) The effectiveness of corrective feedback in SLA: A meta-analysis, Language Learningdoi.org
  4. Kang & Han (2015) The efficacy of written corrective feedback in improving L2 written accuracy: A meta-analysis, The Modern Language Journaldoi.org
  5. Truscott (1996) The case against grammar correction in L2 writing classes, Language Learningdoi.org