足がつる(こむら返り)のはなぜ?「水分・ミネラル不足」説は、実験で旗色が悪くなっていた

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足がつった時にピクルスの汁を飲むと治まりやすいのは、塩分がすぐ血液に吸収されるからだ
効いたとする実験では、つりが水より約49秒早く治まったのに、5分後も血液成分はほとんど変わっておらず、吸収では説明しにくい。口やのどの刺激による反射が疑われている。
- 対象
- トライアスロン選手・成人
- 規模
- 210人(追跡調査)ほか
- 研究の種類
- 前向きコホート研究・実験・系統的レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
足のつりは「脱水やミネラル不足」のせいとされてきたが、トライアスロン選手210人の調査では血液中のミネラルや体重減少に差がなかった。神経の制御の乱れ説が有力に。
ひとことで言うと足がつるのは、水不足より「筋肉への命令がみだれる」せいかも!
試合の終盤、全力で走っていたらふくらはぎが「ギュッ」。夜中に寝返りを打ったら、足がつって飛び起きる。あの激痛は、経験した人にしかわかりません。
答えを先に言うと、足がつる原因は、じつはまだ完全にはわかっていません。昔から「水分不足」「ミネラル(電解質)不足」と言われてきましたが、運動中のつりについては、それだけでは説明できないという研究が増えています。今有力なのは、疲れなどで筋肉への神経の「命令」と「ブレーキ」のバランスが乱れるという考え方です。
01「つる」とは、筋肉が勝手に縮み続けること
こむら返りは、筋肉が自分の意思とは関係なく強く縮みっぱなしになる状態です。ふくらはぎ、足の裏、太ももの裏などで起きやすく、数秒から数分続きます。
筋肉は、脊髄から来る「縮め」という命令で縮み、筋肉や腱にあるセンサーから返ってくる「縮みすぎだよ」という信号でブレーキがかかります。このアクセルとブレーキの調整がうまくいかないと、筋肉が縮んだまま止まらなくなる、と考えられています。
02210人の鉄人を調べたら
速いペースで高い強度の運動を続けると、筋肉の疲労が進み、神経のアクセルとブレーキのバランスが崩れる。そう考えると、この結果はよく説明できます。

03ピクルスの汁は「速すぎる」
アメリカでは、つったときにピクルスの汁を飲むと治る、という言い伝えがあります。
塩分が吸収されて効いたのなら、そんなに早く効くはずがありません。研究チームは、酸っぱい汁が口やのどを刺激し、その反射で筋肉への命令が弱まったのではないかと考えています。これも「神経の調整の乱れ」説を支える結果です。
04マグネシウムやストレッチは効く?
夜のこむら返りの対策として、マグネシウムのサプリがよく売られています。しかし2020年のコクラン・レビュー(質の高い研究をまとめた分析)は、高齢者のこむら返りの予防に、マグネシウムが意味のある効果を持つ可能性は低いと結論しました。
ストレッチについても、2021年のコクラン・レビューは、ふくらはぎと太もも裏の毎日のストレッチで夜間のつりの痛みが軽くなるかもしれないとしつつ、回数への効果ははっきりしないとまとめています。決定打は、まだないのです。
05まとめ
足がつるのは、「水分・ミネラル不足」だけでは説明できず、疲れなどで筋肉への神経の命令とブレーキのバランスが乱れることが大きく関わっているようです。ピクルス汁の不思議な速さも、その説を後押ししています。
つったら、あわてずつま先を手前へ。そして次は、無理なペース配分に気をつけましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLeg cramps have long been blamed on dehydration and a lack of minerals such as sodium.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
A cramp is when a muscle suddenly gets tight and will not relax. Many people think leg cramps happen because they need more water or salt.
But a study of 210 triathletes found something different. Athletes who got cramps did not lose more water, and they had similar blood minerals. Instead, cramps were linked to racing at a fast pace and to having cramps before. Scientists now think tired muscles get mixed-up signals from the nerves.
76 words ・ CEFR A2
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こむら返りとは、筋肉が急に固く縮んで、ゆるまなくなることです。多くの人は、足がつるのは水分や塩分が足りないからだと思っています。
しかし、210人のトライアスロン選手を調べた研究では、違うことがわかりました。足がつった選手は、水分を多く失っていたわけではなく、血液中のミネラルも同じくらいでした。代わりに、足のつりは、速いペースで走ったことや、以前につった経験があることと関係していました。科学者たちは今、疲れた筋肉が神経から乱れた信号を受け取るのだと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
足がつる原因について、水分・塩分不足説と研究結果を比べて説明しているので A。
Q2. What were cramps linked to in the study?
cramps were linked to racing at a fast pace and to having cramps before とあるので C。
Q3. In this passage, "tight" means ...
直後の will not relax(ゆるまない)から、筋肉が「固く縮んでいる」状態だとわかるので D。
Leg cramps have long been blamed on dehydration and a lack of minerals such as sodium. However, a study of 210 Ironman triathletes in South Africa challenged this idea. The researchers weighed the athletes and tested their blood before and after the race. The 43 athletes who cramped did not differ from the others in weight loss or blood minerals.
Instead, cramping was linked to racing at a fast pace and to a history of cramps. Another study found that pickle juice stopped cramps faster than water, but the effect appeared very soon after drinking, which is too fast for salt to be absorbed. Scientists now think cramps may come from a problem in how nerves control tired muscles.
119 words ・ CEFR B1
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足のつりは、長いあいだ脱水やナトリウムなどのミネラル不足のせいだとされてきました。しかし、南アフリカでアイアンマン・トライアスロンの選手210人を調べた研究は、この考えに疑問を投げかけました。研究者たちはレースの前後に選手の体重を量り、血液を検査しました。足がつった43人の選手は、ほかの選手と体重の減り方や血液中のミネラルに違いがありませんでした。
代わりに、足のつりは速いペースで走ったことや、過去につった経験と関係していました。別の研究では、ピクルスの汁を飲むと水より早くつりが治まりましたが、その効果は飲んでからすぐに現れ、塩分が吸収されるには早すぎました。科学者たちは今、足のつりは、神経が疲れた筋肉をコントロールする仕組みの問題から来るのかもしれないと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
長く信じられてきた脱水・ミネラル不足説に、2つの研究が疑問を投げかけていることを説明しているので D。
Q2. How many athletes in the study had cramps?
The 43 athletes who cramped とあるので B。210は調査した選手全体の人数。
Q3. Why does the author say the pickle juice effect was "too fast"?
which is too fast for salt to be absorbed とあり、飲んですぐに塩分が吸収されて効いたとは考えにくいので A。
Muscle cramps during exercise are usually blamed on dehydration and lost electrolytes, but the evidence increasingly points elsewhere. In a prospective study of 210 Ironman triathletes in South Africa, researchers measured body weight and blood electrolytes such as sodium before and after the race. The 43 athletes who developed cramps showed no greater weight loss or electrolyte changes than the 166 who did not.
What predicted cramping was a fast racing pace and a history of cramps. These findings fit the hypothesis that fatigue upsets the balance between excitatory signals to the muscle and the inhibitory feedback that normally limits contraction. Dehydration may still matter sometimes, though. A 2010 experiment added an odd clue. In mildly dehydrated men, pickle juice relieved electrically induced cramps faster than water.
The effect appeared very soon after drinking, and blood electrolytes barely changed, which points to a reflex triggered in the mouth or throat. Cramps produced by electric stimulation may not behave like natural ones, however. On treatment, a 2020 Cochrane review found that magnesium is unlikely to prevent cramps meaningfully in older adults, and a 2021 review found that stretching might ease the pain of night cramps without clearly making them less frequent.
200 words ・ CEFR B2
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運動中の筋肉のけいれんは、ふつう脱水と電解質の喪失のせいにされますが、証拠はますます別の方向を指しています。南アフリカでアイアンマン・トライアスロン選手210人を対象に行われた前向き研究では、研究者たちがレースの前後に体重と、ナトリウムなどの血液中の電解質を測定しました。けいれんを起こした43人は、起こさなかった166人に比べて、体重の減少や電解質の変化が大きいわけではありませんでした。
けいれんを予測したのは、速いレースペースと、過去のけいれんの経験でした。これらの結果は、疲労によって、筋肉への興奮性の信号と、ふだん収縮を抑えている抑制性のフィードバックとのバランスが乱れるという仮説に合っています。とはいえ、状況によっては脱水が関わることもありえます。2010年の実験は、風変わりな手がかりを加えました。軽い脱水状態の男性で、電気刺激で起こしたけいれんを、ピクルスの汁は水より早く治めました。
効果は飲んでからすぐに現れ、血液中の電解質はほとんど変化しなかったので、口やのどで引き起こされる反射が考えられます。ただし、電気刺激で起こしたけいれんは、自然なけいれんと同じようにふるまうとは限りません。治療については、2020年のコクラン・レビューが、マグネシウムが高齢者のけいれんを意味のある程度に予防する可能性は低いとし、2021年のレビューは、ストレッチは夜間のけいれんの痛みを和らげるかもしれないが、回数をはっきり減らすわけではないとしました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
脱水説より神経制御の乱れ説を支持する研究を紹介しつつ、人工的に起こしたけいれんとの違いなどの限界も述べているので C。
Q2. What predicted cramping in the triathlete study?
What predicted cramping was a fast racing pace and a history of cramps とあるので A。
Q3. Why does the author note that cramps produced by electric stimulation "may not behave like natural ones"?
ピクルス汁の実験は電気刺激で起こしたけいれん(electrically induced cramps)を使っていたため、自然なつりに当てはまるとは限らないという限界の指摘なので B。
重要単語
- crampB2名詞(筋肉の)けいれん、こむら返りI got a cramp in my calf last night.
get / have a cramp の形で使う。stomach cramps は「腹部のさしこみ」。 - dehydrationB2名詞脱水Dehydration is not the only cause of cramps.
de-(取り除く)+hydr(水)+-ation。hydrate(水分補給する)、hydrogen(水素)も同じ語源。 - electrolyteC1名詞電解質(ナトリウムなど体液中のミネラル)Sports drinks contain electrolytes.
electro-(電気)+lyte(溶けたもの)。水に溶けて電気を通す物質。 - calfB1名詞ふくらはぎStretch your calf muscles gently.
「子牛」と同じつづり。複数形は calves。l は発音しない(カーフ)。 - fatigueB2名詞疲労Muscle fatigue may trigger cramps.
発音は /fəˈtiːɡ/(ファティーグ)。muscle fatigue「筋肉疲労」、metal fatigue「金属疲労」。 - reflexB2名詞反射A reflex in the throat may stop the cramp.
考える前に起こる体の反応。形容詞 reflexive(反射的な、再帰の)。
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- Leg cramps(NHS)nhs.uk
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足がつるのは「水分やミネラル不足」と思われがち。でもトライアスロン選手210人を調べると、つった人とつらない人で血液中のミネラルや体重の減り方に差はなかったらしい。むしろ速いペースや過去につった経験が関係していた。
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- Schwellnus, Drew & Collins (2010) Increased running speed and previous cramps rather than dehydration or serum sodium changes predict exercise-associated muscle cramping: a prospective cohort study in 210 Ironman triathletes, British Journal of Sports Medicinedoi.org
- Miller et al. (2010) Reflex Inhibition of Electrically Induced Muscle Cramps in Hypohydrated Humans, Medicine & Science in Sports & Exercisedoi.org
- Garrison et al. (2020) Magnesium for skeletal muscle cramps, Cochrane Database of Systematic Reviewsdoi.org
- Hawke et al. (2021) Non-drug therapies for the secondary prevention of lower limb muscle cramps, Cochrane Database of Systematic Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








