地球・歴史・物理

シャボン玉の虹色、実は色素ゼロ。髪の毛より薄い膜が光を「えり分け」ていた

シャボン玉の虹色、実は色素ゼロ。髪の毛より薄い膜が光を「えり分け」ていた

読む前に予想してみよう!

シャボン玉が割れる直前、てっぺんが黒っぽく見えることがある

研究カード(どんな研究?)
対象
石けん膜の光の干渉
規模
波動光学の理論と膜の観察
研究の種類
物理理論・実験
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

シャボン液は透明なのに、膜になると虹色に。膜の表と裏で反射した光が重なり、厚さに応じて特定の色だけが強まる「薄膜干渉」が正体。

ひとことで言うとシャボン玉の色は、うすい膜で光がかさなって生まれる「光のマジック」!

もくじ
  1. 光は「波」としてやってくる
  2. 膜の「表」と「裏」で、光が2回はね返る
  3. 重なると「強まる色」と「消える色」がある
  4. 色がぐるぐる動くのはなぜ?
  5. 身近にあふれる「膜の色」
  6. まとめ

ストローでふーっと吹くと、ふわりと浮かぶシャボン玉。よく見ると、表面には虹色の模様がぐるぐると動いています。

でも、ちょっと待ってください。シャボン液って、もともと透明ですよね? 色素なんて入っていません。

それなのに、なぜ膜になると虹色に光るのでしょう? その答えは、髪の毛よりもずっと薄い膜の中で起きている、光の「重なり合い」にありました。

01光は「波」としてやってくる

まず知っておきたいのは、光は波の性質を持っているということです。

海の波に、高いところ(山)と低いところ(谷)があるように、光にも山と谷があります。そして、山と山の間隔(波長)によって、私たちの目には違う色に見えます。赤い光は波長が長く、青や紫の光は波長が短いのです。

太陽の白い光には、赤から紫まで、いろいろな色の光がまざっています。

02膜の「表」と「裏」で、光が2回はね返る

シャボン玉の膜は、石けん水でできたとても薄い層です。その厚さは、場所によって違いますが、色が見えるところで1万分の数ミリ(数百ナノメートル)ほど。髪の毛の太さの数百分の1くらいしかありません。膜の両面には石けんの分子が並んでいて、水の層をサンドイッチのようにはさんでいます。

光がこの膜に当たると、

  1. 膜の外側の表面ではね返る光
  2. 膜の中に入って、内側の表面ではね返ってくる光

の2つができます。この2つの光は、ほとんど同じ道を通って私たちの目に届きますが、内側ではね返った光のほうが、膜の厚さの往復分だけ長い距離を旅しています(正確には、水の中では光が遅くなるので、その分も「長い道のり」として効いてきます)。

膜の表と裏ではね返った2つの光が重なり合う
膜の表と裏ではね返った2つの光が重なり合う

03重なると「強まる色」と「消える色」がある

ここがポイントです。2つの光の波が重なるとき、

  • 山と山がそろう → 光が強め合って、明るくなる
  • 山と谷がそろう → 光が打ち消し合って、暗くなる

ということが起きます。これを光の干渉(かんしょう)といいます。

膜の厚さによって、「ちょうど山と山がそろう色」が変わります。ある厚さでは青が強まり、別の厚さでは赤や緑が強まる。だから、膜の厚さが場所ごとに少しずつ違うシャボン玉は、場所ごとに違う色に見えるのです。

実際には、ある色が「消える」と、残りの色がまざった補色のような色が見えるので、シャボン玉の色はマゼンタ、黄、シアンのような独特の色合いになります。膜が厚くなりすぎる(1000分の1ミリを大きくこえる)と、いろいろな色の強め合いが重なって白っぽくなり、色は見えなくなります。

つまりシャボン玉の色は、絵の具のような「色素の色」ではなく、膜の厚さが光をえり分けて作る色。こうした色を構造色と呼びます。

04色がぐるぐる動くのはなぜ?

シャボン玉の色は、じっとしていません。ぐるぐる回ったり、上から下へ流れたりします。

これは、膜の中の液体が重力で下に流れたり、水分が蒸発したりして、厚さが刻一刻と変わっているからです。液体が下にたまるので、てっぺんほど薄く、下ほど厚くなる傾向があります。

そして膜がどんどん薄くなり、厚さが数十ナノメートル以下になると、てっぺんが黒っぽく見えてきます。じつは、膜の外側の表面ではね返るとき、光の波は「山と谷が入れかわる」(位相が半波長ずれる)のに、内側の表面ではそれが起きません。そのため、膜が極端に薄くて道のりの差がほぼゼロになると、2つの光は山と谷がそろって打ち消し合ってしまうのです。この「黒い膜」が見えたら、割れるのはもうすぐです。

05身近にあふれる「膜の色」

同じしくみの色は、身のまわりにもたくさんあります。

  • 雨の日の水たまりに浮かぶ油の虹色
  • メガネのレンズの反射防止コーティング(干渉を利用して反射を打ち消している)
  • 一部の昆虫の羽や鳥の羽の、角度で変わるキラキラした色

色素ではなく、とても細かい構造が光をあやつって作る色。自然界は、ずっと前からこのワザを使いこなしていたのです。

06まとめ

  • シャボン玉の色は色素ではなく、膜の厚さが生み出す「構造色」
  • 膜の表と裏ではね返った光が重なり、厚さに合った色だけが強まる
  • 膜が流れたり蒸発したりして厚さが変わるので、色も動く
  • てっぺんが黒くなったら、割れる直前のサイン

今度シャボン玉を吹くときは、色の動きをじっくり観察してみてください。その虹色は、目に見えないほど薄い膜の厚さを、光が教えてくれている「ものさし」なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAlthough soap solution is clear, soap bubbles show swirling rainbow colors. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Although soap solution is clear, soap bubbles show swirling rainbow colors. The film of a bubble is only a few hundred nanometers thick, hundreds of times thinner than a hair. When light hits the film, some of it reflects from the outer surface and some from the inner surface.

Because the second light travels a little farther, the two light waves may line up and become stronger, or cancel each other out. Which color becomes stronger depends on the thickness of the film. The colors move because liquid flows down and water evaporates, constantly changing the thickness. Colors like this, made by structure instead of pigment, are called structural colors.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

石けん液は透明なのに、シャボン玉にはうずを巻く虹色が見えます。シャボン玉の膜の厚さは数百ナノメートルしかなく、髪の毛の数百分の1の薄さです。光が膜に当たると、一部は外側の表面で、一部は内側の表面で反射します。

2つめの光は少しだけ長い距離を進むので、2つの光の波はそろって強め合うこともあれば、打ち消し合うこともあります。どの色が強まるかは、膜の厚さによって決まります。液体が下に流れたり水分が蒸発したりして厚さが絶えず変わるので、色も動くのです。このように、色素ではなく構造によって生まれる色は「構造色」と呼ばれます。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Why do the colors on a bubble move?

Q3. Which of the following is probably also a structural color?

重要単語

  • interferenceC1
    名詞干渉Interference creates the colors of soap bubbles. 動詞 interfere。interfere with ~「~を妨げる」、interfere in ~「~に口出しする」は入試頻出。
  • thin filmB2
    名詞(句)薄膜Oil on water forms a thin film. film は「映画」のほか「薄い膜」の意味。cling film「(食品用)ラップ」(主に英。米では plastic wrap)。
  • reflectB1
    動詞反射するLight reflects from both sides of the film. 「(考えや状況を)反映する」「よく考える(reflect on)」の意味も重要。名詞 reflection。
  • pigmentC1
    名詞色素Soap bubbles contain no pigment. paint と同語源。構造色(structural color)と対比して使われる。
  • structural colorC1
    名詞(句)構造色Some butterfly wings show structural color. structure(構造)の形容詞 structural。モルフォチョウの青も構造色。
  • evaporateB2
    動詞蒸発するWater evaporates and the film gets thinner. e-(外へ)+vapor(蒸気)。名詞 evaporation。比喩で「(希望などが)消えうせる」。

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シャボン液って透明なのに、なんで玉になると虹色に光るのか。正体は色素じゃなくて、髪の毛よりずっと薄い膜で起きる光の重なり合いだった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Young (1802) The Bakerian Lecture. On the theory of light and colours, Philosophical Transactions of the Royal Society of Londondoi.org
  2. Isenberg (1981) Soap films and bubbles, Physics Educationdoi.org
  3. Couder, Chomaz & Rabaud (1989) On the hydrodynamics of soap films, Physica Ddoi.org
  4. Kinoshita & Yoshioka (2005) Structural Colors in Nature: The Role of Regularity and Irregularity in the Structure, ChemPhysChemdoi.org