シャボン玉の虹色、実は色素ゼロ。髪の毛より薄い膜が光を「えり分け」ていた

読む前に予想してみよう!
シャボン玉が割れる直前、てっぺんが黒っぽく見えることがある
膜がとても薄くなると、反射した光どうしが打ち消し合い、ほとんど光を返さなくなるため黒く見える。
- 対象
- 石けん膜の光の干渉
- 規模
- 波動光学の理論と膜の観察
- 研究の種類
- 物理理論・実験
- 確かさ
- ★★★★★
シャボン液は透明なのに、膜になると虹色に。膜の表と裏で反射した光が重なり、厚さに応じて特定の色だけが強まる「薄膜干渉」が正体。
ひとことで言うとシャボン玉の色は、うすい膜で光がかさなって生まれる「光のマジック」!
ストローでふーっと吹くと、ふわりと浮かぶシャボン玉。よく見ると、表面には虹色の模様がぐるぐると動いています。
でも、ちょっと待ってください。シャボン液って、もともと透明ですよね? 色素なんて入っていません。
それなのに、なぜ膜になると虹色に光るのでしょう? その答えは、髪の毛よりもずっと薄い膜の中で起きている、光の「重なり合い」にありました。
01光は「波」としてやってくる
まず知っておきたいのは、光は波の性質を持っているということです。
海の波に、高いところ(山)と低いところ(谷)があるように、光にも山と谷があります。そして、山と山の間隔(波長)によって、私たちの目には違う色に見えます。赤い光は波長が長く、青や紫の光は波長が短いのです。
太陽の白い光には、赤から紫まで、いろいろな色の光がまざっています。
02膜の「表」と「裏」で、光が2回はね返る
シャボン玉の膜は、石けん水でできたとても薄い層です。その厚さは、場所によって違いますが、色が見えるところで1万分の数ミリ(数百ナノメートル)ほど。髪の毛の太さの数百分の1くらいしかありません。膜の両面には石けんの分子が並んでいて、水の層をサンドイッチのようにはさんでいます。
光がこの膜に当たると、
- 膜の外側の表面ではね返る光
- 膜の中に入って、内側の表面ではね返ってくる光
の2つができます。この2つの光は、ほとんど同じ道を通って私たちの目に届きますが、内側ではね返った光のほうが、膜の厚さの往復分だけ長い距離を旅しています(正確には、水の中では光が遅くなるので、その分も「長い道のり」として効いてきます)。

03重なると「強まる色」と「消える色」がある
ここがポイントです。2つの光の波が重なるとき、
- 山と山がそろう → 光が強め合って、明るくなる
- 山と谷がそろう → 光が打ち消し合って、暗くなる
ということが起きます。これを光の干渉(かんしょう)といいます。
膜の厚さによって、「ちょうど山と山がそろう色」が変わります。ある厚さでは青が強まり、別の厚さでは赤や緑が強まる。だから、膜の厚さが場所ごとに少しずつ違うシャボン玉は、場所ごとに違う色に見えるのです。
実際には、ある色が「消える」と、残りの色がまざった補色のような色が見えるので、シャボン玉の色はマゼンタ、黄、シアンのような独特の色合いになります。膜が厚くなりすぎる(1000分の1ミリを大きくこえる)と、いろいろな色の強め合いが重なって白っぽくなり、色は見えなくなります。
つまりシャボン玉の色は、絵の具のような「色素の色」ではなく、膜の厚さが光をえり分けて作る色。こうした色を構造色と呼びます。
04色がぐるぐる動くのはなぜ?
シャボン玉の色は、じっとしていません。ぐるぐる回ったり、上から下へ流れたりします。
これは、膜の中の液体が重力で下に流れたり、水分が蒸発したりして、厚さが刻一刻と変わっているからです。液体が下にたまるので、てっぺんほど薄く、下ほど厚くなる傾向があります。
そして膜がどんどん薄くなり、厚さが数十ナノメートル以下になると、てっぺんが黒っぽく見えてきます。じつは、膜の外側の表面ではね返るとき、光の波は「山と谷が入れかわる」(位相が半波長ずれる)のに、内側の表面ではそれが起きません。そのため、膜が極端に薄くて道のりの差がほぼゼロになると、2つの光は山と谷がそろって打ち消し合ってしまうのです。この「黒い膜」が見えたら、割れるのはもうすぐです。
05身近にあふれる「膜の色」
同じしくみの色は、身のまわりにもたくさんあります。
- 雨の日の水たまりに浮かぶ油の虹色
- メガネのレンズの反射防止コーティング(干渉を利用して反射を打ち消している)
- 一部の昆虫の羽や鳥の羽の、角度で変わるキラキラした色
色素ではなく、とても細かい構造が光をあやつって作る色。自然界は、ずっと前からこのワザを使いこなしていたのです。
06まとめ
- シャボン玉の色は色素ではなく、膜の厚さが生み出す「構造色」
- 膜の表と裏ではね返った光が重なり、厚さに合った色だけが強まる
- 膜が流れたり蒸発したりして厚さが変わるので、色も動く
- てっぺんが黒くなったら、割れる直前のサイン
今度シャボン玉を吹くときは、色の動きをじっくり観察してみてください。その虹色は、目に見えないほど薄い膜の厚さを、光が教えてくれている「ものさし」なのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAlthough soap solution is clear, soap bubbles show swirling rainbow colors.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Soap water has no color, but soap bubbles shine with rainbow colors. Why? The skin of a bubble is very thin, much thinner than a hair. Light bounces off the outside and the inside of this skin.
The two lights meet, and some colors become stronger. The colors change as the skin gets thinner. When the top looks dark, the bubble will soon pop.
64 words ・ CEFR A2
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石けん水には色がないのに、シャボン玉は虹色に輝きます。なぜでしょうか?シャボン玉の膜はとても薄く、髪の毛よりずっと薄いのです。光はこの膜の外側と内側ではね返ります。
その2つの光が出会うと、いくつかの色が強くなります。膜が薄くなるにつれて、色は変わっていきます。てっぺんが暗く見えたら、シャボン玉はもうすぐ割れます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
色のない石けん水でできたシャボン玉が虹色に見える理由がテーマなので A。
Q2. How thick is the skin of a bubble?
much thinner than a hair とあるので D。
Q3. In this passage, "bounces off" means light ...
bounce off は「はね返る」。光が膜に当たって戻ってくることなので B。
Although soap solution is clear, soap bubbles show swirling rainbow colors. The film of a bubble is only a few hundred nanometers thick, hundreds of times thinner than a hair. When light hits the film, some of it reflects from the outer surface and some from the inner surface.
Because the second light travels a little farther, the two light waves may line up and become stronger, or cancel each other out. Which color becomes stronger depends on the thickness of the film. The colors move because liquid flows down and water evaporates, constantly changing the thickness. Colors like this, made by structure instead of pigment, are called structural colors.
110 words ・ CEFR B1
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石けん液は透明なのに、シャボン玉にはうずを巻く虹色が見えます。シャボン玉の膜の厚さは数百ナノメートルしかなく、髪の毛の数百分の1の薄さです。光が膜に当たると、一部は外側の表面で、一部は内側の表面で反射します。
2つめの光は少しだけ長い距離を進むので、2つの光の波はそろって強め合うこともあれば、打ち消し合うこともあります。どの色が強まるかは、膜の厚さによって決まります。液体が下に流れたり水分が蒸発したりして厚さが絶えず変わるので、色も動くのです。このように、色素ではなく構造によって生まれる色は「構造色」と呼ばれます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
とても薄い膜の表と裏で反射した光が重なって色が生まれる、という内容なので C。
Q2. Why do the colors on a bubble move?
liquid flows down and water evaporates, constantly changing the thickness とあるので A。
Q3. Which of the following is probably also a structural color?
構造色は色素ではなく薄い膜などの構造で生まれる色。水たまりの油の虹色も薄い膜によるものと推論できるので D。
Soap bubbles contain no pigment, yet they glow with shifting colors. The explanation lies in thin-film interference. Light hitting a film only a few hundred nanometers thick is partly reflected from the outer surface and partly from the inner one; the second ray travels an extra distance, made effectively longer because light slows down in water. Depending on the film's thickness, the two reflected waves reinforce or cancel particular wavelengths, and when one color is removed, we see its complement, producing the characteristic magenta, yellow, and cyan hues.
Isaac Newton carefully recorded these colors in his 1704 work Opticks but, viewing light as particles, explained them with his theory of "fits"; Thomas Young later accounted for them in 1802 by treating light as a wave. Because liquid drains downward and evaporates, the film's thickness keeps changing, so the colors swirl. As the top thins to tens of nanometers, it turns dark: light reflecting from the outer surface undergoes a half-wave shift that the inner reflection does not, so when the path difference nearly vanishes, the two waves cancel. A dark spot therefore warns that the bubble is about to burst.
190 words ・ CEFR B2
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シャボン玉には色素がないのに、移り変わる色で輝きます。その説明は「薄膜干渉」にあります。厚さが数百ナノメートルしかない膜に当たった光は、一部が外側の表面で、一部が内側の表面で反射します。2つめの光は余分な距離を進み、水の中では光が遅くなるため、その距離は実質的にさらに長くなります。膜の厚さに応じて、反射した2つの波は特定の波長を強め合ったり打ち消し合ったりし、ある色が取り除かれると、その補色が見えます。こうして、マゼンタ、黄、シアンという独特の色合いが生まれるのです。
アイザック・ニュートンは1704年の著書『光学』でこれらの色を注意深く記録しましたが、光を粒子と考えていたため、「発作(fits)」という独自の理論で説明しました。のちにトマス・ヤングが1802年、光を波として扱うことでこれらの色を説明しました。液体が下へ流れ落ち、蒸発するため、膜の厚さは変わり続け、色はうずを巻きます。てっぺんが数十ナノメートルまで薄くなると、そこは暗くなります。外側の表面で反射する光は半波長ずれますが、内側の反射ではそれが起きないので、道のりの差がほぼなくなると2つの波が打ち消し合うのです。だから、暗い部分はシャボン玉がもうすぐ割れるという警告なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
シャボン玉の色は膜の厚さで決まる薄膜干渉によるもの、という内容なので B。
Q2. How did Thomas Young explain the colors?
Thomas Young later accounted for them in 1802 by treating light as a wave とあるので C。粒子と考えたのはニュートン。
Q3. Why does a very thin part of the film look dark?
外側の反射だけ半波長ずれるため、道のりの差がほぼゼロになると2つの波が打ち消し合う、と説明されているので A。
重要単語
- interferenceC1名詞干渉Interference creates the colors of soap bubbles.
動詞 interfere。interfere with ~「~を妨げる」、interfere in ~「~に口出しする」は入試頻出。 - thin filmB2名詞(句)薄膜Oil on water forms a thin film.
film は「映画」のほか「薄い膜」の意味。cling film「(食品用)ラップ」(主に英。米では plastic wrap)。 - reflectB1動詞反射するLight reflects from both sides of the film.
「(考えや状況を)反映する」「よく考える(reflect on)」の意味も重要。名詞 reflection。 - pigmentC1名詞色素Soap bubbles contain no pigment.
paint と同語源。構造色(structural color)と対比して使われる。 - structural colorC1名詞(句)構造色Some butterfly wings show structural color.
structure(構造)の形容詞 structural。モルフォチョウの青も構造色。 - evaporateB2動詞蒸発するWater evaporates and the film gets thinner.
e-(外へ)+vapor(蒸気)。名詞 evaporation。比喩で「(希望などが)消えうせる」。
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シャボン液って透明なのに、なんで玉になると虹色に光るのか。正体は色素じゃなくて、髪の毛よりずっと薄い膜で起きる光の重なり合いだった。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Young (1802) The Bakerian Lecture. On the theory of light and colours, Philosophical Transactions of the Royal Society of Londondoi.org
- Isenberg (1981) Soap films and bubbles, Physics Educationdoi.org
- Couder, Chomaz & Rabaud (1989) On the hydrodynamics of soap films, Physica Ddoi.org
- Kinoshita & Yoshioka (2005) Structural Colors in Nature: The Role of Regularity and Irregularity in the Structure, ChemPhysChemdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







