体と健康・食ホント

山椒の「しびれ」は味じゃなく“振動”だった。唇が感じていたのは1秒に約50回のブルブル

山椒の「しびれ」は味じゃなく“振動”だった。唇が感じていたのは1秒に約50回のブルブル

読む前に予想してみよう!

山椒のしびれは、舌の「味を感じる細胞」で感じている

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者・マウスの神経
規模
小規模の心理物理実験+基礎研究
研究の種類
実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

山椒や花椒のしびれ成分は「触覚」の神経を興奮させる。ロンドン大学の実験では、しびれは指で感じる約50Hzの振動とそっくりだった。

ひとことで言うと山椒のピリピリは、口の中で小さな「バイブ」が鳴っている感じ!

もくじ
  1. しびれの主役は「サンショオール」
  2. 神経の「ブレーキ」を外していた
  3. 唇のしびれは「1秒に約50回」の振動だった
  4. まとめ

うなぎのかば焼きにパラリとかける山椒。麻婆豆腐に入った花椒(ホアジャオ)。食べると口の中がジンジン、ビリビリとしびれますよね。

この感覚、唐辛子の「辛い」とも、レモンの「すっぱい」とも違います。いったい何なのでしょうか。

研究者たちの答えは意外なものでした。山椒のしびれは「味」ではなく、「振動」に近い触覚だったのです。

01しびれの主役は「サンショオール」

山椒や花椒には、サンショオールと呼ばれる仲間の成分が含まれています。中でも、しびれの主役とされるのがヒドロキシ-α-サンショオールです。

中国料理でいう「麻辣(マーラー)」の「麻」がこのしびれ、「辣」が唐辛子の辛さ。つまり料理人たちは昔から、2つは別の感覚だと見抜いていたわけです。

山椒の仲間の木は、英語で「トゥースエイク・ツリー(歯痛の木)」とも呼ばれてきました。口がしびれる性質を、歯の痛みをまぎらわせるのに使っていたのです。

02神経の「ブレーキ」を外していた

2010年の研究でも、皮膚の神経を調べたところ、サンショオールはほんのわずかな接触にも反応する、とても敏感な触覚センサーの一種(D-hair線維)を、ほぼすべて興奮させることがわかりました。

03唇のしびれは「1秒に約50回」の振動だった

では、そのしびれは、私たちにはどう感じられているのか。これを数字で確かめたのが、ロンドン大学(UCL)のチームです。

2013年の実験では、参加者の下唇に花椒を塗り、同時に右手の人さし指に機械で振動を与えました。そして「唇のしびれと同じ速さの振動はどれか」を比べてもらったのです。

結果、しびれの感覚はほぼ毎回、約50ヘルツ(1秒に約50回)の振動と一致しました。これは、皮膚の中でも細かい振動をとらえるのが得意な触覚の神経が担当する範囲です。

唇のしびれと指の振動を比べると、どちらも1秒に約50回の「ブルブル」だった
唇のしびれと指の振動を比べると、どちらも1秒に約50回の「ブルブル」だった

さらにおもしろいのは、指に長く振動を当てて、振動センサーを「慣れさせて」おくと、花椒で感じるしびれの速さも下がったこと。食べ物のしびれと機械の振動が、同じ神経のチャンネルを使っている証拠と考えられています。

04まとめ

山椒のしびれは、神経のブレーキを外された触覚センサーが鳴らす「約50回/秒のバイブ」でした。味でも唐辛子の辛さでもない、触覚に近い口の感覚です。

次に山椒をかけたら、「今、唇で小さなバイブが鳴っている」と想像しながら味わってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe numbing tingle of Japanese sansho and Chinese Szechuan pepper is very different from the heat of chili. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The numbing tingle of Japanese sansho and Chinese Szechuan pepper is very different from the heat of chili. Chinese cooks even use different words for the two sensations. The main cause is a substance called sanshool. In 2008, a US team found that sanshool blocks certain channels that normally act as "brakes" on nerves, so the nerves start firing on their own. These included nerves that sense light touch.

In 2013, researchers in London put Szechuan pepper on people's lower lips and vibrated their fingers with a machine. The tingling matched a vibration of about 50 times per second. This suggests that the tingle is really a kind of touch instead of a taste.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本の山椒や中国の花椒のしびれるようなピリピリ感は、唐辛子の辛さとはまったくちがいます。中国の料理人は、この2つの感覚に別々の言葉さえ使っています。主な原因はサンショオールという物質です。2008年、アメリカのチームは、サンショオールが、ふだんは神経の「ブレーキ」としてはたらくある種のチャネルをふさぐため、神経が勝手に信号を出し始めることを発見しました。その中には、軽い接触を感じる神経も含まれていました。

2013年、ロンドンの研究者たちは、人々の下唇に花椒を塗り、機械で指を振動させました。しびれは、1秒に約50回の振動と一致しました。これは、このピリピリ感が実は味ではなく、触覚の一種であることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What does sanshool do to nerves, according to the 2008 study?

Q2. Where did the London researchers put the Szechuan pepper?

Q3. Why does the writer mention that Chinese cooks use different words?

重要単語

  • tinglingC1
    形容詞ピリピリ・しびれるようなThe pepper left a tingling feeling on my lips. 動詞 tingle(ピリピリする)から。期待で「ゾクゾクする」の意味でも使う。
  • vibrationB2
    名詞振動The phone's vibration woke me up. vibrate(振動する)の名詞形。スマホの「バイブ」はこの語から。
  • frequencyB2
    名詞周波数、頻度The tingling had a frequency of about 50 hertz. 形容詞 frequent(頻繁な)。「頻度」と「周波数」の両方の意味を覚えておく。
  • numbB2
    形容詞しびれた、感覚がないMy mouth felt numb after the spicy dish. b は発音しない(ナム)。climb / comb と同じ「黙字の b」。
  • touch receptorC1
    名詞(句)触覚の受容器Touch receptors in the skin sense pressure. receptor は「受け取るもの」。taste receptor / pain receptor と組み合わせて使う。
  • fatigueB2
    動詞・名詞疲れさせる/疲労Long vibration fatigued the sensors in the finger. 発音は /fəˈtiːɡ/。感覚器が「慣れて鈍くなる」ことにも使われる。

4コマでわかる

山椒の「しびれ」は味じゃなく“振動”だった。唇が感じていたのは1秒に約50回のブルブルの4コマ漫画
うなぎにかける山椒や麻婆豆腐の花椒のしびれ、正体は「振動」の感覚だった。ロンドンの実験で、唇のしびれを指への振動と比べてもらったら、ほぼ毎秒50回のブルブルと同じだったらしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Bautista et al. (2008) Pungent agents from Szechuan peppers excite sensory neurons by inhibiting two-pore potassium channels, Nature Neurosciencedoi.org
  2. Lennertz et al. (2010) Physiological basis of tingling paresthesia evoked by hydroxy-α-sanshool, Journal of Neurosciencedoi.org
  3. Hagura, Barber & Haggard (2013) Food vibrations: Asian spice sets lips trembling, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org