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「コーヒーを飲む人は長生き」40万人の研究を、うのみにしてはいけない理由

「コーヒーを飲む人は長生き」40万人の研究を、うのみにしてはいけない理由

読む前に予想してみよう!

日本人約9万人を追った研究でも、コーヒーをよく飲む人ほど死亡リスクが低い傾向が見られた

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの50〜71歳/日本の40〜69歳
規模
約40万人/約9万人
研究の種類
前向きコホート研究(観察研究)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

大規模な観察研究で、コーヒーを飲む人は死亡リスクが低い傾向。ただし「コーヒーのおかげ」とは限らず、ほかの生活習慣の影響も考えられる。

ひとことで言うとコーヒー好きは長生きの傾向。でも「コーヒーのおかげ」かはまだナゾ!

もくじ
  1. 40万人を10年以上追いかけた
  2. 「観察研究」でわかること、わからないこと
  3. コーヒーの中身は「カフェインだけ」じゃない
  4. くじ引き実験はむずかしい
  5. まとめ

「コーヒーを1日数杯飲む人は、死亡リスクが低い」。ニュースでこんな見出しを見たことがあるかもしれません。

コーヒー好きにはうれしい話。でも、この手の研究を読むときには、ひとつ大事なコツがあります。

今回はコーヒーを題材に、「健康ニュースにだまされない読み方」を身につけましょう。

0140万人を10年以上追いかけた

日本でも、国立がん研究センターの研究グループが約9万人の日本人を追いかけた「JPHC研究」で、2015年に似た傾向を報告しています。

さらに2017年、イギリスのプール(Poole)さんらが『BMJ』で発表した、たくさんのメタ分析をまとめた研究(アンブレラレビュー)では、1日3〜4杯あたりで死亡リスクとの関連がもっとも大きく見られました。

ここまで聞くと、「よし、コーヒーを飲もう!」となりますよね。でも、ちょっと待って。

02「観察研究」でわかること、わからないこと

これらは、ほとんどが観察研究です。研究者は「コーヒーを飲みなさい」と指示したわけではなく、もともと飲んでいた人と、飲んでいなかった人を比べただけ。

すると、こんな可能性が出てきます。

  • 元気だから飲めている:体調が悪い人や持病がある人は、医師に止められてコーヒーを控えているかも(逆の因果)
  • ほかの習慣がちがう:コーヒーを飲む人は、仕事や人づきあいが多く、活動的な生活をしているかも(交絡=別の要因が両方に関わっていること)

研究者は統計の工夫でこうした影響をできるだけ取り除こうとしますが、完全には消せません。

「コーヒー」と「長生き」の間には、見えにくい要因がたくさん隠れているかもしれない
「コーヒー」と「長生き」の間には、見えにくい要因がたくさん隠れているかもしれない

03コーヒーの中身は「カフェインだけ」じゃない

コーヒーには、カフェインのほかにも、クロロゲン酸などのポリフェノール類をはじめ、数百種類以上の成分が含まれています。研究者たちは、こうした成分が体にどう働くかも調べていますが、どの成分が、どれくらい関係しているのかはまだはっきりしていません。

04くじ引き実験はむずかしい

本当に原因かどうかを確かめるには、人をくじ引きで「コーヒーを飲む群」「飲まない群」に分けて、何十年も追いかける実験(ランダム化比較試験)が理想です。でも、何十年もコーヒーを禁止したり強制したりする実験は現実的ではありません。

だからこそ、観察研究の結果は「関連がある」までで止めて読むのが正しい読み方です。

05まとめ

「コーヒーを飲む人は長生き」は、大規模研究でくり返し見られる“傾向”です。ただし、コーヒーのおかげかどうかは、まだ証明されていません。

コーヒーは、無理に飲むものでも、怖がるものでもない。おいしく飲める範囲で楽しむのがいちばんです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 2012 study, researchers followed about 400,000 Americans aged 50 to 71 for more than ten years. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a 2012 study, researchers followed about 400,000 Americans aged 50 to 71 for more than ten years. After adjusting for smoking and other factors, they found that people who drank more coffee had a lower risk of death. A Japanese study of about 90,000 people reported a similar trend.

But both were observational studies. Nobody was told to drink coffee. The researchers simply compared people who already drank it with people who did not.

So the results show a link between coffee and long life, but they do not show that coffee is the cause. Healthy people may be more likely to drink coffee. Also, imagine someone who becomes ill and gives up coffee. That person now counts as a non-drinker, and the drinkers who are left look healthier.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2012年の研究で、研究者たちは50〜71歳のアメリカ人約40万人を10年以上追跡しました。喫煙などの要因を調整したうえで、コーヒーをよく飲む人ほど死亡リスクが低いことがわかりました。約9万人の日本人を対象にした研究でも、似た傾向が報告されています。

しかし、どちらも観察研究でした。誰もコーヒーを飲むよう指示されてはいません。研究者は、もともとコーヒーを飲んでいる人と飲んでいない人を比べただけです。

ですから、この結果が示すのはコーヒーと長生きの関連であって、コーヒーが原因だということではありません。健康な人のほうがコーヒーを飲みやすいのかもしれません。また、病気になってコーヒーをやめた人を考えてみてください。その人は「飲まない人」に数えられるので、残った「飲む人」のほうが健康に見えてしまうのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Which statement about the 2012 study is true?

Q3. Why might sick people appear to drink less coffee?

重要単語

  • observational studyC1
    名詞(句)観察研究An observational study cannot prove cause and effect. observation(観察)の形容詞形。対になるのは experiment / randomized controlled trial(介入して比べる研究)。
  • reverse causationC1
    名詞(句)逆の因果Sick people may stop drinking coffee, which is reverse causation. reverse は「逆の」。A が B の原因ではなく、B が A の原因だった、という落とし穴。
  • associated withB2
    句~と関連があるCoffee drinking was associated with a lower risk of death. be associated with ~ の形で。cause と違い「原因」とまでは言わない慎重な表現。
  • caffeineB1
    名詞カフェインToo much caffeine can make it hard to sleep. 発音は /ˈkæfiːn/(キャフィーン)。coffee と同語源。decaf は「カフェイン抜き」。
  • moderateB2
    形容詞適度なModerate coffee drinking seems safe for most adults. moderate exercise「適度な運動」がセットで頻出。動詞の moderate(和らげる)は語尾の発音が /-eɪt/ に変わる。
  • adjust forB2
    動詞(句)~の影響を調整するThe results were adjusted for age and smoking. 統計で別の要因の影響を差し引くこと。研究紹介の英文で決まって出る表現。
  • mortalityC1
    名詞死亡率Higher coffee intake was linked to lower mortality. mortal(死すべき)+-ity。lower mortality「より低い死亡率」の形で健康研究の定番。

動画でもっと知る

40万人を追いかけた研究で、コーヒーをよく飲む人は死亡リスクが低い傾向だったらしい。でもこれは「観察研究」。元気だから飲めている可能性もあるので、「コーヒーで長生き」と言い切るのは早い。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Freedman et al. (2012) Association of Coffee Drinking with Total and Cause-Specific Mortality, New England Journal of Medicinedoi.org
  2. Poole et al. (2017) Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes, BMJdoi.org
  3. Saito et al. (2015) Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study, American Journal of Clinical Nutritiondoi.org