心理学ホント

綱引きは人数が増えるほど1人の力が落ちる。会議やグループLINEで"誰かがやる"が起きる心理

綱引きは人数が増えるほど1人の力が落ちる。会議やグループLINEで"誰かがやる"が起きる心理

読む前に予想してみよう!

大人数で一緒に作業すると、1人ひとりの頑張りは増える

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など
規模
78研究のメタ分析ほか
研究の種類
実験+メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

綱引きや拍手の実験で、人数が増えるほど1人あたりの力は下がった。78の研究をまとめた分析でも確認。個人の貢献が見えないと「誰かがやる」が生まれる。

ひとことで言うとみんなでやると、こっそり手を抜いちゃう。名前が見えるとシャキッとする!

もくじ
  1. 100年以上前の綱引き実験
  2. 目隠しして「みんなで引いている」と思わせた
  3. 78の研究で確認、ただし小さくできる
  4. メールも「宛先が多いと」返事が減る
  5. まとめ

グループ課題で、なぜか一部の人だけが頑張っている。会議で「何か意見ある人?」と聞かれても、シーンとする。グループLINEで質問を送ったのに、既読だけ増えて誰も答えない。

あるあるですよね。これには、心理学ではっきり名前がついています。社会的手抜きです。

01100年以上前の綱引き実験

始まりは19世紀末、フランスの農業技術者マクシミリアン・リンゲルマンの実験でした。

人にロープを引かせて力を測ると、人数が増えるほど、1人あたりの力が下がっていく。8人で引いても、1人の力の8倍にはならなかったのです。この現象は「リンゲルマン効果」と呼ばれています。

でも、ここで疑問がわきます。人数が増えると、タイミングがずれて力がうまく合わさらないだけでは?

02目隠しして「みんなで引いている」と思わせた

つまり、力が落ちる原因の一部は、やる気そのものが下がることにあったのです。

1979年には、拍手や大声を出す実験でも同じことが確かめられました。グループで出す音は、人数が増えるほど1人あたりの音量が小さくなり、これは、協調のまずさだけでは説明できない努力の損失でした。

人数が増えるほど、1人ぶんの「音」は小さくなる
人数が増えるほど、1人ぶんの「音」は小さくなる

0378の研究で確認、ただし小さくできる

1993年、78の研究をまとめたメタ分析で、社会的手抜きはさまざまな作業で安定して起きることが確認されました。

同時に、手抜きが小さくなる条件も分かってきました。

  • 一人ひとりの貢献が見えるとき(誰がどれだけやったか分かる)
  • 作業が本人にとって意味がある・面白いとき
  • 仲の良いメンバーや、大切に思うグループで作業するとき
  • 自分の頑張りが結果に欠かせないと感じるとき

また、この分析では、手抜きの傾向は女性や東洋文化圏の参加者で、やや小さめだったことも報告されています。

04メールも「宛先が多いと」返事が減る

デジタルの世界でも同じことが起きます。

2002年の研究では、依頼メールを送る実験で、自分ひとりに宛てて送られてきたメールは、複数人に同時に送られてきたメールより、役に立つ返事が来やすかったのです。宛先が多いと、「誰かが答えるだろう」と責任が分散してしまうのです。

05まとめ

人は集団になると、ちょっとだけ手を抜いてしまう生き物です。でも、それは性格の問題ではなく、「自分の頑張りが見えない」仕組みの問題でもあります。

名前を呼ぶ、役割を分ける、一人ひとりの貢献を認める。それだけで、チームの力はぐっと引き出せます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSocial loafing is the tendency to put in less effort when working in a group. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Social loafing is the tendency to put in less effort when working in a group. In the late 19th century, the French engineer Maximilien Ringelmann found that as more people pulled a rope, each person pulled with less force. Was this just because people could not pull at the same time?

In a 1974 experiment, blindfolded people pulled alone but were told that others were pulling behind them. They still pulled less, so lower motivation was part of the cause. A 1993 analysis of 78 studies confirmed that social loafing happens in many kinds of tasks, but it becomes smaller when each person's contribution can be seen or when the task feels meaningful.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

社会的手抜きとは、グループで作業するときに努力を減らしてしまう傾向です。19世紀末、フランスの技術者マクシミリアン・リンゲルマンは、ロープを引く人が増えるにつれ、一人ひとりの引く力が小さくなることを発見しました。これは単に、人々が同時に引けなかったからでしょうか?

1974年の実験では、目隠しをした人がひとりで引いていましたが、後ろで他の人も引いていると伝えられました。それでも彼らの引く力は小さくなったので、やる気の低下が原因の一部だったのです。78の研究をまとめた1993年の分析は、社会的手抜きが多くの種類の作業で起こることを確認しましたが、一人ひとりの貢献が見えるときや、作業が意味のあるものに感じられるときには小さくなりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Ringelmann find?

Q2. Why was the 1974 experiment important?

Q3. According to the 1993 analysis, when does social loafing become smaller?

重要単語

  • social loafingC1
    名詞(句)社会的手抜きSocial loafing is common in group projects. loaf は「ぶらぶら怠ける」(パンの loaf とは別語源)。loafer はスリッポン靴の名前にも。
  • diffusion of responsibilityC1
    名詞(句)責任の分散Diffusion of responsibility makes people wait for others. diffuse(拡散する)の名詞形。傍観者効果の説明でも使われる重要語。
  • contributionB2
    名詞貢献Make each person's contribution visible. make a contribution to ~(~に貢献する)。動詞 contribute to ~ は「~の一因となる」の意味でも頻出。
  • accountableC1
    形容詞説明責任があるPeople work harder when they feel accountable. be accountable to 人 for 事。名詞 accountability(説明責任)は時事英語の頻出語。
  • collectiveB2
    形容詞集団の、共同のCollective tasks need clear roles. collect(集める)から。collective effort=共同の努力。individual(個人の)と対で。
  • exertC1
    動詞(力・影響を)発揮する、及ぼすHe exerted all his strength to pull the rope. exert effort / influence / pressure。exert oneself で「努力する」。
  • indispensableC1
    形容詞不可欠なYour help is indispensable to the team. in-(否定)+dispense with(~なしで済ます)+-able。essential とほぼ同義で入試頻出。
綱引きは人数が増えるほど、1人あたりの力が下がるらしい。目隠しして「みんなで引いてる」と思わせただけでも力が落ちた。グループLINEで質問が流れるのも、会議で誰も発言しないのも、同じ"手抜き"の心理かも。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Ingham, Levinger, Graves & Peckham (1974) The Ringelmann effect: Studies of group size and group performance, Journal of Experimental Social Psychologydoi.org
  2. Latané, Williams & Harkins (1979) Many hands make light the work: The causes and consequences of social loafing, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Karau & Williams (1993) Social loafing: A meta-analytic review and theoretical integration, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Barron & Yechiam (2002) Private e-mail requests and the diffusion of responsibility, Computers in Human Behaviordoi.org