地球・歴史・物理

砂や服はなぜ濡れると色が濃くなる? 光が“迷子”になって吸い込まれていた

砂や服はなぜ濡れると色が濃くなる? 光が“迷子”になって吸い込まれていた

読む前に予想してみよう!

砂が濡れると暗く見えるのは、水そのものが黒っぽい色をしているからだ

研究カード(どんな研究?)
対象
砂・土などの表面
規模
実験室での反射率測定
研究の種類
物理モデル+測定
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

濡れるとすき間が水で満たされ、光が奥まで入り込んで何度も散乱し、吸収されやすくなる。表面に戻る光が減って暗く見える。白いシャツが透けるのも同じ仕組み。

ひとことで言うとぬれると、光が中でまいごになって、すいこまれちゃうから暗く見える!

もくじ
  1. 乾いた砂が明るいのは「光をはね返しまくる」から
  2. 水が入ると、光が「奥へ奥へ」迷い込む
  3. もう一つの仕掛け:水の膜で「閉じ込め」
  4. どんでん返し:白いシャツが「透ける」のも同じ理由
  5. まとめ

海辺で、波が届いたところの砂だけ色が濃くなっている。コーヒーをこぼしたジーンズ、雨にぬれたアスファルト、汗をかいたTシャツ。濡れると、たいていの物は色が濃く、暗く見えます。

でも、水そのものは透明です。透明な水がかかっただけで、なぜ暗くなるのでしょう?

答えを先に言うと、濡れると光が物の奥まで入り込み、中で何度も散らばるうちに吸収されてしまうからです。私たちの目に戻ってくる光が減るので、暗く、色が濃く見えるのです。この身近な謎は、約100年前から物理学者が真剣に研究してきました。

01乾いた砂が明るいのは「光をはね返しまくる」から

乾いた砂を拡大すると、小さな粒と、そのすき間の空気でできています。

光が砂粒に当たると、粒の表面や内部で向きを変え、あちこちに散らばります(散乱)。砂粒と空気では光の進み方(屈折率)が大きく違うため、光はちょっと進むたびに大きく向きを変え、浅いところで早めに外へはね返されてきます。たくさんの光が目に戻ってくるので、乾いた砂は明るく見えるのです。

02水が入ると、光が「奥へ奥へ」迷い込む

たとえるなら、乾いた砂は「入り口でUターンさせる迷路」、濡れた砂は「奥まで続く長い迷路」。長い迷路ほど、出口にたどり着く前に力尽きる(吸収される)光が増えるわけです。

濡れると光が奥まで迷い込み、戻ってくる前に吸収されやすくなる
濡れると光が奥まで迷い込み、戻ってくる前に吸収されやすくなる

03もう一つの仕掛け:水の膜で「閉じ込め」

もう一つの説明は、さらに古く、1925年にスウェーデンの物理学者オングストローム(Ångström)さんが提案したものです。

濡れた表面には薄い水の膜ができます。表面で散らばった光の一部は、水の膜から空気へ出ようとしたとき、角度によっては膜の境目で全部はね返されて(全反射)、もう一度表面に戻されてしまいます。光が表面と膜の間で閉じ込められ、そのたびに吸収されるチャンスが増える。1988年には、ニュージーランドのレクナー(Lekner)さんらがこのモデルを改良し、実験とよく合うことを示しました。

実際には、この2つの仕組みが物や濡れ方によって組み合わさって働いていると考えられます。

04どんでん返し:白いシャツが「透ける」のも同じ理由

濡れた白いシャツが透けてしまうのも、じつは同じ物理です。

白い布が白く見えるのは、細い繊維と空気のすき間で光がさんざん散らばって、ほとんど全部はね返されるから。ところが水がすき間を埋めると、繊維と水の屈折率が近いため、光は散らばらずに布を通り抜けやすくなります。だから、白い布は「暗く」なる代わりに「透けて」、下にある肌や服の色が見えてしまうのです。

05まとめ

物が濡れると暗くなるのは、水が粒や繊維のすき間を埋めることで光が奥まで迷い込み、何度も散らばるうちに吸収されてしまうから。さらに、水の膜が光を閉じ込める仕掛けも加わります。白いシャツが透けるのも、同じ物理の別の顔でした。

次に砂浜で濡れた砂を見たら、そこでは光が長い迷路をさまよっていると想像してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen sand, jeans or a road gets wet, it usually looks darker, even though water itself is clear. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When sand, jeans or a road gets wet, it usually looks darker, even though water itself is clear. The reason is how light travels through the material. In dry sand, the gaps between grains are filled with air. Because sand and air bend light very differently, light changes direction quickly and returns to our eyes from near the surface.

When water fills the gaps, the difference becomes smaller, so light travels deeper before coming back. On the way, it is scattered many more times, and each time some of it is absorbed. In 1986, American scientists tested this idea by wetting sand with various liquids. The same physics explains why a wet white shirt becomes see-through.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

砂やジーンズ、道路が濡れると、水そのものは透明なのに、たいてい暗く見えます。その理由は、光が物の中をどう進むかにあります。乾いた砂では、粒の間のすき間は空気で満たされています。砂と空気は光の曲げ方が大きく違うので、光はすぐに向きを変え、表面近くから私たちの目に戻ってきます。

水がすき間を満たすと、その違いが小さくなるため、光は戻ってくる前により奥まで進みます。その途中で光は何度も散乱され、そのたびに一部が吸収されるのです。1986年、アメリカの科学者たちは、さまざまな液体で砂を濡らしてこの考えを確かめました。濡れた白いシャツが透けるのも、同じ物理で説明できます。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happens to light in wet sand?

Q3. Why does a wet white shirt become see-through, according to the passage?

重要単語

  • reflectB1
    動詞反射するDry sand reflects more light. 名詞 reflection。total internal reflection は「全反射」。
  • absorbB2
    動詞吸収するWet sand absorbs more light. reflect(反射する)と対で覚える。be absorbed in ~「~に夢中だ」も頻出。
  • scatterB2
    動詞散乱させる、まき散らすTiny grains scatter light in all directions. 空が青いのも光の散乱(scattering)のため。scattered showers「ところにより雨」。
  • refractive indexC1
    名詞(句)屈折率Water and glass have similar refractive indexes. refract(屈折させる)の形容詞形。index の複数形は indexes / indices の両方がある。
  • transparentB2
    形容詞透明なA wet white shirt can become almost transparent. 「(組織・手続きが)透明性のある」の意味でも頻出。名詞 transparency。
  • translucentC1
    形容詞半透明のWet white fabric becomes translucent. trans-(通して)+lucent(光る)。transparent は「透明」、opaque は「不透明」。
砂やジーンズが濡れると色が濃くなるのはなぜ? 粒のすき間が水で埋まり、光が奥まで入り込んで何度も散らばるうちに吸収されてしまうらしい。白いシャツが濡れると透けるのも同じ仕組み。100年前から物理学者が研究していた。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Ångström (1925) The Albedo of Various Surfaces of Ground, Geografiska Annalerdoi.org
  2. Twomey, Bohren & Mergenthaler (1986) Reflectance and albedo differences between wet and dry surfaces, Applied Opticsdoi.org
  3. Lekner & Dorf (1988) Why some things are darker when wet, Applied Opticsdoi.org